国立天文台 2014.10.17 vol. 2 イベント報告・告知 [8/11] NIFS LHD の真空容器内見学会を行いました。抽 選で選ばれた一般市民 3 組計 7 名が容器内 を見学しました。 [8/14] NIPS 豪州New South Wales大学(UNSW)医 学部との学術協定に調印しました。井本所長 と 鍋倉副所長 が 、生理研 と UNSW医学部間 の学術協定調印のため豪州を訪問し 、協定書 に双方が署名しました。UNSW はシドニー にある学生数約5万人の国立大学で 、オース トラリア Top5 の一つです。 UNSW は 、オーストラリアの伝統として 電気生理 を は じ め と す る 計測技術 を 得意 と し 、特に人工内耳の基礎研究が盛んに行われ ています。 生理研とUNSW の研究交流が 、両研究所に とってこれまでにない新しい研究アプローチ をもたらし、素晴らしい発見への礎となるこ とが期待されます。 林 正彦 台長 国立天文台は 、これまですばる望遠鏡、アルマ望遠鏡を実現し 、 現在は 30m望遠鏡(TMT)の建設に取り組んでいます。国立天文台 の望遠鏡は 、広く大学等の研究者の共同利用に供され 、天文学分野 における日本の研究力強化に大きく貢献しています。望遠鏡計画 の大型化・国際化を受けて 、国立天文台では従来ある職種だけでは なく 、さまざまな分野の専門的能力を持った職員が働いています。 国立天文台で働くすべての職員が目標を共有できるように 、昨年か ら今年にかけて以下のような理念を制定しました。 まず 、私たちがなすべきこと(ミッション)としては 、①「知の地 平線を拡げるため 、大型天文研究施設を開発・建設し 、共同利用に 供する」 、②「多様な大型施設を活用し 、世界の先端研究機関として 天文学の発展に寄与する」 、③「天文に関する成果・情報提供を通じ て 、社会に資する」としました。また 、これらのミッションの実現 を通して私たちが目指す姿(ビジョン)は「宇宙の謎に挑む国立天文台」です。 計画が大きくなればなるほど実現に向けてのハードルも高くなりますが 、新たに制定した 理念をより処に 、ビジョンを追求していきたいと思います。 [8/16] NAOJ 国立天文台水沢VLBI観測所の特別公開とし て毎年8月に開催しているいわて銀河フェスタ。 今年はプレイベントとして、宇宙航空研究開 発機構(JAXA)の宇宙飛行士である若田光一 氏のミッション報告会を奥州市文化会館Zホー ルにて 8月16日(土)に開催いたしました。 第 1部では 、日本人として初めて国際宇宙 ステーション(ISS)のコマンダー(船長)を務 められた若田光一氏が 、約半年間の任務につ いて報告。若田氏は講演会の中で 、様々な国 の乗組員とのコミュニケーションの大切さ 、 ISS を地球からサポートする各国の管制室と の連係の重要性についても語られていました。 第2 部では若田氏、国立天文台水沢VLBI観測 所の本間希樹准教授、RISE月惑星探査検討室 の松本晃治准教授の 3 名による「宇宙を語る 特別講演会」が自然科学研究機構の松山桃世 氏の司会進行の下で行われ 、3者が宇宙への 夢や研究への想いを語り合いました。 最後に松本氏より「宇宙への興味を持ち続 けてほしい。そして今後も宇宙に関わり続け て下さい。日本の科学や技術が世界の第一線 で活躍できるよう宇宙飛行士や研究者は努力 していますので 、皆さんの応援の力を分けて 下さい」という子供たちへの熱いメッセージ が語られ 、約1000名の来場者の鳴り止まな い拍手の中で会を終えることができました。 これからも私達は沢山の方に宇宙や研究を身 近に感じていただけるような活動を進めてま いりたいと思います。 [8/20-22] NIBB 大学生のための夏の実習2014 が開催され ま し た。 「植物 オルガネラを 可視化 し よ う」 など 、2日半、9 コースの実習に 、全国から 29 名の大学生が参加しました。 [9/3] NINS 文部科学省の「研究大学強化促進事業」の採 択機関を中心として、研究力強化や研究支援 機能の拡大に取り組んでいる大学等で構成す る「大学研究力強化ネットワーク」が 、学術総 合センターで第2回の全体会議を開催しまし た。構成機関は、9月現在で 25 の国公私立大 学・大学共同利用機関法人。自然科学研究機 構が世話役をつとめています。岡山大学の山 本進一理事を議長に、研究力強化を推進する 上での課題をテーマに、研究大学が直面して いる諸課題と解決策について、さまざまな観 点から包括的な議論が行われました。 報告に続く記者懇談会では、山本議長から、 日本の研究大学の現状と課題について、論文 シェアや研究費配分の国際比較のデータに基 づき、一部のトップレベルの大学だけでなく、 30程度の研究大学群の底上げが必要であると の説明があり、報道関係者と活発に意見が交 わされました。 最後には、日本学術振興会の渡辺淳平理事 から、 「エビデンスに基づく有効な政策提言を 期待する」とのコメントが述べられました。 [9/23] NINS 【講演者・タイトル】 成田 憲保 第17回 自然科学研究機構シンポジウムを 学術総合センター(一橋講堂)で開催しました。 今回は生理学研究所のオーガナイズで 、テー マは「記憶」 。臨床医学、基礎医学、脳科学、心 理学、さらには劇的に強くなった将棋ソフト の記憶法まで 、幅広い記憶研究分野の第一人 者が一堂に会しました。 国立天文台 特任助教 TMT で探る 第2 の地球 高井 研 海洋研究開発機構 分野長 新分野創成センター 客員教授 地球 の 生命起源 を解くための 秘策とは 5研究所が出展するブースも賑いました。 [11/21] IMS 市民公開講座 第103回分子科学フォーラ ム・特別編「分子とつくる未来」を開催します。 [11/22] NINS / NIBB 大学共同利用機関 シンポジウム 2014「研 究者博覧会」が東京国際フォーラムにて開催 されます。大学共同利用機関の活動を広く一 般の方々に知っていただく機会です。自然科 学研究機構からは藤森俊彦教授が研究者トー クに 登壇 す る ほ か 、5 研究所 の ブース 展示 が行われます。 山岸 明彦 東京薬科大学 教授 新分野創成センター 客員教授 宇宙科学研究所 客員教授 全生物の共通祖 先遺伝子の復元 [10/4] NIPS 今回は初めて「高校生記者」を募集しました。 丸1日かけて行われたシンポジウムのあとに も関わらず 、応募頂いた高校生記者さんたち は1時間近くも講演者に質問を続け、その熱 意に講演者も圧倒されていました。執筆頂い た個性あふれる記事は機構シンポジウムのウェ ブページにて掲載されています。 (http://www.nins.jp/public_information/ sympo17.php) [10/1] NINS 「宇宙 に お け る 生命 と 地球型生命 の 起源」 を テーマに 第 5 回機構長 プレス 懇談会 を 虎 ノ門の会議室にて行いました。恒星、特に低 温度性のまわりにある「第 2の地球」探しプ ロジェクトについてや 、生命誕生と誕生した 生命の維持に必要な環境条件、遺伝子配列か ら生命誕生初期の環境に迫る研究など 、上記 の テーマを レビューす る よ う な 講演会 と な りました。24 名のメディア関係者が参加し ました。 一般公開を開催しました。今年は 、生理学 研究所の研究テーマである人体と脳の不思議 をより身近に感じていただくために 、 「生理 学研究所 一般公開 — 脳とからだのしくみ サイエンスアドベンチャー!—」をテーマ に 、生理学研究所のすべての研究室と研究内 容を体験できる展示を中心に 、様々な企画を 考えました。特別企画として 、所内外の講師 による 、 特別講演を行いました。所外からは 、 昨今、致死率の高い感染症が人間社会を脅か される中、その一つでもある鳥インフルエ ンザについて 、 「鳥インフルエンザのパンデ ミックの可能性」と題し 、東京大学医科学研 究所 渡辺登喜子准教授に 、続いて 、南米チ リに設置され 、現在本格的な科学運用が開始 されたアルマ望遠鏡の 、国際アルマ望遠鏡計 画に従事した 、自然科学研究機構 国立天文 台 井口聖教授には 、 「アルマ望遠鏡、つい に始動!—天文台の新時代の扉が開かれる—」 と題して 、それ ぞれご講演いた だきました。 また、楽しみ な が ら「 せ い り け ん 」を 知って いただけるよう に 用 意 し た「 せ いりけ ん スタン プラリー」には、 多数のお子さん たちにご 参加頂 きました。 [10/25] NIFS 一般公開を行います。岐阜県土岐市までぜ ひお越し下さい。 [12/1-3] NINS 12月1日から3日にかけて箱根にて第三回 NINS Colloquium が開催されます! <オーガナイザーの一人 NIFS 伊藤篤史 助教からのメッセージ> コロキウムという形式は日本では馴染みが 無いですが 、研究成果に関する情報交換を目 的とした研究会とは異なり、議論すること自 体を主目的としています。これは機構長が過 去にドイツで参加した催しを参考に、若手研 究者にもっと議論の楽しさを感じてほしいと の思いで発案されました。 機構内だけでなく各大学機関からも研究者 が参加し、計100名程度で 3日間の議論を楽 しみます。天文・物理・化学・生物・生命と いった自然科学 の 広 い 分野 の 研究者 が 同じ テーブルの上で議論することになり、最初は 相手の言葉を理解するのに一苦労。専門外の 分野の研究者の話を瞬時に理解し切り返す、 そんな理解・思考の瞬発力が問われ 、訓練の 場として最適です。 また分野を超えて人の繋がりができること で 、分野間連携研究の種まきの場としても期 待しています。参加者が自身の可能性に気づ いて頂ければ幸いという思いです。 当日は複数の議題毎に分科会を設置します。 最初は各分科会の中で議論を展開し 、三日目 に 全体討論 を 行 い ま す。中 に は 加熱 し た 議 論が収束しないこともありますが 、無理に 収束させることもなく 、参加した各人が今 まで触れたことのなかった問題を真剣に考 える行為に意味があると思います。 本年は「科学的論理展開の在り方—物理学 と生物学は分かり合えるか—」 「光でひも解 く自然科学—光技術のニーズとシーズ—」 「シ ミュレーションの正体と招待」といった三つ の議題で分科会を設置します。是非、ご自身 の専門分野とは遠い分科会に参加 し て い た だき、 分野を超える感覚を体感してください。 プレスリリース あなたの研究成果を海外へ! 自分の研究成果が掲載された雑誌を手にする。感激の瞬間です。長時間、緻密な計画の もと研究を重ね 、ストーリーを練り上げ 、レフェリーとのやりとりを乗り越えた結果です。 せっかくの研究成果を、その雑誌を手にしていない異分野の研究者にも届けてみ ませんか?新たな研究の芽が生まれるかもしれません。 機構本部では、7月1日よりオンライン国際情報配信サービス「EurekAlert!」と年間契約 をかわしました。EurekAlert!とは、科学雑誌「Science」の発行などを行っているアメリカ 科学振興協会(The American Association for the Advancement of Science, AAAS)が 運営する、オンラインで科学技術に関するニュースソースを無料提供するサービス。大学、 研究機関等の広報担当者が提供するニュースソースを集約して、ジャーナリストにメール およびウェブサイトを通じて提供しています。利用者は全世界でジャーナリスト約1万人。 これまでに機構から発信した、リリース実績をご紹介します。 Institution Contact Title Date Posted [6/20] NIBB 竹花佑介助教と成瀬清准教授ら インドメダカの 性決定遺伝子を発見 〜性染色体の多様化機構 の一端を解明〜 [7/1] NAOJ 中性子星合体は金、プラチナ、レアアース等の 生成工場 [7/3] NAOJ アルマ望遠鏡が目撃したダイナミックな星の誕生 [7/9] IMS 飯野グループら ナノメートルの人工分子マシン 1 個を「見て、触る」ことに成功:光学顕微鏡に よる 1 分子モーションキャプチャ [7/28] NAOJ Page View Since Posted 今も温かい月の中〜月マントル最深部における 潮汐加熱〜 河野孝央准教授ら 排水に含まれるトリチウムの 連続測定に成功 [8/4] NIFS NIPS Ryusuke Kakigi Brains not recognizing an angry expression 25-Sep 2,228 NIPS Hidehiko Komatsu Neurons express 'gloss' using 3 perceptual parameters 19-Sep 4,381 NIBB Office of Public Relations, NIBB Long-distance communication from leaves to roots 19-Sep 4,433 IMS Koichi Kato Decoding 'sweet codes' that determine protein fates 13-Sep 1,852 NIPS Brain mechanism underlying Ryo Kitada the recognition of hand gestures develops even when blind 5-Sep 4,084 NIPS Yukio Nishimura Bypass commands from the brain 14-Aug to legs through a computer 4,369 NIPS Norihiro Sadato Patients with autism spectrum disorder are not sensitive to 'being imitated' 3,168 加藤晃一グループ 水中で絶え間なく揺らいでい る糖鎖の立体構造を描き出す NIFS Nagato Yanagi Magnets for fusion energy: A revolutionary manufacturing method developed 19,439 小松英彦教授と西尾亜希子助教ら 脳が光沢を評 価する指標を解読 5-Aug [8/5] NIBB 西村俊哉大学院生と田中実准教授ら 生殖細胞に オスとメスの違いを生み出す新たな仕組み [8/14] NIPS 西村幸男准教授ら 歩行中枢と腕の筋肉とをコン ピュータを介して繋いで下肢の歩行運動パター ンを随意的に制御することに成功 [8/18] NAOJ 謎の宇宙竜巻「トルネード」の形成過程を解明 [8/22] NAOJ 天の川銀河の星の元素組成で探る宇宙初代の 巨大質量星の痕跡 [9/5] IMS [9/8] NIPS 25-Jul 紹介記事例 [9/11] NIPS 吉村由美子教授と石川理子研究員ら 生後の視覚 機能を支える神経回路の発達には生後の正常な 視覚体験が必要である [9/12] NIBB 農業生物資源研究所、カザン大学、沖縄科学技 術大学院大学、基生研、金沢大学、モスクワ大学、 ロシア物理化学医学研究所、ヴァンダービルト 大学など 極限乾燥耐性生物ネムリユスリカのゲ ノム概要配列を解読 〜生物がカラカラに乾いて も死なないメカニズムの解明へ〜 [9/17] NAOJ 銀河衝突で作られる巨大ガス円盤 〜円盤銀河 誕生の謎に電波で迫る [9/19] NIBB 佐々木武馬大学院生と川口正代司教授ら 植物ホ ルモンのサイトカイニンは葉から根に長距離移 動してマメ科植物の根粒数を制御する [9/23] NIBB ほとんどの場合、掲載後3日以内に30ほどのニュースウェブサイトに転載されました。 アメリカのサイトが大半ですが 、スウェーデンやインド、専門的な学術ニュースサイトか ら一般ニュースサイトまで 、多様な発信先で紹介されています。 リリース内容の英訳・リリース情報の登録については本部が支援します! まずはお気 軽に所属研究所の広報担当者へご相談下さい。 征矢野敬研究員、川口正代司教授ら 根粒の数を 調節する転写因子 〜根粒共生の省エネルギーシ ステムの起動スイッチを発見〜 [9/26] NIBB 産業技術総合研究所、基生研、放送大学、東京大 学など クヌギカメムシの共生細菌入り卵塊ゼ リーの機能を解明 〜真冬の雑木林で育つ幼虫 の秘密〜 Pick UP 1 NIBB 竹花佑介助教と成瀬清准教授ら インドメダカの性決定遺伝子を発見 〜性染色体の多様化機構の一端を解明〜 「当初は1年くらいで結果が出る予定だった んです。一番苦しかったのは、メダカの卵に DNA を打ち込んでも打ち込んでも、オス化 しなかった時期です」と、数百の水槽に囲まれ ながら苦笑いする竹花助教。 竹花助教の興味は、メダカ属が見せる「性 を決めるしくみ」の多様性だ。進化の過程で は、ゼロから新しいシステムが作られること は考えにくい。基本的には、世代を経るごと に親がもつシステムの上に小さな変化が生じ、 少しだけ違うシステムへと変化していく。そ のため同じ先祖から分岐した2つの近縁種が 、 まったく異なるシステムをもつことは珍しい。 しかし、メダカ属がもつ性決定のしくみはあ まりにバラエティに富んでいる。非常に近縁 な2種 のメダカ(インドメダカとジャワメダ カ)が 、かたや XX(メス)/XY(オス)システム を使い、かたやZW(メス)/ZZ(オス)システ ムを使う。いったい、それぞれの種において、 何が性を決めているのか、どのように別のし くみが生まれたのか。なぜこれほどまでにシ ステムがゆらいでいるのか。 竹花助教のアプローチは明解だ。性を決め ている性決定遺伝子の場所を染色体上で狭め ていった。これまでに、インドメダカの性決 定システムは XX/XY型であり、その性染色体 はメダカの10番染色体と相同であることがわ Pick UP 2 かっていた。この領域をさらに絞り込み、性 決定領域を X染色体上で14万塩基、Y染色体 上で 31万塩基の範囲に特定した。この領域に は X染色体とY染色体でDNA配列に異なる部 分が存在する。そこで今度は、この性決定領 域をいくつかに分割し、それぞれをインドメ ダカの卵に遺伝子導入した。もし、導入した DNA領域にオス化を引き起こす”マスター遺 伝子”が含まれていれば 、遺伝子導入した XX 個体がオスになるはずだ。ところが 、どの領 域を打ち込んでもオス化しない。冒頭の状況 だ。あきらめかけた竹花助教は、試しに、性決 定領域から隣接するSox3 遺伝子までを含め たDNA断片を導入した。するとなんとオス化 に成功。インドメダカのマスター遺伝子にた どりついた。Sox3 だ。 「Sox3 は最初からあやしい遺伝子でした。ヒ トのオス化に必要なSry 遺伝子によく似てい る遺伝子です。ただ 、今回絞り込んだ性決定 領域には含まれていませんでしたし、成熟し たインドメダカの精巣では働いていなかった ので 、正直、これがマスター遺伝子ではない だろうと思っていました」 。再度Sox3 がはた らく時期と場所を詳しく調べてみると、生殖 巣の性が決定される時期にだけ、生殖細胞を 取り囲む体細胞でSox3 が働いていた。 「オス だけが もつ Y染色体にも、メスももつ X染色 体にもSox3 は存在します。しかし、Xにある Sox3 は生殖巣では合成されません。Yにある Sox3 だけが生殖巣にて合成され、それを引 き起こすために、 件の隣接する領域が必要だっ たのです」 インドメダカのマスター遺伝子はわかった。 では、他のメダカではどうなのか?「性染色 体が 違うので 、Sox3 ではない別のマスター 遺伝子がある可能性が高いです。しかし、そ の下流のオス化を引き起こすしくみ全体が丸 ごと違うというわけではなさそうです」と竹 花助教。メダカのオス化に必要なGsdf という 遺伝子をインドメダカももっており、同じよ うにオス化に重要だという。命令系統のトッ プにいるマスター遺伝子は種によって異なる が 、実際に組織をオス化する実行部隊は共通 していると睨む。 「自分をとりまく環境、例え ば温度に柔軟に対応して、性を変えられるよ うなシステムを魚は保持しています。命令系 統のトップをいろいろ変えるしくみをもつこ とで 、この環境対応性を生み出しているのか もしれません。今後はさらに他のメダカ近縁 種のマスター遺伝子に迫ります」 最後に研究者のつながりについて聞いた。 「メ ダカはゲノム情報が得られているので確かに 使いやすい。でも次世代シーケンスやゲノム 編集などの技術開発が進み、モデル生物とし て確立されていない生物にもトライしやすい 時代になりました。私はメダカのコミュニティ にはもちろん大変お世話になりましたが 、ゲ ノム研究の方々のご協力のおかげでこの成果 を得ることができました。モデル生物ではな いメダカ近縁種で少しずつゲノムツールを構 築してきた経験は、新しい生物を手がけよう という方には有用かもしれません。また、基 生研には生物機能情報分析室や光学解析室な ど 、ゲノム解析や顕微鏡のプロが相談にのっ てくれる体制が整っていて、共同利用研究も 盛んです。この研究所に足りないものはない のでは」と研究環境を絶賛。ナショナルバイオ リソースプロジェクトによって基生研で飼育 されている約500系統におよぶメダカリソー スは、国内・海外の利用研究者にとってだけ でなく、竹花助教にとっても宝の山であり続 けそうだ。 (取材:松山) NIFS 河野孝央准教授ら 排水に含まれるトリチウムの連続測定に成功 これまでは、トリチウムを含む 排水を採取し液体シンチレータの 入ったビンに入れて混ぜ合わせ、 β線によって励起されたシンチレー タから発する光を光電子増倍管を 用いて測定していました。そのた め、その場での連続測定が出来ま せんでした。ここでは排水を3本 の固体シンチレータ中に直接通水 することによって連続測定が可能 となり、原子力施設への波及効果 が期待できます。 〒105-0001 東京都港区虎ノ門4-3-13 ヒューリック神谷町ビル2階 研究力強化推進本部 広報担当 TEL : 03-5425-2046 Mail : [email protected] ※NINS bulletinでは、掲載依頼・掲載内容リクエ ストを受け付けます。新規プロジェクト募集や連 携先の募集などにぜひご活用下さい。 NINS : 自然科学研究機構 NAOJ : 国立天文台 NIFS : 核融合科学研究所 NIBB : 基礎生物学研究所 NIPS : 生理学研究所 IMS : 分子科学研究所 CNSI : 新分野創成センター
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