ロシア経済は油価急落で悪化へ

みずほインサイト
欧 州
2015 年 1 月 20 日
ロシア経済は油価急落で悪化へ
欧米調査部主任研究員
短期的にはデフォルトリスクは限定的
03-3591-1317
金野雄五
[email protected]
○ 2014年12月、ルーブルが急落した。この背景には、同年後半の油価下落、欧米諸国による制裁発動
(8月)、米議会の追加制裁法案可決(12月13日)による資本流出の加速がある
○ ルーブル急落により、対外債務の返済負担は増大するものの、民間部門の対外債権、ロシア中銀の
外貨準備とも潤沢であることから、短期的にはデフォルトリスクは大きくないと考えられる
○ 一方、油価下落による実体経済への悪影響は避けられそうにない。2015年には、リーマンショック
後の2009年に匹敵する交易条件の悪化を通じて、成長率が大幅なマイナスとなる可能性がある
1.ルーブル急落をめぐる動向
2014年後半に下落基調を強めてきたルーブルの為替相場は12月中旬に急落した。ルーブルの対ド
ル・レートは12月の1カ月間で約20%の下落、2014年通年では50%近い下落となった(図表1)。こう
したルーブルの大幅下落の背景としては、同年後半における原油価格の下落、欧米諸国による経済制
裁の発動(8月1日)に加え、米議会の対ロシア追加制裁法案1の可決(12月13日)により、資本流出が
加速したことがある。
ルーブル急落に対するロシア金融当局の政策対応は、利上げを中心とするものとなっている。ロシ
ア中銀は12月16日、政策金利(7日物レポレート)を一気に6.5%ポイント引き上げ17%とした(図表2)。
図表 1
ルーブル相場と原油価格
(ドル/バレル)
図表 2
(ルーブル/ドル)
20
20
110
30
15
90
40
70
原油価格
50
50
ルーブル(右軸)
60
70
10
2014/1
3
5
7
9
(億ドル)
(%)
130
30
政策金利と為替介入額
400
外貨売り介入(右軸)
政策金利
300
10
200
5
100
0
0
▲ 100
▲5
80
11 2015/1 (年/月)
2014/1
(注)原油価格はブレント。
(出所)Bloomberg より、みずほ総合研究所作成。
3
5
7
9
11
(注)政策金利は7日物レポレート。
(出所)CBR より、みずほ総合研究所作成。
1
(年/月)
一方、ルー
ーブル防衛を
を目的とする
る為替介入(
(外貨売り)の規模は、ルーブルの下
下落圧力がや
やや強まっ
た2014年33月と10月に、それぞれ2
250億ドル、2290億ドルに
に達していた
たが、ルーブル
ル急落が生じた12月の
介入額は120億ドルに留まった。ロシア中銀は
ロ
は、2014年11月
月10日に変動
動相場制への
の移行を決定
定しており、
この決定に
に基づいて12月の為替介
介入額が抑制
制され、大規
規模な為替介入に代わるル
ルーブル防衛
衛策として
12月16日の
の大幅な利上
上げが実施さ
されたものと
と考えられる2。なお、12
2月中旬のル
ルーブル急落時、市場で
はロシア政
政府が本格的
的な資本移動
動規制の導入
入に踏み切るとの見方が強まったもの
には導入に
のの、実際に
至らなかっ
った3。
2.ルー
ーブルおよび
び油価下落
落によるデフ
フォルトリ
リスクと財政
政への影響
響
ルーブル
ル下落と油価
価下落による
るロシアへの
の影響として
て、一般に最も強く懸念 されているの
のは、ルー
ブル下落に
による対外債
債務の返済負
負担増大に伴
伴うデフォル
ルトリスクと、油価下落に
による国家財
財政への影
響であろう
う。そこで以
以下では、こ
これら2つの
の点について
て現状を概観する。
(1)ルー
ーブル下落によるデフォルトリス
スクをどう見
見るか?
ロシアの
のデフォルト
トリスクの鍵
鍵を握るのは
は、公的部門ではなく民間
間部門である
る。2014年6月
月末時点の
ロシア全体
体の対外債務
務残高は7,30
00億ドルであ
あり、このう
うち約9割(
(6,600億ドル
ル)は民間部
部門(銀行:
2,100億ド
ドル、企業:4,500億ドル
ル)によるも
ものとなって
ている。この民間部門の対
対外債務残高
高のうち、
2015年内に
に返済期限が
が到来する債
債務の額は、元本・利子合
合計で1,190
0億ドル(銀行
行:420億ド
ドル、企業:
770億ドル
ル)、2016年上
上期中の返済
済期限到来額
額は450億ドル(銀行:1
140億ドル、企
企業:310億ドル)とみ
られている
る(図表3)。
。
況変化(さらなる油価
それでは
は、対外債務
務の返済能力
力はどうだろ
ろうか。結論
論から言えば、今後の状況
下落や欧米
米の制裁強化
化、格付けの
の引下げ等) によって、民間部門の個別企業レベ
ベルではデフ
フォルトリ
スクが高ま
まる可能性は
は否定できな
ないものの、 以下の理由
由から、少なくとも短期的
的には、ロシ
シアのデフ
ォルトリス
スクは高くな
ないと考えら
られる。
図表 3
民
民間部門の債
債務返済予定
定額と対外債
債権
図表
図 4
外貨
貨準備高の推
推移
(億ドル)
(億ドル)
)
銀行
(倍)
企業
2016
上期
2016
上期
2015
年内
2015
年内
(年)
(注)対外
外債務返済予定
定額は元利金合計
計。短期対外債権
権残高
(注)外貨準備
備高は金・SDR 等
等を含まない。短期債務は政府
府・
は 2014 年 6 月末時
時点。
(出所)CCBR より、みずほ総合研究所作
作成。
民間合計
計の短期対外債務
務残高。
(出所)CBR より、みずほ総合
よ
合研究所作成。
2
第1に、民間部門が
が保有する多
多額の対外債
債権の存在で
である。これまでほぼ恒常
常的にロシア
ア資本の海
外流出が生
生じてきた結
結果、ロシアの民間部門 には、2014年
年6月末時点で
で5,400億ド
ドルの対外債
債権残高(銀
行:2,900億
億ドル、企業
業:2,500億ドル)がある
る。このうち
ち、期間1年以
以下の短期対
対外債権の残
残高は2,400
億ドル(銀
銀行部門、企
企業部門とも
も約1,200億ド
ドルずつ)に
に達する。つ
つまり、ロシ アの銀行・企
企業部門と
もに、向こ
こう1年半の
の間に返済期
期限が到来す
する対外債務
務を上回る額の短期対外債
債権を有して
ている。
第2に、依然として
て潤沢な外貨
貨準備を背景
景に、政府・中銀の政策対応の余地が
が大きい。ロシア中銀
の外貨準備
備高は、20144年中に実施
施された800億
億ドル超の為
為替介入(外
外貨売り介入
入)によって減
減少したと
は言え、22014年末時点
点で3,400億ドル近くある
る(図表4)。これはロシア全体の短
短期対外債務
務残高の4
倍程度の額
額である。ロ
ロシア中銀お
および政府は
は、この外貨
貨準備の一部を用いて、民
民間銀行・企
企業のデフ
ォルト回避
避に向けた措
措置を講じる
ることが可能
能である。実
実際、すでにロシア中銀は
は、国内企業
業の対外債
務返済を支
支援する措置
置を発表して
ている(CBR, 2014b)4。
第3に、経常収支は
は2015年も黒
黒字を維持す
する可能性が
が高い。原油価格の下落 によって輸出
出額(ドル
建て)の減
減少が予想さ
される一方で
で、ルーブル
ル安や景気悪
悪化により、輸入額の減少
少やサービス
ス収支、所
得収支の改
改善が見込ま
まれるためで
である5。こう
うした経常収
収支黒字の継
継続も、ロシ アの対外債務
務返済能力
をサポート
トする要因に
になる。
(2)油価
価下落による財政への影響
ロシアの
の連邦財政収
収入の約半分
分は石油ガス
ス収入6によっ
って占められ
れることから
ら、原油価格の
の下落によ
り、ロシア
アの国家財政
政が大幅に悪
悪化するので
ではないかとの懸念がある。ただし、
、2014年につ
ついては、
石油ガス収
収入の金額、GDP比ともに
に、当初予算
算を上回る見
見込みである
る(Minfin, 2014)。これ
れは、実際
の年平均油
油価(Urals)
)が、当初予
予算の前提条
条件として用
用いられた年
年平均油価( 後述する「基
基礎原油価
格」)を上
上回ったこと
と、また、ル
ルーブルの下
下落によって
てルーブル建て石油ガス収
収入の増加が
がもたらさ
れたことに
によると考え
えられる(図
図表5)7。
現在、ロ
ロシア政府内
内で議論とな
なっているの は、すでに成
成立した201
15年連邦予算
算(2014年12
2月1日付連
図表 5
図表
図 6
2014-15 年連邦財政
政の概要
(10 億ルーブ
ブル)
歳入
(GD
DP 比:%)
石油ガス収
収入
(GD
DP 比:%)
非石油ガス
ス収入
(GD
DP 比:%)
歳出
(GD
DP 比:%)
収支
(GD
DP 比:%)
原油価格(ドル
ル/バレル)
20014
当初
初予算
13,571
(18.5)
6,528
(8.9)
7,042
(9.6)
13,960
(19.0)
▲
▲389
(▲
▲0.5)
93
2014
実績見込
込
14,36
64
(19.9)
7,48
80
(10.5)
6,75
59
(9.5)
14,88
89
(20.6)
52
26
(▲0.7)
98
9
予備
備基金・国民
民福祉基金の
の残高規模
(GDP 比:%
%)
2015
当初予算
15,082
(19.5)
7,717
(10.0)
7,365
(9.5)
15,513
(20.0)
▲431
(▲0.6)
94
(年)
(注)当初予算
算の原油価格は
は基礎原油価格(2015 年は筆者
者
(注)2007 年は
は 2008 年 1 月末
末時点、2014 年は
は同年 11 月末
による計
計算値)
。
時点の残
残高。
(出所)Minfin
n より、みずほ総
総合研究所作成
成。
(出所)Minfiin (2014)等より
り、みずほ総合研
研究所作成。
3
邦法No.3884)の修正の
の行方である
る。2015年連
連邦予算は、2013年から導入された新
新たな編成方
方式に基づ
いて策定さ
されたもので
である。この
の方式は、油
油価の変動に
による財政支出への影響 を抑制するこ
ことを目的
としており
り、以下の3
3点を骨子と
とする。第1 に、過去数年
年間の油価(Urals)の 平均値を「基
基礎原油価
格」とし、同価格から
ら計算される歳入額に、GGDP比1%相
相当額を加え
えた額を歳出
出額の上限とす
する。第2
に、実際の
の油価が基礎
礎原油価格を
を上回った場
場合、基礎原
原油価格から計算される石
石油・ガス収
収入を上回
る石油・ガ
ガス収入が予
予備基金に繰
繰入れられる
る。第3に、実際の油価が基礎原油価
価格を下回っ
った場合、
石油・ガス
ス収入の不足
足分が予備基
基金から支出
出される。
2015年は
は、油価の下
下落があまり
りに急激であ
あるため、この新方式に基づく連邦予
予算では対応
応しきれな
くなるとい
いう問題が生
生じている。具体的には 、2015年連邦
邦予算の基礎
礎原油価格は
は94ドル/バレル程度と
みられ、実
実際の油価は
はこれを大き
きく下回るこ
ことがほぼ確
確実な状況となっている。
。もし油価の
の下落に見
合うだけの
のルーブル下
下落が生じな
なければ、財
財政赤字は大
大きく膨らむことになる88。この場合、石油・ガ
ス収入の不
不足分は予備
備基金から支
支出されるこ
ことになるが
が、予備基金の残高規模 はGDP比6.1%
%(2014年
11月末時点
点)であり、その支出能
能力には限界
界がある(図表
表6)。このため、2015年
年連邦予算に
については
現在、財務
務省を中心に
に歳出削減の
の方向で修正
正作業が進め
められている。
3.油価
価下落による
る実体経済
済への悪影響
響は不可避
避
原油価格
格の下落によ
よる実体経済
済への悪影響
響は避けられ
れそうにない。これまでの
のロシアの経
経済成長(実
質GDP増加
加)は、油価の
の上昇が交易
易条件の改善
善と交易利得
得の増加をもたらし、それ
れが国産品に
に対する内
需の増加に
につながると
という循環に
によるもので
であったと考
考えられる(久保庭, 20111)9。このた
ため、2014
年後半から
ら続いている
る油価下落は
は、ロシア経
経済に対して、
、上記とは逆
逆の循環を通
通じて内需を
を中心にGDP
を減少させ
せる影響を及
及ぼすと予想
想される。
ロシアの
のこれまでの
の交易条件指
指数と交易利
利得(前年GD
DP比)、実質
質GDP成長率の
の推移を示したのが図
表7である。過去最大の
の交易利得と
と交易損失を
をそれぞれ記
記録した2000年と2009年 について詳しくみると、
、
図表 7
ロ
ロシアの交易
易条件と交易
易利得、実質 GDP 成長率の推移
(%)
(前年比
比:%)
(年)
測値。交易利得
得は輸入価格を共
共通デフレータと
として算出し、前
前年 GDP 比で表
表示。
(注)22014-15 年は予測
(出所)
)CBR、Rosstat、Bloomberg よ り、みずほ総合
合研究所作成。
4
以下の通りである。
2000年は、ルーブル・レートが安定的に推移した一方で、原油価格(Urals)が過去最大の上昇率(前
年比+54%)となったことを背景に、輸出価格は前年比+41%、輸入価格は同+5%上昇し、交易条件
は+34%の大幅改善となった。この交易条件の大幅改善により、交易利得は過去最大の前年GDP比+
16%に達し、実質GDP成長率も過去最高の+10.0%を記録した。
2009年は、リーマンショックの翌年であり、油価下落(前年比▲35%)とルーブル下落(同▲22%)
が同時発生した年である。油価の下落幅がルーブルの下落幅を上回ったことから、同年の輸出価格は
前年比▲12%の下落となり、輸入価格はルーブルの下落率とほぼ同じ+25%の上昇となった。この結
果、交易条件は前年比▲30%と大きく悪化し、過去最大の交易損失(前年GDP比▲8.9%)と実質GDP
の減少(▲7.8%)が生じた。
現在のロシアの状況は、油価とルーブルの大幅下落が同時に発生している点において、2009年と似
ている。仮に2015年初時点の油価とルーブル・レートが年間を通して続くと仮定すると、2015年の交
易条件の悪化度合いと交易損失の規模は、2009年と同等、もしくはそれ以上になる可能性がある。さ
らに、もし現在の高い政策金利が長期間続き、連邦財政支出が大幅に削減される事態になれば、実質
GDPの減少が2009年よりも深刻なものとなる可能性も否定できなくなる。
ただし、現在のロシアの状況は、次の2点において2009年とは異なっている。第1に、足元のルー
ブル・レートの下落率は2009年よりも大きい。また、欧米の制裁に対する報復措置として、ロシアは
農畜産物の輸入禁止措置を講じている。これらは、ロシア国内市場における製造業や農業の競争力改
善をもたらし、生産水準の維持・拡大につながる可能性がある(輸入代替生産の活発化)。第2に、
2015年には、国民福祉基金(2014年11月末時点の残高規模はGDP比5.5%:図表6)の一部を用いて、複
数の大規模インフラ建設プロジェクトを実施することが予定されている。これらのインフラ建設プロ
ジェクトの実施により、投資の減少がある程度緩和されることが期待できる。これら2つの要因によ
り、2015年は、実質GDPのマイナス成長は避けられないにしても、2009年ほどの落ち込みは回避できる
のではないかと考えられる。
【参考文献】
<ウェブサイト情報>
CBR (ロシア中央銀行) [http://www.cbr.ru].
Minfin (ロシア財務省) [http://minfin.ru/ru/].
Rosstat (ロシア国家統計庁) [http://www.gks.ru].
<書籍・レポート類>
久保庭眞彰(2011)『ロシア経済の成長と構造:資源依存経済の新局面』岩波書店.
金野雄五(2014)「制裁長期化により景気後退リスクが高まるロシア経済」『みずほインサイト:欧州』9
月22日[http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/eu140922.pdf].
5
CBR (2014a) Osnovnye napravleniia edinoi gosudarstvennoi denezhno-kreditnoi politiki na 2015 god
i period 2016 i 2017 godov, Nov. 10 [http://www.cbr.ru/today/publications_reports/on_2015
(2016-2017).pdf].
CBR (2014b) O kreditakh v inostrannoi valiute, obespechennykh zalogom prav trebovaniia po kreditam
v inostrannoi valiute, Dec. 24 [http://www.cbr.ru/press/pr.aspx?file=24122014_095736dkp
2014-12-24T09_46_30.htm].
Minfin (2014) Ozhidaemoe ispolnenie federal'nogo biudzgeta v 2014 godu, Dec. 29 [http://old.minfin.
ru/ru/index.php?&from_56=3].
RG (Russian Government)(2014) O direktivakh predstaviteliam interesov RossiiskoiFederatsii v
sovetakh direktrov (nabliudatel’nykh sovetakh) otkrytykh aktsionernykh obshestv «Gazprom»,
«NK
Rosneft'»,
«AK
Alrosa»,
«Zarubezhneft'»
i
«PO
Kristall»,
Dec.
24
[http://government.ru/news/16277/].
1
同法案は、2014 年 12 月 18 日の大統領署名により成立。同法の内容は、大統領の決定に基づいて対ロ追加制裁の発
動を可能にするものだが、オバマ米大統領は法案署名後の声明で「同法に基づいてすぐに追加制裁を発動するつもりは
ない」としている。
2 ルーブル変動相場制に移行する前の為替相場制度の詳細は、金野(2014)参照。
3 ただし、ロシア政府は、2014 年 12 月 23 日付政府指令(RG, 2014)により、ロシアの国営企業 5 社(ガスプロム、
ロスネフチ、アルロサ、ザルベジネフチ、クリスタル)に対して、外貨保有額(ネットベース)を 2015 年 2 月末まで
に、2014 年 9 月末時点の水準以下とするように指示した。同措置を部分的・限定的な資本移動規制と見ることも可能
である。
4 これは、国内銀行による国内企業向け外貨建て貸出債権を担保として、ロシア中銀が当該銀行に外貨建て貸出を行う
スキームであり、国内企業による対外債務から対内債務への切り替えをロシア中銀が間接的に支援する狙いがあるとみ
られる(予定総額等は不明)。この他、外貨準備を活用したロシア政府の措置として、民間銀行への流動性供給を目的
に、
「予備基金」の残高の約 1 割(5,000 億ルーブル)を、民間銀行への預金に転換することが検討されている。なお、
予備基金は、過去の財政余剰を蓄えたもので、現在、政府が中銀に外貨預金として預け、それを中銀が外貨準備の一部
として運用している。同基金の 2014 年末時点の残高は約 5 兆ルーブル、ドル換算では 879.1 億ドル。
5 例えば、ロシア中銀(CBR, 2014a)は、原油価格(Urals)が 2013 年の 108 ドル/バレルから 2015 年の 84 ドル/バレ
ルに下落するシナリオにおいて、経常収支は 2013 年の+340 億ドルから 2015 年の+470 億ドルへと、黒字幅がむしろ
拡大すると予測している。
6 石油ガス収入は、原油・石油製品・天然ガスの輸出関税、および原油・天然ガスの鉱物資源採掘税の税収によって構
成される。
7 石油ガス収入を構成する税項目の多くでは、税額がドル建てで表示され、実際の納税はルーブルで行われる方式が採
られている。このため、ルーブルの下落は、他の条件(原油輸出量や油価)が同じであれば、ルーブル建て石油ガス収
入の増加をもたらす。
8 シルアノフ財務相の発言(2015 年 1 月 14 日)によれば、2015 年の平均油価(Urals)が 50 ドル/バレルの場合、連
邦財政収入は 3 兆ルーブル(2015 年の予想 GDP 比 4%に相当)減少すると見込まれる。
9 ①交易条件指数と②交易利得は、
それぞれ次式によって測定される。①交易条件指数=輸出価格指数/輸入価格指数、
②交易利得=(名目輸出-名目輸入)/P -(実質輸出-実質輸入) ただし、P=共通デフレータ。本稿では共通デ
フレータとして輸入価格指数を用いている。
●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに
基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。
6