経済分析レポート 2015 年 2 月 27 日 全6頁 Indicators Update 1 月消費統計 食料品の値上げや冬物商品の動きの鈍さを主因に増加傾向が足踏み エコノミック・インテリジェンス・チーム エコノミスト 久後 翔太郎 [要約] 2015 年 1 月の家計調査によると、実質消費支出は季節調整済み前月比▲0.3%と減少し た。振れの大きい住居や自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)で見ても、同 ▲0.3%と減少しており、家計調査に見る個人消費は増加傾向が足踏みする結果となっ た。 供給側から個人消費動向を捉えた商業動態統計を見ると、1 月の名目小売販売額は、季 節調整済み前月比▲1.3%と 4 ヶ月連続で減少し、減少傾向が鮮明となっている。内訳 を見ると、「燃料小売業」(同▲8.8%)、「各種商品小売業」(同▲3.7%)、「織物・衣 服・身の回り品小売業」(同▲3.4%)などの業種が前月から減少した。「燃料小売業」に 関しては、原油価格急落に伴う販売価格の低下が販売金額を押し下げた。また、冬物商 品の動きが鈍かったことが「織物・衣服・身の回り品小売業」の減少要因とみられる。 1 月の個人消費を総じてみると、家計調査では食料品の値上げや冬物商品の動きの鈍さ を主因に増加傾向が足踏みする結果となった。ただし、本日公表された鉱工業指数では 消費財出荷及びその内訳項目が軒並み堅調な動きを示しており、これまで緩慢な推移を 続けてきた供給側統計が持ち直してきたことは明るい材料である。 図表 1:各種消費指標の概況 2014年 2015年 出所 10月 11月 12月 1月 前年比 ▲ 4.0 ▲ 2.5 ▲ 3.4 ▲ 5.1 総務省 実質消費支出 家計調査 前月比 0.7 0.4 0.2 ▲ 0.3 総務省 実質消費支出(除く住居等) 前月比 0.9 0.6 0.2 ▲ 0.3 総務省 前年比 1.4 0.5 0.1 ▲ 2.0 経済産業省 商業動態統計 小売業 前月比 ▲ 1.4 ▲ 0.2 ▲ 0.4 ▲ 1.3 経済産業省 消費総合指数 前月比 ▲ 0.5 0.7 ▲ 0.2 内閣府 百貨店売上高 前年比 ▲ 2.2 ▲ 1.0 ▲ 1.7 ▲ 2.8 日本百貨店協会 コンビニエンスストア売上高 前年比 ▲ 1.1 ▲ 1.7 ▲ 1.2 ▲ 0.7 (一社)日本フランチャイズチェーン協会 スーパー売上高 前年比 ▲ 1.9 ▲ 0.7 ▲ 1.8 ▲ 1.7 日本チェーンストア協会 外食売上高 前年比 ▲ 1.2 1.9 ▲ 2.8 ▲ 5.0 (一社)日本フードサービス協会 旅行取扱高 前年比 1.9 1.0 1.1 観光庁 (注)百貨店売上高、コンビニエンスストア売上高、スーパー売上高の前年比は店舗数調整後。 (出所)各種統計より大和総研作成 株式会社大和総研 丸の内オフィス 〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません。このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性、完全性を保証する ものではありません。また、記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります。㈱大和総研の親会社である㈱大和総研ホールディングスと大和 証券㈱は、㈱大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です。内容に関する一切の権利は㈱大和総研にあります。無断での複製・転載・転送等はご遠慮ください。 2/6 2015 年 1 月の実質消費支出は前月比▲0.3%と 5 ヶ月ぶりの減少 2015 年 1 月の家計調査によると、実質消費支出は季節調整済み前月比▲0.3%と減少した。振 れの大きい住居や自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)で見ても、同▲0.3%と減少 しており、家計調査に見る個人消費は増加傾向が足踏みする結果となった。 10 大費目別の動き:食料品の値上げにより支出を手控える動き 実質消費支出の動きを費目別にみると、「食料」(前月比▲2.4%)、「住居」(同▲6.2%)、 「被服及び履物」(同▲4.2%)などの減少が下押し要因となった(図表 2)。「食料」に関して は、1 月に入り相次いで値上げが行われたことから、支出が手控えられた可能性がある。 「住居」 については設備修繕・維持への支出が減少したとみられる。ただし、前月の大幅な増加に照ら すと減少幅は限定的であり、均して見ても緩やかな増加傾向にある。「被服及び履物」に関し ては、1 月に気温が例年よりも高めに推移したことから、冬物商品が不調であったとみられる。 一方、「交通・通信」(同+4.7%)、「諸雑費」(同+5.2%)、「光熱・水道」(同+2.1%)な どは前月から増加した。減少傾向にあった「交通・通信」は自動車や自動車保険料への支出の 増加を主因に、4 ヶ月ぶりに増加に転じた。同費目は振れの大きい項目であるため結果は割り引 いて評価する必要があるものの、業界統計に見る新車販売台数は軽自動車を中心に 2014 年末に かけて急激な増加がみられており、その傾向が家計調査で遅れて確認できた格好だ。新車販売 台数の増加に伴い、保険料への支出も増加したとみられる。 商業動態統計の名目小売販売額は前月比▲1.3%と 4 ヶ月連続の減少 供給側から個人消費動向を捉えた商業動態統計を見ると、1 月の名目小売販売額は、季節調整 済み前月比▲1.3%と 4 ヶ月連続で減少し、減少傾向が鮮明となっている(図表 3)。内訳を見 ると、「燃料小売業」(同▲8.8%)、「各種商品小売業」(同▲3.7%)、「織物・衣服・身の回り 品小売業」(同▲3.4%)などの業種が前月から減少した。「燃料小売業」に関しては、原油価格 急落に伴う販売価格の低下が販売金額を押し下げた。また、冬物商品の動きが鈍かったことが 「織物・衣服・身の回り品小売業」の減少要因とみられる。 図表 2:実質消費支出の費目別寄与度 図表 3:名目小売販売額の業種別寄与度 (前月比、%) 5.0 (前月比、%) 5.0 4.0 4.0 3.0 3.0 2.0 2.0 1.0 1.0 0.0 0.0 -1.0 -1.0 -2.0 -2.0 -3.0 -3.0 -4.0 -4.0 -5.0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 -5.0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 13 食料 家具・家事用品 交通・通信 諸雑費 (出所)総務省統計より大和総研作成 14 住居 被服及び履物 教育 消費支出 15 光熱・水道 保健医療 教養娯楽 (月) (年) 13 各種商品小売業 飲食料品小売業 機械器具小売業 燃料小売業 (出所)経済産業省統計より大和総研作成 14 織物・衣服・身の回り品小売業 自動車小売業 その他小売業 小売業計 (月) 15 (年) 3/6 悪化傾向にあった消費者マインドは持ち直しの動き 2015 年 1 月の消費動向調査によると、消費者態度指数は前月差+0.3pt と 2 ヶ月連続で上昇 した(図表 4)。消費者態度指数と同様に悪化傾向にあった景気ウォッチャー調査でも改善が続 いたことを併せて評価すると、悪化傾向にあった消費者マインドには持ち直しの動きがみられ る。消費者態度指数の内訳を見ると、 「暮らし向き」(同▲0.2pt)や「収入の増え方」(同▲0.2pt) がわずかながら悪化したものの、求人数の増加等から「雇用環境」が同+0.6pt と上昇したこと に加えて、「耐久消費財の買い時判断」(同+1.0pt)の改善も消費者態度指数を押し上げた。 図表 4:消費者態度指数の推移 (前月差、pt) (pt) 6.0 48 5.0 46 4.0 44 3.0 42 2.0 40 1.0 0.0 38 -1.0 36 -2.0 34 -3.0 32 -4.0 -5.0 30 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 (月) 2013 暮らし向き 雇用環境 消費者態度指数 2014 2015 (年) 収入の増え方 耐久消費財の買い時判断 消費者態度指数(水準、右軸) (出所)内閣府統計より大和総研作成 実質所得の増加を主因に個人消費は底堅い推移を見込む 1 月の個人消費を総じてみると、家計調査では食料品の値上げや冬物商品の動きの鈍さを主因 に増加傾向が足踏みする結果となった。ただし、本日公表された鉱工業指数では消費財出荷及 びその内訳項目が軒並み堅調な動きを示しており、これまで緩慢な推移を続けてきた供給側統 計が持ち直してきたことは明るい材料である。 先行きの個人消費は増加が続くとみている。個人消費の前提となる賃金の動きを確認すると、 一般労働者、パートタイム労働者の双方で上向きの動きが見られていることが消費税率引き上 げによる実質所得減少の影響を一部緩和している点は明るい材料である。2015 年度もベースア ップが実施されることが確実な情勢となり、所得環境の先行きは視界良好だ。加えて、原油価 格の下落が今後も物価を押し下げる公算であり、家計の実質購買力を一層高めるだろう。懸念 材料であった消費者マインドに関しても、足下で持ち直しの動きがみられており、先行きの個 人消費を考えるうえでは明るい材料である。 4/6 消費・概況① 実質消費支出の費目別寄与度 実質消費支出(家計調査、二人以上世帯) (前月比、%) (2010年=100) 115 10.0 110 5.0 0.0 105 -5.0 100 -10.0 95 -15.0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 (月) 13 14 食料 家具・家事用品 交通・通信 諸雑費 住居 被服及び履物 教育 消費支出 15 90 123456789101 1 2123456789101 1 2123456789101 1 2123456789101 1 2123456789101 1 21 (月) (年) 光熱・水道 保健医療 教養娯楽 10 11 実質消費支出 12 13 14 15 (年) 実質消費支出(住居等を除く) (出所)総務省統計より大和総研作成 (注1)季節調整値。 (注2)「住居等」とは住居、自動車等購入、贈与金、仕送り金。 (出所)総務省統計より大和総研作成 費目別実質消費① 費目別実質消費② (2010年=100) 150 125 140 120 (2010年=100) 115 130 110 120 105 110 100 100 95 90 90 80 85 70 80 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 13 食料 住居 14 光熱・水道 家具・家事用品 15 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 (月) 13 (年) 被服及び履物 保健医療 14 交通・通信 教育 15 教養娯楽 (月) (年) 諸雑費 (注)季節調整値。 (出所)総務省統計より大和総研作成 (注)季節調整値。 (出所)総務省統計より大和総研作成 基礎的支出と選択的支出 勤労者世帯の実質可処分所得と平均消費性向 (%) 86 (2010年=100) 104 84 102 82 100 80 (前年比、%) 10.0 8.0 6.0 4.0 98 2.0 78 0.0 76 -2.0 96 74 -4.0 -6.0 94 72 92 70 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 13 勤労者世帯の可処分所得 (注)季節調整値。 (出所)総務省統計より大和総研作成 14 平均消費性向(右軸) 15 (月) (年) -8.0 -10.0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 (月) 13 14 15 (年) 基礎的支出 (出所)総務省統計より大和総研作成 選択的支出 実質消費 5/6 消費・概況② 商業動態統計小売業販売額の推移 大型小売店業態別商品販売額 (前月比、%) 10.0 (2010年=100) 130 7.5 125 5.0 120 2.5 0.0 115 -2.5 110 -5.0 105 -7.5 100 -10.0 95 -12.5 -15.0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 (月) 13 各種商品小売業 飲食料品小売業 機械器具小売業 燃料小売業 14 15 (年) 90 85 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 (月) 織物・衣服・身の回り品小売業 自動車小売業 その他小売業 小売業計 13 (出所)経済産業省統計より大和総研作成 (出所)経済産業省統計より大和総研作成 業種別小売販売① 業種別小売販売② (2010年=100) 125 (2010年=100) 130 120 120 115 110 110 15 (年) 14 合計 百貨店 スーパー 100 105 90 100 95 80 90 70 85 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 (月) 13 小売業計 織物・衣服・身の回り品小売業 その他の小売業 14 60 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 (月) 15 (年) 13 15 (年) 自動車小売業 65 48 (兆円) 330 60 46 325 55 44 320 50 42 315 45 40 40 38 35 36 30 34 25 32 (DI) 30 123456789101 1 2123456789101 1 2123456789101 1 2123456789101 1 2123456789101 1 21 (月) 10 11 12 13 14 15 (年) 景気ウォッチャー調査 現状判断DI 家計動向 景気ウォッチャー調査 先行き判断DI 家計動向 消費者態度指数(訪問調査、右軸) 消費者態度指数(郵送調査、右軸) (出所)内閣府統計より大和総研作成 燃料小売業 その他小売業 GDPベースの民間最終消費支出と消費総合指数 消費者マインド (DI) 機械器具小売業 (注)その他小売業は二輪自動車小売業、自転車小売業、家具・じゅう器小売業など。 (出所)経済産業省統計より大和総研作成 (注)その他の小売業は自動車小売業、機械器具小売業、燃料小売業、その他小売業。 (出所)経済産業省統計より大和総研作成 20 14 各種商品小売業 飲食料品小売業 (2005年=100) 114 112 110 108 310 106 305 104 300 102 295 100 290 98 285 96 280 05 06 07 08 09 民間最終消費支出 (出所)内閣府統計より大和総研作成 10 11 12 13 消費総合指数(右軸) 14 15 (年) 6/6 消費・協会統計 新車販売台数 テレビ消費額と出荷台数 (万台) 40 (万台) 21 19 35 17 30 25 20 15 10 250 200 15 150 13 100 11 50 9 0 7 -50 5 123456789101 1 2123456789101 1 2123456789101 1 2123456789101 1 2123456789101 1 21 (月) 10 11 12 13 14 15 (年) 普通乗用車+小型乗用車 (前年比、%) 300 -100 1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 (月) 11 12 家計調査 軽自動車(右軸) (注)季節調整は大和総研。 (出所)日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会統計より大和総研作成 百貨店売上の寄与度分解(品目別、全店舗ベース) 13 14 家計消費状況調査 15 (年) JEITA (注)家計調査と家計消費状況調査の値は当該CPIで実質化。 (出所)JEITA、総務省統計より作成 スーパー売上高の寄与度分解(品目別、全店舗ベース) (前年比、%) 15 (前年比、%) 30 25 10 20 15 5 10 5 0 0 -5 -5 -10 -15 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 (月) 13 衣料品 食料品 商品券 14 身の回り品 食堂喫茶 総額 雑貨 サービス -10 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 (月) 15 (年) 13 家庭用品 その他 14 15 (年) 食料品 衣料品 住関品 サービス その他 総販売額 (出所)日本百貨店協会統計より大和総研作成 (出所)日本チェーンストア協会統計より大和総研作成 コンビニ売上高(店舗数調整前) 外食市場売上高 (前年比、%) 8 (前年比、%) 8 6 4 4 2 0 0 -4 -2 -4 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 (月) 13 14 客数 客単価 売上高 (出所)日本フランチャイズチェーン協会統計より大和総研作成 15 (年) -8 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 (月) 13 14 客数 客単価 (出所)日本フードサービス協会統計より大和総研作成 売上高 15 (年)
© Copyright 2024 ExpyDoc