第 49 回日本理学療法学術大会 (横浜) 5 月 31 日 (土)13 : 55∼14 : 45 第 3 会場 (3F 301)【口述 基礎!身体運動学 2】 0978 ACL 再建後の大腿周径と筋組織厚と筋力の関係 ―大腿四頭筋とハムストリングスにおいて― 大町 聡,宮本 慶友整形外科病院 梓,岩崎 翼,鈴木 美幸,金子 貴俊,村山 俊樹,藤井 廉 リハビリテーション科 key words 大腿周径・前十字靭帯・筋組織厚 【はじめに,目的】 大腿周径の測定は筋の肥大や萎縮の程度を簡昜に評価する手段として用いられている。我々は第 47 回全国理学療法学術大会に て大腿周径は大腿四頭筋(以下 Quad)・ハムストリングス(以下 Ham)の筋組織厚と筋力の評価に有用であると健常人にて報 告した。臨床において,前十字靭帯(以下 ACL)再建後に周径の測定を用いることが多く,非再建側(以下健側)に比べ再建側 (以下患側)は,術式によって半腱様筋や薄筋といった腱採取部の影響が考えられ,健側と患側では周径と筋組織厚,筋力との 関係性が異なることが推察される。そこで今回,ACL 再建後の大腿周径と Quad・Ham の筋組織厚,筋力との関係性について検 討を行い,健側と患側は同様の傾向があるのかを明確にすることを目的とした。 【方法】 対象は 2012 年 11 月∼2013 年 3 月に当院にて ACL 再建術(STG 法)を施行し,術後同一のリハビリテーションプログラムを実 施し,術後 6 ヵ月以上経過観察可能であった 20 名(男性 11 名,女性 9 名,平均年齢 25.2±13.8 歳)とした。周径の測定は,膝 蓋骨上縁 5・10・15・20cm とし,膝関節伸展位にて 1 ミリ単位で測定した。筋組織厚の測定は,超音波測定装置(FUJIFILM 社製) を用いて,大腿直筋・中間広筋 (以下 RF) ,内側広筋 (以下 VM) ,外側広筋 (以下 VL) ,半腱様筋・半膜様筋 (以下 MH) , 大腿二頭筋長頭・短頭(以下 LH)にて実施した。RF,VM,VL の測定肢位は背臥位,MH,LH は腹臥位とし,全て膝関節伸 展位とした。RF の測定部位は下前腸骨棘と脛骨粗面を結んだ線と各大腿周径との交点,VM は大腿骨軸に対して 15̊ 内側へ傾斜 させた線と各大腿周径との交点,VL は大転子と大腿骨外側上顆を結んだ線と各大腿周径との交点,MH は坐骨結節と大腿骨内 側上顆を結んだ線と各大腿周径との交点とし,LH は坐骨結節と腓骨頭を結んだ線と各大腿周径との交点とした。深触子は皮膚 面に対し垂直に接触させ,長軸にて実施した。周径の RF5cm での測定のみ共同腱が混在し,測定困難なため除外とした。筋力 の測定は,BIODEX を用い,角速度 60̊! s での膝関節屈曲・伸展における Quad・Ham の最大等速性収縮筋力を測定した。周径, 筋組織厚,筋力の測定は両側実施した。筋組織厚の測定は 3 回行い,検者内信頼性についての統計手法は ICC (1,3) を用いた。 また,Quad,Ham の周径・筋力・筋組織厚についてはピアソンの相関係数を求めて検討した。統計処理には R3.5.1 を用い,有 意水準は 5% とした。 【倫理的配慮,説明と同意】 研究に先立って被験者には,研究の目的と方法を十分に説明し,書面にて同意を得た。 【結果】 筋組織厚の測定の再現性は健側と患側の Quad・Ham ともに ICC=0.96∼0.99 で各部位とも良好であった。周径と筋組織厚の相 関係数は,周径 5cm で健側 MH(r=0.83) ,周径 10cm で健側 VM(r=0.79),患側 VM(r=0.77) ,健側 VL(r=0.85)患側 VL (r=0.71) ,周径 15cm で患側 MH(r=0.77) ,周径 20cm で健側 RF(r=0.77) ,患側 RF(r=0.69) ,健側 LH(r=0.85) ,患側 LH (r=0.83)が最も高い相関係数を示し,MH のみ健側と患側で最も高い相関係数を示した部位が異なった。周径と筋力の相関係 数は,周径 20cm で健側 Quad(r=0.77) ,患側 Quad(r=0.71) ,健側 Ham(r=0.71) ,患側 Ham(r=0.68)であり,健側・患 側,Quad・Ham ともに周径 20cm で最も高い相関係数を示した。 【考察】 Quad において,膝蓋骨上縁 5∼10cm での周径は VM および VL を反映し,15∼20cm では大腿全体の筋群が評価できるとされ ており,今回の結果からも周径 10cm と健患側 VM,健患側 VL,周径 20cm と健患側 RF に最も強い相関を認め,同様の傾向を 示した。Ham においては,最も強い相関を認めた周径 20cm と健患側 LH の結果は MRI 装置を用いて筋断面積を算出した先行 研究を支持する結果となった。健側と患側の Quad・Ham の大腿周径と筋組織厚さらには筋力との比較において,健側の周径 5 cm と MH,患側の周径 15cm と MH と最も強い相関を認めた部位が MH のみ異なった。原因として MH5cm は ACL 再建術に おける腱採取部付近であり,ST 腱の再生において,膝窩筋膜や薄筋などの膝窩内側の組織に癒着することが多いと報告があり, 患側 MH5cm においては腱再生の影響が関与していると考えられる。また,周径 20cm と大腿四頭筋筋力との間に有意な相関が 認められたと報告があり,先行研究を支持する結果となった。したがって ACL 再建後,患側の測定は特に周径 10cm では VM, VL の筋組織厚,周径 15cm では MH の筋組織厚,周径 20cm では RF,LH の筋組織厚と Quad,Ham の筋力を反映するため, 周径の測定は部位を考慮して評価することが望ましいと考える。 【理学療法学研究としての意義】 ACL 再建後,患側の周径は MH の筋組織厚のみ健側と異なるため,部位を考慮して測定を行う必要が示唆された。
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