糖尿病経口薬の リスク・ベネフィット

調剤と情報:Rx Info 第21巻 第3号 平成27年3月1日発行(毎月1日発行)平成7年6月19日 第三種郵便物認可 ISSN 1341-5212
3
2015
2
015
Vol.21 No.3
特集
糖尿病経口薬の
リスク・ベネフィット
経口血糖降下薬の選び方・使い方
糖尿病患者の薬物療法において重要な薬物相互作用
SGLT2阻害薬のリスク・ベネフィット
新連載
聞いて納得! 薬剤師注目の急上昇ワード
食品の新機能性表示制度
処方監査や疑義照会で検査値を使いこなす
血清Ca値で
有害事象を早期に発見しよう
薬剤師によるケアロードマップ
脂質異常症ケアロードマップ
新薬くろ∼ずあっぷ
ドボベット軟膏
くすりの教室
インダカテロールマレイン酸塩
処方・調剤・保険請求のQ&A
付 録
臨床検査値ポケットカード
3
特集
糖尿病経口薬の
リスク・ベネフィット
2015
Vol.21 No.3
C ONTENTS
12
経口血糖降下薬の選び方・使い方 岩岡 秀明
16
糖尿病患者の薬物療法において
重要な薬物相互作用 大野 能之
20
SGLT2 阻害薬のリスク・ベネフィット
藤田 義人,稲垣 暢也
Report
3
エビデンスの集積で薬局薬剤師の意義を示す
―長期処方患者追跡研究プロジェクトが始動―
今月の話題
9
危険ドラッグの現状と対策 新連載
日本薬剤師会
聞いて納得! 薬剤師注目の急上昇ワード
25
食品の新機能性表示制度 33
処方・調剤・保険請求の Q&A 森田 満樹
日本薬剤師会
新薬くろ∼ずあっぷ168
38
ドボベット軟膏
大浜 修
処方監査や疑義照会で検査値を使いこなす⑥
75
123
インダカテロールマレイン酸塩
血清 Ca 値で有害事象を
早期に発見しよう 宇野 奈緒,三宅 健文
田中 尚美,堀 美智子
心をつなぐホスピタリティ∼おもてなしの極意∼⑫―完
105 薬剤師道を極める
薬剤師によるケアロードマップ
―計画的・継続的ケア支援ツール―⑥
81
患者さんのヘルス・リテラシーを高める
くすりの教室 ―完
浦郷 義郎,松尾 信子 悠 You 閑 Can ②
脂質異常症ケアロードマップ
110 薬剤師のハートとアート
久保 鈴子 吉田 美咲,早川 達
Dr. ハザマのここだけの話⑮
赤羽根先生に聞いてみよう
薬局トラブルこんなときどうする? ―完
89
薬事法が薬機法になって
何が変わった? 120 イノベーションとは何か?(2)
狭間 研至 広告企画
赤羽根 秀宜
59 かかりつけ薬局を目指して
―信頼される薬剤師になるために― サプリメント・プロファイル⑮
91
コレウス・フォルスコリ 梅垣 敬三
在宅医療の現場から⑤
94
地域における
薬剤師業務と多職種連携 小林 輝信
わかりません から始める医療統計⑮―完
97
値のズレは,誰のせい?
―重回帰とロジスティック回帰― Book Review
50
初めの一歩は絵で学ぶ 薬理学
52
Rx news
54,56 ときのことば
五十嵐 中
薬局ヒヤリ・ハットなくし隊がゆく 54
113
保護者の不安,
「1歳と 5 歳で服用量が同じ?」
澤田 康文
122
新製品情報
135
日本薬剤師研修センターだより
50
次号予告
140 『調剤と情報』ご愛読者アンケート&プレゼント
特集
糖尿病経口薬の
リスク・ベネフィット
今月号の特集では,経口血糖降下薬の適正使用
を考えます。新しい機序の SGLT2 阻害薬が登場す
る一方,その副作用に関する注意喚起が出されてい
ます。あらためて糖尿病薬物療法の進め方を考える
べき時期といえるのではないでしょうか。
医師は,異なる系統の薬剤をどのような考えで選
択・使用しているのか。また,さまざまな薬剤が併
用される糖尿病患者の薬物療法において,特に注意
が必要な医薬品相互作用は何か。そして,SGLT2 阻
害薬にはどのようなリスクがみられ,どのような患
者に使用すべきか。現場の疑問に答え,糖尿病薬物
療法での調剤・服薬指導に自信がもてる内容となっ
ています。
■ 経口血糖降下薬の選び方・使い方 …… 12
■ 糖尿病患者の薬物療法において
重要な薬物相互作用 …………………… 16
■ SGLT2 阻害薬のリスク・ベネフィット… 20
特集
糖尿病経口薬のリスク・ベネフィット
経口血糖降下薬の選び方・使い方
船橋市立医療センター代謝内科 岩岡
症例呈示
(1mg)4 錠分 2 に増量した。
再度の食事指導は希望されず,ま
・68 歳, 男 性。 身 長 180cm, 体
重 80kg,腹囲 94cm
・診断:2 型糖尿病,高血圧症,
脂質異常症
・現病歴:2004 年から 2 型糖尿病
にて近医通院開始,2006 年 1 月
に当院を紹介され初診。当院初
診時,糖尿病網膜症なし,糖尿
病腎症なし
・喫煙歴:15 本 / 日,約 40 年間
・当院初診時検査値:PPG(食後
血糖)265mg/dL,HbA1c7.9%,
TC273mg/dL,TG345mg/dL,
血圧 190/110
HDL-C39mg/dL,
mmHg
・経過
た教育入院も無理とのことである。
本症例は典型的なメタボリック症
秀明
の左側に示すように「インスリン分
泌能低下」と「インスリン抵抗性増
大」のいずれかまたは両方によって
「インスリン作用不足」が惹起され,
候群であり,特に心血管合併症を予
初期にはまず「食後高血糖」
,進行す
防するためにも厳格な血糖・血圧・
ると「空腹時高血糖」が起こってく
脂質コントロールとともに禁煙指導
る。持続する高血糖による「糖毒性」
が重要である。
により,さらにインスリン分泌能低
2010 年 3 月からアマリールを2 錠に
下とインスリン抵抗性が進行・悪化
減量すると同時に DPP 4 阻害薬グラ
する「悪循環」を呈することになる。
-
クティブ(50mg)1 錠の併用を開始。
こ の 時 点 で は HbA1c8.3 %,PPG
219mg/dL,LDL C115mg/dL,体重
-
経口薬の
作用機序による分類
75kg だった。1 カ月後には HbA1c
7.6%,PPG101mg/dL と改善した。
アマリール2mg,
メトグルコ750mg,
7 系統の薬剤は,図 1 右側に示すよ
うにそれぞれの作 用 機 序に基づき,
グラクティ ブ 50mg の 3 剤 併 用にて
「インスリン抵抗性改善系」
,
「インス
HbA1c5.7∼6.7%,
PPG116∼145mg/dL
リン分泌促進系」
,「糖吸収・排泄調
と良好な血糖コントロールが継続し
節系」の 3 群に分けられる。
当院来院後から,2,000kcal,塩分
ている。体重も75kgと増加なく,血圧
食事療法・運動療法などの生活習
6g,コレステロール 300mg 以下の食
130/80mmHg 台,LDL C114mg/dL
慣の改善とともに,まずは 1 種類の
事指導を開始。
と良好。なお,全経過を通して,特
薬剤から使用し,十分な効果が得ら
に副作用は認めていない。
れない場 合は, 作 用 機 序の異なる
内服薬は,近医で処方されていた
-
オイグルコン(1.25mg)2 錠分 1 をア
2 種類を併用していく。
基本事項と注意点
マリール(1mg)2 錠分 1に変更し,ブ
ロプレス(4mg)2 錠 分 1, リピトー
経口薬を使用するのは,インスリ
ン療法の絶対的適応・相対的適応と
現在 7 系統ある経口血糖降下薬の
ならない場合で,原則として食後血
特徴,副作用,注意点,使い分けに
糖値 220mg/dL 以上,空腹時血糖値
しかし,外食も多く,HbA1c7.8 ∼
ついて解 説する。 まず図 1 に,2 型
160mg/dL 以上,HbA1c8.0% 以上の
8.3%と血糖コントロール不良のため,
糖尿病の病態に合わせた 7 系統の経
場合である。
ル(10mg)1 錠分 1 を追加して外来診
療を続けた。
2008 年 6 月からメトグルコ(250mg)
3 錠分 3 を追加。また,アマリールも
12 (268)
1)
口薬選択の概要を示す 。
2 型糖尿病の基本的な病態は,図 1
調剤と情報 2015.3(Vol.21 No.3)
また,インスリンの相対的適応の
場合には早期に悪循環(糖毒性)を解
聞
新連載
得!
て納
い
第
01
回
食品の新機能性表示制度
情報開示 60 日後に販売
PROFILE
――今日は,この 4 月から動き始める食品の新たな機能性
森田 満樹
表示について教えていただきたいと思います。まず食品の
消費生活コンサルタント
機能に関する表示の現状を教えていただけますか。
森田 食品は医薬品とは異なり基本的には有効性や機能
性を表示してはいけないのですけれども,例外的に保健機
能食品のうち栄養機能食品と特定保健用食品は機能性を
謳ってもいいということになっています(表 1)
。例えばト
クホでは「体脂肪の気になる人に」などと表示できますし,
ビタミンやミネラルなどは上限量と下限量が決められてい
て,その範囲で定められた機能性を謳えます。
1985 年 九州大学農学部食糧科学工学科卒業
食品会社研究所,民間研究機関勤務などを経て,一般社
団法人 FOOD COMMUNICATION COMPASS を設立,
事務局を運営。
食品安全,食品表示,消費者関連について講演・執筆活
動を行う。
JAS(農林物資規格)調査会部会委員,JAS 調査会総会
委員,外食における原産地等の表示に関する検討会委員,
消費者庁食品表示一元化検討会委員,消費者庁食品の
新たな機能性表示制度に関する検討会委員
一方,いわゆる健康食品やサプリメントは,例えば膝を
グルグル回したりするイメージ広告を行っても,
「膝」とい
う部位は明示してはいけないし,「∼に効く」とも謳えま
せん。
――そのような表示制度が 3 月までで,4 月以降は新制度
に移行するのですね。
森田 はい。2013 年 6 月に規制改革会議の報告書がまと
まり,機能性表示が解禁されることを決めました。経済政
策の一環として,いわゆる健康食品のなかで,きちんとし
たエビデンスがあり,安全で,品質がきちんと保たれてい
るもので,消費者庁に届出を行ったものに関しては新しい
検討会を発足させ,半年ぐらいかけて報告書をまとめた
ジャンルを設け,事業者の責任において機能性を謳っても
のが 2014 年 7 月。スタートまでわずかな期間しかありませ
よいということになります(図 1)
。
んが,いまはガイドラインを作ったり,細かいチェック項
表1
従来の食品区分
保健機能食品
医薬品
(医薬部外品を含む)
特定保健用食品(個別許可型)
栄養機能食品
(規格基準型)
個別審査許可型(疾病リスク低減表示を含む)
一般食品
(いわゆる健康食品を含む)
規格基準型
条件付き 特定保健用食品
調剤と情報 2015.3(Vol.21 No.3)
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