レーザー共鳴イオン化を用いた 希ガス不純物測定 日本原子力研究開発機構 東京大学宇宙線研究所A 岩田 圭弘 関谷洋之A,伊藤主税 日本物理学会2014年秋季大会 佐賀大学本庄キャンパス 2014/9/18 (Thu.) 本研究は科研費(25707020)の助成を受けたものである。 1/12 Outline • Xeを用いた暗黒物質探索におけるRn, Kr不純物 * レーザー共鳴イオン化 を用いた Rn除去、Kr測定 • (1)空気中Rnを用いた共鳴イオン化観測(現状) * 真空紫外 + 可視レーザー による(γ1+γ2)イオン化 * 質量数 A= 222 領域のTOF spectrum • (2)Xe中 ~ppt level Kr測定への適用性評価 * 紫外レーザー による(2γ+γ)イオン化 * Ar中の~ppt level Kr 測定 ⇒ Xe中Krへの適用性 • まとめ、今後の予定 2/12 Xeを用いた暗黒物質探索における 不純物 Rn除去、Kr濃度測定 • 最大の内部BG、Xe循環で除去 85Kr: 85Kr/Kr~10-11 ⇒ ~ppt of Kr 222Rn: • Rn: 冷却活性炭は、同族のXeも吸着 Kr: API-MS前段に GCによるKr濃縮 XMASSの数keV領域におけるBG源 BGレベル [cts/day/kg/keV] BG発生源 外周由来 β・γ 85 Kr (Kr < 1 ppt) Rn (~8 mBq) 環境中性子 222 < 10 -5 < 10 -5 ~10 -4 < 10 -6 API-MS: 大気圧イオン化質量分析、IP大→小に電荷交換 GC: ガスクロマトグラフィー • 狭線幅のパルスレーザーで Rn or Kr のみ共鳴イオン化 Rn: 222Rn+を電場ドリフトし除去 Kr: 84Kr+をTOF-MSで検出 VUV+可視 UV 3/12 (1)Rn測定セットアップ(試料導入、検出) • 神岡空気中のRn共鳴イオン化 + TOF質量分析 • 活性炭冷却(-80℃)でRn濃縮、250℃でRn放出 • 超音速分子線バルブ(PSV)から導入し、MCPで検出 神岡空気中のRn を ベーキング + 循環し PSVから導入 VUV + 可視パルスレーザー (平行光, 5 ns) でRnイオン化 VUV 4/12 (1)Rn測定セットアップ(VUVレーザー) • 共鳴四波混合による真空紫外(VUV)光生成 TOF-MS • Kr 共鳴より短波長 + Xe混合による位相整合 ⇒ VUV ~ 10 μJ/p (MgF2 prism×2 後) • MgF2 prism×2 で VUV光を分離&反射 Xe/Kr ~ 0.073 212.5 nm: Kr 2γ 励起 より ~0.01 nm 短波長 5/12 (1)Rn共鳴イオン化の測定結果 • A = 222 領域にピーク • Xe: 147.0 nm + 266 nm イオン化で レーザー2本の空間・時間的overlap VUV波長の確認 A = 222 (71.9 μs) 1000秒 1000秒 6/12 (2)Kr測定セットアップ(TOF-MS) • 市販 pure Xe に不純物 Kr ~ 10 ppb ⇒ Ar中Krから推定 • 100-400 ppb Kr 含有 Xe, Ar ガスを測定し、主成分Xe, Ar におけるKr検出感度を比較 (次頁に試料調製の概要) • ~ppt level Kr 含有 Ar ガス ⇒ 主成分Xeの場合を評価 試料調製(次頁) 212.6 nm(集光) で Krイオン化 7/12 (2)試料調製(100-400 ppb Kr in Xe, Ar) • 系全体を真空引き後、VA に 50 ppm ガスを少量供給 • ~4 atm の高圧 pure Xe or Ar を供給し、VA 内で混合 (50 ppm ガスは殆ど逆流しない) • VB-VD 真空引き後、混合ガスを拡散させて ~1 atm に 8/12 (2)84Kr質量スペクトルの濃度依存性 • 主成分Xe(左), Ar(右)ともに、測定時間は各100秒 • 84Kr ピーク電圧は濃度に比例 • 84Kr 信号量: 44.1-44.3 μs 積分値、前後50 ns 平均値をベース電圧 各測定で透過レーザー出力をモニターし、信号量を補正 100秒 100秒 主成分:Xe 主成分:Ar 9/12 (2)主成分Xe, Ar におけるKr検出感度比較 • 濃度 vs. 信号量の傾きから、主成分XeのKr検出感度は 主成分Arの約1/2 ⇒ PSVからの導入ガス拡がり • MFCで調整した既知濃度Kr含有Arガス、大気圧flow: y = (36.92±0.36) x ⇒ 希釈操作OK 主成分:Xe y = (20.46±0.12) x + (266.38±27.73) 主成分:Ar y = (37.62±0.59) x 10/12 (2)Ar 中 ~ppt level Kr測定 • • • • MFCで Kr濃度5-20 ppt に調製 pure Ar 中の Kr ≲ 1 ppt を観測 二量体BGは、Xe中Krでは影響なし 主成分Xeでも、~1 ppt 領域観測可 1000秒 pure Ar 1000秒 y = (62.19±2.87) x + (53.35±32.95) 11/12 Summary and future plans • レーザー共鳴イオン化を用いた Rn除去、Kr測定 • (1)空気中Rnを用いた共鳴イオン化観測(現状) * VUV + 可視レーザーを平行光でTOF-MSに導入 * A = 222 領域にピーク、Xeイオン化で光軸を最適化 • (2)Xe中 ~ppt level Kr測定への適用性評価 * 主成分XeのKr検出感度は、主成分Arの約1/2 * Ar中の ≲ 1 ppt Kr を測定 ⇒ Xe中 ~ppt level 観測可 • 今後の予定 * Rn: 電場ドリフトの設計、 Kr: XMASS への適用 12/12 補足資料 冷却活性炭による Rn回収・ベーキング放出 • (1)冷却活性炭(-80℃)で、神岡空気中のRnを回収 前段の活性炭なしU字管で水分除去 • (2)活性炭ベーキング(250-300℃)&Ar押し出しで Rn放出 ⇒ 300 cc 容器 + PSV に拡散 補1/7 Kr濃度希釈方法(~100 ppb of Kr in Xe) VA - VD 真空引き、以下 P0 は絶対圧、PXe, PPSV はゲージ圧 50.2 ppm ガス P0 ~ 0.024 MPa(ガスボンベ圧力計) をVBに供給 VB → VA + VB 真空拡散 V3 close, VB-VD真空引き後に pure Xeを PXe ~ +0.286 MPa供給 V3 open で 50.2 ppm ガスを希釈1分 ⇒ PPSV ~ +0.034 MPa V3 close, VB - VD真空引き後、 VA → VA + VB + VC 真空拡散 ⇒ PPSV ~ +0.016 MPa(1回目測定) • 前項を繰り返し ⇒ PPSV ~ +0.001 MPa(2回目測定、ほぼ大気圧) • VA - VC → VA - VD 真空拡散 ⇒ PPSV ~ -0.025 MPa(3回目測定) • VD 真空引き、前項を繰り返し ⇒ PPSV ~ -0.043 MPa(4回目測定) • • • • • • • Kr濃度(絶対圧で計算): 50200×𝑃𝑃0 ×𝑉𝑉𝐵𝐵 ×𝑉𝑉𝐴𝐴 /(𝑉𝑉𝐴𝐴 +𝑉𝑉𝐵𝐵 ) 𝑃𝑃𝑋𝑋𝑋𝑋 ×(𝑉𝑉𝐵𝐵 +𝑉𝑉𝐶𝐶 +𝑉𝑉𝐷𝐷 )/(𝑉𝑉𝐴𝐴 +𝑉𝑉𝐵𝐵 +𝑉𝑉𝐶𝐶 +𝑉𝑉𝐷𝐷 )×𝑉𝑉𝐴𝐴 [ppb] 補2/7 A = 84 領域のバックグラウンド(pure Xe) • pure Xe を MCP2500, amp500 で1000秒測定(項目3と同じ) • レーザー波長を共鳴から少しずらして測定 ⇒ 赤, 青, 緑はIdler 波長(共鳴: 1072.809 nm)の共鳴からのずれ • 緑と青に共通のピークは炭化水素系の不純物か? ⇒ XMASS の pure Xe であれば無視できるか 212.6 nm波長で、赤, 緑, 青は共鳴波長より 0.004, 0.008, 0.012 nm 長い 補3/7 改良レーザー光学系の全体像 励起光 (354.8 nm) 1. OPG 1. OPG: 530.2 nm 生成 2. OPA: 530.2 nm 増幅 2. OPA 3. SFG 3. SFG: 212.6 nm 生成 補4/7 光パラメトリック発生(OPG) • 354.8 nm(励起, P) → 530.2 nm(S) + 1072.8 nm(S) • 波長変換: BBO結晶×4 回転角を微調整 ⇒ (次頁) • ECDL波長をモニターし、可視光波長を間接的に調整 • ~30 mJ/p(Φ3), ~35 mW(Φ2) → 3-4 mJ/p at 530.2 nm at 354.8 nm 半導体レーザー(ECDL)の 波長1072.8 nm をモニターし、 可視光波長を調整 at 1072.8 nm P S 矢印: 結晶軸 ECDL:波長可変、狭線幅 波長変換(次頁) ビーム パターン 補5/7 OPG設計(波長変換)の詳細 W(x) H(y) L(z) • BBO結晶: 7×5×20 mm, 7×5×15 mm 各2個を 対称配置 ⇒ walk-off(励起光路のずれ、ρ~4 deg) を相殺 • 台形カットにより、自発的共振を防止 OPA も同様 • θ精度 ~ 0.008 deg (結晶長20 mm) ミラーホルダー ~0.005 deg/目盛、0.1目盛で調整可 354.8 nm(励起光) ビーム拡がりも調整可 (ビーム径 Φ9 → Φ3 レンズ間距離で調整) 354.8 nm 1072.8 nm マイクロメータ P = 0.25 mm 矢印: 結晶軸 530.2 nm walk-off 補6/7 波長・出力の安定性比較(OPG vs. OPO) • 530 nm波長: 安定(~10-4 nm, ~102 MHz)、ドリフトなし 波長計の精度 ~60 MHz, フーリエ限界 ~90 MHz(5 ns pulse) 354.8 nm との和周波(SFG) ⇒ 212.6 nm 波長も安定 • 212.6 nm出力も安定性向上、温度調節で安定性アップ • Kr共鳴/非共鳴は、ECDL波長で調整する 温度不安定 OPG: 左軸 OPO: 右軸 1000 秒 530 nm波長 10 秒 212.6 nm出力 補7/7
© Copyright 2024 ExpyDoc