2.6.4 薬物動態試験の概要文 Page 18 of 30 Nihon Schering K.K. 111 In-イブリツモマブ チウキセタンの腫瘍中濃度 参照項目:4.2.2.3.4 A00884 Daudi B 細胞腫瘍を移植した担がんマウスに 111In-イブリツモマブ チウキセタン 1μg(0.56MBq、 15μCi)を単回静脈内投与し、腫瘍、正常組織、屍体、尿及び糞中の放射能を測定した(表 2.6.4- 11)。 血液中の放射能濃度が最も高く、次いで心臓、肺、腎臓、肝臓、脾臓等の放射能濃度が高値を示し た。これらの組織中放射能は、血液中放射能の低下に伴い経時的に減少した。一方、腫瘍細胞中の放 射能濃度は、投与 4 時間後には 2.3%ID/g と他の組織と比較して低値であったが、経時的に上昇し、 投与 48 時間後の腫瘍組織には、他の組織と比較して高い放射能(7%ID/g)が認められた。以上の結 果より、CD20 陽性の DaudiB 細胞腫瘍への 111In-イブリツモマブ チウキセタンの選択的な集積が確 認された。 表 2.6.4- 11 Daudi B 細胞腫瘍を移植した雄マウスにおける 111In-イブリツモマブ チウキセタン の分布 血液 腫瘍 脳 心臓 肺 肝臓 脾臓 腎臓 胃 小腸 大腸 精巣 大腿骨(含骨髄) 皮膚 筋肉 尾 4 20.8 2.3 0.8 8.4 9.5 6.4 4.1 7.7 2.7 2.6 2.7 2.3 1.5 2.1 1.9 8.2 放射能濃度(%ID/g) 時間(h) 24 16.9 6.3 0.6 5.6 7.2 5.3 5.1 6.2 4.9 1.8 1.4 1.9 1.0 5.6 5.2 3.3 48 13.4 7.0 1.3 4.7 4.2 4.9 4.4 5.3 2.9 2.1 2.4 1.8 3.1 2.3 4.1 1.7 組織合計 33.4 26.0 29.1 屍体 尿 糞 洗浄液 回収率 21.7 1.2 0.2 56.5 31.9 1.8 2.9 62.7 18.0 14.9 6.1 0.3 68.3 組織及び排泄物 3 例の平均値 組織合計、屍体、尿、糞及び洗浄液は投与量に対する%を示す。 2.6.4 薬物動態試験の概要文 Page 19 of 30 Nihon Schering K.K. 90 Y-及び 111In-イブリツモマブ チウキセタンの組織分布の比較 雄マウスに 90Y-又は 111In-イブリツモマブ チウキセタンを単回静脈内投与したとき、いずれの場 合にも血液中放射能濃度が最も高く、次いで、肺、肝臓、脾臓、腎臓及び心臓の放射能濃度が高値を 示した。これらの組織中放射能濃度は、血液中放射能濃度の低下に伴い、経時的に低下した。筋肉、 消化管、脳、精巣の放射能濃度は相対的に低かった。また、遊離したイットリウム及びインジウムの 集積が懸念される大腿骨及び骨髄の放射能濃度は、低いものであった。標識修飾抗体投与後のマウス における正常組織への放射能の分布は、標識核種間で差は認められなかった。 CD20 陽性の DaudiB 細胞腫瘍を移植した担がんマウスにおいて、腫瘍組織への 111In-イブリツモマ ブ チウキセタンの選択的な集積が確認された。一方、90Y-イブリツモマブ チウキセタンを用いた 担がん動物における分布試験は実施されていないため、90Y-イブリツモマブ チウキセタンの腫瘍へ の集積は検討されていないものの、90Y-及び 111In-標識修飾抗体間で CD20 抗原への結合性は同等であ ること(2.6.2.2.1.1.1 CD20 陽性細胞株を用いた結合特性試験 参照)、並びに CD20 陽性腫瘍担 がんマウスにおいて 90Y-イブリツモマブ チウキセタン単独投与時に抗腫瘍効果が示されているこ とから(2.6.2.2.2.1 B 細胞性リンパ腫移植マウスにおける 90Y-イブリツモマブ チウキセタンの 抗腫瘍効果 参照)、111In-イブリツモマブ チウキセタンと同様に 90Y-イブリツモマブ チウキセ タンについても腫瘍選択的に集積するものと推察される。腫瘍特異的に発現する糖たん白に対するマ ウスモノクローナル抗体を、キレート剤を用いてイットリウム 88 及び 111In で放射性標識し、担がん マウスに単回静脈内投与した Roselli M らの検討 1)においても、イットリウム及びインジウムの標 識核種間で同様の腫瘍への集積が観察されている。 2.6.4 薬物動態試験の概要文 Page 20 of 30 Nihon Schering K.K. 2.6.4.4.1.3 ヒト組織における吸収線量予測 参照項目:4.2.2.3.1 A00651 4.2.2.3.3 A00650 放射性標識したイブリツモマブ チウキセタン(CHO 細胞由来)を雄マウスに単回静脈内投与した ときの放射能分布試験の結果から、Medical Internal Radiation Dose(MIRD)法を用いて、ヒト組 織における吸収線量を推定した。その結果、推定吸収線量は下部及び上部大腸壁で高値を示し、それ ぞれ 1700.8 及び 731.8cGy であったが、その他の組織では 250cGy 以下であった。骨及び骨髄におけ る吸収線量は 60cGy 以下であった(表 2.6.4- 12)。 表 2.6.4- 12 マウスにおける 90Y-及び 111In-イブリツモマブ チウキセタン分布結果より予測した ヒト組織の推定吸収線量 組織 推定吸収線量 イットリウム-90(A00651) インジウム-111(A00650) cGy/1200MBq(32mCi1)) 脳 甲状腺 胸腺 胸部 心臓壁 肺 肝臓 脾臓 膵臓 腎臓 副腎 胃 胆嚢壁 小腸 上部大腸壁 下部大腸壁 膀胱壁 精巣 卵巣 子宮 赤色骨髄 骨表面 皮膚 筋肉 全身 1) 90 2) 111 3) 90 Y-イブリツモマブ In-イブリツモマブ Y-イブリツモマブ cGy/130MBq(3.5mCi2)) 15.6 63.6 63.6 63.6 120.0 216.0 132.0 192.0 63.6 132.0 63.6 63.6 63.6 168.0 720.0 1680.0 78.0 74.4 63.6 63.6 51.6 43.2 63.6 63.6 69.6 0.6 1.4 1.6 1.2 2.3 2.6 2.9 2.6 2.3 2.6 2.1 2.3 3.3 6.0 11.8 20.8 2.7 1.6 5.3 3.4 2.2 2.7 1.1 1.8 2.0 チウキセタンの最大臨床投与量 チウキセタンの最大臨床投与量 チウキセタン及び 111In-イブリツモマブ チウキセタンの合計 合計 cGy3) 16.2 65.0 65.2 64.8 122.3 218.6 134.9 194.6 65.9 134.6 65.7 65.9 66.9 174.0 731.8 1700.8 80.7 76.0 68.9 67.0 53.8 45.9 64.7 65.4 71.6 2.6.4 薬物動態試験の概要文 Page 21 of 30 Nihon Schering K.K. 2.6.4.4.2 マウスハイブリドーマ由来抗体を用いた標識修飾抗体の分布試験 以下の試験では臨床において用いられる投与法と同様に、放射性標識体調製後に HPLC 等による精 製を行わず投与に用いた。 2.6.4.4.2.1 90 Y-イブリツモマブ チウキセタンの分布 参照項目:4.2.2.3.5 A00901 90 Y-イブリツモマブ チウキセタン 0.4μg(185kBq、5μCi)をマウスに単回静脈内投与し、組織、 尿及び糞中放射能濃度を測定した(表 2.6.4- 13)。 血液中の放射能は投与 1 時間後の 44%ID/g から、投与 72 時間後にはおよそ 16%ID/g まで減少し た。投与 24 時間後以降の心臓、腎臓、脾臓及び皮膚の放射能濃度は、2.3~7.4%ID/g を示し、ほぼ 一定であった。骨の放射能濃度は低く、3.5%ID/g 以下であった。更に、この結果は、標識修飾抗体 調製後の遊離 90Y 量が無視できる程度であり、またマウス体内においても 90Y の遊離がほとんどない ことを示唆するものと考えられた。 表 2.6.4- 13 雄マウスにおける 90Y-イブリツモマブ チウキセタンの分布 組織及び排泄物 1 44.11±5.26 7.83±3.14 11.81±1.16 11.18±3.33 10.92±1.84 7.91±1.35 1.02±0.14 3.54±0.49 1.37±0.43 0.47±0.07 N.D. N.D. 血液 心臓 肺 肝臓 脾臓 腎臓 腸管 大腿骨 皮膚 筋肉 尿 糞 放射能濃度(%ID/g) 時間(h) 24 48 19.77±2.43 14.96±5.76 4.44±0.55 3.99±1.44 8.76±1.60 8.41±1.58 8.61±2.72 6.13±3.22 6.75±1.28 6.05±2.37 5.02±0.52 3.99±1.62 0.73±0.09 0.65±0.30 2.24±0.30 2.07±0.84 3.33±0.75 2.30±0.70 0.69±0.01 0.54±0.19 2.31 2.83 1.23 2.06 72 15.88±4.82 4.16±1.27 10.66±3.79 7.26±1.79 7.37±2.34 4.79±1.03 0.79±0.18 2.58±0.51 3.09±0.81 0.67±0.13 3.56 2.82 5 例の平均値±標準偏差 尿及び糞はプールした試料を用いた。 N.D. (検出されず) 放射能の回収率は 57~95%の範囲であった。 2.6.4.4.2.2 111 In-イブリツモマブ チウキセタンの分布 参照項目:4.2.2.3.6 A00652 111 In-イブリツモマブ チウキセタン 4μg(370kBq、10μCi)を雄マウスに単回静脈内投与し、組 織、尿及び糞中放射能濃度を測定した(表 2.6.4- 14)。 マウスハイブリドーマ由来の抗体を使用した 111In-イブリツモマブ チウキセタンの組織中放射 能濃度の分布は、CHO 細胞由来の抗体を使用した 111In-イブリツモマブ チウキセタンの分布(表 2.6.4 薬物動態試験の概要文 Page 22 of 30 Nihon Schering K.K. 2.6.4- 10)とほぼ同じ結果であり、イブリツモマブの由来によらず、111In-イブリツモマブ チウキ セタンの分布に差はなかった。 表 2.6.4- 14 雄マウスにおける 111In-イブリツモマブ チウキセタンの分布 組織及び排泄物 1 42.1±3.5 1.0±0.2 11.3±2.7 19.4±8.0 12.9±2.8 11.7±3.2 10.7±1.8 3.2±2.0 3.6±0.7 3.7±1.1 3.8±2.3 4.3±1.0 4.2±0.9 1.0±0.2 0.5 0.1 血液 脳 心臓 肺 肝臓 脾臓 腎臓 胃 小腸 1 小腸 2 大腸 精巣 大腿骨(含骨髄) 筋肉 尿 糞 4 25.0±1.1 1.0±0.1 10.0±0.7 17.2±0.9 7.5±0.4 9.0±0.3 7.5±0.4 1.6±0.2 2.3±0.2 3.1±0.1 2.1±0.1 4.9±0.2 3.2±0.2 2.4±0.5 1.1 0.9 放射能濃度(%ID/g) 時間(h) 24 48 21.1±2.1 26.4±1.7 0.7±0.3 0.9±0.3 5.3±0.3 7.8±0.8 11.7±1.2 16.4±3.0 7.3±0.7 11.5±2.0 7.5±1.6 13.5±2.7 6.3±1.1 9.5±1.9 2.6±0.7 3.2±0.6 2.6±0.6 3.7±0.6 2.5±0.2 3.6±0.6 4.4±1.0 4.3±1.0 3.2±0.7 4.9±0.7 3.2±0.8 5.1±0.8 1.3±0.5 1.9±0.3 0.9 5.5 4.9 6.6 72 21.5±3.3 0.6±0.1 7.5±2.0 17.4±3.6 10.9±2.5 12.6±3.4 7.9±1.4 3.3±0.8 3.6±0.7 3.6±0.4 9.2±2.3 4.1±0.8 4.7±1.0 1.7±0.5 4.4 8.5 6 例の平均値±標準偏差 尿及び糞はプールした試料を用いた。 放射能の回収率は 71~95%の範囲であった。 2.6.4.4.2.3 ヒト組織に対する線量予測 参照項目:4.2.2.3.5 A00901 4.2.2.3.6 A00652 放射性標識したイブリツモマブ チウキセタン(マウスハイブリドーマ由来)を雄マウスに単回静 脈内投与したときの放射能の分布試験の結果から、MIRD 法を用いて、ヒト組織における吸収線量を 推定した。ヒトの推定吸収線量はすべての組織及び全身で 234.8cGy 以下であった。骨及び骨髄にお ける吸収線量は 145.8cGy 以下であった(表 2.6.4- 15)。 臨床で用いられる方法で放射性標識したイブリツモマブ チウキセタン (マウスハイブリドーマ由 来)のマウス分布試験結果から予測したヒトにおける推定吸収線量は、下部及び上部大腸壁で CHO 細胞由来のイブリツモマブ チウキセタンを用いた分布試験結果から推定した吸収線量と比較して 低い値を示したが、これは、消化管の吸収線量評価に寄与する糞中排泄率を過小評価したためであっ た(2.6.4.4.1.3 ヒト組織に対する線量予測 参照)。その他の組織のヒト推定吸収線量に明らか な差は認められなかったことから、イブリツモマブの由来はヒトにおける推定吸収線量に影響を及ぼ さないと考えられた。 2.6.4 薬物動態試験の概要文 Page 23 of 30 Nihon Schering K.K. 表 2.6.4- 15 マウスにおける 90Y-及び 111In-イブリツモマブ チウキセタン分布より予測したヒト 組織の推定吸収線量 組織 推定吸収線量 イットリウム-90(A00901) インジウム-111(A00652) cGy/1200MBq(32mCi1)) 血液 脳 甲状腺 胸腺 胸部 胆嚢 心臓 肺 肝臓 脾臓 膵臓 腎臓 副腎 胃壁 小腸* 上部大腸壁* 下部大腸壁* 膀胱壁 精巣 卵巣 子宮 赤色骨髄 黄色骨髄 骨表面 皮質骨 軟骨 骨梁 その他の骨 皮膚 筋肉 脂肪 全身 cGy/130MBq(3.5mCi2)) 85.9 68.4 17.2 85.9 70.1 231.9 161.2 17.2 227.7 17.2 17.2 37.6 53.8 77.2 17.2 17.2 17.2 25.0 144.3 68.1 47.7 47.7 47.7 47.7 214.1 85.9 85.9 57.1 0.5 1.2 1.4 1.0 2.0 2.5 3.0 2.9 2.6 1.9 2.2 1.8 1.5 1.9 2.6 3.9 1.8 1.3 1.9 1.7 1.4 2.5 0.8 1.2 1.3 合計 cGy3) 68.9 18.4 88.4 73.0 234.8 163.8 19.1 229.9 19.0 18.7 39.5 56.4 81.1 18.9 18.5 19.1 26.7 145.8 214.8 87.1 58.4 1) 90 2) 111 3) 90 * 糞中総排泄率の推定値を 10%としたため、表 2.6.4-12(それぞれ 90Y:45%, 111In:76%を使用)と比較して過小評価 されている。 - 報告書中に記載なし又は該当しない。 Y-イブリツモマブ In-イブリツモマブ Y-イブリツモマブ チウキセタンの最大臨床投与量 チウキセタンの最大臨床投与量 チウキセタン及び 111In-イブリツモマブ チウキセタンの合計 2.6.4 薬物動態試験の概要文 Page 24 of 30 Nihon Schering K.K. 2.6.4.4.3 その他の分布試験 参照項目:4.2.1.1.1 A00890 マウスハイブリドーマにより産生されたイブリツモマブを用いたマウスにおける 3 つの分布試験 結果を以下に要約する。なお、これらの試験で使用したイブリツモマブ チウキセタンは、放射性標 識した後、HPLC により精製した。 90 Y-イブリツモマブ チウキセタン 0.08μg(37kBq、1μCi)を雌マウスに単回静脈内投与した。3 ~5 例のマウスから、投与 1、24、48 及び 72 時間後に組織、尿及び糞を採取し、放射能濃度を測定 した。マウスの組織中放射能濃度から、ヒト(体重 70kg を仮定)における吸収線量を推定した結果、 90 Y-イブリツモマブ チウキセタンによる吸収線量は少なかった。大腿骨における放射能濃度は低値 を示し、マウス体内で修飾抗体からの 90Y の遊離が少ないことも示唆された。投与 72 時間後におけ る尿及び糞中の排泄率はそれぞれ 3.0 及び 11.1%であった(雄マウスにおける最終相の消失半減期 は 8.75 日と算出された)。放射能の回収率は 79~95%であった。 111 In-イブリツモマブ チウキセタン 0.5μg(41kBq、1.1μCi)を雄マウスに単回静脈内投与し、 組織中放射能濃度を測定した。ヒトにおける被曝線量を予測した結果、正常組織における 111In-イブ リツモマブ チウキセタンによる被曝は少ないことが示された。大腿骨における放射能濃度は低く、 マウス体内でイブリツモマブ チウキセタンより 111In が遊離することはほとんどないことも示唆さ れた。投与 72 時間後における尿及び糞中の排泄率はそれぞれ 2.5 及び 11.5%であった。放射能の回 収率は 87~99%であった。 Ramos B リンパ腫の担がんマウス(雌)に 111In-イブリツモマブ チウキセタン 9μg(888kBq、24 μCi)を単回静脈内投与した。血液中放射能濃度は 0 時間から投与 72 時間後までに、30 から 13%ID/g に減少したが、腫瘍中の放射能濃度は、約 1 から 13%ID/g まで経時的に増加し、イブリツモマブ チ ウキセタンは腫瘍中に集積した。対照的に正常組織では放射性標識したイブリツモマブ チウキセタ ン濃度は経時的に減少し、試験終了時には 1.3~6.0%ID/g であった。 2.6.4.4.4 90 血球移行 Y-イブリツモマブ チウキセタンを雄マウスに単回静脈内投与したとき、血清中及び血液中放射 能濃度の比は、1.8~3.1 であったことから、放射能は主に血清中に存在し、90Y-又は 111In-イブリツ モマブ チウキセタンの赤血球への移行はほとんどないものと考えられた(表2.6.4- 8及び表2.6.4- 9) 。 2.6.4 薬物動態試験の概要文 Page 25 of 30 Nihon Schering K.K. 2.6.4.5 2.6.4.5.1 代謝 In vitro における安定性 In vitro における 90Y 及び 111In-イブリツモマブ チウキセタンのヒト血清中における安定性を検 討した。放射線及び/又は代謝による分解は SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)及 び薄層クロマトグラフィー(TLC)により分析した。 ヒト血清に 90Y-イブリツモマブ チウキセタンを添加し、37℃、5% CO2 存在下で 96 時間インキュ ベートしたところ、90Y-イブリツモマブ チウキセタンの減少は 4%未満であった。90Y-イブリツモマ ブ チウキセタンの CD20 陽性細胞との結合率は、96 時間後に 9%未満のわずかな減少が認められた (4.2.2.4.1 A00617 参照)。 臨床施設における標識化法と同様の方法で標識された 90Y-イブリツモマブ チウキセタン(HPLC 精製なし)をヒト血清に添加し、37℃で 72 時間インキュベートしたところ、90Y-イブリツモマブ チ ウキセタンの減少は認められなかった(4.2.2.4.2 A00619 参照)。 ヒト血清に 111In-又は 90Y-イブリツモマブ チウキセタンを添加し、37℃で 96 時間インキュベー トしたところ、いずれの放射性標識体についても減少は認められなかった(4.2.1.1.1 A00890 参 照)。 2.6.4 薬物動態試験の概要文 Page 26 of 30 Nihon Schering K.K. In vivo における安定性 2.6.4.5.2 90 Y-イブリツモマブ チウキセタン 5μg(0.56MBq、15μCi)をマウスに単回静脈内投与したとき、 投与 24 時間後の血清中に未変化体以外に代謝物は認められなかった(図 2.6.4- 4)。その後、投与 48 時間後以降の血清中にはいくつかの代謝物が認められ、これらは経時的に増加傾向を示したが、 未変化体と比較するとわずかであり、血清中の放射能のほとんどは未変化体であった(4.2.2.4.3 A00651 参照)。 時間(h) 1 図 2.6.4- 4 4 24 標準品 90 48 72 標準品 240 Y-イブリツモマブ チウキセタンを投与したマウス血清のオートラジオグラム 所定の時間に採取した試料を Tris-glycine 緩衝液の 4~20%グラジエントゲルで SDS-PAGE を実施した。2 つの別 途実施した実験結果を示した。電気泳動後、 フィルムを用いたオートラジオグラフィに供した。左のフ ィルム(1~72 時間)は 12 時間感光し、右のフィルム(240 時間)は 5 日間感光した。240 時間の試料は 10 及び 20 μL の二容量で電気泳動した。各々の実験で使用した標準品はマウスへの静脈内投与用に調製した標識修飾抗体であ る。 2.6.4 薬物動態試験の概要文 Page 27 of 30 Nihon Schering K.K. 111 In-イブリツモマブ チウキセタン 5μg(0.56MBq、15μCi)をマウスに単回静脈内投与したと き、投与 10 日後までの血清中に、未変化体以外の代謝物は認められなかった(図 2.6.4- 5、4.2.2.4.4 A00650 参照)。 120 図 2.6.4- 5 111 時間(h) 標準品 72 48 In-イブリツモマブ チウキセタン投与後のマウス血清のオートラジオグラム 所定の時間に採取した試料を Tris-glycine 緩衝液の 4~20%グラジエントゲルで SDS-PAGE を実 施した。電気泳動後、 フィルムを用いたオートラジオグラフィに供した。フィルムは 7 時間感光した。標準品は静脈内投与用に調製した標識修飾抗体。 2.6.4 薬物動態試験の概要文 Page 28 of 30 Nihon Schering K.K. 2.6.4.6 排泄 雄マウスに 90Y-イブリツモマブ チウキセタン 5μg(0.56MBq、15μCi)を単回静脈内投与したと きの放射能の排泄について検討した(4.2.2.5.1 A00651 参照)。投与 24 時間後までに、投与した 放射能の 6.6%が、投与 10 日後までには投与した放射能の 48%が、尿及び糞中に排泄された。 雄マウスに 111In-イブリツモマブ チウキセタン 5μg(0.56MBq、15μCi)を単回静脈内投与した ときの放射能の排泄について検討した(4.2.2.5.2 A00650 参照)。投与 24 時間後までに、投与し た放射能の 5.6%が、投与 10 日後までには投与した放射能の 37%が、尿及び糞中に排泄された。 2.6.4.7 薬物動態学的薬物相互作用 リツキシマブとの相互作用については本文中(2.6.4.3.1 サル 参照)に記載。 その他に該当する試験は実施していない。 2.6.4.8 その他の薬物動態試験 該当する試験は実施していない。 2.6.4 薬物動態試験の概要文 Page 29 of 30 Nihon Schering K.K. 2.6.4.9 90 考察及び結論 Y-及び 111In-イブリツモマブ チウキセタンの体内動態について検討した。 ゼヴァリン療法において標的となる CD20 抗原を B 細胞上に有するサルを用いて、リツキシマブ前 投与時における標識修飾抗体の薬物動態を評価した。リツキシマブの併用により、標識修飾抗体(89Yイブリツモマブ チウキセタン)の血清中濃度は上昇し、消失半減期の 0.72 日から 3.07 日への延長 及び AUC の顕著な増大が認められた。これは、リツキシマブが血液中、脾臓、骨髄並びにリンパ節に 存在する B 細胞抗原と結合し、89Y-イブリツモマブ チウキセタンと結合部位を競合したためと考え られる。ヒトにおいてリツキシマブを併用した場合においても、同様に 90Y-又は 111In-イブリツモマ ブ チウキセタンの消失半減期の延長及び AUC の増大が予測される。 90 Y-イブリツモマブ チウキセタンをラットに単回静脈内投与したとき、血清中放射能濃度の消失 半減期、分布容積及びクリアランスは、非標識のイブリツモマブ チウキセタン単回静脈内投与時の 対応するパラメータと差異はなかったものの、両試験では用いた動物の性、投与量が異なったことか ら、放射性標識が修飾抗体の薬物動態に及ぼす影響は明らかではない。 90 Y-/111In-イブリツモマブ チウキセタンをマウスに単回静脈内投与したところ、放射能の組織分 布に標識核種による差は見られなかった。投与直後の放射能濃度は、血液、肺、脾臓、心臓、腎臓及 び肝臓などで高値を示したものの、ほとんどの組織中放射能濃度は、血液中放射能濃度の消失に伴い 経時的に減少し、異常な蓄積を示す組織は認められなかった。大腿骨の放射能濃度は低値に推移した ことから、標識修飾抗体から遊離した 90Y 又は 111In が骨又は骨髄に高濃度で集積する可能性は低いも のと考えられた。一方、111In-イブリツモマブ チウキセタンをマウスに単回静脈内投与投与したと き、マウスに移植された Daudi B 細胞腫瘍(CD20 陽性)中の放射能濃度は、正常組織とは異なり経 時的に上昇したことから、イブリツモマブ チウキセタンに腫瘍組織選択的な集積性が確認された。 マウス分布試験の結果より、MIRD 法を用いてヒト正常組織における吸収線量を予測したところ、 いずれの核種についても骨及び骨髄における吸収線量はごくわずかであり、臨床予定用量を投与した ときの 90Y-イブリツモマブ チウキセタンのヒト全身吸収線量は約 70cGy と推定された。また、シン チグラフィに使用される 111In-イブリツモマブ チウキセタンの全身吸収線量は、2cGy と推定された。 急性放射線症による確定的な影響では、1Gy(100cGy)の全身吸収線量で 10%程度に放射線宿酔が現 れるとされているが、マウス分布試験の結果から予測したヒトでの全身吸収線量はこれを超えるもの ではなかった。一方、ヒトにおける組織別の吸収線量の安全限度は、放射線による感受性の高い骨髄 では 300cGy、その他の正常組織では 2000cGy とされており、全身に対する吸収線量の安全限度は、 感受性の高い組織に依存することから 200cGy とされている 2,3,4)。したがって、マウス分布試験の結 果から推定したヒト各組織別の吸収線量は、これら組織別の安全限度の範囲内であると考えられた。 90 Y-又は 111In-イブリツモマブ チウキセタンをマウスに静脈内投与したとき、いずれの標識修飾 抗体についても血清中の放射能のほとんどは放射性標識イブリツモマブ チウキセタンそのものに 由来するものであった。90Y-イブリツモマブ チウキセタンは、投与 10 日後までに、投与した放射 能の 48%が尿及び糞中に排泄された。111In-イブリツモマブ チウキセタンは投与 10 日後までに、 投与した放射能の 37%が尿及び糞中に排泄された。以上のように、両標識体について、投与された 放射能のおよそ 40~50%相当が投与 10 日目までに尿糞中に認められ、排泄は緩慢であった。しかし ながら、90Y 及び 111In の壊変半減期は約 2.6 及び 2.8 日と短いため、投与 10 日目に体内に残存する 放射能は投与放射能量の 5%以下と推定される。 2.6.4 薬物動態試験の概要文 Page 30 of 30 Nihon Schering K.K. イブリツモマブは、マウスモノクローナル抗体であるため、マウス体内では免疫グロブリンと同じ 代謝経路により、アミノ酸に分解されると推察される。その後、これらのアミノ酸は生体内における 代謝回転に取り込まれるが、一部は尿素に代謝され尿中に排泄されると考えられる5)。一方、モノク ローナル抗体と共有結合している MX-DTPA は 90Y 又は 111In と強固にキレートを形成していることから、 マウスの尿糞中へ排泄された放射能は MX-DTPA と 90Y 若しくは 111In との複合体量を反映しているもの と考えられる。Kinuya らは MX-DTPA を用いて 111In 標識したモノクローナル抗体をマウスに投与し、 放射能を指標に代謝物の検索をした結果、胆汁中に排泄された放射能の 28%が代謝物であり、残り は未変化体であったが、尿中放射能はすべて代謝物由来のものであったとしている6)。したがって、 90 Y-又は 111In-イブリツモマブ チウキセタン投与後にマウス糞中に排泄された放射能は未変化体又 は代謝物(MX-DTPA と 90Y/111In の複合体又はこれに小ペプチド/アミノ酸が付加したものと考えられ る)、尿中の放射能は代謝物として排泄されているものと推察される。 以上、サル、ラット及びマウスを用いた試験より、以下のことが明らかとなった。リツキシマブの 前投与により、静脈内投与後の血清中標識イブリツモマブ チウキセタンは、単独投与時に比して濃 度の上昇及び消失の遅延が認められた。投与後組織に分布した標識イブリツモマブ チウキセタンは、 血液中濃度の減少に伴い経時的に減少し、尿及び糞中に緩慢に排泄された。骨及び骨髄への分布は低 値であったが、CD20 陽性腫瘍組織には選択的な集積が認められ、111In-イブリツモマブ チウキセタ ンのシンチグラフィによる生体内分布の確認についての有用性、並びに 90Y-イブリツモマブ チウキ セタンの抗腫瘍効果は、イブリツモマブの CD20 陽性細胞への選択的な結合に基づくものであること を支持する結果が得られた。また、マウスにおける分布試験結果から、MIRD 法により推定したヒト における吸収線量は、すべての組織及び全身において許容範囲内であり、骨又は骨髄における放射線 被曝は少ないことが示唆された。 2.6.4.10 図表 図表は本文中に適切に配置した。 参考文献一覧 1) Roselli M et al., J Nucl Med 1989:30:672-682 2) DeNardo GL et al., Nucl Med Commun 1993:14:587-595 3) Press OW et al., N Engl J Med 1993:329:1219-1224 4) Emami B et al., Int J Radiat Oncol Biol Phys 1991:21:109-122 5) 上代淑人監訳 ハーパー・生化学 24 版 31 章 丸善株式会社、1997:318-329 6) Kinuya S et al., J of Nucl Med 1994:35:1851-1857 2.6.5 Nihon Schering K.K. 2.6.5 薬物動態試験概要表 薬物動態試験概要表 2.6.5.1 薬物動態試験: Nihon Schering K.K. 2.6.5.1 薬物動態試験: 一覧表 一覧表 2.6.5.1 薬物動態試験: 一覧表 Page 1 of Nihon Schering K.K. 2.6.5.1 薬物動態試験: 一覧表 被験物質: イブリツモマブ チウキセタン 試験の種類 吸収 単回投与後の血清中濃度/ 単独及びリツキシマブ併用 単回投与後の血清中濃度 単回投与後の血清中濃度 分布 単回投与後の分布 単回投与後の分布 単回投与後の分布 単回投与後の分布 単回投与後の分布 単回投与後の分布 各試験の投与物質 (抗体の由来) 89 Y-イブリツモマブ チウキセタン (CHO 細胞) 90 Y-イブリツモマブ チウキセタン (CHO 細胞) イブリツモマブ チウキセタン (CHO 細胞) 90 Y-イブリツモマブ チウキセタン (CHO 細胞) 90 Y-イブリツモマブ チウキセタン (CHO 細胞) 111 In-イブリツモマブ チウキセタン (CHO 細胞) 111 In-イブリツモマブ チウキセタン (CHO 細胞) 90 Y-イブリツモマブ チウキセタン (ハイブリドーマ) 111 In-イブリツモマブ チウキセタン (ハイブリドーマ) 試験系 投与方法 実施施設 雌雄 静脈内 カニクイザル 雌ラット 静脈内 雄ラット 静脈内 雄マウス 静脈内 雄マウス 静脈内 雄マウス 静脈内 雄担癌マウス 静脈内 マウス 静脈内 雄マウス 静脈内 1) 記載箇所 報告書番号 試験番号 Vol./ Section Biogen Idec 社 A00653 (米国) Biogen Idec 社 A00018 (米国) Biogen Idec 社 A01375 (米国) Biogen Idec 社 (米国) Biogen Idec 社 (米国) Biogen Idec 社 (米国) Biogen Idec 社 (米国) Biogen Idec 社 (米国) Biogen Idec 社 (米国) 1/4.2.2.2.1 1/4.2.2.2.2 1/4.2.2.2.3 A00651 2/4.2.2.3.1 A02459 2/4.2.2.3.2 A00650 2/4.2.2.3.3 A00884 2/4.2.2.3.4 A00901 2/4.2.2.3.5 A00652 2/4.2.2.3.6 2 2.6.5.1 薬物動態試験: 一覧表 Page 2 of Nihon Schering K.K. 2.6.5.1 被験物質: 薬物動態試験: 一覧表(続き) イブリツモマブ チウキセタン 試験の種類 代謝 安定性 安定性 安定性 安定性 排泄 単回投与後の尿糞中排泄 単回投与後の尿糞中排泄 各試験の投与物質 (抗体の由来) 90 Y-イブリツモマブ チウキセタン (--) 90 Y-イブリツモマブ チウキセタン (--) 90 Y-イブリツモマブ チウキセタン (CHO 細胞) 111 In-イブリツモマブ チウキセタン (CHO 細胞) 試験系 投与方法 実施施設 in vitro、 - ヒト血清 in vitro、 - ヒト血清 雄マウス 静脈内 雄マウス 静脈内 Y-イブリツモマブ チウキセタン 雄マウス (CHO 細胞) 111 In-イブリツモマブ チウキセタン 雄マウス (CHO 細胞) 静脈内 90 薬物動態学的薬物相互作用 該当する試験は実施していない。 その他 該当する試験は実施していない。 1) 当時 IDEC 社、-:該当しない、--:報告書に記載されていない 静脈内 1) Biogen Idec 社 (米国) Biogen Idec 社 (米国) Biogen Idec 社 (米国) Biogen Idec 社 (米国) 記載箇所 報告書番号 試験番号 Vol./ Section A00617 2/4.2.2.4.1 A00619 2/4.2.2.4.2 A00651 2/4.2.2.4.3 A00650 2/4.2.2.4.4 Biogen Idec 社 A00651 (米国) Biogen Idec 社 A00650 (米国) 2/4.2.2.5.1 2/4.2.2.5.2 2 2.6.5.2 分析方法及びバリデーション試験表 Nihon Schering K.K. 2.6.5.2 分析方法及びバリデーション試験
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