冠攣縮性狭心症 Coronary Spastic Angina (CSA) 修練医 内藤貴教 参考文献:日本循環器学会ガイドライン、up to date, Takamatsu Red Cross Hosp Out Line • 狭心症の定義、分類 • 冠攣縮性狭心症の歴史 • 冠攣縮性狭心症 疫学、原因、症状、診断、治療、予後 • 症例3つ • 最近のトピックス 冠攣縮性狭心症 • 従来はVSA Vasospastic angina 日本循環器学会の推奨 • 推奨:CSA Coronary spastic angina 狭心症の定義 • 一過性の心筋の虚血のための胸痛・胸部圧迫 感などの主症状 • 分類 1.発症の誘因による分類 (労作? or 安静?) 2.発症機序による分類 3.臨床経過による分類(AHA分類,1975年) (安定? or 不安定?) 発生機序からの分類 器質性 狭心症 冠攣縮性 狭心症 冠血栓性狭心症 心筋梗塞 狭心症の定義 • 一過性の心筋の虚血のための胸痛・胸部圧迫 感などの主症状 • 分類 1.発症の誘因による分類 (労作? or 安静?) 2.発症機序による分類 3.臨床経過による分類(AHA分類,1975年) (安定? or 不安定?) 臨床経過からの分類 ACS(Acute Coronary Syndrome) 冠攣縮性狭心症 冠血栓性狭心症 冠攣縮性 心筋梗塞 狭心症 臨床経過による分類(AHA分類,1975年) • 急性冠症候群Acute coronary syndrome(ACS) ●不安定狭心症 新規に生じた狭心症 既往の安定狭心症の頻度、強さ、持続時間が増加 安静時にも発作が生じるようになった病態 ●NSTEMI(Non ST elevated MI)(心内膜下心筋梗塞) 約30%の患者が3ヶ月以内にMI発症 ●STEMI(ST elevated MI)(貫璧性心筋梗塞) AHAガイドライン 臨床経過からの分類 ACS STEMI 不安定狭心症 NSTEMI 不安定狭心症とNSTEMIの違いは? 不安定狭心症 NSTEMI CK-MB+, TroponinT+ CK-MB+, TroponinT+ CK-MB+, TroponinT+ なぜ冠攣縮性狭心症を選んだか? • 冠攣縮性狭心症は比較的予後は良い。 • しかし、急性心筋梗塞や突然死の原因となるこ とが少なくない。 • 不明の失神では冠攣縮を疑う必要がある J Am Coll Cardiol 1988;12:883-888 冠攣縮性狭心症の歴史 • 1960年頃 Prinzmetalらによって最初に報告された Am J Med 1959 ; 27 : 375 • 1970年頃 冠攣縮は狭心症のみならず、心筋梗塞の誘引になると報告 • 1980年頃 冠攣縮の原因はspasmである。 Yasue H et.al Am J Cardiol 1981 ; 47 : 539-546 Ca拮抗薬がspasmの予防に有用 Circulation 1979 ; 59 : 938-948 • 1990年代 短時間作用型から長時間作用型カルシウム拮抗薬に移行 • 2000年代 冠攣縮性狭心症増加傾向に? 疫学 • 器質性狭心症:欧米で多く、アジアは比較的少ない • 冠攣縮性狭心症:欧米に比較し日本人の発症率が高い Circulation. 2000; 101: 1102-1108. 日本人の狭心症の年齢分布 冠攣縮性狭心症の頻度 年代別 器質性、冠攣縮性狭心症患者数 当院2013年度 カテ件数に占める薬物負荷の割合 28% 2% 70% CAG 薬物負荷 PCI Takamatsu Red Cross Hosp CSAの危険因子 • • • • • • • • • 喫煙 ストレス(自律神経機能の異常) 飲酒 性格(タイプA気質) 脂質異常 遺伝的要因(eNOS,HLA-DR2) 寒冷、過換気、女性ホルモン欠乏 インスリン抵抗性Circulation 1995; 92: 1749-1757 ビタミンE欠乏 Circulation 1996; 94: 14-18 臨床症状 病気が見えるより抜粋 臨床症状 • 安静時に、15分程度の前胸部痛(時に上腹部 痛、顎・肩への放散痛、上腕のしびれ等) • 冷や汗 • 夜間から早朝にかけて出現する(日内変動有り) • 早朝には軽度の労作で誘発 • 過呼吸や飲酒により誘発 • 発作に伴う不整脈(完全房室ブロック、心室頻 拍、心室細動などで意識消失) 完全房室ブロック 心室頻拍 時にPSVTと鑑別困難 →脈触知不良 →血行動態不安定 電気的除細動 360J 非同期 心室細動 電気的除細動 360J 非同期 冠攣縮性狭心症(CSA)の診断 参考項目 • 硝酸薬により消失する狭心症様発作で,以下の 何れか一つが満たされれば冠攣縮疑いとする. 1)(特に夜間から早朝にかけて)安静時に出現する 2)運動耐容能の著明な日内変動が認められる (早朝の運動能の低下) 3)過換気(呼吸)により誘発される 4)カルシウム拮抗薬により発作が抑制されるがβ遮 断薬では抑制されない 冠攣縮性狭心症(CSA)の診断 カテーテル or 運動・過換気負荷 診断 • 心電図、Holter心電図 • 負荷心電図 運動が攣縮を誘発 過呼吸負荷試験 sensitivity 60% specificity 100% • 心筋シンチグラフィ • I123-BMIPP,I123-MIBG の低集積像 →心筋虚血の既往を示す • 冠動脈造影 (アセチルコリンやエルゴノビンなどの薬物負荷試験) 治療 • 禁煙、禁酒等の生活習慣の是正 • 硝酸薬(ニトログリセリンや硝酸イソソルビド)の投与 • 予防にはCa拮抗薬の就寝前の内服 • βブロッカーは冠攣縮を増悪させるため冠拡張 薬の併用なしに使用することは禁忌 • その他:スタチン、Mg、漢方、Rhokinase阻害薬etc 予後 • カルシウム拮抗薬の内服により心事故の発生 率が低下する。 • 高度狭窄の存在は心筋梗塞の発生率を高め る。 Circ J. 2005; 69:1333-1337. • 突然死の危険が高いのは多枝攣縮患者や発作 時重症不整脈を伴う患者である CircJ. 2005; 69: 171-176. • 器質的冠動脈病変を有する症例が多い欧米人 では、日本人より予後が悪い。 J Nucl Med.1995; 36: 1934-1940. 難治性冠攣縮性狭心症 • 難治性:2剤以上の薬物で症状の改善を認めないもの • 全体の13.7% (厚生労働省による疫学研究より) • 冠攣縮の発生機序には喫煙などの危険因子に加えて遺伝的な 背景が関与することが示唆されている • Rho kinase阻害薬(ファスジル)は、バイパス手術直後に生じた難 治性冠攣縮に対しての改善効果が認められており,今後有用な 治療薬となりうる可能性がある J Cardiovasc Pharmacol. 2004; 44: 275-277). • 攣縮による心室頻拍,心室細動に対する植え込み型除細動器 (ICD)の適応に関しては,統一された見解はない CABG術後の冠攣縮性狭心症 • CABG後は,麻酔,手術侵襲,体外循環によって内因 性血管収縮性物質が産生され,また外因性カテコラミ ンや血管収縮薬が投与されるため,重篤で致死的な 冠攣縮が発生する場合がある. • ニトログリセリン,長時間作用型硝酸薬,カルシウム 拮抗薬、ニコランジルが有効である. • グラフト(特に撓骨動脈、胃体網動脈)の攣縮も問題 • 手術直後に生じた難治性冠攣縮に対してRhoキナー ゼ阻害薬(ファスジル)が有効 J Cardiovasc Pharmacol. 2004; 44: 275-277) 症例 16歳 男性 主訴 胸部不快感 現病歴 生来健康。 2年前に運動中の胸痛を自覚し、当院小児循環 器科を受診した。精査するも異常なく精神疾患と して2年間経過観察されていた。その後、安静時 にも頻回に胸痛出現するようになり、精査目的に 冠動脈造影(薬物負荷試験)施行。 既往 なし 生活歴 家庭環境に問題有り Takamatsu Red Cross Hosp Case2. 16歳 男性 胸痛出現 心電図変化なし Takamatsu Red Cross Hosp 経過 • 診断が遅れ、周囲の人間から詐病として扱わ れ登校拒否に。高校中退。 • 家庭環境に問題が有り、受動喫煙有り • 冠攣縮予防目的に多剤を使用するも治療抵 抗性で加療に難渋している。 Takamatsu Red Cross Hosp Case3. 73歳 男性 胸痛出現 心電図 全誘導でST上昇 Takamatsu Red Cross Hosp Case. 12歳 男性 生来健康。 安静時の前胸痛部痛を自覚し、近医を受診。ST 上昇とCK-MBの上昇を認めACS疑いで入院と なったが、ニトログリセリンで症状改善すること からCSA疑われ当院紹介受診。 Takamatsu Red Cross Hosp Case. 12歳 男性 Takamatsu Red Cross Hosp 薬物負荷 Takamatsu Red Cross Hosp 薬物負荷後 Takamatsu Red Cross Hosp 経過 • 頓服でニトロ内服 • カルシウムブロッカー等の内服加療無く経過観察でき ている。 • 性格や家庭環境には問題なく、受動喫煙等もなし。原 因として考えられたのは、受験期のストレスなど?。。 Takamatsu Red Cross Hosp 心臓突然死 救命の輪 まとめ① • 発生機序の分類として冠攣縮性狭心症と冠 血栓性狭心症。 • 臨床症状の分類でACSという新しい概念出現 STEMI, NSTEMI,不安定狭心症 • NSTEMI,不安定狭心症を分けるものは心筋逸 脱酵素(CK-MB,TroponinT)の有無 Takamatsu Red Cross Hosp まとめ② • 冠攣縮性狭心症(CSA)は予後は良いが、突 然死の危険性がある。 • 治療は基本的にはCa blocker • 若年発症のCSAはほとんど報告ないが、若年 発症の胸痛を診た際に冠攣縮性狭心症を疑 う必要がある。 Takamatsu Red Cross Hosp 突然死や心臓疾患で亡くなる時代が 来ることを願って! ご清聴ありがとうございました。 Takamatsu Red Cross Hosp
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