定年退職時の社会・労働保険の事務手続き

関係部署にご回覧ください
編集・発行 三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング株式会社
2015.2.23 第 1454 号
SMBC経営懇話会
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FAX:(03)5255-5564
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【高年齢者の継続雇用に対応する】
定年退職時の社会・労働保険の事務手続き
佳子社労士事務所
社会保険労務士 宮沢佳子
1. 60 歳以上 65 歳未満の者の賃金が低下した場合、要件を満たせば、雇用保険から「高年齢雇用継続給付」
が受けられます。
2. 継続雇用を行う場合でも、勤務時間等の変更により、社会・雇用保険の被保険者資格を喪失するケースが
あり、その際は事業主が手続きを行う必要があります。
「健康である間は働き続けたい」という高年齢者が増えてきています。高年齢者雇用安定法によって、定年(65
歳未満のものに限る)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の 65 歳までの安定した雇用を確保する
ため、「当該定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」「当該定年の定めの廃止」のいずれかの措置を講じなけれ
ばなりません。今回はもっとも多いケースである「60 歳定年で 65 歳まで継続雇用を行っている事業主」を中心に、
事業主側で行わなければならない社会・労働保険の事務手続きについて説明します。
1.60 歳の定年で、継続雇用しない場合
届出書類は通常の退職と同様です。
手続き書類
手続き先・期限
●健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
健康保険組合、年金事務所、厚生年金基金 (5日以内)
●雇用保険被保険者資格喪失届
ハローワーク (10 日以内)
●雇用保険被保険者離職証明書
※ 就業規則等離職理由が確認できる書類を添付
その他注意事項
健康保険証は家族の分も回収、退職後の住所確認、最後の月の保険料徴収に注意
2013 年高年齢者雇用安定法の改正により、労働者の希望があった場合は、原則として、65歳まで希望者
全員を継続雇用しなくてはなりません。
2.60 歳の定年後、継続雇用する場合
(1)勤務時間などに変更がなく、賃金が低下した場合
社員が 60 歳になり、引き続き同じ条件で雇用される場合は、社会・労働保険の被保険者資格に変更はあ
りませんので手続きは不要です。しかし、賃金に変更があった場合は、標準報酬月額の変更を行い、保険
料を低減させることができます。また雇用保険から給付が受けられる場合もあります。
①標準報酬月額の変更手続き(同日得喪)
健康保険や厚生年金の保険料はその人の標準報酬月額から算出されます。原則として、昇給、降給
や日給から月給への変更等で賃金の大幅な変更があった場合、変更があった月から 3 か月経過し、要
件を満たせば 4 か月目から標準報酬月額が改定されることになっています(随時改定)。しかし、特例とし
て 60 歳以上の者で、退職後 1 日の空白もなく同じ事業主に再雇用された際は、事実上雇用関係が中断
したものとして扱い、3 か月の経過を待たずに、賃金の変更があった時点で標準報酬月額の改定を行うこ
とができます(同日得喪)。
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具体的な手続きは、従前の社会保険の資格喪失届と、再雇用後の資格取得届を同時に提出します。
この制度は任意であり、デメリットがある場合もありますので注意してください。
・メリット:保険料負担が減ること、在職老齢年金の支給停止額が 3 か月分減る可能性があること。
・デメリット:傷病手当金を受給している場合は、傷病手当金の額が少なくなってしまうことなど。
手続き書類
手続き先・期限
●健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
●健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
●(被扶養者がいる場合)健康保険被扶養者(異動)届
健康保険組合、年金事務所、厚生年金基金
(5 日以内)
※退職・再雇用の確認できる書類添付(就業規則・雇
用契約書)
その他注意事項
健康保険証は家族の分も回収 ⇒ 新たな健康保険証が発行されます
②雇用保険の支給申請手続き
60 歳から 65 歳の間で賃金が低下した場合は、その程度によって、雇用保険から「高年齢雇用継続給
付」が受けられます。高年齢雇用継続給付には「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」
の 2 種類があります。ここでは、定年退職後引き続き働いた場合に受給できる「高年齢雇用継続基本給
付金」について説明します。
【高年齢雇用継続基本給付金の受給要件】
・60 歳以上 65 歳未満の一般被保険者であること
・被保険者であった期間が通算して 5 年以上あること
・60 歳到達時の賃金と比べて、60 歳以後の賃金が 75%未満に低下していること
手続き書類
手続き・期限
●雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
●高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年
齢雇用継続給付支給申請書
ハローワーク(最初に支給を受けようとする支給対象
月の初日から起算して 4 か月以内)
※年齢が確認できる書類(免許証の写しなど)や通帳の
写し等を本人から取り寄せ、申請時に添付する
※支給申請は、本来受給権のある被保険者本人が行うものですが、労使協定を締結し、事業主が手続きを行うことが一般
的です。
※原則として、低下した賃金の 0~15%の範囲で給付金が支給されます。ただし、各月の賃金が支給上限額(現在
340,761 円)以上であるときは支給を受けることができない等、一定の制限があります。
(2)勤務時間などに変更がある場合
再雇用後の 1 週間の所定労働時間が 20 時間未満になると、雇用保険の被保険者資格を喪失します。社
会保険も①1 日又は 1 週間の所定労働時間が正社員の 4 分の 3 未満、②1 か月の所定労働日数が正社員の
4 分の 3 未満に該当する場合、一般的には加入の要件を満たさなくなりますので前述の「1.60 歳の定年で、
継続雇用しない場合」と同じ処理を行います。この場合、働きながら年金受給をしても厚生年金の被保険者で
はないため、年金は減額されません。
3.在職老齢年金制度
60 歳以降に厚生年金に加入しながら働く場合、総報酬月額相当額(*)に応じて年金の一部が減額される
ことがあります。 これを「在職老齢年金制度」といいます(60 歳代前半の場合、年金月額と総報酬月額相当額
の 合 計 額 が 28 万 円 以 下 な ら 年 金 は 全 額 支 給 さ れ ま す 。 詳 し く は 日 本 年 金 機 構 の ホ ー ム ペ ー ジ
(http://www.nenkin.go.jp )を確認して下さい)。さらに、高年齢雇用継続給付を受けられる月については、在
職老齢年金の調整に加えて高年齢雇用継続給付との支給調整も行われます。支給停止の年金額は、最高
で標準報酬月額の 6%となっています。
* 総報酬月額相当額=その月の標準報酬月額+その月以前 1 年間の標準賞与額の総額÷12
【本稿に関するご照会窓口】 SMBCコンサルティング・経営相談部 TEL:0120-7109-49
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