〝ロボット化〟がけん引する モノづくり「イノベーション」 AREA FOCUS KITAKYUSHU るなか、その担い手として注目されるロボット。特に、産業用 ロボットは自動車業界で普及が進み、食品や医薬品製造など 新たな領域も広がりつつある。一方、中小企業にとっても労 働力不足は深刻な経営課題だが、コストなどの問題から産業 用ロボットの普及はあまり進んでいない。モノづくり企業が 集積する北九州市では、産業用ロボットの導入支援のほか、 「スマート産業用ロボット」の開発など、日本初の〝ロボット 少子高齢化の進展で生産年齢人口(15歳─64歳)が 8000万人を割り込むなど、新たな労働力の確保が急務とな ( 億円) 、次世代ロボット中核 技術開発( 億円)などのそれぞ れ新規事業として概算要求し力 を入れている。 経 産省によれば、産 業用ロボ ットの世 界 市 場は金 額ベースで %成長、 年 人の代わりに自動車産業などの 製造現場などで作業する産業用ロ 年間に約 直近 億9700万㌦ 界市場を見据えた成長産業に育 り札として活用するとともに、世 上など、産業用ロボットをその切 の補完やサービス部門の生産性向 産年齢人口の減少による人手不足 首相の肝いりで、少子高齢化、生 稼働する約115万台のうちアジ 電子産業が半分を占める。世界で トの需要先は自動車産業と電気・ る。また、世界での産業用ロボッ 業のシェアは ・ %となってい (6628億円)で、うち日本企 同会議では2020年までにロ ボットの市場規模を製造分野で現 在の 倍、サービス・農業分野で 50 スタープラン(基本計画)を策定 KUKA(ドイツ)と並んでビッ で、ファナック、ABB(スイス) 、 億 円) 、ロボット活用型市 場 化 適用 技 術 開 発 プロジェクト 業( 連 予 算で、ロボット 導 入 実 証 事 15 と称されるが、製品出荷 額、 し、その中では東京オリンピック 済産業省では 年度のロボット関 このロボット革命実現のため、経 リンピック」などを検討している。 を諸外国と競い合う「ロボットオ グ また、九 州のロボット 企 業の 代表 格は安川電機(北九州市) いる。 の地域別では九州は 位となって める。国内のロボット製品出荷額 27 2 3 催された。 ア地域に 割が集中しており、日 の市場 規 模は 11 成する戦略を策定するための「第 月、安倍晋三 60 84 本が約 万台(シェア %)を占 まっている。今年 ボットへの期待は国レベルでも高 生産年齢人口減少を補う 〝切り札〟 の産業用ロボット 10 5 31 に合わせて最先端のロボット技術 20 生産台数は世界 位を誇る。 4 その安川電機が本社を構える 北九州市では、若松区にある北九 「ロボット都市」 実現に向け ロボットフォーラムを設立 1 56 Zaikai Kyushu / FEB.2015 15 5 1回ロボット革命実現会議」が開 9 倍程度に拡大するとともに、マ 2 22 都市〟実現化に向けた動きが本格化している。 「ロボット道場」 での操作教育の写真 (FAIS提供) 九州市立大、早稲田大でそれぞれ 州学 研 都 市 内で九州工業大、北 場で既存のコンベアなどと組み合 日本では産業用ロボットを生産現 裾野が広がりつつある。ところが、 わせ、効率的な自動化システムを ロボット関連の研究開発が行われ ており、安川電機などを加えた産 中小の導入に特化し 実践的な支援体制も をアピールし、ロボット導入によ る地元企業のモノづくり力の強化 の一環として、ロボット導入を支 援する「産業用ロボット導入支援 月に学 研 都 市内に開設した。同センターでは 学研都市で行われた産学連携フ つが中小企業への導入支援である。 鉄板の溶接技術を持つロボットと、 市が積極的に進めている施策の一 相談窓口のほか、センターにある 年 一方で、大企業だけではなく、 地域の中小企業にとっても産業用 中小企業の生産性 向上に関する 学術推進機構(FAIS)は、市 ェアで講演した安川電機の津田純 センター」を ター(SI) 」の数が足らないとい ロボットの導入は重要だ。北九州 考案する「システムインテグレー している。そこで、市と産学連携 う。このことは 年 月に北九州 学連携による高 度な技術が蓄積 を担う第三セクターの北九州産業 内に蓄積された要素技術の活用を 市は 年度に「モノづくり力強化 ロボットを使っての基礎的な操作 構成されており、研究開発支援や 団体(企業、大学、研究機関)で を設立した。現在、183の個人・ 年に「北九州ロボットフォーラム」 方で、日本の企業は〝目に見えな この背景には欧米には生産技術 を商売にする企業が数多くある一 の技術者育成が急務となっている。 産業用ロボットを使いこなすため ットを導入した企業の課題として ていることがわかった。一方、ロボ の初期投資の負担感が強いと感じ また、その理由にはロボット導入 集してのロボット産業拠点の形成 も特 徴だ。こうした産学 官が結 践的なアドバイスや支援を行うの の製造現場に出向いて見学し、実 コーディネーターに就任し、実際 たことがない」という結果だった。 発などを行う。また、企業OBが に「ロボットセン ット導入効果を享 ている」などロボ する人材が不足し 「ロボットを操 作 ながらなかった」 割を占め、 「生産効率向上につ 競争力が低下しない社会構築を ても地域企業の生産性を維持し、 ンターは「生産年齢人口が減少し あり、FAISのロボット技術セ 九州市だけで行われているもので を図る取り組みは、全国的にも北 産業用ロボット導入で 生産性は %以上向上 目指していく」と話している。 が少ないこともわ かった。 そこで市 と FAISはロボッ ト導入のメリット 同センターは企業訪問を 年 受できている企業 道場)やロボットの周辺装置の開 実用化・事業化支援などを行って い〟生産技術に対してコストを掛 はメンテナンスコストの上昇が約 産業用ロボットの導入はこれま で自動車産業などの一部に限られ タ 」の 開 設 を 国 割の企業が「導入を検討し いる。また、 年には福岡県、福 ける考え方が定着していないこと ていたが、食料品や医薬品製造な 内外で進めており、 ロボット技術センターが入居する施設(学研都市) 約 岡市と共同で、ロボット関連産業 業振興会議」を設立している。 業用ロボットの操 作技術を学べる教 育施設が整ってい ないことから、安 ど、従 来は生産 技 術があまりな 将来は数十カ所に ロボットの稼働を支える 生産技術の 「プロ」 が不足 じまなかった業界でも、労働力確 広げる見通しだ。 川 電 機では 独 自 保の点から産業用ロボット導入の 50 の育成を含め、産 がある。そのため、日本にはSI 米とはSIの数で差が付いており、 ジー)等活用調査」を実施したが、 教育を含めた人材育成(ロボット のためのRT(ロボットテクノロ 運搬機能を持つロボットの 基の 嗣会長兼社長も言及しており、ロ 10 通じて、ロボット産業クラスター 13 ボットの稼働台数が増えている欧 10 を形成し、「ロボット都市・北九州」 14 の創出を目的とした「ロボット産 を実現することを目標に掲げ、 2 13 Zaikai Kyushu / FEB.2015 57 06 12 8 4 03 AREA FOCUS KITAKYUSHU 度は 件、 年度( 月末時 湯呑、 徳利、 皿 を箱に入れてね かしこまりました 湯呑、徳利、皿を 箱詰めします た。こうした取り組みで作業時間 りで誰でも簡単に操作でき、万能 ボット」 。その特徴は音声や身振 発、医療用使用済み薬剤 ストロボット化技術の開 港内手荷物カートの低コ や飛行観測システム、空 持訓練用などの医療向け や脊髄損傷者向け立位保 ており、これまで上肢リハビリ用 内発ロボット創生事業」を展開し 九州ロボットフォーラムでは「市 のロボット開発も進めている。北 援研究会」開催を通じてアシスト 業動作アシストツール職場導入支 に課題がある。FAISでは「作 ーゲット設定や安全性の検証など 用側ともに、動作や価格などのタ も開発しているが、開発者側、使 る。アシスト機器は大手メーカー ツ)の導入促進にも取り組んでい する「ロボットスーツ」 (K─スー 持ち上げたりする作業をアシスト 他方では建設現場や農作業、 介護作業など重たい物を運んだり ボットの開発を進めている。 業の現場で使いやすいスマートロ トとは異なる、シンプルで中小企 る点。大企業向けの産業用ロボッ 軽減できるコンパクトサイズとす に対応することに加え、コストが ロボットハンドでさまざまな作業 は半減し、生産性は %以上向上 することになった。 北九州独自のロボット 「産業用スマートロボット」 一方、FAISは導入支援だけ でなく、市内の中小企業を対象と 自動識別ロボットの開発 スーツへの理解を深めながら、地 した中小企業にも使いやすい独自 などに取り組んでいる。 的に検証していく考えだ。 軸ロボットに更新したことで、型・ まず、ロボット導入支援センタ ーで八幡電機精工の技術者に対し、 治具の再現ズレに対して、補正機 ーマにしている。K─ロボットが アーム(万能ハンド)の開発をテ はK─ロボットに用いられる安全 ン」がもたらす変革の未来に期待 「北九発モノづくりイノベーショ 発の素地と企業ニーズを生かした 市 だからこそ可 能だった研 究 開 導入支援だけでなく、北九州 独自ロボットの開発など、北九州 元企業での実証試験などで多角 年度からは「北九州 発!中小企業向け製造ロ ボット(K─ロボット) 」 の開発に取り組んでおり、 年度 能で修正し段取り時間を短縮し 目指すのは誰でも簡単に使え、人 施教育を行うとともに、プレスと ロボットの操作や応用法などの実 た。またロボットなどの配置を見 したいものだ。 6 と共に働ける「産業用スマートロ ロボットシステムを更新。ロボッ 58 Zaikai Kyushu / FEB.2015 点)で107件実施しているが、 相談などを含めるともっと増 えるという。すでにロボット導 入企業が 年度 社、 年度 九州市産業用ロボット導入支 援補助金を活用している企業 数で、こうした補助金を使わ ずに導入している企業も少な くない。 導入した 社である八幡電 機 精工(八 幡西区)は、安川 電機の協力企業として、安川 ブランドの 「VSモータ」 や 「AC サーボモータ」などを製造し、 売り上げの 割を安川電機向 けが占める。安川電機製品の 好調な売り上げもあり、昨今 は教育や改善活動に手が回らな いほど業務が多忙であることに加 え、経験の浅い若手が増えたこと や、製品体系の変化に伴い現場が 混乱したこともあり、産業用ロボ ットの導入をFAIS支援で行う 50 9 14 社となっている。これらは北 3 直し、移動距離の無駄を排除し 14 人が離れると高速動作が可能になる トシステムでは 軸から最新の 3 85 ことにした。 13 【昼】【夜】 万能ハンド(実物) 人が近付くと自動的にスロー モードになる K─ロボットの適応イメージ 図と開発中の 「アシストスーツ」 (下) 14 13 1 7 様々な形の品物を箱詰めするロボット K−ロボット適応イメージ 4
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