論 文 内 容 の 要 体性感覚野で Mecp2 ノックアウトマウスの SERT の mRNA 発現レベルが有意に低下して 旨 いた(52.7%, p<0.05)。 論文提出者氏名 論 文 題 諸戸 雅治 目 以上の結果より、バレル野の面積低下に関して P40 は脳重量に差があることから成長障 害の影響を受けていると考えられるが、P10 は脳重量に差がなく成長障害の影響はないと Altered somatosensory barrel cortex refinement in the developing brain of Mecp2-null 考えた。バレル野は一般的に P4 までに可視化できるようになる為、P4 でバレル野を確認 mice できたことはバレル野の出現には遅れがないことを示している。また SERT は前シナプス に存在しており SERT 免疫染色で異常が無かったことはバレル野の面積低下に後シナプス 論文内容の要旨 レット症候群はメチル CpG 結合タンパク(以下 Mecp2)遺伝子の変異による特異な発達 障害を呈する疾患である。その病態にセロトニン(以下 5-HT)が関与していると考えられ、 の要素が関与していると考えた。ただ P10 の体性感覚野では面積低下以外に HPLC や RT-PCR で異常を認めず、 Mecp2 ノックアウトマウスにおけるバレル野の構造的異常は比 較的軽微なものと考えられた。 これまで患者検体やモデルマウスで 5-HT の異常が報告されてきた。また齧歯類の大脳皮 HPLC で P10 の視床における 5-HT 低下を認めた。過去の報告で発達早期に 5-HT の異 質体性感覚野に存在するバレル野は神経発達や可塑性の研究に広く使用されている。5-HT 常を確認したものはなかった。バレル野の発達に視床の 5-HT が関与するとした報告も散 の多寡はバレル野の形成に影響するとされるが、レット症候群モデルマウスのバレル野に 見され、本研究からも視床の 5-HT 低下がバレル野の異常に関わっている可能性があると 関する研究は過去にない。今回、モデルマウスにおけるバレル野の発達及び 5-HT の動態 考えた。 に関して研究した。 Mecp2 ノックアウトマウスの成獣に関する 5-HT の低下は過去の報告に一致した。視床 実験は以下の方法で行った。米国ジャクソン研究所から Mecp2 ノックアウトマウスを購 皮質線維の SERT は発達早期に一過性に出現するのみであり、今回観察された P40 の体性 入し C57BL/6 を背景に維持した。遺伝子型は PCR で確認した。すべての実験はガイドラ 感覚野での SERT の mRNA 発現レベル低下は視床皮質線維の異常によるものではないと考 インに従い、京都府立医科大学実験動物委員会の承認を得て行った。バレル野の面積を測 えた。 定するために平坦化した脳切片を用いてチトクロム酸化酵素(以下 CO)による組織化学を レット症候群の患者では運動機能障害が有名であるが、感覚障害についての報告は少な 日齢(以下 P)10、P40 で行った。発達早期のヒゲのパターンを確認するために P4、P5 い。我々の研究結果はレット症候群で運動障害に加えて感覚障害も存在することを支持す の動物を使用して CO 染色を行った。P4 では抗 5-HT トランスポーター(以下 SERT)抗 るものである。 体による免疫染色も行った。P10、P20、P40 の体性感覚野、視床、線条体における 5-HT、 Mecp2 ノックアウトマウスの発達期脳でバレル野の面積が減少し、視床の 5-HT が減少 5-ハイドロキシインドール酢酸(以下 5-HIAA)を高速液体クロマトグラフィー(以下 していることを初めて報告した。以上の結果より Mecp2 はバレル野の成熟に必要であり、 HPLC)で測定した。使用していない方の大脳半球を用いて RT-PCR を行い SERT、5-HT1B 視床の 5-HT がそれに関与している可能性があると考えた。 受容体の mRNA 発現レベルを測定した。 上記の実験により以下の結果を得た。CO 染色では P10、P40 の Mecp2 ノックアウトマ ウスでバレル野の面積低下を認めた(P10; 22.9%, p<0.05, P40; 11.8%, p<0.05)。脳重量 は P10 で有意差なく、P40 の Mecp2 ノックアウトマウスで有意に低下していた。P4、P5 の CO 染色、P4 の SERT 免疫染色では Mecp2 ノックアウトマウス、野生型ともバレル野 の出現を確認できた。HPLC による 5-HT 濃度は、 Mecp2 ノックアウトマウスの体性感覚 野において P20、P40 で低下していた(P20; 22.9%, p<0.05, P40; 17.7%, p<0.05)。視床 では P10、P40 で低下していた(P10; 16.9%, p<0.05, P40; 22.9%, p<0.01%)。線条体で は P40 のみで低下していた(P40; 25.2%, p<0.05)。5-HIAA には有意差を認めなかった。 5-HIAA/5-HT 比は P40 の Mecp2 ノックアウトマウスの体性感覚野(31.6%, p<0.01)、視 床(26.5%, p<0.01)、線条体(27.4%, p<0.01)で増加していた。RT-PCR 法では P40 の
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