L.1410は - LCA日本フォーラム

2014/3/13 平成25年度 LCA日本フォーラム・日本LCA学会共催セミナー
「環境マネジメントに関する国際規格、海外の動向」 於:學士会館 2F 210号室
ITU(国際電気通信連合)における
「ICTと気候変動」に関する標準化動向
富士通株式会
環境本部
端谷 隆文
目次
 L.1410(ICT製品・ネットワーク・サービスの環境影響評価手法)
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
L.1410勧告化の経緯と意義
L.1410の概要
JT-L1410の制定
JT-L1410の評価事例の標準関連文書化
L.1410の改訂
JT-L1410の活用事例
今後に向けて
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L.1410
(ICT製品・ネットワーク・サービスの環境影響評価手法)
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1. L.1410の勧告化の経緯と意義
 背景
国連の気候変動枠組条約の下で、気候変動に関する検討
ICTの発展がその環境影響評価への関心をもたらすように
負の影響
エネルギーや天然資源の消費からe-廃棄物に至るまで、ICTは
ライフサイクルの諸段階で環境に影響
正の影響
エネルギー効率向上や在庫管理、ビデオ会議、e-コマースなど、
ICTは社会経済の様々な場面で効率化を可能に
国際的合意をもつ環境評価手法の確立が必要
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 勧告化に先行して日本では業界標準化に官民で取り組み
経済産業省
日本環境効率フォーラムで「ICTの環境効率評価
ガイドライン」作成
※ 参加者:東京大学+キヤノン、東芝、NEC、NTT、日立、富士ゼロックス、
パナソニック、富士通
書籍「IT社会を環境で測る―グリーンIT―」出版
総務省
ガイドブック「ICTを環境にやさしく活用するために」を
公表
「地球温暖化問題への対応に向けたICT政策に
関する研究会」でICTのCO2排出削減効果の
評価手法の標準化を進めることを提言
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 日本から国際へ蓄積した知見を展開し標準化をリード
2007年12月
「ICTと気候変動」に関する技術動向レポートが発行
ICTs&ClimateChange
TTC:2008年2月
「ICTと気候変動に
関するタスクフォース」
委員長:西(NTT)
2008年4月
京都シンポジウム FG設立宣言
2008年9月
「ICTと気候変動FG」設立
2009年3月
広島シンポジウムにて、FG総括
2009年4月
SG5にWP3「ICTと気候変動」委員会が正式に設立
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TTC:2009年4月
「ICTと気候変動委員会」
委員長:端谷(富士通)
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 SG5にWP3設置後はQ18で検討され2012年3月にL.1410勧告化
タイトル
Methodology for the assessment of the
environmental impact of information and
communication technology goods,
networks and services
(ICT製品・ネットワーク・サービスの環境影響評価手法)
よく使う用語
GNS: Goods, Networks and Services
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 日本にとっての意義
ICTのGNSを導入しようとする企業は、これまでの性能、価格に加え、
CO2排出量削減効果を新たな判断基準とすることが可能
ICT企業は、ICTによるCO2排出量削減効果を国際的に共通の
枠組みに基づいて明示することが可能
環境技術に優れた日本のICTのGNS導入の際の評価基準となる等、
日本の国際競争力向上につながることが期待される。
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2. L.1410の概要
目的
ICTのGNSのLCA
(Life Cycle Assessment:ライフサイクル評価)
による環境影響評価手法を規定
環境影響の
カテゴリ
GHG(GreenHouse Gas:温室効果ガス)
排出量とエネルギー消費量
※GHGは、気候変動に関する政府間パネル発表の最新の地球温暖化
係数を使って(タイムスケールは100年を推奨)、CO2eで示す。
位置付け
ISO14040「LCA―原則及び枠組み」及び
ISO14044「LCA―要求事項及び指針」のICT版
(補完)
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 目次
1. 適用範囲
2. 規準規格
3. 定義
3.1 外部機関で定義された用語
3.2 本勧告で定義する用語
4. 略語と頭字語
5. パートⅠ:ICT LCA-枠組みとガイダンス-
5.1 ICT GNSのLCAに関する一般的記述
5.2 手法の枠組み
5.3 報告
5.4 クリティカルレビュー
6.パートⅡ:ICTと基準製品システム(ベースライン
シナリオ)の相対評価 -枠組みとガイダンス-
6.1 相対評価の概要
6.2 相対評価の方法論的枠組み
6.3 報告
6.4 クリティカルレビュー
付属資料A 職場環境負荷評価の手法
A.1 ICT GNSの評価で職場環境を対象にする目的
A.2 機能単位
A.3 システム境界
A.4 LCI:ライフ サイクル インベントリー
付属資料B ソフトウェアの取り扱いに関する詳細
付属資料C 汎用プロセス
付属資料D ICT製品の部品タイプ
付属資料E ICTネットワーク概要
付属資料F 特定のICTユニット・プロセス
付属資料G 廃棄処理プロセス
付属資料H 単位プロセスのモデリング
付属資料J 基礎フロー(排出と資源)
付属資料K 燃料
付録I ライフサイクル段階概要
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 構成
パートⅠ
パートⅡ
ICT GNSに適用するLCA手法
ICT GNSの製品システムと基準
製品システム(ベースラインシナ
リオ)のLCA結果をベースにした
相対評価手法
一次効果
(ICTによる環境負荷)
二次効果(ICTにより削減が
達成された環境負荷)
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 GNSの環境影響の考え方
パートⅠ:一次効果
パートⅡ:二次効果
of ICT
by ICT
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 「その他の効果」とは?
ICT利用による社会構造変化において集積的な効果が起こり、
それにより生み出される影響や機会
例)
遠隔勤務やビデオ会議の利用により時間節約できた
ユーザーが、余暇にドライブをしたことに伴う影響
(リバウンド効果)
※その他の効果は、重要だが、多くの不確実要素が関連している
ため今後の研究を待ち、現行のL.1410では一次効果と二次
効果に焦点を当てる。
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 ライフサイクルとチェックリストの8項目
日本企業における蓄積をベースに、評価対象に入れるものを
特定する際に考慮すべきチェックリストの8項目
ライフサイクル
原材料取得
生産
使用
廃棄
チェックリスト項目
ICTハードウェア
PC、プリンタ、基地局、プロバイダー等のハードウェア
ICTソフトウェア
個々のソフトウェア、パッケージ、ミドルウェア、オペレーティングシステム
消耗品及び付属品
トナーや情報メディア(CD・DVD等)、カートリッジ等の付属品や消耗品
サイトインフラ
施設設備基地局やサーバー室の建物や空調
物の移動
輸送の際に必要となる機材や車、電車、バス等の輸送手段の燃料
人の移動
人の移動、サービス提供者の移動と顧客の移動を含む
物品の保管
倉庫等でのICT、部品、材料等の保管施設とそれに伴う空調照明等
職場環境
執務を行う空間を維持するために必要な空調や照明
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 必ずライフサイクル全体をカバーしなければならないのか?
ライフサイクル全体を評価対象とするのが原則
例外規定1
LCAの結果に対して限られた影響しか持たないと分かったライフ
サイクルの段階は、カットオフルールに基づき対象外としてよい
例外規定2
本勧告は、ライフサイクル全体をカバーしない調査に対しても
適用できる。その場合はISO 14040のA.1.2節を参照
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 LCA実施の枠組み
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 2種の相対評価
 相対評価は、ICTサービスの導入やシステムの更新の効果を示すものであり、
ICT企業にとって重要
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 二次効果の内容例
比較項目
対応する二次効果の内容例
物の消費
物の消費削減(紙など)によって物品関連の
環境影響負荷削減
エネルギーの消費量
節電や省エネ効率向上で、電力消費量関連
の環境影響負荷削減
人の移動
人の移動を削減し、移動に要する環境影響
負荷削減
物の輸送と保管
輸送削減で、輸送に要する環境影響負荷
削減
労働効率改善
オフィス空間の効率的使用で、照明、空調等
の環境影響負荷削減
廃棄
廃棄物排出削減で、廃棄物処分関連の環境
影響負荷削減
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 評価のアウトプットイメージ
ICT製品
※細目への分解は例である
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ICTネットワーク
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ICTサービス
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相対評価:チェックリストの項目ごと
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相対評価:ライフサイクルごと
(removal
)
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3. JT-L1410の制定
 L.1410を和訳し、JT-L1410原案を作成
2012年3月
L.1410がITU-T/SG5で勧告化
2013年3月
L.1410を和訳し、JT-L1410原案を作成
2013年5月
特にコメントなく、TTC標準JT-L1410制定
ダウンロード
TTCのホームページ
(http://www.ttc.or.jp/)
→TTCドキュメントのご案内
→ICTと気候変動
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 L.1410とJT-L1410の差分
囲み記事として以下のJS14040からの抜粋を追記
L.1410の本文に、ライフサイクル全体をカバーしない調査に適用する場合はISO
14040のA.1.2を参照すべきことが記載されている。その参照先を便宜のため追記。
JIS14040「環境マネジメント-ライフサイクルアセスメント-原則及び枠組み」A.1.2節には、次のような
記載がある。(なお、本囲み記事はL.1410に掲載がないが、日本語版作成の際に挿入したものである。)
意志決定を行う状況において,どのようにすればLCA が最良に適用されるのかに関するただ一つの解は存在
しない。それぞれの組織が,特に,組織の規模及び文化,製品,戦略,内部システム,手段及び手順,
並びに外部の圧力に応じて,その時々に解決し,かつ,決定しなければならない。
LCA は,広範な領域に及ぶ用途のために使用してもよい。すべての潜在的な用途のためのLCA の個別的
な使用,適用及び実施は,この規格及びJIS Q 14044 に基づく。
さらに,適切な正当性をもつLCAの技法は,LCA及びLCI調査以外の調査に適用できると考えられる。
L.1410にはAppendixが「VII」まであるが、JT-L1410では付録は
「I」のみ収録
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4. JT-L1410の評価事例の標準関連文書化
目的
JT-L1410の普及に向けて、国際的に認められ
た評価実施例を作成し、日本企業のこれまでの
蓄積を活用
内容
2011年度の総務省プロジェクトの評価事例を、
ITU-T/SG5で、L.1410 Supplement case
studyとして策定





スケジュール
オフィス効率化
サプライチェーンマネジメント
廃棄物処理
BEMS
HEMS
2013年末のITU-T/SG5会合で合意
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5. L.1410の改訂
目的
併存する欧州の環境影響評価規格 ETSI TS
103 199 と一本化した標準文書を作成
論点
規範レベル
 L.1410は「Should」や「High priority」など、最終的な判断は実施者に
任せる記述が多い
 これに対してETSI 103 199は規範レベルが高く、「Shall」や
「Mandatory」が非常に多い
 EUパイロットテストでは「L.1410は裁量の範囲が大きく分かりにくい」という
意見
 ETSI陣営は、Shallにすることで、LCAの透明性、信頼性が高まると主張。
実際のLCAの現場では、データ収集困難なことが多々あり、そのような場合
には、何らかの条件を付け実施すべきであり、Shallの使用イメージの共有を
図る必要がある。
スケジュール
2014年5月 ITU-T/SG5WP3会合で合意予定
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6. JT-L1410の活用事例
 環境省「低炭素価値向上に向けた社会システム構築支援基金」の
対象事業の一つに「省エネ型データセンター構築・活用促進事業」
 対象事業の要件の選択肢にL.1410による評価が設定
ア ITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)で承認された
勧告のうち、「L.1410 ICT製品・ネットワーク・サービスの環境影響
評価手法」で定める評価手法に基づき、既存の設備・機器と新たに
導入する設備・機器の環境影響を評価し、温室効果ガスの削減が
見込まれるものであること。
イ ITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)で承認された
勧告のうち、「L.1200 直流給電システムのインターフェース仕様」で
定める仕様に該当する直流給電システムであること。
ウ 「ICT分野におけるエコロジーガイドライン 第4版」で定める各対象
装置のうち、スイッチ装置(「★」4つ以上)、サーバ装置(動作状態
「★」3つ以上、アイドル状態「★」4つ以上)及びストレージ装置
(「★」4つ以上)であること。
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7. 今後に向けて
 企業では環境影響評価を以下のような活動に活用していると考えられ
るが、こうした場面でJT-L1410の活用が期待される
商品の付加価値
の明確化
公開Web、プレスリリース、展示会、事例紹介へ
の掲載。
提案における
他社との差異化
商品提案書への組み込み。環境にも優しいことを
アピール。
お客様側のCSR
への寄与による
リレーションシップ
向上
環境意識の高いお客様の環境推進部門から
高い評価を得た。
お客様の環境報告書やプレスリリースに、
商品導入による環境負荷試算が掲載された。
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