筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)患者に おける心機能異常とレニン-アルドステロン、 抗利尿ホルモンについて ミワ内科クリニック (富山市) 三羽邦久 日本心臓病学会 COI 開示 ミワ内科クリニック 三羽邦久 演題発表に関連し、開示すべきCO I 関係にある 企業などはありません。 慢性疲労症候群 (Chronic Fatigue Syndrome) 長期にわたる強度の疲労感、全身倦怠感を 主症状とし、多彩な臨床症状を呈する 原因不明の病態。 労作後の全身的消耗が遷延するのが特徴。 多くの若年者(女性に多い)の学業、労働、 活動能力を阻害し、生活の質を低下。 難治性 慢性疲労症候群患者の循環器異常 Small heartと低心拍出量 起立不耐症 強度の疲労、動悸、めまい、集中力低下、身震い、 悪心などの症状により、立位維持困難となる病態。 患者の生活の質、労働能力を著しく低下させている。 脳血流の低下が原因 立位時の血行動態的異常(頻拍、血圧低下) 脳循環の自動調節能の破綻の可能性 低血圧 夜間低血圧、血圧の日内格差が大きい 24F 心胸郭比(CTR) 32% Small Heart Myalgic encephalomyelitis: International Consensus Criteria B. M. Carruthers1,M. I. van de Sande2, K. L.DeMeirleir3, N. G. Klimas4, G.Broderick5, T.Mitchell6, D. Staines7,8, A. C. P. Powles9, N.Speight10, R.Vallings11, L. Bateman12,13, B. Baumgarten-Austrheim14, D.S.Bell15, N. Carlo-Stella16, J. Chia17,18, A.Darragh19, D. Jo20, D. Lewis21, A.R. Light22, S.Marshall-Gradisbik8, I. Mena23, J.A.Mikovits24, K.Miwa25, M. Murovska26, M. L.Pall27&S. Stevens28 (J Int Med 2011; 270:327-338) 慢性疲労症候群の原因として、筋痛性脳脊髄炎 に伴う中枢神経系の機能調節障害が提唱され、 国際委員会から診断基準が公表された。 この診断基準は、心血管系症状として起立不耐症 を含み、Small heartと低心拍出量についても言及。 起立時における循環維持(体・脳)の為の代償機転 約500‐800mlの静脈血の下半身へのプーリング 即時性 下肢筋肉ポンプの活用 静脈還流増加 圧受容体反射 頸動脈洞、大動脈弓 反射性交感神経活性化 遅発性 神経体液性因子の活性化 循環血液量 レニン・アルドステロン系 バゾプレッシン系 【目 的】 筋痛性脳脊髄炎(ME)患者における循環機能 調節異常を、起立試験と心エコー検査から検索 し、起立不耐症(OI)の重症度と心機能との関係 を明らかにする。 循環血液量を調節する、Renin, Aldosterone, ADH(抗利尿ホルモン)を血中で測定し、活性化 の有無を評価する。 【10分間能動的簡易起立試験】 臥位安静5分間後、立位10分間 症状観察。 前、起立直後、1,3,5,7,10分後、および症状変化時に 自動血圧計にて心拍数と血圧を測定。 体位性起立頻拍 安静時に比し、30 beats/分の心拍数増加 立位時心拍数 120 beats/分は重症体位性起立頻拍 即時性または遅発性起立性低血圧 症状を伴い、収縮期血圧 20mmHgまたは拡張期血圧 20mmHgの低下 and/or 収縮期血圧 <90mmHg 神経調節性低血圧 症状と心拍数 20 beats/分以上の低下を伴う 遅発性起立性低血圧 【対 象】 ME: 44例(男12、女32、平均3210歳) 10分間簡易起立試験 S(10): 起立動作確立不能(2) 起立維持不能(6) 起立性低血圧(2) 即時性(1) 遅発性(1) 重症体位性起立頻拍(2) 神経調節性低血圧(2) 「辛い」(2) M(29): OI症状中等度まで 体位性起立頻拍(11) N(5): OIなし Controls: 37例(男10、女27、平均327歳) sedentary LVEDD mm LVEDD p<0.05 p<0.05 Controls N M S Cardiac Index l/min/m2 p<0.05 Cardiac Index p<0.01 p<0.01 Controls N M S 心エコー検査所見の比較 Controls N M S ────────────────────────────────────── n 37 5 29 10 男/女 10/27 3/2 8/21 1/9 年齢 (才) 327 3010 3010 329 心拍数 (拍/分) 6811 6911 6812 7311 心胸郭比 (%) 424 452 394* 384* LVEDD (mm) 453 496 425* 404* LVESD (mm) 272 295 264* 255* SVI (ml/m2) 385 397 347* 272** CI (l/min/m2) 2.60.5 2.70.3 2.30.4* 2.00.3** LVMI (g/m2) 7017 7418 5615* 509* EF (%) 694 706 707 667 ────────────────────────────────────── *p<0.05 vs. Controls and N **p<0.05 vs. others ng/ml/h Renin Plasma Renin Activity p=0.06 2.01.1 Controls (18) 1.41.0 ME (26) Plasma Aldosterone Concentration pg/ml Aldosterone p=0.002 13837 Controls (18) 99 45 ME (26) ADH pg/ml Anti-diuretic Hormone p=0.04 3.31.3 Controls (13) 2.4 1.3 ME (23) 【結 果】 ME患者の大多数はOI症状を有し、10分間簡易起立 試験により、症状と血行動態の変化が検出された。 OIの重症度が高くなるにつれて、LVEDD、 SVIおよ びCIが有意に低値となっていた。 ME患者では対照群に比し、Renin活性の上昇を認め ず、Aldosterone濃度は有意に低値(R-A paradox)、 ADH濃度も有意に低値であった。 【結 語】 筋痛性脳脊髄炎患者では起立不耐症を 高頻度に合併しており、簡易起立試験に より容易に異常が検出される。 スモールハート(小左室)と低心拍出量が 多数に見られ、重症起立不耐症患者では 特に顕著である。 R-A系、ADH共に活性化不全を認める。 筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)は 循環器疾患である。 御清聴、ありがとうございました。
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