崩落斜面直下での作業に関する安全対策について

崩落斜面直下での作業に関する安全対策について
立谷沢3
発注者
新庄河川事務所
施工者
株式会社 柿﨑工務所
工事名
立谷沢川流域 濁沢川ほか整備工事
発表者
現場代理人 今田 康志
監理技術者 今田 康志
1.はじめに
本工事は、立谷沢川水系砂防事業の一環として、濁沢川において土石流から人家及び道路を
保全することを目的とする、除石工事、濁沢第一・第二砂防堰堤の復旧工事、工事用道路(濁沢橋
~濁沢第五砂防堰堤)の造成を行うものである。
濁沢流域では、平成5年に移動土砂量約560万m3に及ぶ滝ノ台大崩壊が、平成23年には池ノ台
大崩壊が発生し、崩壊で沢に流れ出した土砂が濁沢第五砂防堰堤まで流下して止まりました。
本工事では、この池ノ台大崩壊により濁沢に堆積した土砂の除石と濁沢第一、第二砂防堰堤の補
修等を行う工事で崩落地直下での施工であるため、土石流や土砂崩落等大変危険な場所での工事
です。また、災害発生時は集落から離れた月山の麓であるため緊急時の対策も必要でした。
本発表は、当現場で行った土砂崩落、土石流対策や山間部特有の安全管理等について紹介します。
2.土砂崩落及び土石流に関する安全管理について
当現場は、はじめにでも述べたように施工箇所直上流に平成23年に崩壊した池ノ台や平成5年に
崩壊した滝ノ台があり、その土砂は土石流となって流下した土石流発生実績を有する渓流です。
また、施工前の調査で施工箇所脇の治山道斜面(濁沢第四砂防堰堤付近)でも崩壊が確認された
ことから、当現場では土砂崩壊及び土石流に対する安全対策を最重点に実施することとしました。
土石流対策では、昨年までは濁沢第四、第六砂防堰堤の2箇所に土石流センサーを設置して監視
していましたが、治山道の変状により濁沢第四砂防堰堤より上流に行くことが出来なくなったため、
S 1 2000
730
725
平 面 図
720
715
710
705
700
図-1
695
690
685
680
675
670
27)
1 2 7.
7 (1
. 2 7)
2 7)
27 .
7 (1
2
7 .2
+2
27
32
(1
)
27
7.
37
27
)
(1
7.
42
(1
27
27
7.
O.
AN
+2
37)
28
O.
AN
27
)
7)
7.
47
535
避難所
540
NO
,1
,1
NO
545
550
NO,0
,0
NO
560
565
T- 0 9
570
575
580
585
NO,0
NO,0
590
T A-1
B
7.
52
27
7.
665
660
A EP ( 1 6 2 7 . 0 0 )
)
+2
O.
30
7 . 27
( 1 57
AN
630
AIP
15
7
625
K0 4
(1
O.
AN
NO,7+
7.7
600
605
610
615
620
555
K05
K0 5
670
T A-1
8
NO.10+49.28(+1626.65)
土石流警報機
NO.10(
+1577.
37)
T- 08
避難所
(+15
27.3
7)
NO
,2
NO,51
2
NO.9
,3
NO,
T- 07
T -0 7
+1
77.3 462.37
7)
)
NO.7
NO.8 +35.
(+14 0(
7
+7.
N O.7
NO ,8
NO,8
NO,7
NO ,7
-1
530
06
16
7)
27.3
14
.7(+
NO
N O, 9
NO,4
NO,6
NO
N O,3
NO,5
N O, 6
N O, 4
T- 19
27
7.
TA-
600
595
避難所
520
525
)
27
(1
605
+2
NO.6
(+
1377
.3
7)
NO,5
NO
.5(+
13
27.3
NO.4
+3
T-1 9-2
TA -08
N O, 5
T-0 7-1
7.
+2
26
O.
AN
615
TA- 15
53 0
T -0 7 -1
27
7.
+2
620
610
TA -14
79 50
NO.
BC. 11
1
NO.
10
濁沢第1砂防
堰堤
27
AI
3
堤
堰
TA- 09
515
7.
)
27
7.
27
(1
P1
4
.29
NO
575
防
TA -10
2砂
第
沢
濁
640
635
630
625
0.0(
+130
7.
TA -1
5 40
535
645
)
.2 4
ANO
57 5
NO.3(+
1227.3
7)
NO.1(+11
27.37)
570
NO.2(+
117 7.3
7)
31
NO..5
BC .5
SP .5
EC
550
TA- 12
29
7 .2
2 2 +2
7(
1 1 77
2 3+
560
545
.30
NO
A N O.
NO.40
NO.39
555
7)
NO.0(+1077.3
NO.37
NO.36
4.76)
NO.38
+1043.91)
NO.2+29.15(
3
.3
NO
2
.3
NO
A
P8
NO.2( +101
6
SP.
4
.3
NO .6
BC
EC.6
NO.35
2
1)
1 5.
.6
(9
0
73
)
1
P
0
(8
AI
5 .5
61
89
3.
(
+2
P9
I
17
1)
.
NO
.6
(8
23
AIP 7 ( 7 7 3 . 6 1
)
AI
BC.44
SP..4
EC .28
NO
NO.2
NO.26
7
525
SP.3
NO.25
EC.3
NO.24
52 0
TA- 11
A
AIP 5 ( 6 9 8 . 2 5 )
NO.21
NO.22
NO.1
9
NO.20
6
NO.1(+773.47)
BC.3
TA -0
TA -05
TA- 07
2 7 .2
A N O.
AIP
6)
( 6 68
8.25
A NO .
12 + 1
EC.2
NO.1
7
SP.2
NO.16
2
BC.
NO.1
8
A
14 N O .1 1 + 1 8 .2
SP
.1
505
5 00
避難所
NO.23
1
EC.
NO
2
.1
555
550
545
540
535
530
525
520
NO.
AN
)
04
15
NO.
68
5 (5
ANO.
.25)
5)
8 .2
( 46
5
.2
18
A IP4 ( 5 1
8.25)
O.
建設中
O.
AN
防堰
堤
13
NO.
第8砂
1 3 +1
8 .2 5
)
)
25
25
8.
4 5.
(4
5
P3
( 41
.2
AI
45
濁沢
8+
堤(
9+
( 40
.8
ANO
(618
0)
0.0
.7 (
35
ANO
TA-
495
.25)
0 . 00
)
.25)
)
治山堰
665
660
655
650
5
56
AI P2 ( 3
00.00
避難所
既設
NO,40
(1077.
AIP13
96)
1 0 15
.26 (
堤
濁沢第4砂防堰
11
崩壊地監視所
( 1 0 4 3.
AIP 12
0 + 15
(9
A NO . 2
6 5.
26
)
除石掘削
670
.26)
27)
崩壊地
土石流センサー
655
650
645
640
635
630
625
620
615
610
濁沢第3砂防堰堤
635
6 40
625
63 0
635
645
6 40
650
65 5
K02
645
66 0
66 5
650
K 03
6 55
66 0
670
665
67 5
6 70
6 75
上流部の土石流発生の危険性がある箇所の調査結果を元に、現場到達時間・規模等の検討を行い、
土石流センサーの設置は濁沢第四砂防堰堤に、また、避難箇所も施工箇所が点在することから複数
図-2
選定しました。土石流センサーの設置位置及び避難箇所の選定箇所は図-2に示すとおりです。
また、斜面の崩落監視は池ノ台崩壊地の他に、濁沢第四砂防堰堤付近の治山道斜面の崩落もあっ
たことや、昨年までの池ノ台崩壊地監視ポイントが地すべりで使用できなくなったことから、これら2
箇所を監視できる濁沢第二砂防堰堤右岸の斜面上部に監視所を設置して監視を行いました。
避難所の設置は、大崩落による土石流の到達高さよりも2m以上高い所に複数設置し、治山道の対
岸の避難所には、非常備蓄資材として、『救急箱・懐中電灯・非常食・乾電池・飲料水・ブルーシー
ト・ライター・無線機・避難ルート図』を常備し、孤立した場合を想定した対策を行いました。
避難訓練状況
避難所備蓄資材
避難所への避難完了
救急セット・非常食
避難ルートでの避難
避難経路図・無線機
避難訓練は、新規入場時教育の際に、避難経路・避難場所・土石流到達時間(50秒)・退避時間(45秒)
を位置図により説明し、現場でその箇所を確認し避難訓練を実施しました。
避難訓練では、当該現場が山間部で災害時の救助等に時間が掛かることを想定し避難時の孤立
対策を重点として、避難所から避難経路に従って月山林道まで到達出来るか実際に行いました。
また、避難経路の峰まで到達した時点で林道側から位置を確認出来るか、発煙筒を使って試しま
したが木々が密集しているため確認が難しいでした。設定した避難経路を使った避難所要時間は、
月山林道までの避難時間を1時間と想定していたが、実際は2時間程度掛り、連絡、位置確認には
無線機がとても重要だと改めてわかりました。実際に、避難経路に従って避難を行ったことで、問題
等が解ったのでとても良い避難訓練でした。 今後も、繰返し訓練を行い安全向上を図りたいです。
発煙筒による位置確認
月山林道側からの位置確認
無線機による連絡・位置確認
3.地域住民とのコミュニケーションについて
地域住民とのコミュニケーションとして、瀬場地区、大中島地区で行われる秋祭りへの参加要望があり
神社廻りの清掃、幟旗の設置・撤去の協力を行い、神事にも参加し地域住民とのコミュニケーションを
図りました。 また、現場事務所のある大中島地区では直来にも参加させてもらい、お酒を飲みながら
話をすることで地域住民の皆さんとより打ち解けて話ができ、より工事へのご理解、ご協力も得られたと
思います。私は、立谷沢地区の工事を担当し3年目となり、毎年祭りに参加することで地域の皆さんに
名前と顔を覚えてもらい、今では気軽に声を掛けてもらえるようになりました。
神社廻りの清掃
神事への参加 直来への参加
4.戸沢中学校生徒の現場見学について
戸沢中学校より女子生徒の現場見学の要望があり、未来の土木女子のために当現場で受け入れました。
生徒に、どうして土木に興味を持ったのか聞いたところ、「建設現場に興味がある」と言うことと、「お父さん
が当現場で、大型ダンプの運転手として従事していることもあり見学に来てみたいと思った」そうです。
現場見学は、現場の概要、池ノ台の崩壊地、砂防事業の必要性等を説明し、お父さんが作業している
ところも見学してもらいました。見学後感想を聞いたところ、「このような山奥で大きな仕事をしていること
に驚き、お父さんが土砂崩壊直下での危険な作業に携わっていることに、二度、驚いた」そうです。
一般の人には、わからないような山奥で危険な仕事をし、地域住民が安全に生活できるようにいろいろな
所で、砂防事業が行われていることを現場を見ながら学習してもらいました。
池ノ台崩壊地見学
除石施工箇所見学
5.おわりに
立谷沢地域の皆様には、工事にご理解、ご協力をいただきまして、この場を借りて御礼申し上げます。
また、立谷沢川流域工事安全対策協議会を設置し、月山林道通行時の安全確保に努め協力し合い
交通事故等も無く無事に、通行出来たことにも感謝いたします。
最後に、工事が無事故、無災害で無事に完了することができましたことに、皆様に感謝申し上げす。