氏 名(本 籍) 学位の種類 学位記番号 学 位 授 与 の日 付 学 位 授 与 の要 件 学 位 論 文 題目 論 文 審 査 委員 齊藤 真吾 ( 香 川 県 ) 博 士 ( 鍼灸 学 ) 鍼 博 甲 第 63 号 平成26年 3月 14日 大 学 院 学 則第 3 4 条 第 1 項 お よ び学 位 規 程 第 5 条 第 1 項該 当 咬筋へのマスタードオイル投与により引き起こされた口腔顔面 痛 に 対 す る鍼 通 電 の 効 果 ( 主 査 ) 北小 路 博 司 ( 副 査 ) 川喜 田 健 司 ( 副 査 ) 今井 賢 治 論文内容の要旨 【目的】 口 腔 顔 面 領 域 で は、痛 み の 原 因 から 離 れ た 場 所 に 痛 み を訴 え る 異 所 性 疼 痛 が 出現 し や す い こ と が 知ら れ て い る 。 そ の た め、 口 腔 顔 面 領 域 の 痛 みで は 、 明 確 な 痛 み の 原因 を 特 定 す る こ と が難 し い ケ ー ス も 多 く 、慢 性 化 し や す い 傾 向 にあ る 。 一 方 、 口 腔 顔 面領 域 の 痛 み に 対 し て、 疼 痛 局 所 や 四 肢 の 経穴 な ど 様 々 な 部 位 に 鍼治 療 が 行 わ れ て い る が、 そ の 効 果 や 治 効 機序 に 関 し て は 不 明 な 点も 多 い 。 そ こ で 今 回 、 咬 筋 ヘ マ ス タ ー ド オ イル を 投 与 す る こ と で生 じ た 口 腔 顔 面 痛 に 対し て 、 下 肢 に 鍼 通 電 を行 う こ と で ど の よ う な影 響 が あ る の か 、 メカ ニ ズ ム と と も に 検 証を 行 っ た 。 【方法】 実 験 に は SD 系 雄 性 ラ ッ ト 39 匹 ( 体 重 250~ 400g) を 用い 、 コ ン ト ロ ー ル 群 [CONT]、 鍼 通 電 群[EA]、 鍼 通 電 +ナ ロ キ ソ ン群 [NAL]の 3 群 に 無 作 為に 群 分 け し た 。 全 て のラ ッ ト は ウ レ タ ン麻 酔 下 で 行 い 外 科 処 置を 行 っ た 後 、 三 叉 神 経脊 髄 路 核 尾 側 亜 核 よ り特 異 的 侵 害 受 容(NS)ニ ュ ー ロ ン を 記 録 し た。そ の 後 、マ ス タ ー ドオ イ ル (以 下 MO)投 与 前 の 状 態 と し て 、 ニ ュー ロ ン の 反 応 性 ( 受 容野 の 大 き さ ・ 閥 値 ・ 定量 刺 激 に よ る 発 火 数 )を 測 定 し た 後 、咬 筋 に MO を 投与 し 、投 与 後 5~ 10 分 ご と に 6 回 測定 し た 。な お 、CONT 群 は MO の 注 入 の み で何 も 行 わ な い も の を 、 EA 群 は MO 投 与 10 分 後 か ら 15 分 間 、 腓 腹 筋部 に 2Hz で 鍼 通 電 を行 っ た 。ま た 、NAL 群 で は EA 群 の 鍼 通 電 に 加え て 、MO 投 与 5 分 前 に静 脈 よ り ナ ロ キ ソ ンを 投 与 し た ( 2.0mg/kg)。 【結果】 CONT 群 では MO 投 与 5 分 後 か ら 受容 野 や 発 火 数 の 増 加 、閥 値 の 低 下 が 35 分 程 度 ま で 認 め ら れ た が、EA 群 で は 、鍼 通 電後 (25 分 後)に は 受 容 野 や発 火 数 の 減 少 、閥 値の 上 昇 が 認 め ら れ た 。ま た 、 NAL 群 は CONT 群 と ほ ぼ 同 様 の 結 果 とな っ た 。 群 間 の 比 較 にお い て は 、 EA 群 は 、CONT 詳 と NAL 群 と 比 較 して 有 意 差 が 認 め ら れ た (p<0.05)。 【考察】 今 回 、 MO を 投 与 す る こ と で 生 じた ニ ュ ー ロ ン の 反 応 性の 増 大 を 、 鍼 通 電 を 行う こ と で 抑 制 す る こと が 可 能 だ っ た 。 ま た、 鍼 通 電 の 効 果 は ナ ロキ ソ ン を 事 前 投 与 す るこ と で 拮 抗 さ れ た 。以 上 の こ と か ら 、 口 腔顔 面 部 の 痛 み に 対 し て下 肢 へ の 鍼 通 電 は 有 効で あ り 、 そ の 効 果 はオ ピ オ イ ド を 介 し た 鎮痛 機 構 が 関 与 し て い る可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 論文審査の結果の要旨 本 論 文 は口 腔 顔 面 領 域 の 痛 み に対 す る 鍼 灸 治 療 の 機 序に つ い て 検 討 し た も ので あ る 。 口 腔 顔 面 領 域 は 異 所 性 疼 痛 が 多 い こ と が 知 ら れ て い る 。 そ の た め 慢 性 的 な 痛 み の 場合 は 痛 み の 原因 を 特 定 す る こ と が 難し い こ と も あ る。一 方 、鍼 治 療は 口 腔 顔 面 面 部の 痛 み に 対 し て 局所 的 な 治 療 に 加 え て、手 や 足 と い っ た 遠 隔 部か ら 治 療 す る こ と も ある 。し か し な が ら 、治 療 の メ カ ニ ズ ム に つい て は 不 明 な 点 も 多 い 。そ こ で 今 回 、咬 筋 へ の マ スタ ードオイル投与により生じた口腔顔面痛に対して鍼通電の効果とナロキソンを投与す る こ と で その メ カ ニ ズ ム に つ い て検 討 し た 。 実 験 に は SD 系 雄 性 ラ ッ ト 39 匹 を 用 い 、 コ ン ト ロ ー ル 群 [CONT]、 鍼 通 電 群[EA]、鍼 通 電+ナ ロ キ ソ ン 群[NAL]に 群 分 け した 。実 験 は ウ レ タ ン 麻 酔下 で 行 い 外 科 処 置 を 行っ た 後 、 三 叉 神 経 脊髄 路 核 尾 側 亜 核 よ り 特異 的 侵 害 受 容 (NS)ニ ュー ロ ン を 記 録 し た 。 その 後 、 マ ス タ ー ド オイ ル (以 下 MO)投 与 前 の状 態 と し て 、 ニ ュ ー ロン の 反 応 性 ( 受 容 野 の大 き さ ・ 閾 値・定 量刺 激 に よ る 発 火 数 )を測 定 し た 後 、咬 筋 に MO を 投 与 し、5~ 10 分 ご と に 6 回 測 定 し た。ま た 、鍼 通 電 は MO 投 与 10 分 後 か ら 15 分 間 、腓 腹 筋 部 に 2Hz で 行っ た 。ナ ロ キ ソ ン は MO 投 与 5 分 前 に 静 脈 よ り投 与 し た 。 CONT 群 で は MO 投 与 5 分 後 か ら 受容 野 や ス パ イ ク 数 の 増 加 、閾 値 の 低 下 が 35 分 程 度 ま で 認 め ら れた が 、EA 群 で は 、鍼通 電 後 (25 分 後)に は 受 容 野 や ス パ イ ク 数 の 減 少、閾 値 の 上 昇 が 認 めら れ た 。ま た 、NAL 群 は CONT 群 と ほ ぼ 同 様 の結 果 と な っ た 。群 間の 比 較 に お い て は 、EA 群 は、 CONT 群 と NAL 群と 比 較 し て 有 意 差 が 認め ら れ た (p<0.05)。 今 回 、MO を 投与 す る こ と で 生 じ た痛 み に 対 し て 、鍼 通電 を 行 う こ と で 抑 制 し、そ の 効 果 は ナ ロ キソ ン を 投 与 す る こ と で拮 抗 さ れ た 。 以 上 の こと か ら 、 口 腔 顔 面 部 の痛 み に 対 し て 鍼 通 電は 有 効 で あ り 、 そ の 効果 は オ ピ オ イ ド を 介 した 鎮 痛 機 構 が 働 い た 可能 性 が 示 唆された。 こ れ ら の成 果 は 、口 腔 顔 面 痛 に対 す る 鍼 灸 治 療 の メ カニ ズ ム の 一 端 を 明 ら かに し ,鍼 灸 学 に と っ て誠 に 意 義 の あ る も の であ る 。 以 上 に より , 本 論 文 は , 本 学 大学 院 博 士 ( 鍼 灸 学 ) の学 位 を 授 与 す る に 値 する も の と 認める。 ( 主 論 文 公表 誌 ) 日 本 疼 痛学 会 誌 第 28 巻 第 3 号 平 成 25 年
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