症例1松江日赤

症例1
松江赤十字病院 放射線科
提示
第73回島根画像診断研究会_2014年11月12日(水)_ホテル宍道湖
症例:80代
女性
以前から右鼻腔の閉塞があった。
近医受診し、右鼻腔腫瘍を指摘された。
血液・生化学所見、腫瘍マーカーに異常認めず。
副鼻腔CT
単純
造影後
副鼻腔MRI
T1WI
造影
T1WI
T2WI
DWI
ADC
18F-FDG PET/CT
SUVmax2.77
考えられる疾患は?
解答
グロムス腫瘍
多列線毛上皮層下に小型円形~短紡錘核
を有する均質細胞がシート状配列を成す
病変。血管腔も散見される。
グロムス腫瘍
グロムス小体を発生母地とする血管系の軟部組織
性良性腫瘍である。グロムス小体は皮膚末梢の動静
脈吻合部の特殊器官で,末梢循環制御や体温調節を
行っている。この動静脈吻合部の血管周囲には類上
皮細胞に類似する特殊な平滑筋細胞が存在しており,
この細胞をグロムス細胞と呼んでいる。グロムス腫
瘍は,この細胞の増殖と血管成分より構成される過
誤腫とされる。グロムス小体が多数存在する四肢に
好発するが,グロムス小体が本来存在しないと考え
られている鼻副鼻腔,骨,胃,縦隔にも稀に発生するこ
とが報告されている。
ちなみに….
*耳鼻咽喉科領域で時に経験する鼓室
や頸静脈球に発生するグロムス腫瘍は,
傍神経節から発生する良性腫瘍
(paraganglioma)で,グロムス腫瘍
と組織学的に異なる腫瘍である。
グロムス腫瘍
頻度:グロムス腫瘍は全軟部腫瘍中1.6%。
その中で鼻副鼻腔での発症率は0.4%。
: 20~80歳台、小児期を除く全年齢層。
年齢
性別:男女差なし。
部位:鼻中隔が多い。
症状:鼻出血(反復性)、進行性の鼻閉、
無症状。痛みの訴えは見られず。
グロムス腫瘍
画像所見
境界明瞭。周囲骨の破壊性変化認めず(サイズにより
リモデリング伴う)。T1強調画像で低信号、T2強調画像
で高信号、造影T1強調画像では強い濃染。腫瘍内にflow
voidを反映した点状信号が見える。FDG集積は中等度~
強い集積(SUVmax2台~10近く)。
鑑別疾患
・血管腫
FDG集積×
・鼻茸/ポリープ
造影効果× 、FDG集積×
・神経原性腫瘍(神経鞘腫、神経線維腫)、多形腺腫
嚢胞変性、造影丌均一
・鼻腔悪性腫瘍(扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、MFH)
T2強調画像/造影効果×
・悪性リンパ腫
T2強調画像×、拡散強調画像×
・血管外皮腫
T2強調画像×、造影丌均一
・髄膜腫
T2強調画像×、flow void×
CT所見
右鼻腔に1×4.5cm大の腫瘤性病変あり。
腫瘍内に石灰化は見られず。
副鼻腔炎症伴わない。
MRI所見
腫瘍はT1強調で低信号、T2強調で高信号。
造影T1強調で均一な強い濃染あり。
腫瘍内にT1・T2強調で点状の低~高信号。
18F-FDG
PET
比較的強い集積。
グロームス腫瘍
毛細血管の先端に存在するグロムス小体(皮膚
末梢の動静脈吻合のことで,血管腔周囲には特別な
平滑筋が発達している)より発生する比較的稀な
良性腫瘍である。主に四肢に好発し,鼻副鼻腔領域
に発生することは稀である。グロムス小体が多数
存在する四肢に好発するが,グロムス小体が本来存
在しないと考えられている鼻副鼻腔,骨,胃,縦隔にも
稀に発生することが報告されている
グロムス腫瘍