緊急通報のアクセシビリティへの取組の御紹介 ∼シームレスな - ITU-AJ

スポットライト
緊急通報のアクセシビリティへの取組の御紹介
∼シームレスな緊急通報の実現を目指して∼
株式会社NTTデータ経営研究所
ライフ・バリュー・クリエイションコンサルティングユニット マネージャー
1.緊急通報アクセシビリティワーキングパーティの設置背景と目的
なかばやし
ひろ し
中林 裕詞
が進んでいるように見える。しかしながらその内訳を見てみ
日本においては、高齢化の進展により、誰しもが病気や筋
ると(図2を参照)
、音声以外による緊急通報手段は4種類存
力の低下を要因として障がいを持つことも不思議なことでは
在するものの、そのうちFAXによる手段(FAX119)を導入
なくなってきた。そのため、障がいの有無を問わず、自立し
している消防本部が約8割を占めている。つまり、日本全国
た生活ができるユニバーサルな社会システムへと近年シフト
の大半の地域においては、聴覚・言語機能障がい者等は、
している傾向にある。
自宅や職場等のFAXが備え付けられている屋内でしか緊急通
その社会システムのインフラの一つに緊急通報が位置付け
報が利用できない状況にあり、屋外での緊急時には従来の音
られるわけだが、日本においては、その理念とは異なり、誰
声による緊急通報を利用しなければならないことを意味して
にでも利用可能な仕組みとはなっていない。
いる。
平成21年度までは、電話の「もしもし」
「はいはい」とい
一方、彼らの現在の主要なコミュニケーションツールは、
った音声による緊急通報の仕組みの整備を中心に推進され
屋内外で使用できる、ノートパソコンや携帯電話などの移動
てきた。具体的には、電話加入者情報(自宅所在地等)や
端末による電子メール等へとシフトしている(図3を参照)
。
携帯電話のセル情報・GPS測位機能を基に、通報者の位置
つまり、彼らの日常生活レベルでは、FAXよりも移動端末の
情報を緊急通報受理機関(警察本部や消防本部)に通知す
方がよく利用されており、前述のような緊急通報の利用環境
るシステム(位置情報通知システム)などである。
は、むしろ彼らの実生活に完全には適合しなくなりつつある
ところがこの音声による緊急通報の仕組みでは、いったん
通報者が緊急電話番号(119番など)をかけ、緊急通報受理
ことを意味する。
このように、主要なコミュニケーションツールが時代とと
機関の受付員に対し音声による意思表示(通報してきた目
的など)を行う必要がある。そのため、聴覚障がいの方や一
なし
9%
時的に発話が困難になった方にとっては、緊急通報そのもの
が困難な状況にある。日本においては、音声による緊急通報
あり
91%
が困難と想定される人(障害者手帳交付者及び交付者以外)
が、約2,000万人もいると言われている。
一方、近年のグローバル化の進展により、海外からの来日
旅行者や、日本からの海外渡航者においては、自身が習得
出所:平成22年度総務省消防庁「聴覚・言語機能障がいに対応した
緊急通報技術に関する検討会」報告書より
していない言語を公用語として使用する国に滞在することも
あり得る。この場合、どのような人も音声による意思表示が
難しくなり、自身での緊急通報が困難となる点においては上
記と同様である。
このように、今後は高齢化や海外渡航者の増加に伴い、
これら音声による緊急通報が困難な人も相対的に増えていく
図1.消防本部における音声以外の緊急通報手段の採用状況
(平成22年度時点)
あり
なし
84%
FAX
16%
20%
電子メール
80%
可能性があることから、音声以外による新たな緊急通報手段
を構築していくことが求められている。
では、日本における音声以外による緊急通報手段の整備
状況はどのような状況かというと、平成22年度の段階でかつ
消防本部側に関する統計では(図1を参照)
、日本全国の消
防本部の約9割で何らかの手段が導入され、全体的には整備
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ITUジャーナル Vol. 44 No. 8(2014, 8)
WEB
3%
97%
52%
緊急通報システム
0%
20%
48%
40%
60%
80%
100%
出所:平成22年度総務省消防庁「聴覚・言語機能障がいに対応した
緊急通報技術に関する検討会」報告書より
図2.採用されている音声以外の緊急通報手段の内訳(平成22年度時点)
Q3-2.通信手段の利用頻度(自宅)
0.0%
20.0%
80.0%
100.0%
2.0%1.0%
16.3%
3.7%1.2%
11.1% 7.4%
2.9%
22.4%
51.9%
1.4%
11.6%
24.7%
10.1% 10.1%
PC(Webカメラ)
(N=70) 5.7% 7.1% 11.4%
63.8%
11.4%
4.3%
60.0%
3.8%1.0%
92.4%
携帯(電子メール)
(N=105)
携帯(チャット)
(N=86) 7.0% 8.1%
3.3%
10.9%
携帯(テレビ電話)
(N=92)
固定電話(テレビ電話)
(N=82)4.8%
4.7%
5.8%
15.2%
1.9%1.0%
1.2%
73.3%
19.6%
1.1%
50.0%
33.3%
4.8%
28.6%
その他(N=10) 10.0%
毎日利用
60.0%
43.9%
PC(電子メール)
(N=81)
PC(チャット)
(N=69)
40.0%
14.3%
FAX(N=98)
70.0%
1週間に何回か利用
1か月に何回か利用
4.8%
23.8%
20.0%
年間、何回か利用
使わない
わからない
Q3-3.通信手段の利用頻度(自宅外)
0.0%
FAX(N=97) 10.3%
20.0%
40.0%
20.6%
33.0%
2.5%1.2%1.2%
PC(チャット)
(N=81) 6.2%
3.6%
PC(Webカメラ)
(N=83)3.6%
4.8%
7.2%
100.0%
46.2%
1.1%
1.2%
87.7%
1.2%
0.9%1.9%
6.6%
0.9%0.9%
4.5%
86.7%
88.7%
携帯(電子メール)
(N=106)
1.1%
携帯(チャット)
(N=88) 8.0% 6.8%4.5%
3.3%
携帯(テレビ電話)
(N=92)
14.1%
12.0%
1.2%
固定電話(テレビ電話)
(N=82)
6.1%
3.7%
その他(N=12) 8.3%
1週間に何回か利用
80.0%
46.4%
8.8% 4.4%6.6%
PC(電子メール)
(N=91)
毎日利用
60.0%
15.5%
75.0%
8.7%
60.9%
1.1%
87.8%
1.2%
16.7%
75.0%
1か月に何回か利用
年間、何回か利用
使わない
わからない
出所:平成22年度総務省消防庁「聴覚・言語機能障がいに対応した緊急通報技術に関する検討会」報告書より
図3.コミュニケーションツールの利用状況
もに変化していっているのにあわせ、音声以外の緊急通報手
は、聴覚・言語機能障がい者団体の関係者、消防機関関係
段においても、利用者にとって使いやすく、かつその時々の
者などの本検討に関連する様々な利害関係者、及び要約筆
通信技術に即した仕組みを整備していくことが求められてい
記者・手話通訳士を加えた構成となっている。
る。
災害時のインフラ対策の観点からは、災害時に強いとされ
なお、本検討は、平成22年度総務省消防庁主催「聴覚・
言語機能障がいに対応した緊急通報技術に関する検討会」
ていた音声による緊急通報の仕組み自体も、平成23年3月11
において提示された、
「引き続き民間活力による技術開発を
日の東日本大震災発生時にはつながらないといった接続不良
進める」という指針を引き継ぐ形で行っている。また、平成
(呼損)が生じ、必ずしも万能ではないことが確認されてい
24年度より今年度(平成26年度)までの3年間にわたり、消
る。一方で、携帯電話等で使用されているパケット通信は比
防防災科学技術研究推進制度を活用している。
較的通信を確保しやすいという現象も確認されている。この
ことから、移動端末を活用した音声以外の新たな通報手段
2.これまでの検討進捗状況
は、聴覚・言語機能障がい者のみならず、音声による緊急
通報の仕組みを補完する手段としても期待されているのであ
る。
これら課題を解決すべく、平成24年度からは一般社団法
緊急通報アクセシビリティワーキングパーティは、平成24
年度から今年度までの3年間を一つの区切りとして、前述の
目的実現を図る有期限の会合となっている。検討の対象とし
人情報通信技術委員会(TTC)のスマートコミュニケーショ
ては、聴覚・言語機能障がい者の方々からもニーズが高く、
ンAG傘下に緊急通報アクセシビリティワーキングパーティを
かつ優先度を上げて解決を図る必要がある「火事・救急時」
設置し、
「どこでも」
「誰であっても」
「どのような状況でも」
の対応、すなわち消防本部への緊急通報技術の構築に絞って
つながる、
「シームレスな緊急通報」の実現と、そのインター
いる。
フェースの国際標準化へ向けた検討を進めている。メンバー
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研究範囲
直接通報機能
スマートフォンの画面
操作のみで消防本部
と情報の送受を行う
通報者
(聴覚・言語機能
障がい者)
Net119ゲート
ウェイ
ユーザー情報
位置情報
通報内容
消防本部
閉域網
ユーザー情報、
位置情報、
その
他通報内容
代替通信網
注)通報者は、
事前登録を行
う必要がある。
Internet
携帯キャリア
ネットワーク
(パケット)
通報者の最寄りの消
防本部の連絡先
音声通話
(手話を通訳)
手話画像
(文字情報など)
+
ユーザー情報、
位置情報
リレーサービス経由機能
リレーサービスセンターを中継し手話通訳
ないし要約通訳を行う。消防本部は、通
訳との会話で詳細を聞き取る。
電話網
リレーサービス
センター
出所:消防防災科学技術研究推進制度平成25年度研究成果報告会発表用資料より
図4.サービスモデル(Net119)
(1)平成24年度:「調査・研究フェーズ」
検討初年度である平成24年度は、
「調査・研究フェーズ」
く。これは、ITU-T F.703の「Total Conversation」を
実現したイメージでもある。
として位置付け、通報する側(聴覚・言語機能障がい者)
③通報者がNet119を通して消防本部やリレーサービスセ
及び受け付ける側(消防本部)双方の要求事項を整理した。
ンターへの接続を行う際に、他のスパム等の受信を排除
加えて国内外の通信技術・サービス動向に関する調査結果
し接続先の自動振り分けを実施するゲートウェイ(GW)
を踏まえ、サービスモデル(Net119)を設定した。障がいを
を設置する。なお、自動振り分け機能については、GPS
持っても引き続き自立した生活を送ることができるように、
測位情報に基づく管轄先消防本部を割り出すものと、
可能な限り障がい者自身で通報が完結できるモデル設定とな
接続可能なリレーセンター(オペレーターが待機してい
っている。
るセンター)を割り出すものの二つとなる。
特徴を簡単に整理すると、以下のとおりである。
①通報者の利用端末は、聴覚・言語機能障がい者が日常
オペレーターを介して手話通訳及び将来的には外国語通
訳等の様々なサービスを担う可能性のあるリレーサービスは、
的にコミュニケーション手段として使用している、携帯
欧米諸国をはじめ多くの国々において一般的な情報保障サ
電話・スマートフォン等の移動端末とする。なお、一部
ービスとして既に定着している。一方、日本では諸外国に比
海外でサービス提供が行われているアプリ方式ではなく、
べてかなり普及が遅れており、当該サービスの存在を知らな
ウェブ方式でサービスを提供する。
い人の方が大半である。聴覚・言語機能障がいの方の中で
②ネットワークのうち、消防本部側との接続は、現状音声
は手話のみがコミュニケーション手段として利用可能な人も
による仕組みで利用されている閉域網を利用することを
いることから、アクセシビリティの観点からは大きな課題と
想定している。ただし、同閉域網は帯域幅に上限があ
言え、諸外国並みの水準へ普及を促していくことが求められ
るため、当面は通報者と消防本部との情報の送受信形
ている。
式はテキストベースとし、通報種別(火事か救急か)
、
GPS測位情報及び事前登録による通報者の個人情報等
ービス事業者への接続はアクセシビリティ上必要である。ま
のやり取りに限定する。将来的な技術発展により、通
た、国際標準を目指す上では接続は必須である。したがっ
信網の帯域拡張、大容量情報の圧縮伝送等が実現され
て、サービスモデル設定当初の段階からNet119にはリレーサ
ることを見据え、静止画や音声データを含む動画など、
ービスとの接続を標準型として組み込んだ次第である。
あらゆる媒体での双方向通信の実現を視野に入れてお
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音声以外の緊急通報の仕組みを構築する上でもリレーサ
ITUジャーナル Vol. 44 No. 8(2014, 8)
(2)平成25年度:「サービス設計フェーズ」
ールをUIガイドラインとして定めた。また、消防本部側
平成25年度は、
「サービス設計フェーズ」として位置付け、
においては、指令員が音声による緊急通報の仕組み
平成24年度に設定したサービスモデル(Net119)を実現す
(位置情報通知システム)の画面構成・操作遷移に慣
るために必要な各関連設備のソフトウェア設計書の作成を行
れており、また扱う情報内容が位置情報通知システム
った。
と大差ないことから、当該システムのインターフェース
本設計書の作成に当たっては、知的財産の保護が必要な
をベースとして設定している。
ため、緊急通報アクセシビリティワーキングパーティとは別
③Net119ゲートウェイ(GW)
に「シームレスな緊急通報に係る技術検討会」を設置し、有
前述の(1)の③の機能を具備することとしている。
志団体と一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)との間
④電文シーケンス及び電文フォーマット
で守秘義務条項を含む同意書を締結している。そのため、本
通報時のシステム状態遷移図、システム処理に関する
レポートでは設計書の中身については詳述できないが、概要
シーケンスを明記している。また、電文インターフェー
は次のとおりである。
スの検討として、通信プロトコル、電文フォーマット、
①Net119業務フロー
電文内容、暗号化方式を定義している。
Net119を利用する前に利用者側で必要となる個人情報
⑤ネットワーク
登録フロー、及び実際の通報時における消防本部側の業
平常時と大規模災害時において、通報者側及び消防本
務フローを整理している。特に通報時(第一報)では消
部側のそれぞれで用いるネットワークを定義している。
防本部側が最低限必要とする情報に絞り込み、その後
消防本部側においては、通常時及び大規模災害時のい
必要に応じてチャットを用い詳細な内容をやり取りする
ずれにおいても閉域網を利用することに変わりはないが、
といった、フローの簡略化を行っている。
通報者側においては、大規模災害時に携帯通信事業者
②ユーザーインターフェース
網に何らかの不具合が生じている場合、代替通信網へ
Net119におけるユーザーは、通報者・消防本部の両方
の接続切替えを行う。
が該当することから、両者のユーザーインターフェース
について定義している。通報者側においては、障がい種
(3)平成26年度:「実証フェーズ」
別や色覚等考慮すべき画面デザインに係る基本的なル
過去2年間の研究成果を踏まえ、平成26年度は「実証フ
③
問い合わせ回答等をメールにて返信
別の消防指令台システム
を想定した受信端末
運用者
①
Net119ゲートウェイ
Internet
消防指令台
システム
HTTPS
IP-VPN網
(3G/4G/Wi-Fi)
HTTP
呼び返しメール
通報者
呼び返し
(スマートフォン)
②
HTML
公衆電話回線
リレーセンタ
出所:消防防災科学技術研究推進制度平成25年度研究成果報告会発表用資料より
図5.平成26年度実証試験当初案(変更前)
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ェーズ」として位置付け、3か年事業の仕上げとしての検証
APPLICATION LAYER INFORMATION SPECIFICA-
を現在行っている。
TION AT THE TERMINAL TO NETWORK INTERFACE
具体的には、昨年度(平成25年度)に作成したソフトウェ
FOR PEOPLE WITH HEARING AND SPEAKING DIFFI-
ア設計書を元に、Net119を実現するためのゲートウェイ設備
CULTIES TO REQUEST RESCUE TO EMERGNECY
及び消防本部側の受信装置、の二つのプロトタイプの開発と
RESCUE AGENCIES(聴覚障がい者が緊急通報するための
実証を行っている。また、日本においても複数のリレーサー
端末―ネットワーク・インターフェースにおけるアプリケー
ビス事業者がサービスを開始したことから、これら既存の事
ションレイヤの情報仕様を勧告化するための新検討課題の提
業者に協力いただく形で、ゲートウェイ設備からリレーサー
案)
」
)
。これを機に、今後当該テーマに関して、様々な議論
ビス事業者への接続についても検証を実施する予定である。
が積極的に行われることを期待している。
上記検証の結果を取りまとめ、3か年の研究成果を踏まえ
た最終的なアウトプットとして、国際標準の原案となる仕様
4.今後の課題
書を作成することが目標となっている。
このように具体的な目標を持って技術的な検討を進めてき
たNet119だが、今後は実際に国内外の多くの方に利用いた
3.国際標準化への対応状況:ITU-T SG16札幌会合への寄書
上記のとおり、今年度の最終目標は国際標準の原案とな
だけるように、上記国際標準化への対応とともに、以下の対
応を行っていきたいと考えている。
る仕様書を作成し、次年度以降の本格的な国際標準への準
備を進めることとしているが、元々緊急通報アクセシビリテ
(1)事業者参入条件・ルールの整備
ィワーキングパーティでは、国際標準化を視野に入れたサー
日本国内でのNet119サービスインは、翌年度の平成27年
ビスモデルの設定、およびソフトウェア設計書の策定に取り
度中を目標としているが、緊急通報という性格上、新規参
組んできた。海外におけるNet119に類似するサービス事例を
入を希望する事業者に対しては、遵守すべきルールや条件等
調査するとともに、国際的な議論の動向について確認を行い
の設定が必要であると考えている。緊急通報アクセシビリテ
ながら、国際標準となる可能性のある条件を詰めてきた次第
ィワーキングパーティでは昨年度(平成25年度)より運用面
である。
についても議論を始めているが、現在の民間ベースでの議論
Net119と類似のサービスを提供している事例としては、西
では仮に参入条件を設けたとしても、具体的な拘束力を持た
欧諸国の112やマレーシアのSaveMe 999などが挙げられる
せることは難しい。そのため、今年度のアウトプットとして、
が、数としては多くない。
前述の仕様書とは別に、運用面に関して整備すべきルールや
一方、国際的な議論として主だったものとしては、Dr. Leo
Lehmannによる「Accessibility support for persons with
条件を取りまとめ、関係機関への要望書として提出していく
予定である。
disabilities by Total Conversation Service Mobility
Management in Next Generation Networks」のタイトルで
問題提起がなされたのと、タイトル「INTELLIGENT COM-
(2)利用対象者及び利用目的の拡張
前述のとおり、これまでは議論を整理しやすくするため、
MUNICATION MESSAGING USING SMARTPHONES」
利用対象者を聴覚・言語機能障がいの方に、利用目的を消
で上記SaveMe 999の事例紹介が行われた程度であり、ITU-
防本部側の「火事・救急」事案に、とそれぞれ範囲を限定
Tではまだ本格的には検討課題として取り上げられていない
して検討を進めてきた。一方、当該技術は、聴覚・言語機
状況にある。上記事例と併せても、まさしくこれからのテー
能障がいの方だけではなく、他の方も広く利用することが可
マであると言える。
能であり、また「火事・救急」に限らず同様の緊急通報受
そのため、緊急通報アクセシビリティワーキングパーティ
のこれまでの検討成果を基に、今年6月30日∼7月11日にか
理機関(警察・ハイウェイパトロールなど)への通報に用い
ることが可能である。
けて開催されたITU-T SG16札幌会合へ寄書を行ったところ
したがって、国際標準化の議論の中で、今後は利用対象
である(タイトルは「PROPOSAL OF A NEW STUDY
者及び利用目的の拡張を盛り込んでいきたいと考えている。
ITEM TO PRODUCE A NEW RECOMMENDATION:
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ITUジャーナル Vol. 44 No. 8(2014, 8)