学校事例 福岡県立香住丘高校 全教科で観点別シラバスの作成を実 施した。英語では、従来実施してい た CAN-DO 評 価 と、 観 点 別 評 価 を 組み合わせることになったが、その 作業を通して感じた意義を英語科主 任の永末温子先生は振り返る。 ﹁以前より実施してきた CAN-DO 評価と、観点別評価といった異なる 福岡県立香住丘高校 永末温子 ながすえ・はるこ 英 語 教 科 主 任。 S S H 推 進 課 副 課 長。 教 職 歴 年。 赴 任歴 年目。 ﹃生徒の理解に合った教え方が出来 ていたか﹄などと、それまでの指導 を振り返りながら議論を重ね、観点 指導計画を策定する作業が続きまし 別シラバスとそれに沿った年間学習 福岡県立香住丘高校 た﹂ ︵永末先生︶ 得て永末先生が開発した﹁コミュニ 英語科では、共同研究者である東 海大准教授の長沼君主先生の助言を ◎1985年福岡県内の公立高校として最初に英語 来、先進的な英語教育とカリキュラム開発に取り組 コースが設 置︵1994年 英 語 科に改 組 ︶されて以 む。 2003年 度にSELHi研 究 指 定、2011 年度にSSH研究指定。 ケーション英語Ⅰ﹂のシラバスをモ ◎全日制/普通科︵一般コースと数理コミュニケーショ ンコース︶ 、英語科/共学 デルとして、英語科の他の科目のシ ラバス作成も行われた。 ︵ 図 ︶ 。 ◎1学年約400人 ◎2013 年 度 入 試 合 格 実 績︵ 現 浪 計 ︶ / 国 公 立 大は、 筑 波 大、 東 京 外 国 語 大、 九 州 大 などに 西南学院大、福岡大などに延べ741人が合格。 191人が合格。 私立大は、東京理科大、同志社大、 観点別評価を基に 授業を見直す でそれぞれの観点を評価するかが明 で、どのレッスンのどういった活動 ものなので、どのような学習目標が したし、シラバスは生徒も活用する 観点別シラバスを作る必要がありま ﹁新課程全面実施年度にどの教師 が教壇に立ったとしても理解できる も理解し、英語で答えることができ なる質問に答え、さらに背景的知識 に、 ﹁本文の流れを理解して命題と どのスキルを重視した能力記述の他 の﹁英文を1分間に○語読める﹂な 評 同 校 の 英 語 に お け る CAN-DO 価を加えた新しい観点別シラバス 施行に当たり、 ﹁英語を英語で﹂の 確になりました。 CAN-DO 評価は、 主に﹃技能﹄ ﹃知識・理解﹄の評価 設 定 さ れ、 ど の よ う に 評 価 が な さ る﹂といった、教科書ベースの授業 香住丘高校では全教科の観点別シ ラバスが前年度末には完成し、全教 授業実践のために普通科の授業改善 が中心でしたが、 ﹃関心・意欲・態度﹄ れるかを十分に説明できるものでな を基本に英語で英語を理解して表現 では、生徒の学習到達度を﹁何が出 を行い、教科書をベースとした﹁観 などを含め、4観点をバランス良く ければなりませんでした。教科内で 職員・全校生徒に配布され、年度当 点別シラバス﹂と、生徒自身が学習 評価できる授業に改善していく必要 初からの授業で活用されている。 状況を客観的に把握する﹁ CAN-DO チェックリスト﹂の開発を行った。 来 る か ﹂ の CAN-DO 形式で評価す るための記述がなされた。それまで 1 する能力を評価する記述が多く加え タイプの評価を組み合わせること P. 32 評価を取り入れた CAN - DO 観点別シラバスを作成し 授業を改善する 学校全体で 観点別シラバスを作成 福 岡 県 立 香 住 丘 高 校 に は、 普 通 科︵一般コース、数理コミュニケー ションコース︶ ・英語科が設置され ている。同校では、2003年度の 研究指定以来、主に英語科で SELHi 33 は﹃この教材を使ってどうだったか﹄ 英 語 の CAN-DO リ ス ト の 開 発・ 研 究を続けてきたが、 年度の新課程 16 もありました﹂ 13 本年度、同校は英語だけではなく、 Febr u ar y 2 0 14 31 観点別評価の意義とその実践のポイント 新課程 教科指導最前線 ﹁シラバス、チェックリストを教科 内で共有することで、新課程におい られた。また、生徒が出来るように なるプロセスを認めていく姿勢も、 ても、全ての教師が同じ立場、同じ 目線で生徒に接することが可能にな りました﹂ ︵永末先生︶ 新課程では 教師も学び合う学習者 これまで同様に重視されている。 ﹃出来るか、出来ないか﹄だけで ﹁ なく、 ﹃出来つつある﹄ことを評価 することは、 ﹃英語を英語で﹄教え るようになった新課程では、特に重 要です。生徒は授業で﹃出来るよう になりつつある実感﹄を持つことで、 ﹁英語を英語で﹂教える授業の ス タ ー ト、 ﹁観点別シラバス﹂や ﹁ CAN-DO チェックリスト﹂の作成 など、英語教育の大きな変化の中で、 ﹃やれば出来る﹄という自己効力を 活動を行おうとします。 ﹃出来つつ 永末先生は﹁教師の同僚性﹂の重要 高め、積極的にコミュニケーション ある﹄ことを感じさせるように活動 性を感じている。 ﹁ ﹃英語を英語で﹄教える授業につ いては、ベテランも若手もスタート を設計することで、次の学習へと生 徒の自律的な学習態度を醸成してい きます﹂ ︵永末先生︶ えるようになって、より周到な教材 生徒の発話を引き出すような発問を ラインは同じです。だからこそ、教 む・書く・聞く・話す﹂の4技能を 研究を行っています。例えば、教科 工夫する一方、教材の内容理解を深 更に英語では、生徒が学習目標の 整理し、学習の到達度と必要度を4 書の内容を深く理解できるような発 め、考えさせたい発問をシナリオ化 後は、教科内でレッスンごとに担当 教員を決めて作成し、学び合う環境 年度に1年生が受験した7月と 月の模試の成績を比較すると、同 が出来ています﹂ 校の英語の成績は上昇し、しかも、 クラス間の成績差は非常に小さい。 13 材研究の成果や各クラスでの活動の 段階で自己評価させる。チェックリ 問と、それに対して予想される生徒 します。また、授業を振り返り、生 月 前期 4月 5月 11 ストは、生徒にとっては自身の学習 の答えを書き出した発問シナリオを 徒の反応を基に次のシナリオ作りに 様子は、これまで以上に共有されて を内省し、教師にとっては生徒から 作成するのですが、教科書1パート 生 か し て い き ま す。 発 問 シ ナ リ オ 達成度を自己評価できる﹁ CAN-DO チェックリスト﹂も作成している︵ 図 のフィードバックを受けて、自分の に対してシナリオが5∼6ページ以 は、私がモデルを先行的に作成した います。実際、 ﹃英語を英語で﹄教 授 業 を 振 り 返 る こ と が 出 来 る﹁ 生 上になることも珍しくありません。 2︶ 。観点別シラバスを通して﹁読 徒と教師が共有する道具﹂となる。 図1 「観点別シラバス」サンプル(コミュニケーション英語Ⅰ) 6月 単 元 高校英語入門 学習内容 高校での英語学習準備 (春休み課題) 学習目標と評価の観点 前期中間考査までの学習の目標・評価の観点 ❶コミュニケーションへの関心・意欲・態度 授業での学習のポイント □科学に関する紹介文や説明文を読んで、情報や考えを積 LANDMARK 極的に理解しようとする。 Lesson 1 □科学に関する紹介文や説明文を読んだ後で、意見を積極 What Can Blood ❶音読 意味の区切りで読む。 的に交換しようとする。 Type Tell Us? (チャンクリーディング・ リーディングルックアップ・ ❷外国語表現の能力 □単語の正しい強勢、文の正しい強勢、イントネーションを シャドーイング) 理解し、教科書を音読することができる。(L1, L5) □英語で自己紹介文を書き、自己紹介スピーチを行うことが ❷テキスト理解 できる。(L1) 「英語」を「英語」で □グラフィックオーガナイザーに図示された情報をもとに、 理解する。 テキストの全体的な流れを理解し、 口頭で説明できる。(L1) LANDMARK □グラフィックオーガナイザーに図示された情報をもとに、 ❸技能統合活動 Lesson 5 テキストの全体的な流れとパートごとの内容の関係を理 読んだり、聞いたりし Biodiesel 解し、口頭で説明できる。(L5) た内容を話したり、書 Adventure いたりする活動につな □教科書の本文を読んだ後で、その内容について意見交換 することができる。(L5) げていく。教科書の英 文の内容を基本に発展 □教科書本文をパートごと読んだ後で、要約の穴埋めをする ことができる。(L1, L5) 的な自己表現活動を行 う。 ❸外国語理解の能力 □教科書本文を読んで、本文の流れを理解して命題となる ❹速読演習 英文を速く正確に、英 質問に英語で答えることができる。(L1, L5) 語で理解するスキル演 □クラスメートが行う自己紹介の内容を理解することができ 習を行う。 る。 (L1) □意見交換において、クラスメートの意見を理解することが ❺補充リーディング できる。(L5) 前期中間考査 教科書の本文の内容に □教科書本文に関連した英文を読み、パラグラフの中の文 関連する英文読解を行 と文のつながりを理解し、全体の流れもある程度理解で Lesson 4 G ill d う きる (L1 L5) * Copyright@2013 Naoyuki Naganuma〈[email protected]〉& Haruko Nagasue〈[email protected]〉 *英語での年間指導計画と単元計画への CAN-DO リストの反映例については、 『各中・高等学校の外国語教育に おける 「CAN-DO リスト」の形での学習到達目標設定のための手引き』 (文部科学省初等中等教育局)も参照のこと。 (http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1332306.htm) 図1「観点別シラバス」サンプルの完全版は、次の URL よりダウンロード可能です。 http://berd.benesse.jp/berd/center/open/kou/dwdata/201402/shinkatei_1.pdf Fe b r ua r y 2 0 14 32 で一番多いという。 加えて、上位層の人数は過去3年間 つれて、教師の英語での指示や説明 ﹁ ﹃英語を英語で﹄の授業に慣れるに としていたと永末先生は説明する。 習内容でも意欲的に理解していこう 評価するのか﹂を見据えて、評価で 同校は展開している。 ﹁誰のために 徒が目標を達成できるような授業を 達度の学習目標を設定し、実際に生 と言えるだろう。 程ではどの教科にも求められている 授業を柔軟に改善することが、新課 きる授業設計を行い、評価結果から への理解度は格段 した。同時に、得た情報を使って地 の科学的探究心を高めるようにしま ず、生物の垂直分布にも触れ、生徒 雨量などの教科書の内容にとどまら 授業では、屋久島の地理的特徴や降 つ い て ア ド バ イ ス を 受 け、 実 際 の から内容の深め方や生徒の理解度に ナリオを作成しました。生物の先生 せるための教材研究を行い、発問シ ﹁屋久島のエコツアーを扱った単 元では、本文の背景的知識を理解さ は随分変わったと永末先生は話す。 観点別評価を踏まえて授業設計を 変えたことで、普通科の授業の様子 学習そのものの意 授 業 展 開 が、 言 語 教科の内容を学ぶ﹄ ました。 ﹃英語で他 り組む生徒が増え 自発的に学習に取 献 を 読 ん だ り と、 を 見 た り、 参 考 文 マに関連する動画 サイトなどでテー い ま す。 動 画 投 稿 トプット活動に積 意見発表等のアウ 図 2「CAN-DO チェックリスト」サンプルの完全版は、次の URL よりダウンロード可能です。 http://berd.benesse.jp/berd/center/open/kou/dwdata/201402/shinkatei_2.pdf 内容を深く、自発的に 理解する生徒たち 域比較を行う活動で、分数や倍数表 欲を高めることに 図2 「CAN-DO チェックリスト」サンプル(1年普通科〔数理コミュニケーションコース〕 ) に 高 ま り、 要 約 や 現に親しむなど、言語に対する知識・ つながっていると 感じます﹂ 観点別評価と 評 価 に CAN-DO よって包括的に評 ているテーマと密接に結び付いてい 価できるだけでな * Copyright@2013 Naoyuki Naganuma〈[email protected]〉& Haruko Nagasue〈[email protected]〉 極的に取り組んで 理解も深まりました﹂ 教科書を軸にしながらも、時には 教科書のレベルを超えた内容を学ん るため、生徒は一貫して興味を持っ く、 実 現 可 能 な 到 でいったが、内容が教科書で扱われ て学ぶことができ、高いレベルの学 Febr u ar y 2 0 14 33 観点別評価の意義とその実践のポイント 新課程 教科指導最前線
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