本文ファイル - NAOSITE

NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
長崎県大瀬戸町柳浜においてヒラメ着底仔稚魚を捕食する魚類の食
性
Author(s)
乃一, 哲久; 草野, 誠; 植木, 大輔; 千田, 哲資
Citation
長崎大学水産学部研究報告, v.73, pp.1-6; 1993
Issue Date
1993-02
URL
http://hdl.handle.net/10069/29842
Right
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長 崎 大 学 水 産 学部 研 究 報 告
1
第73号(1993)
長崎県大瀬戸町柳浜において
ヒラメ着底仔稚魚 を捕食す る魚類 の食性
乃一
Feeding
哲久,草 野
誠*ケ植 木
大輔*イ千
Habit of Fishes Eating
田
哲資
Settled Larval
and
Juvenile Japanese Flounder (Paralichthys olivaceus)
at Yanagihama Beach, Nagasaki Prefecture
Feeding
habit
which settled
Tetsuhisa
Noicm,
Daisuke
UEKI, and
of fishes conccurring
along Yanagihama
Makoto
KUSANO,
Tetsushi
SENTA
with larval and juvenile
Beach near Nagasaki
Japanese
was studied.
having taken some fish, nine were found to have eaten Japanese
which live near or close to the sea bed and have relatively
Trachinocephalus
Paralichthys
myops, Pseudoblennius
olivaceus, were considered
showed
percoides,
flounder.
Fishes
wider mouth,
such as
Chelidonichthys
to be serious predators
that juvenile Japanese
flounder
Of 10 species
spinosus
for Japanese
Aquarium
observation
a predator
mostly when they swam up from bottom to take food.
flounders
and
flounder.
were attacked
by
This may explain
why a high incidence of predation temporarily coincided with the high feeding activity
of Japanese flounder at Yanagihama Beach.
Key
words : ヒ ラ メ Paralichthys
olivaceus;
砂 浜 海 岸 か ら採 集 さ れ る ヒ ラ メ(Paralichthys
)仔 稚 魚 の体 長 組 成 は,着olivaceus
底 直後 の個体 群
捕食者 predator
; 食性 feeding
と が 知 られ て い る 。4-9)一 方,天
して は,南10)が
収 集 した 報 告 の 他,幾
原 因 と して は,被 食,餓
過 ぎ な い 。ケ,イ,4,ケケ-15)
死,沖
合 へ の逸散 な
ど様 々 な 要 因 が 考 え られ る が,Tanakaetalケ)は,
こ の 現 象 は,逸
飢餓
散 な ど よ り もむ し ろ,被
然 ヒラ メ の被 食 に 関
日本 海 沿 岸 で 確 認 され た 被 食 事 例 を
に 急 激 な 減 耗 が 生 じ る こ と を示 唆 して い る 。ケ無)こ の
死,病
habit.
つ か の断 片的 な報 告が あ るに
著 者 らは 長 崎 県 大 瀬 戸 町 柳 浜 におい て ヒラ メ着
食 も し くは
あ る い は そ れ らが 複 合 す る こ と に よ っ て 生 じ
底 仔 稚 魚 を 捕 食 す る 魚 類 の 調 査 を行 い,ア
(Pseudoblennius),ホ
る と考 察 し て い る 。
),ヒ
これ ま で 若 齢 期 ヒ ラ メ の被 食 に 関 す る 研 究 は,主
ナハゼ
ウボ ウ(Chelidonラ メ な ど9種 のichthys
魚 類 を捕
spinosus
食者
と し て 確 認 し,捕 食 者 と被 食 者 の サ イ ズ,被
食事例
に 栽 培 漁 業 を 目 的 と した 放 流 種 苗 に つ い て 行 わ れ て
が 見 られ た 時 間 帯 や 潮 時 な ど に つ い て 先 に 報 告 し
ざ た 。4)そ し て,ヒ
た 。*ウ本報 で は そ れ らの魚 類 の 食 性 につ い て報 告 す る。
状 態 に お い て,17種
),ニ
)な
の 魚 類,カ
,〒852長
流 直 後 の高 密 度
ザ ミ(Portunus
材 料
チ リ ン ヒ トデ(Solaster
trituberculatus
paxil-
ど に よ っ て,短
*1㈱ 大 栄 太 源
*2㈱ 極 洋
ラ メ種 苗 は,放
期 間に大
latus
量 に 捕 食 され る こ
標 本 は,1990-1991年
崎 市 光 町3-32.
,〒810福
岡 市 中 央 区 舞 鶴3-7-13.
*3平 成4年
度 日本 水 産 学 会 春 季 大 会(東 京)に
お いて 口頭発 表
,現
在 同 会 誌 に 投 稿 中.
と 方 法
の3-7月
に長 崎 県 大 瀬 戸 町
2
乃一,草野,植木,千田:ヒラメ着底仔稚魚を捕食する魚類の食性
柳浜(北緯32。59.3’,東経129038.9’)の大潮干潮線付
胃内容物の調査結果は魚種別に個体数法で解析
近から採集した。採集は,原則として毎月2回,大
した。個体数法による解析には,餌料生物の量的
潮日の昼間の干潮時に行ったが,ヒラメ仔稚魚の出
(biomass)な情報が加味されていないため,ヒラメ
現盛期である4−5月には,大潮日以外にも採集を行
を捕食していた魚類については,さらに,点数法も
った。さらに両年とも,4−5月には,各年3回ずつ計
用いて解析した。点数は,胃内容物中から得られた
6回の24時間採集を行った。24時間採集では,約3
餌料生物のうち,消化の影響を受けていないものを
時間間隔の採集を連続9回行い,これを1回の採集
選び,湿重量を測定し,上記の分類群別に平均値を
求め,それらの比を基に算出した。
とした。
採集には網口幅1.5m,袋網目合い1mmの小型押
また,24時間採集でまとまった数の標本が得られ
し網16)もしくは桁曳き網3)を使用した。また,採集
た魚種については,摂餌率の日周変化も調査し,各
中に目に付いた魚類はできるかぎり升網ですくい取
魚種が摂餌を行う時間帯についても検討を加えた。
った。採集物は,5%中性ホルマリン液で約2時間固
さらに,食性調査の補足として,1991年の5月下
定し,95%エタノール中に保存した。
旬に柳浜から採集した全長約15mmのヒラメ十数個
標本は,種査定と体長測定を行い,口器の形態や
体と全長約50mmのホウボウとアナハゼ各1個体を
大きさより,ヒラメ仔稚魚の捕食が可能と思われた
底に砂を敷いた60×30×35cmの水槽で同時に飼育し,
標準体長25mm以上の魚類全てについて胃内容物を
それらの摂餌行動を観察した。なお,飼育は約1週
調査した。胃内容物の観察と計数は実体顕微袖下で
間行い,1日1回,市販の冷凍アミを餌料として与
行い,餌料生物は多毛類,カイアシ類,アミ類,端
えた。アナハゼについては,前記とほぼ同じサイズ
脚類,十七甲殻類,魚類,その他の7つに区分し,
の3個体を35×20×30cmの水槽で,個別に飼育し,
魚類については可能な限り種のレベルまで査定した。
これらにヒラメを捕食させ,摂餌後30,60,120分
なお,消化の影響で個体数や具体的な分類群が不明
後に開腹し,胃内のヒラメの様子を観察した。
な生物は,一律に消化物として扱い,今回の結果に
は含めなかった。
Table 1.
Stomach contents of fishes collected at Yanagihama Beach in 1990−1991, expressed in the nu−
merical method.
Food items (O/oN)
Examined speciMenS FrequencyXi
Species
No. SL(mm) ’(e/e) Polychaeta Copepoda Mysidacea Amphipoda Decapoda Pisces Others
22.2一 30.3
Apogon niger 1
Favonigobius gymnauchen 295
50.4
25.0一 72.6
O.7
Achanthogobius flavimanus 1
176.5
動伽励%sブψo痂。%s l
81.0
Hexagra m mos o ta kii 4
34.0一 52.9
1negocia joPonica 2
75.9− 83ユ
Pseudo blennius Percoides’ 120
28.0一 65.9
4.1
Pseudoblennius cottoides 141
Chelidonich thys sPinosus 29
RePomucenus richardsonii 28
Pa ralich thys olivaceus 38
26.1一 43.1
3.5
25.1−106.9
20.7
100
93
14
28
1
1
4
0
ゾ4
StereolePis doederleini 12
2
0げ9自
59.3−119.0
10
0ρ0
115.0
TrachinocePhalas myoPs 5
000
0
8
Plotosas lineatus 1
7 1
4
100
empty
100
30.1一 54.1
51.1一 80.3
Kareius bicoloratus 1
63.8
100
86
Heteromycteris 7’aPonica 20
38.9一 76.1
4 45
ParaPlagusia joPonica 8
55.9−115.8
75
Tafezfagu niPhobles 4
Ta kzfugu Pardaris 1
63.0一 93.4
2
97.6
*Frequency of occurrence of the specimens which had eaten the flounder.
5
りD
9臼9﹂
TarPhoPs oligolePis 12
Pleuronichthys cornutus 4
9々9ρ9ρ41り0
8.3
2
3
1
5
73
12
34
7
4
574
1 6
11
りσ
10.5
17
05
ゾ6
7 ‘ ρ9
0自
49
差4
4Qゾ[0﹁07
7
盈
1⊥4∩乙7ρ0
3.6
25.9一 71.9
U[﹂
71212£0
0
41.0−121.1
100
3
長崎大学水産学部研究報告 第73号(!993)
果
結
oo
P遡pholus
ナ
製践
個体数法による解析
9Md。nicht雌
Flounder
§pinosus
:⋮
切Oりい己
Store。le霞 doedorleini
5
0
Table 1に示した調査個体数は,七三における潜在
■
奪5。ud。bl。m軸5 porcoide5
2年間で21種628個体の魚類を調査した。1990,
1991年ともに,漁具及び漁獲i努力量はほぼ等しく,
胆胆P§
olivocous
Psoudoblemius coUoide5
壁P9南ucenus richordsonii
的なヒラメ捕食者の現存量の比を反映し(いる。
胃内容物を調査した魚類の多くは,端脚類,アミ
。
類などの小型甲殻類を捕食しており,魚類を捕食し
ていたのは10種であった(Table 1)。このうち,マ
ハゼ(.4chanthogobius fZavimanus)を除く,オキ
エソ(TrachinocePhalus myoPs),三三クチイシナ
﹂Φ℃≦9ヒΦ匡
(PseudoblenniUS cottoides),ホウボウ,ネズミゴチ
0
5
ギ(Stereolepis doederleini),ヒメハゼ(Favoni−
gobius gymnauchen),アナハゼ,アサヒアナハゼ
(RePomzacenus richardsoniz),ヒラメ,アラメガレ
イ(Ta rPhoPS oligolepis)の9種がヒラメを捕食し
ヒラメを捕食していた魚類の胃内容物は,オキエ
の
γO
0
ていた。
園
皿
㎜
國
團
Decopodo
Amphipodo
My5idoceo
Polychqotα
Othors
磁魍霞
亜92鰍§…
Fovonig。bius
9醜1・…
ソでは全てが魚類であったのに対し,他の8種では,
Fig. 1. Food composition of predators of Japa−
個体数的には甲殻類が多く,魚類の占める割合は最
nese flounder at Yanagihama Beach in
高でもヒラメの37%であった。
Scientific names of predators are shown
1990−1991, expressed in the point method.
胃内容物からのヒラメの出現頻度は,オキエソと
for each column. The part of the food item
ホウボウで約20%,ヒラメで10%,他の魚類では10%
occupied by fish is placed above the base
line, and the remainder below.
未満であった。
なお,頭長もしくは上顎長と標準体長との関係式
によって求めた被食ヒラメの復元体長の範囲は,7.9−
ゼ属の2種ではキビナゴ,ヒラスズキ(Lateolabrax
12.8mmSLであった。*
latus),ハゼ科(Gobiidae)などの仔稚魚;オオク
点数法による解析
ゼ,ホウボウであった。なお,ネズミゴチ,ヒメハ
点数法による解析結果をFig.1に示した。胃内容
ゼでは,捕食していた魚類の全てがヒラメであった。
チイシナギではハゼ科の仔魚;ホウボウではヒメハ
物中に占める魚類の割合は,オキエソ,ヒラメ,ア
ナハゼ,ホウボウ,オオクチイシナギ,アサヒアナ
摂餌率の日周変化
ハゼ,ネズミゴチ,アラメガレイ,ヒメハゼの順に
24時間採集で得られた2種のアナハゼ属,ホウボ
高く,特に前5種では胃内容物の40%以上が魚類で
ウ,ヒラメの摂餌率の日周変化をFig.2に示した。
あった。しかし,胃内容物中に占めるヒラメの割合
アナハゼ属の摂餌率は,9時を除けば,どの時間
は,上記の順とは一致せず,オキエソ,ホウボウ,
にも常に70%以上と高く,特に6−15時の間には100%
ネズミゴチ,アサヒアナハゼ,ヒラメ,オオクチイ
の個体が摂餌しており,ヒラメの捕食もこの時間帯
シナギ,アナハゼ・アラメガレイ・ヒメハゼの順に
に見られた。
高く,前2種では胃内容物の約40%がヒラメであっ
ホウボウでは,摂餌率は日の出後に100%になり,
た。
正午ごろ40%程度まで低下し,日没前には再び100%
これらの種がヒラメ以外に捕食していた魚類
は,オキエソではヒメハゼ;ヒラメではキビナゴ
集中して見られた。
(Sp ra lello ides gracilis),オキエソ,ヒメノ〉ゼ;アナハ
ヒラメでは,摂餌率のピークは13時に見られ,共
*乃一ら,未発表.
に達した。ホウボウによるヒラメの捕食は,昼間に
4
乃一,草野,植木,千田:ヒラメ着底仔稚魚を捕食する魚類の食性
●\。
→帥
かし,実際にアナハゼがヒラメを捕食する場面は観
/
察されなかった。
ヒラメは餌付が良く,飼育を開始した目から餌を
食べはじめた。投餌の際には,沈降するアミを素早
く浮き上がって摂心し,反転して水底に戻る行動を
数回繰り返した。摂餌のために浮き上がった際,ホ
tpmt bi spp.
ハUO
O
\
上がって逃避した個体で,水底を滑るようにして逃
げた個体や水槽の壁面に付着した個体は被食を免れ
た。ヒラメはホウボウが接近すると逃避行動をとっ
ひ
たが,アナハゼが接近した際にはじっとして動かな
ヒラメを捕食させ30分後に開腹したアナハゼの胃
内のヒラメは,頭部と胴部の損傷は軽微であったが,
!
。\
/
。へ
50
れたヒラメは,捕食者の接近に際し,水中へと浮き
くなることが多かった。
\幽
/●
、
ウボウやアナハゼが接近すると摂餌をせずに水底へ
反転する行動も見られた。なお,ホウボウに捕食さ
\
0︵U
o−〇一一一一〇
●
/鯉
●一。
【
一
o一一{一」凸一一▲一一・」一L占一_一幽一鴫_1」口
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/“!LNo/L:sLNo/i./LEt}w111x!isw/hthvsg1/L!gsl);tvaceu2ZOX.一
尾部と鰭条部には顕著な消化の影響が見られた。60
分後では,尾部は殆ど無く,胴部は脊椎骨が露出し,
,頭部も皮膚が透明化し,骨が透けて見えた。120分後
の個体では,既に胃内にヒラメは認められず,僅か
O o−o
O 6 12 18 O
6
Time of day (hour)
Fig. 2. Diurnal change in feeding rate of two
長約15mmであった。
察
考
Psezadoble.nnius species, Chelidonichthys
sPinosus and Paralich thys olivaceus col−
Iected at Yanagihama Beach in 1990−1991.
Solid dots indicate that the predation of
the species on flounder was observed.
に消化物があったに過ぎなかった。なお,実験時の
水温は約250Cで,アナハゼに捕食させたヒラメは全
21種の魚類の胃内容物を調査した結果,9種がヒ
ラメを捕食していた。一方,オニオコゼ(lnimichus
食いは摂餌率がピークを迎える目中と低下する夜間
に見られた。
/’aPonica),アイナメ(HexagrammOS otakiz),クロ
ウシノシタ(ParaPlag’usia joPonica),ササウシノ
シタ(飾齢。卿ッ6’67ゴsブ砂。痂66カ,クサフグ(Ta lezfag’u
飼育実験
吻励。傭s)の5種については,過去にヒラメを捕食
飼育実験では,ホウボウがヒラメを捕食する場面
していたとの報告があるが,4’8’ 9)今回の調査ではヒ
が3回観察された。ホウボウは水底を胸鰭の遊離鰭
ラメを捕食しておらず,魚食性も見られなかった
条ではい回り,それに触れられ驚いて逃げるヒラメ
(Table 1)。また,トカゲゴチ(lnegocia joPonica)
を捕食した。本種は,投餌の際には,沈降するアミ
も魚食性魚類として知られているが,17)本病の胃内
を摂餌するものの直ぐに吐き出し,水底に沈んでし
容物にもヒラメは見られなかった(Table 1)。
まったアミには興味を示さなかった。
ヒラメを捕食していた魚類には,分類学的な類縁
アナハゼは,水底に静止しているか,あるいは水
関係は見られなかった(Table 1)。しかし,微細な
底より5cm程度上方でゆっくりと円を描くように泳
生息域において共通性が見られ,これらは全て,海
ぐことが多かった。アナハゼは,アミも摂餌したが,
底に接して生活をするか,もしくは海底を少し離れ
むしろアミを摂回しようとして浮き上がるヒラメに
た二二生性の生活をする魚種であった。そして,胃
興味を示し,それを追いかける場面が何度か見られ
内容物中に占めるヒラメの割合は,前者において比
た。また,アナハゼは水底を移動するヒラメや,ホ
較的高かった。
ウボウに驚いて逃げるヒラメにも興味を示した。し
捕食者各種の現存量,胃内容物中からのヒラメの
長崎大学水産学部研究報告 第73号(1993)
5
出現頻度,胃内容物中に占めるヒラメの割合などか
Shijiki Bay, Japan. Neth. 」. Sea Res., 24, 57−
ら総合的に判断して,下浜においては,ホウボウ,
56 (1989).
オキエソ,アナハゼ属の2種,ヒラメの計5種が無
2)藤井徹生,首藤宏幸,畔田正格,田中 克二志々
視できない捕食者と考えられた。
伎湾におけるヒラメ稚仔魚の着底過程.目水誌,
飼育実験の結果からは,海底を離れ浮き上がった
55, 17−23 (1989).
ヒラメほど被食に会いやすいことが示唆された。摂
3) M. H. Amarullah, Subiyanto, T. Noichi, K.
餌率の調査では,ヒラメは昼間によく餌を取ってお
Shigemitsu, Y. Tamamoto and T. Senta:
り,この時間帯には海底を離れる機会も多くなるも
Settlement of larval Japanese flounder
のと思われた。また,ヒラメが摂餌を行っている時
(Paralichthys olivaceus) along Yanagihama
間帯には捕食者のアナハゼ属,ホウボウの摂餌率も
Beach, Nagas aki Prefecture. Bull. Fac. Fish.
高くなっていた。以上のことより,ヒラメの被食が
Nagasaki Univ., (70), 7−12 (1991).
昼間に集中的に見られたのは,ヒラメが被食されや
4)鳥取県栽培漁業試験場(編):昭和55−59年度放流
すい行動をとる時間帯と捕食者の摂餌活動が活発に
技術開発総括報告書(ヒラメ班).1985,55pp.
なる時間帯が一致することによるものと思われた。(Fig.
5)富山県水産試験場,富山県栽培漁業センター
2)o
(編):昭和56年度放流技術開発報告書(ヒラメ
なお,Tanaka et al.1)は,飼育実験により,飢餓
班).1983,118pp.
状態に陥ったヒラメは,着底後2日以内であれば再
6)鳥取県栽培漁業試験場(編)二昭和59年度放流技
び浮遊生活にもどることを報告し,飢餓と連動した
術開発報告書,ヒラメ班.1985,273pp.
被食の可能性を示唆している。
7)山形県水産試験場(編):昭和60年度放流技術開
今回の調査において,ヒラメを捕食していた9種
発報告書,日本海ブロック,ヒラメ班.1986,
の中には,ネズミゴチ,ヒメハゼのように本来は底
204pp.
生無脊椎動物を捕食する種までもが含まれていた。
8)新潟県栽培漁業センター(編):昭和63年度放流
また,ウグイ(Tribolodon hakonensis),シロギス
技術開発報告書,日本海ブロック,ヒラメ班.
(SillagO 7’aPonica),クロダイ (・4. canthoPagrUS
1989, 316pp.
schlegelz)などの魚類が放流直後のヒラメ種苗を大量
9)島根県栽培漁業センター(編):昭和61年度放流
に捕食していたとの報告も見られる。7)これらのこと
技術開発報告書,日本海ブロック,ヒラメ班,
は,ヒラメ仔稚魚が高密度に存在する場所では,魚
その1.1987,235pp.
食性魚類のみならず,底生無脊椎動物食性や雑食性
10)南 卓志:日本産カレイ目魚類幼稚下魚の被食
の魚類も一時的にヒラメ仔稚魚の捕食者となりうる
事例.日二二報告,(36),39−47(1986).
可能性を示唆している。
11)大分県水産試験場(編):昭和61年度放流技術開
謝
発報告書(ヒラメ班),瀬戸内・九州海域.1987,
辞
38十33十57十26十29pp.
12)青森県水産試験場(編):昭和62年度放流技術開
本報を終えるに当たり,柳浜での調査に便宜を図
発報告書,日本海ブロック,ヒラメ班.1988,
って頂いた大瀬戸町役場の玉本泰之氏,採集ならび
236pp.
に採集物の処理にご’協力頂いた長崎大学水産学部水
13)新潟県栽培漁業センター(編):昭和63年度放流
産増殖学研究室の学生諸氏(当時)に謹んで感謝の
技術開発報告書,日本海ブロック,ヒラメ班.
意を表す。
1989, 316pp.
14)後藤常夫,首藤宏幸,富山 実,田中 克二志々
引 用 文 献
伎湾におけるヒラメ稚仔魚の着底時期.日水誌,
55, 9−16 (1989).
1) M. Tanaka, T. Goto, M. Tomiyama, and H.
15)乃一哲久,神原利和,水戸 鼓,坂本史子,木
Sudo: lmmigration, settlement and mor−
村基文,千田哲資:長崎県柳浜におけるオオク
tality of flounder (Paralichthys olivaceus)
チイシナギ(スズキ科)稚魚の出現と生態.長
larvae and juveniles in a nursery ground,
崎大学水産学部研究報告,(68),29−34(1990).
6 乃一,草野,植木,千田:ヒラメ着底仔稚魚を捕食する魚類の食性
16) T. Senta, F. Sakamoto, T. Noichi and T.
17)松宮義晴,木下 泉,岡 正雄:志々伎、湾にお
Kanbara: The R−H II push−net and quad−
ける魚食性底魚類の胃内容物調査.西水研研報,
rat−net, gears for studying . distribution
(54), 333−342 (1980).
patterns of juvenile flatfishes along the
beach. Bzall. Fac. Fish. Nagasaki Univ., (68),
35−41 (1990).