Harmony Lighting 道路照明 ②輝度均斉度 〈総合均斉度〉 道路照明 道路照明の目的は、夜間、道路利用者が安全、快適に通行できる様に、 道路状況・交通状況・障害物の識別などの良好な視覚情報を確保する ことにあります。 なお、 道路照明の設計基準としては、「道路照明施 設設置基準・同解説」 (社団法人、 日本道路協会、 平成19年10月)が あります。 総合均斉度Uoは次式で表され、 0.4以上を原則とします。 Uo = Lmin Lr ここに、 Lmin:車道最小部分輝度(cd/㎡) Lr :車道平均路面輝度(cd/㎡) 〈車線軸均斉度〉 道路照明の満たすべき条件 道路照明は、 夜間、 自動車の運転者に対して、 安全快適な夜間交通 を実現させるために、 次の4つの条件を満たさなければなりません。 車線軸均斉度URは次式で表され、 表3の値を必要に応じて設計対象 とします。 UR = ①路面輝度が十分であること。 ②輝度均斉度が適切であること。 ③誘導性を有すること。 ④グレア制限が考慮されていること。 Lmin(R) Lmax(R) ここに、 Lmin(R) :車線中心線上の最小部分輝度(cd/㎡) Lmax(R) :車線中心線上の最大部分輝度(cd/㎡) ■表3. 車線軸均斉度 ①平均路面輝度 平均路面輝度は、 道路分類および外部条件に応じて、 表1の上段の 値を標準とします。 ただし、 高速自動車国道等のうち、 高速自動車国 道以外の自動車専用道路にあっては、 状況に応じて表1の下段の値を とることができます。 また、 一般国道等で、中央帯に対向車前照灯を遮光するための設備が ある場合には、 表1の下段の値をとることができます。 なお、 特に重要 な道路、 またはその他特別の状況にある道路においては、 表1の値にか かわらず、 平均路面輝度を2cd/㎡まで増大することができます。 外部条件A/ 道路交通に影響を及ぼす光が連続的にある道路沿道の 状態をいいます。 外部条件B/ 道路交通に影響を及ぼす光が断続的にある道路沿道の 一般国道等 道路分類 車線軸均斉度 高速自動車国道等 0.7以上 主要幹線道路 0.5以上 幹線 ・ 補助幹線道路 ̶ ③誘導性 運転者が道路を安全に走行するためには、 前方の道路の線形の変化 および分合流の状態を予知する必要があります。 このため、 道路には 区画線あるいは視線誘導標が設けられていますが、 これらに加えて、 適 切に設置された道路照明施設は、 夜間だけでなく昼間にも優れた誘導 効果をもちます。 一方、 灯具を不適切に配置すると、 道路の線形、 分 合流に関して運転者に錯覚を生じさせるおそれがあります。 照明施設に よるこのような誘導効果を誘導性といいます。 状態をいいます。 外部条件C/ 道路交通に影響を及ぼす光がほとんどない道路沿道の 状態をいいます。 ④グレア また照度は、 平均路面輝度を平均照度換算係数によって換算します。 平均照度換算係数は、 路面の種類以外に灯具の配光・配置などによっ て変わりますが、 現在までの実施例が広く検討され表2に示す値が妥当 と考えられています。 障害物の視認性は、 視機能低下グレアとも関係があり、 相対閾値増加 によって表されます。 なお、 道路照明における相対閾値増加は表4の値 を原則とします。 ■表4.相対閾値増加(単位 : %) (単位 : cd/㎡) ■表1. 平均路面輝度 外部条件 道路分類 高速自動車国道等 主要幹線道路 一般国道等 幹線・補助幹線道路 A B C 1.0 1.0 0.7 − 0.7 0.5 0.5 1.0 0.7 0.7 0.5 − 0.7 0.5 0.5 0.5 − − 一般国道等 道路分類 相対閾値増加 高速自動車国道等 10以下 主要幹線道路 幹線 ・ 補助幹線道路 15以下 照明方式の選定 連続照明の照明方式は原則としてポール照明方式とします。 ただし、 道 路の構造や交通の状況などによっては、 構造物取付照明方式、 高欄 照明方式、 ハイマスト照明方式を選定することができます。 なお、 灯具は照明方式に応じて適切に配置します。 ■表2. 平均照度換算係数 技術資料集 202 平均輝度1cd/㎡を得る平均照度 アスファルト 15 lx コンクリート 10 lx Harmony Lighting 道路照明 ③照明計算 灯具の配置 照明設計には次の計算式を用います。 ①灯具の取付高さ・取付間隔・オーバーハング・傾斜角度 前項で記述した、 道路照明の満たすべき条件である平均路面輝度、 輝 度均斉度、 視機能低下グレア、 および誘導性の規定を満たし、 保守 の難易、 経済性なども考慮して最適なものを選択します。 ②灯具の配列 灯具の配列は図1以外にも幾つかのものが考えられますが、 何れもこの 3種類の組合せであり、 広い中央帯で往復分離されている道路はそれぞ れの車道を独立した道路として考えればよく、 中央帯に2灯式のポールを 設置するいわゆる中央配列は片側配列2組と考えます。 千鳥配列の車 線軸均斉度URは他の2種類の配列のURより劣り、 運転者からみて 路面上の道路軸方向の輝度分布が不均一になりやすい傾向があります。 曲線半径1000m以下の曲線部においては、 曲線の外縁に片側配列 することが望まれます。 F K ・ L ・W −=− − − S U・M ・ N ここで F:光源光束(lm) S:照明器具間隔(m) K:平均輝度を平均照度に換算する係数(表2参照) L:平均路面輝度(cd/㎡) (表1 参照) W:車道幅員(m) U:照明率 M:保守率 N:片側配列・千鳥配列の場合は1 向合せ配列・中央配列の場合は2 光源の選定 道路照明用の光源には、 主として高圧ナトリウムランプ、 蛍光水銀ラン プ、セラミックメタルハライドランプを使用し、 特定の場所および環境条 件によって、 メタルハライドランプ、 低圧ナトリウムランプ、 蛍光ランプが 用いられています。 ■図1. 灯具の配列 S :灯具の間隔 (m) (a) 片側配列 S 光源は、 効率・寿命・配光制御の容易性・経済性・見え方・快適性など を考慮して選定します(表6)。 ■表6. 光源の種類と特徴 S 光源の種類 (b) 千鳥配列 S 高圧ナトリウム 始動器内蔵形 黄白色 ランプ 両口金形 S (c) 向き合わせ配列 S S 蛍光ランプ 照明計算 ①照明率 照明率は、使用する照明器具、光源、器具取付高さ、道路断面、オー バーハングが定まると、 使用する照明器具の照明率曲線より、 図2、 3 の様にして道路幅/器具取付高さ、に対応する照明率が求められます。 ■図2. 照明率曲線 ■図3. 照明率の求め方 θ 車道側 H U2 0 車道側 照明率 歩道側 歩道側 U1 光 色 演色性 温度の影響 効率 始動 調 光 瞬 時 再始動 段調光可 不可 普通 なし なし 段調光可 可 高周波点灯専用形・ 白色 直管形 良い あり あり 連続調光可 可 高周波点灯専用形・ 白色 2本管形 良い あり あり 連続調光可 可 高周波点灯専用形・ 白色 無電極形 良い あり あり 段調光可 可 ラビットスタート形 白色 良い あり あり 連続調光可 可 メタルハライド 低始動電圧形 ランプ 白色 良い なし なし 不可 セラミックメタルハライドランプ 白色 良い なし なし * 蛍光水銀ランプ 白色 良い なし あり 段調光可 低圧ナトリウムランプ 橙黄色 悪い なし なし 不可 可 発光ダイオード 白色 良い あり あり 可 可 不可 * 不可 *セラミックメタルハライドランプは、 調光および瞬時再始動に可/不可の両タイプ がある 交差点照明 器具傾斜角はθ / / W2 H W1 H W2 W1 道路幅 (m) /器具取付高さ (m) 交差点の照明は、 道路照明の一般的効果に加えて、これに接近してく る自動車の運転者に対してその存在を示し、 交差点内および交差点付 近の状況がわかるようにするものとします。 交差点内の明るさ θ :器具傾斜角 ②保守率 区 分 保 守 率 連続(局部)照明 0.65∼0.75 トンネル照明 0.50∼0.75 技術資料集 ■表5. 保守率 交差点内の明るさは、平均路面照度20 lx程度、かつ照度均斉度は0.4 程度(路面上の最小照度を平均照度で除した値)を確保することが望ま れます。 また、 車両や歩行者等の交通量が少なく、 周辺環境が暗い交 差点においても、 平均路面照度は10 lx以上を確保することが望まれま す。 なお、 交差点内の横断歩道上の平均路面照度は、 交差点内と同 程度の値を確保することが望まれます。 203 Harmony Lighting 道路照明 横断歩道照明 歩道等の照明 横断歩道の照明は、これに接近してくる自動車の運転者に対して、その 存在を示し、 横断中および横断しようとする歩行者等の状況がわかるよう にするものとします。 横断歩道の照明方式は、 運転者から見て歩行者の背景を照明する方式 を原則とするが、 背景の明るさを確保することが難しい場合などには、 歩 行者自身を照明する方式を選定する事ができます。 歩道等の照明は、 夜間における歩行者等の安全かつ円滑な移動を図るた めに良好な視環境を確保するようにするものとします。 高齢者や障害者などの利用が多く、 特に重要であると認められる箇所にお いては、「道路の移動円滑化整備ガイドライン」((財)国土技術研究セン ター)を参考にします。 歩道等の明るさ ①歩行者の背景を照明する方式 平均路面照度は、 横断歩道の前後それぞれ35mの範囲を対象に20 lx程度を確 保することが望まれ、 交通量が少なく、 周辺環境が暗い場合においても10 lx以上 を確保することが望まれます。 明るい路面を背景とする人物のシルエット視を良くするためには、 横断歩道の後方 に灯具を配置し、 横断歩道の直前には設置しないようにします。 平均路面照度は5 lx以上とすることが望まれます。 また、 歩道等の路面に 明るさのムラがあると障害物の視認が困難となるため、照度均斉度は、0.2 以上を確保することが望まれます。 灯具は、 誘導性を考慮し等間隔で連 続的に設置することが望まれます。 なお、 照度及び均斉度が連続照明等によって確保される場合は、 歩道等 の照明を設置する必要はありません。 ②歩行者自身を照明する方式 横断歩道中心線上1mの高さにおいて、 鉛直面の平均照度は、 20 lx程度を確保 することが望まれます。 なお、 交通量が少なく、 周辺環境が特に暗い場合などに おいても10 lx以上を確保することが望まれます。 トンネル照明 トンネル照明は、一般道路と異なり、昼間に照明を必要とすることや、 周囲を側壁・天井で囲まれているため、 走行上特に注意を要するなどの 特殊性があります。 したがって、トンネルに設置する照明施設は、 設計 速度・交通量・地形などに応じて、 最適なものを選ばなければなりません。 日本ではトンネル照明の設計基準として、「道路照明施設設置基準・同 解説」 (社団法人、 日本道路協会、 平成19年10月)があります。 基本照明 ①平均路面輝度 トンネル内の平均路面輝度は、 設計速度に応じて表1の値を標準とします。 また、 交通量やトンネル延長により、 平均路面輝度は表2の値まで低減出 来ます。 壁面輝度は路上からの高さ1mまでの範囲を対象とし、トンネルの 構造に応じて表3の値を標準とします。 ■表1. 基本照明の平均路面輝度 トンネル照明の必要性 設計速度(km/h) (1)交通輸送機能の保持 (2)トンネル内での運転機能低下の軽減 (3)トンネル出入口部における運転者の平衡状態の維持 (4)トンネル内の空気汚濁による交通障害の防止 (5)トンネル内での事故防止 平均路面輝度(cd/㎡) 100 9.0 80 4.5 70 3.2 60 2.3 50 1.9 40以下 1.5 トンネル照明の構成 ■表2. 平均路面輝度の低減 明るさ トンネル照明は、 以下の6種類の照明によって、 構成されます。 (1)基本照明 ■図1. トンネル照明の構成 (2)入口部照明 (3)出口部照明 (4)特殊構造部の照明 入口部照明 基本部照明 出口部照明 (5)停電時用照明 (6)接続道路の照明 (a) 一方交通の場合 技術資料集 明るさ 入口部照明 基本部照明 入口部照明 (b) 対面交通の場合 凡例 基本照明 (含停電時用照明) 入口照明 204 接続道路の照明 出口照明 低減条件 低減の内容 トンネル1本あたりの日交通量が 10,000台/日未満 50%以上 走行時間が135秒以上の 延長を持つトンネル 走行時間が135秒以上の部分を 65%以上 ■表3. 壁面輝度 トンネルの構造 壁面輝度(cd/㎡) 内装が無しの場合 路面輝度の0.6倍 内装が有りの場合 路面輝度と同程度 内装が有り、 白色系の舗装で比較的路肩が 狭く、 壁面が障害物の背景となるような場合 路面輝度の1.5倍 Harmony Lighting トンネル照明 ②輝度均斉度 〈総合均斉度〉 入口部照明 ①入口部照明の構成 総合均斉度Uoは次式で表され、 0.4以上を原則とします。 Uo = 入口部照明は、 図2に示すように、 境界部、 移行部、 緩和部から構成 されます。 Lmin Lr ここに、 Lmin:車道最小部分輝度(cd/㎡) Lr :車道平均路面輝度(cd/㎡) ■図2. 入口部照明の構成 境界部 (R1) 〈車線軸均斉度〉 UR = Lmin(R) Lmax(R) ここに、 Lmin (R):車線中心線上の最小部分輝度(壁面輝度) Lmax(R):車線中心線上の最大部分輝度(cd/㎡) 路面輝度 車線軸均斉度URは次式で表され、0.6以上とすることが望ましいとされ ています。 (R4) L1 L2 (cd/㎡) L 3 ③グレア 緩和部 (R3) 移行部 (R2) 基本照明 トンネル入口 距離 (m) 障害物の視認性は、 視機能低下グレアとも関係があり、 相対閾値増加 によって表されます。 なお、トンネル照明における相対閾値増加は15% 以下を原則とします。 灯具の配置 L1 : 境界部の路面輝度(cd/㎡) R1 : 境界部の長さ(m) L 2 :移行部最終点の路面輝度(cd/㎡) R2 :移行部の長さ(m) L 3 : 基本照明の平均路面輝度(cd/㎡) R3 :緩和部の長さ(m) R4 :入口部照明の長さ(m) ①灯具の取付高さ ②入口部照明各部の路面輝度と長さ 路面の輝度分布の均一性を出来るだけ良好に保つと同時に、 灯具のグ 日交通量が10,000台/日未満の場合は、 表5に示す路面輝度の50% レアによる影響をできるだけ少なくするため、 灯具の取付高さHは原則と して4∼5 m程度以上とします。 以上の値にすることができます。 壁面輝度は「基本照明①平均路面輝 度」に記述した壁面輝度に準ずるものとします。 ②取付間隔・取付角度 ■表5. 入口部照明(野外輝度3,300 cd/㎡の場合) 平均路面輝度、 輝度均斉度、 視機能低下グレア、 および誘導性の規 定を満たし、保守の難易、経済性なども考慮して最適なものを選択します。 路面輝度 cd/㎡ 長さ m 設計速度 km/h L1 L2 L3 R1 R2 R3 R4 100 95 47 9.0 55 150 135 340 80 83 46 4.5 40 100 150 290 ③灯具の配列 70 70 40 3.2 30 80 140 250 灯具の配列には、 向合せ配列、千鳥配列、 中央配列、 片側配列の4 種類が用いられます。 灯具の配列は各配列の特徴を考慮するとともに、 トンネル断面形状、 設計速度、 交通量、 運用のほか、 付属設備や維 持管理などを勘案のうえ選定するものとします。 60 58 35 2.3 25 65 130 220 50 41 26 1.9 20 50 105 175 40 29 20 1.5 15 30 85 130 ④灯具間隔(ちらつき) 表4における取付間隔は走行時間が30秒以下の短いトンネルや、 入口 照明区間では考慮する必要はありません。 ■表4.ちらつき防止のために避けるべき灯具間隔 設計速度(km/h) 40 50 60 70 80 100 避けるべき取付間隔(m) 0.6∼2.2 0.8∼2.8 0.9∼3.3 1.1∼3.9 1.2∼4.4 1.5∼5.6 (注)1)L1は境界部、 L 2は移行部終点、 L 3は緩和部終点(基本照明)の路面輝 度、 R1は境界部、 R2は移行部、 R3は緩和部、 R4は入口部照明の長 さ(R1+R2+R3) 2)野外輝度が本表と異なる場合の路面輝度L1、 L 2は野外輝度に比例し て設定するものとします。 緩和部の長さR3は次式により算出します。 R3=(log10 L 2−log10 L 3)・V/0.55 (m) ただし、 Vは設計速度(km/h) 3)通常のトンネルでは、 自然光の入射を考慮してトンネル入口より概ね 10mの地点より人工照明を開始します。 4)対面交通の場合は、 両入口それぞれについて本表を適用します。 短いトン ネルで両入口の入口部照明区間が重なる場合は、 路面輝度の高い方の値 を採用するものとします。 技術資料集 205 Harmony Lighting トンネル照明 ③入口照明の調節 入口部照明は、野外輝度に応じて所要の照明レベルが決定されます。 このため、 野外輝度が変化した場合にはそれに応じてトンネル内の路面 輝度を調光することができます。 通常は、 入口部照明の調光段階を2ま たは4段階とし、 野外輝度の設定値に対する比率に応じて所定の路面 輝度の比率となるよう照明施設を制御します。 設計速度が高いトンネル で入口部照明のレベルに応じた調光段階を4段階にした例を表6に、 設 計速度が低いトンネルで調光段階を2段階にした例を表7に示します。 路面輝度の比率 75 %以上 100 % 50 %以上∼75 %未満 75 %以上 25 %以上∼50 %未満 50 %以上 5 %以上∼25 %未満 25 %以上 入口部照明各部の路面輝度と長さ」表5により設定します。したがって、 移行部および緩和部の路面輝度の低減係数もf1となります。 ⑤出口照明の設置 以下の条件が重なる場合、または、その他特に必要と考えられる場合は、 出口付近の野外輝度の12%の値の鉛直面照度で、 80m前後の長さに わたり、 出口部照明を設けることがよいとされています。 1.設計速度が80km/h以上 2.出口部野外輝度が5,000cd/㎡以上 3.トンネル延長が400m以上 ■表6. 入口部照明の調光(4段階の例) 野外輝度の設定値に対する比率 iii) 入口部照明各部の路面輝度と長さ 後続トンネルの入口部照明各部の路面輝度と長さは、「入口部照明② 停電時用照明 トンネル内で突然停電に遭遇すると、 運転者は心理的動揺をきたし、 走 行上きわめて危険な状態におちいります。 全長200m以上のトンネルに は、 停電直後から下記に示す通常の電源以外の電源によって照明する ことが必要となります。(全長200m以下の短いトンネルでも、 出口の見 えないようなトンネルでは、 設置することが望まれます。)一般に停電時用 照明は基本照明の一部を兼用します。 ■表7. 入口部照明の調光(2段階の例) 野外輝度の設定値に対する比率 路面輝度の比率 50 %以上 100 % 5 %以上∼50 %未満 50 %以上 ④連続するトンネルの入口部照明 二つのトンネルが連続して存在する場合、この間の野外輝度は先行トン ネルの出口に近づくとともに上昇し、 出口で最大となった後、 後続トンネ ルの入口に接近するとともに徐々に低下します。 坑口間距離が設計速 度に対応した視距よりも短い場合には、 先行トンネルの出口における野 外輝度が、 単独で存在するトンネルにおける視距に相当する地点の野 外輝度よりも低くなるため、その比だけ後続トンネルの入口部照明の路 面輝度を低減することができます。 i ) 野外輝度 後続トンネルの野外輝度は、 先行トンネルの存在しない状態、すなわち 後続トンネルが単独で存在する状態を想定して求めます。 ii ) 境界部の路面輝度 後続トンネルの野外輝度は、 先行トンネルの出口での野外輝度が最大 となり、 視距手前の地点から求める先行トンネルが存在しない状態での 野外輝度より低くなります。 境界部の路面輝度L1 は、 単独で存在するトンネルの境界部の路面輝 度L1と表8に示す坑口間距離に対応した入口部照明の低減係数f1から 次式により算出する。 L1 =f1・L1 (cd/㎡) 停電時用照明の設置 停電時用照明の電源設備には、 無停電電源装置と予備発電設備の2 種類があります。 〈無停電電源装置による停電時用照明〉 この方式には次の二つがあります。 i ) 受配電盤を設置した場所に蓄電池を設置し、インバータによって変 換した交流電源をトンネル内の一部の灯具に供給して、 停電時、 自動的に点灯させます。 ii ) トンネル内の一部の灯具にそれぞれ蓄電池とインバータを内蔵させ、 停電時に自動的に点灯させます。 いずれも、 無停電電源装置により 照明する場合の照明レベルは、 基本照明の概ね1/8以上の明るさを 確保することが望まれます。 〈予備発電設備による停電時用照明〉 予備発電設備(自家発電設備)により電源供給する場合の照明レベルは、 基本照明の概ね1/4以上の明るさを確保することが望まれます。 なお、 停電後に予備発電設備が正規電圧を発生するまでの間は、 無停 電電源装置によって電源供給する方式によるものとします。 光源の選定 ■表8. 後続トンネルの入口部照明の低減係数f1 技術資料集 206 設計速度V(km/h) 坑口間距離 d(m) 100 80 70 60 50 40 d≦10 0.30 0.35 0.35 0.40 0.40 0.45 10<d≦15 0.40 0.45 0.50 0.50 0.55 0.60 15<d≦20 0.50 0.55 0.55 0.60 0.65 0.75 20<d≦35 0.60 0.70 0.75 0.75 0.85 0.95 35<d≦50 0.70 0.80 0.85 0.90 1.00 1.00 50<d≦70 0.80 0.90 1.00 1.00 70<d≦100 0.90 1.00 100<d 1.00 トンネル照明用の光源は、低圧ナトリウムランプ・高圧ナトリウムランプ・ 蛍光ランプ・セラミックメタルハライドランプのうちから効率・寿命・光色・ 設置場所の環境条件・経済性・見え方・快適性などを考慮して選定しま す。 また、 光源の種類は単一光源に限らずこれらの光源を組合せて使 用することもできます(道路照明、 表6)。 Harmony Lighting トンネル照明 照明方式 対称照明方式 従来の方式 従来一般的に用いられている手法です。 トンネル の縦方向にほぼ対 称な配光の照明 器 具を用い、 車の進行方向に対称に光を配する方式です。 基 本的には壁側に照明器具を配置して対抗車線側 の路肩付近を照射することで、 全体として明るさ (照度)のバランスのとれた環境を創出します。 照明器具 側壁配置形 車両進行方向 照明器具 天井配置形 車両進行方向 非対称照明方式 非対称照明とは、 照明器具の配光が車両の進行方向(道路の縦方向)に対して非対称なもので、 カウンタービーム方式、 プロビーム方式があります。 ①カウンタービーム方式 路面の障害物などが認識しやすい照明方式です。 比較的交通量が少ないトンネルに向いています。 ドライバーに対して、 車の進行方向とは逆方向に光を照射するため、 路面上の障害物のドライバー側の面に直接光があたりません。 これにより障害物と路面との間のコントラストが高くなり、 障害物をより認識しやすくなります。 90° 80° 70° 車両進行方向 60° 50° 40° 30° 20° 車両進行方向 10° 0° シルエットになります。 しかも経済的です カウンタービーム方式では、 路面が従来方式と同照度であれば、 より障害物を認識しやすくなります。 また基本的にドラ イバーの方向に効率良く光を照射しているため、 少ないエネルギーで高い照度を得ることができます。 これにより、 消費電 力等を削減し省エネルギーにも貢献できます。 ②プロビーム方式 トンネル内での先行車両の視認性を高める照明方式です。 交通量が比較的多く走行速度も速い都市部のトンネルに適性があります。 ドライバーに対して、 車の走行方向に光を照射することにより先行車両の背面に強い光があたります。 これにより先行車に視認性がより向上するわけですが、 特にトンネルに入る時やトンネルを出る時の「先行車が一瞬消える」という現象を改善できます。 90° 80° 60° 50° 40° 0° 10° 20° 30° 技術資料集 70° 車両進行方向 車両進行方向 先行車を照らします。 207
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