国家公務員共済組合連合会熊本中央病院 麻酔科後期研修概要(平成 26 年 12 月現在) 1 麻酔科後期研修のコンセプト 1)到達目標 周術期における生体管理を中心としながら、麻酔科研修の基本となる呼吸・循環管理、疼 痛管理、心肺蘇生や術前診察における問題点の把握を身につけるとともに、救急医療や集 中治療における全身管理のできる医師を目指す。 2)取得できる認定医資格等 麻酔科標榜医 主な申請資格:日本麻酔科学会認定指導病院等において 2 年以上麻酔を修練(卒後初期 研修中の麻酔科研修期間を含む) 審査方法:厚生労働省が実施する書類審査 麻酔科専門医 主な申請資格:認定医として 2 年以上麻酔科関連業務に専従。所定の研究実績。 審査方法:日本麻酔科学会が実施する筆記試験、口頭試験、実技試験 麻酔科指導医 主な申請資格:専門医の資格取得後 5 年以上継続して麻酔科関連業務に専従。学術集会 等への参加 実績、指導実績 審査方法:日本麻酔科学会が実施する書類審査 心臓血管麻酔専門医 主な申請資格:専門医の資格取得、JB-POT 合格、所定の心臓血管麻酔経験、研究実績 学術集会等への参加 審査方法:心臓血管麻酔学会が実施する書類審査、筆記試験 2 研修期間、研修目標等 1)研修期間 1 年間以上、延長可 2)研修責任者 馬場 知子:麻酔科部長、日本麻酔科学会麻酔科指導医・専門医・認定医、麻酔科標榜医、 日本心臓血管麻酔学会暫定専門医 前川 謙悟:麻酔科医長、日本麻酔科学会麻酔科指導医・専門医・認定医、麻酔科標榜医、 日本心臓血管麻酔学会暫定専門医 徳永祐希子:麻酔科スタッフ、日本麻酔科学会麻酔科専門医・認定医、麻酔科標榜医 1 3)本院における経験すべき症例、修得すべき手技等(平成 26 年 12 月現在) 一般外科全身麻酔 200 例 硬膜外麻酔・脊髄くも膜下麻酔 心臓血管麻酔(冠動脈バイパス術、弁置換術等) 肺動脈カテーテル挿入 30 例 100 例 30 例 経胸壁心エコー、経食道心エコー、頸部血管エコー 4)本院麻酔科の特色 循環器疾患合併や人工透析患者等の重症患者が多い。また、心臓血管麻酔の症例も豊富にあり、 研究論文執筆や学会発表等も積極的に行っている。 5)麻酔科プログラムに関する質問 馬場 知子 3 E-mail:[email protected] 研修目標および研修内容 <研修目標> ・主に日本麻酔科学会作成「麻酔科医のための教育ガイドライン」に準じ、麻酔科医が得意と する迅速でダイナミックな生命管理を行い、緊急患者も含め全症例に対し危機管理のエキス パートとなれる。 <術前管理> ・ 高齢者・循環器疾患合併患者・糖尿病患者・長期透析患者の全身評価を系統的に行い、問 題点の把握(心筋虚血の鑑別診断・脳梗塞の危険等)と術中術後管理の計画ができる。 ・ 低肺機能患者や心不全あるいは虚血性心疾患の合併、透析患者の術前評価に際し、各科(呼 吸器科・循環器科・腎臓科等)との連携をとりながら、周術期における患者管理ができる。 <気道・呼吸> ・ 術前診察において気道確保困難症の評価を行い、また不意の挿管困難症患者に対しても患 者の呼吸循環を安全に維持しつつ、気道確保(ファイバー挿管やラリンジアルマスク)を施 行できる。 ・ 呼吸器外科における肺葉切除術に際し、症例・術式に応じ適切な気管チューブ(ユニベン トチューブ、ダブルルーメンチューブ)を選択し血液ガス分析やカプノグラムの波形から早 期に低酸素血症等を予測かつ対応し、片肺麻酔を安全に施行できる。 <循環> ・ 非心臓手術患者における周術期心血管系の評価に際し、循環器内科へのコンサルトととも に適切な追加検査とその評価が行える。 ・ 心臓血管外科症例(冠動脈バイパス術・心拍動下冠動脈バイパス術・弁置換術・大血管手 術等)において、中枢神経・呼吸・循環・代謝等の問題点を把握し準備・対応できる。また、 内頸静脈から肺動脈カテーテルを挿入でき、その測定結果を循環管理に応用できる。術中管 理に際し、経食道心エコー法で心機能評価や解剖学的異常の評価ができ、大量出血に対して 適切な輸液・輸血ができる。 2 ・ 体外循環や補助循環の基礎知識や原理を理解し、生体に及ぼす影響を加味しつつ生命維持 できる。 <蘇生・その他> ・ 院内救急コールにおいて積極的に蘇生チームに参加し、二次救命処置(ACLS)を行える。 ・ スタンダードプリコーション(標準予防策)の概念を理解し、適切な感染対策を施行でき る。 ・ 臨床医学研究の立案、計画、実行に携わり、科学的な思考過程や統計学的手法の応用を学 び、学会発表や研究論文執筆を経験する。 4 2013 年の主な研究と学会発表 1) 学会発表 ・大動脈弁狭窄症に対する弁置換術における術後高次脳機能障害の危険因子の比較 棚平大、馬場知子、前川謙悟、大友純、井上理恵 第 60 回日本麻酔科学会 2013.5(札幌) ・心臓大血管手術後せん妄の危険因子 大友純、井上理恵、棚平大、前川謙悟、馬場知子 第 60 回日本麻酔科学会 2013.5(札幌) ・大血管手術後高次脳機能障害の危険因子 大友純、馬場知子、大吉貴文、徳永祐希子、前川謙悟 第 18 回日本心臓血管麻酔学会 2013.9(小倉) ・専門医コースレクチャー 脳脊髄 心臓手術後脳障害 前川謙悟 第 18 回日本心臓血管麻酔学会 2013.9(小倉) ・重症心不全を合併した Emery-Dreifuss 型筋ジストロフィー患者に対する開心術の 1 症例 徳永祐希子、馬場知子、大吉貴文、大友純、前川謙悟 第 51 回九州麻酔学会 2013.9(熊本) ・大動脈弁狭窄症に対する弁置換後の高次脳機能障害予測における脳波伝播速度の有用性 大吉貴文、徳永祐希子、大友純、前川謙悟、馬場知子 第 16 回日本栓子検出と治療学会 2013.10(名古屋) ・胸部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術後、白血球数と C 反応性蛋白の異常高値と壊 疽性膿皮症を認めた症例 大吉貴文、徳永祐希子、大友純、前川謙悟、馬場知子 第 33 回日本臨床麻酔学会 2013.11(金沢) 3 ・Cerebral white matter lesions as a risk factor for cognitive dysfunction after coronary artery bypass graft in octogenarians Inoue R, Baba T, Maekawa K, Otomo S, Tanahira D 第 35 回 Society of Cardiovascular Anesthesiologists 2013.4(Miami) ・Factors influencing stroke after thoracic aortic surgery using selective cerebral perfusion Baba T, Maekawa K, Otomo S, Tanahira D, Inoue R 第 35 回 Society of Cardiovascular Anesthesiologists 2013.4(Miami) 2) その他発表 ・胸部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術後、WBC、CRP の異常高値と壊疽性濃皮症を 認めた 1 症例 馬場知子、前川謙悟、大友純、棚平大、井上理恵 第 37 回熊本救急・集中治療研究会 2013.2(熊本) ・心臓手術後脳障害とその予防 前川謙悟 第 16 回熊本麻酔フォーラム 2013.6(熊本) 3)研究論文等 ・患者、輸血製剤の双方に抗白血球抗体を検出した輸血関連急性肺障害の 1 症例 前川謙悟、磯部直史、藤本昌史、野中嵩広、大友純、馬場知子、前田康子 麻酔 62 巻 92-94,2013 ・術後せん妄に対しハロペリドールを投与直後に急性ジストニアを呈した 1 症例 大友純、馬場知子、前川謙悟、問端朋、小柳祐希子 臨床麻酔 37 巻 86-88,2013 ・胸部大動脈瘤術後に両側の視力低下で発症した Posterior Reversible Encephalopathy Syndrome(PRES)の 1 症例 磯部直史、大友純、前川謙悟、馬場知子、片平和博、村田恭啓 日臨麻会誌 33 巻 578-583,2013 ・術後の神経学的障害と高次脳機能障害 前川謙悟、後藤倶子 徹底ガイド心臓麻酔Q&A新装版 241-245,2013 ・Pre-existing cerebral infarcts as a risk factor for delirium after coronary artery bypass graft surgery Otomo S, Maekawa K, Goto T, Baba T, Yoshitake A Interact Cardiovasc Thorac Surg 17:799-865,2013 4
© Copyright 2024 ExpyDoc