マーケットウィークリー・810号 産業ニュース 2015.1.1 アベノミクス「第3の矢」に反応する工作機械市場 作成者:冨ケ原信久 14 年 の 工 作 機 械 受注高はリーマ ン後、過去最高 14年の工作機械市場は国内、海外とも好調に推移。年間の受注総額 は1兆4,000億円超が見込まれ、08年のリーマンショック後の過去最高 を更新する勢いだ。国内需要増の背景にはアベノミクスによる「もの づくり補助金」の効果がある。「ものづくり補助金」は中小企業・小 規模事業者が試作品・新製品の開発などに取り組む費用に対する補助 金。12年度補正予算(13年に実施)で1,007億円、13年度補正予算(14 年に実施)で1,400億円が組まれた。14年1-11月の内需額が4,482億円、 前年同期比23%増と、相応の効果があったようだ。また14年1月から設 備投資を推進する「産業競争力強化法」が施行されたことも追い風。 国内企業の工作機械は経過年数15年超が全体の5割超(13年春時点、経 済産業省調べ)と老朽化しており、工場の設備更新需要を引き出した。 アベノミクスの「第3の矢」が、工作機械市場に反映したといえる。 海外は自動車、航 空機向けが伸長。 「円安」も後押し 海外は14年1-11月合計が9,169億円、前年同期比42%増。製造業の国 内回帰が進む米国は自動車、航空機、エネルギー関連を中心に需要が 旺盛。中国もスマホ関連の需要が高まった。賃金上昇や熟練工不足の ほか、製品の高付加価値要求の強まりを背景に、高機能、高性能の工 作機械に需要がシフトしている。さらに、「円安・ドル高」が競争力 を回復させ、受注の拡大を後押しした。国内工作機械市場の輸出割合 は64%(13年実績)に達しており、輸出の好調は工作機械メーカーの 業況感を明るくしている。 15 年 も 海 外 が 伸 長。国内も更新投 資に期待 14年10月に日本国際工作機械見本市(隔年)が開催。開催6日間の来 場者数は13.6万人と前回比0.7万人増えた。DMG森精機(6141)、 オークマ(6103)、ファナック(6954)、牧野フライス(6135)、ヤ マザキマザックなどが、既存機比で省スペース設計や省エネ機能を高 め、加工時間を短縮したマシニングセンタ(数値制御装置)を展示。 アマダ(6113)、三菱電機(6503)はレーザー加工機の省エネを競う 製品を展示し、注目を集めた。11月以降の受注動向に見本市効果が反 映されそうだ。15年1月に、日本工作機械工業会が15年の工作機械受注 見通しを発表する。国内は補正予算の反動があるが、民間企業の投資 意欲回復や海外需要の伸びが支えとなりそうだ。工作機械メーカー各 社の生産増強計画が相次いでいる。受注の過去最高水準を視野に入れ、 成長志向に軸足を移しつつあるようだ。 ◇工作機械短期受注観測調査、足元の業況DI ◇工作機械受注動向 100.0 (兆円) 1.8 80.0 1.6 1.4 60.0 1.2 40.0 1.0 0.8 20.0 0.6 0.0 0.4 -20.0 0.2 0.0 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年 14年予 (注)14年予は14年1-11月実績分と14年月平均を加算 (出所)日本工作機械工業会資料からCAM作成 -40.0 05/01 06/01 07/01 08/01 09/01 10/01 11/01 12/01 13/01 14/01 (出所)日本工作機械工業会資料よりCAM作成
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