財団インフォメーション - 吉田秀雄記念事業財団

■財団インフォメーション
第12回
「助成研究吉田秀雄賞」
決定
第 12回「助成研究吉田秀雄賞」の贈賞式が 11月7日(金)
、
「アド・ミュージア
ム東京」にて開催されました。
本賞は、当財団が毎年行っているマーケティングおよびコミュニケーションに
関する研究助成事業において優れた成果を挙げた研究を顕彰するものです。平
成 25年度に当財団が助成した研究成果(常勤研究者の部 8件、大学院生の部 7
件)の中から、選考委員会(選考委員長 亀井昭宏早稲田大学名誉教授)による
厳正な審査を経て、下記の方々が受賞されました。
贈賞式では、亀井昭宏選考委員長の講評、森隆一理事長による賞状と副賞の
授与、受賞者挨拶に引き続き、常勤研究者部門受賞者の勝又壮太郎 長崎大学
常勤研究者部門 受賞者の勝又壮太郎氏
准教授および西本章宏 関西学院大学准教授による記念講演が行われました。
大平明氏(全日本広告連盟理事長)のご挨拶と乾杯のご発声で始まった懇親
会では、受賞者、財団の役員、選考委員、その他広告関連団体の皆さまが思い
思いに歓談し、交流を深めました。
常勤研究者部門 受賞者の西本章宏氏
受賞者の方々と選考委員、来賓、当財団理事長、専務理事
大学院生部門 受賞者の青木慶氏
受賞者一覧
常勤研究者の部
賞
研究テーマ
研究者名
準吉田秀雄賞
消費者の製品カテゴライゼーションを起点とする市場構造分析
─競争市場構造におけるマーケティング・コミュニケーション戦略─
共同研究者:西本 章宏(関西学院大学商学部准教授)
(副賞50万円)
代表研究者:勝又 壮太郎(長崎大学経済学部准教授)
大学院生の部
奨励賞
(副賞10万円)
企業と消費者の価値共創に関する研究
─共創コミュニティにおけるインセンティブの役割について─
※常勤研究者部門の吉田秀雄賞、大学院生部門の吉田秀雄賞 /準吉田秀雄賞は該当なし
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● AD STUDIES Vol.50 2014
青木 慶(神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程)
審査経過報告
選考委員長 亀井
昭宏
平成 25年度に吉田秀雄記念事業財団より助成を受けた
勝又氏と西本氏によ
研究件数は、2年間にわたった継続研究を含めて常勤研
る共同研究論文は、平
究者の部 8件、また大学院生の部 7件の、計 15件であった。
成 24年度(第 46次)並
これらの研究は、全て平成 26年 3月末をもって終了し、研
びに同25年度(第47次)
究報告書としての論文の形で財団宛てに提出された。
の 2年 間にわたる継 続
これらの提出論文について、第 12回「吉田秀雄賞」の授
研究の成果であり、競争
賞作品を選定すべく、まず財団事務局ならびに外部有識
コンテクストのアカデミッ
者計 3名による第 1次審査が実施された。慎重かつ綿密な
クな研究にとどまらず、実
評価作業の結果、常勤研究者の部で4件、大学院生の部
務上の競争戦略に新た
で2件の論文が通過作品として選出された。
な意味を与えた研究とし
これらの第 1次審査通過作品を対象にして、研究助成選
て高い評価を得たもので
考委員会の委員 12名全員による第 2次審査が、まず書面
ある。特にマーケティン
で実施された。評価は、以下の6項目について5点満点で
グ競争では「回避すべき
なされ、その結果を事務局で集計し、合計点並び平均点を
相手」
と「享受すべき相手」
を特定し、
「享受すべき相手」
を
算出して仮の順位が決められた。
外部資源としてマーケティング戦略に包含していくことによ
1 適切かつ十分な先行研究探索の上で仮説が導出されて
って脱コモディティ化を目指すべきとの提言等は、傾聴に
いる
贈賞式にて選考経過説明と講評を行う
亀井選考委員長
値する結論といえるものであった。
ただ、惜しむらくは表題に
2 独創性・独自性がある
あるマーケティング・コミュニケーションへの論及が少な
3 実務への応用可能性が高く、社会・経済・文化への貢
かった点が、
「吉田秀雄賞」には届かなかった主要な理由
献が期待できる
であった。
4 論旨の明確さ
また、大学院生の部の青木氏の論文は、共創コミュニテ
5 実証手続きの信頼性・妥当性
ィの事象の中でインセンティブの効果という限定的な視点を
6 研究の将来展開の可能性があり、理論への貢献が期待
設けた着眼点が評価され、開拓的な研究として審査委員
できる
の間で評価が得られた作品であった。
この集計結果に基づき、去る9月26日(金)
、委員 10名の
その他、第 1次審査や一部の第 2次審査委員の間では
出席を得て(2名が所用のため欠席)最終審査が行われた。
高い評価が得られたものの、残念ながら受賞には至らなか
席上では委員全員による発言を得て、延べ 3時間以上にわ
った作品では、既に発表済みの論文からの大量の引用(し
たる激論が交わされ、その結果、残念ながら今年度は常勤
かも、誤植のままの)
や脚注での言及の不十分さなどの、学
研究者の部並びに大学院生の部共に「『吉田秀雄賞』に
術論文としての致命的な欠点が指摘されたものがあったこ
該当する作品はなし」との結論に至った。
ただ、
「吉田秀雄
とを特に付言しておきたい。
賞」に匹敵する優れた研究であり、
「準吉田秀雄賞」に該当
最後に、今年度見事受賞された皆さまへ心からの祝意と
する作品として、勝又壮太郎氏と西本章宏氏による共同研
敬意を表するとともに、来年度においてはぜひ「吉田秀雄
究である「消費者の製品カテゴライゼーションを起点とする
賞」を受賞する見事な研究論文が、助成研究の成果として
市場構造分析―競争市場構造におけるマーケティング・
提出されることを祈念している。助成対象者の方々のご奮
コミュニケーション戦略―」が常勤研究者の部で見事選出
闘を期待するものである。
された。
また、大学院生の部での「奨励賞」に該当する作品
として、青木慶氏による「企業と消費者の価値共創に関す
る研究─共創コミュニティにおけるインセンティブの役割に
ついて─」
と題する論文が選出された。
AD STUDIES Vol.50 2014
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● 平成27年度研究助成募集
当財団では平成 27年度(第 49次)
研究助成の募集を、平成 27年 1月9日
(金)
まで行っています。本事業はマーケティングやコミュニ
ケーション分野の研究活動を支援するもので、助成金の交付に加え、助成対象者が参加できるオムニバス形式の消費者標本調査(サ
ンプル数約 720名)
を実施しています。 提出された研究成果は、その要旨を小冊子にとりまとめ研究者や大学図書館に広く配布するほか、成果の全文を当財団の広告図書館
において一般の閲覧に供しています。
さらに、優れた研究には「助成研究吉田秀雄賞」
を授与し、顕彰しています。
詳細については、財団ホームページをご覧ください。
1.研究助成の目的
6.選考方法・選考委員
“広告・広報・メディアを中心とするマーケティングおよび
以下 12名の選考委員により慎重に選考の上、平成 27年
コミュニケーション”
に関する研究助成を通じてその理論・
3月下旬開催の当財団理事会で決定します。
技術および知識・情報の普及・発展を図り、もって学術・
選考委員長 亀井昭宏 早稲田大学名誉教授
文化・経済の持続的発展および一般消費者の利益の増
選 考 委 員 青木貞茂 法政大学教授
進に資することを目的とします。
選 考 委 員 井上哲浩 慶應義塾大学大学院教授
選 考 委 員 嶋村和恵 早稲田大学教授
2.助成対象者・助成金額
選 考 委 員 清水 聰 慶應義塾大学教授
助成を受ける期間中、大学に所属する研究者個人また
選 考 委 員 田中 洋 中央大学大学院教授
はグループ。
選 考 委 員 田村正紀 神戸大学名誉教授
(1)常勤研究者の部
選 考 委 員 仁科貞文 青山学院大学名誉教授
[対象者]
:大学に在職する助教以上の常勤研究者
選 考 委 員 疋田 聰 東洋大学教授
[助成金額]
:1件 300万円以内(10件程度)
選 考 委 員 古川一郎 一橋大学大学院教授
(2)大学院生の部
[対象者]
:博士後期課程に在籍する大学院生
選 考 委 員 森 豊子 吉田秀雄記念事業財団専務理事
選 考 委 員 吉見俊哉 東京大学大学院教授
(50音順)
[助成金額]
:1件 50万円以内(10件程度)
3.研究課題 (常勤研究者の部、大学院生の部共通)
(1)自由課題(上記分野に関する研究課題を自由に設定)
7.結果の発表
平成27年4月上旬に応募者宛て個々に採否を通知します。
(2)指定課題
ネット上の情報伝播を考慮した新たな広告効果モデル
1)
の構築
8.研究成果の報告
(1)研究成果本文… 5万字以上
2)
メディアの新たな動向とそのインパクトに関する実証研究
(2)要旨…………… 8,000字程度
3)
スマートフォンがもたらした消費者の情報行動、消費行
(3)概要…………… ①当財団広報誌『アド・スタディーズ』
掲載用 1,300字程度
動の変化についての研究
博物館学、展示学、アーカイブの新たな動向について
4)
の研究
②広告図書館検索用 2,000字程度
(4)助成金の使途明細(領収書を添付)
以上を研究期間内に提出すること。
4.研究期間 (常勤研究者の部、大学院生の部共通)
(1)
単年研究…… 1カ年以内
(平成27年4月1日~平成28年3月10日)
(2)
継続研究…… 2カ年以内
9.応募方法
当財団のホームページ(www.yhmf.jp)上の申込書に
必要事項を記入のうえ、財団宛て郵送またはE メールにて
(平成27年4月1日~平成29年3月10日)
お送りください。
5.オムニバス消費者調査
10.応募期間
平成 27年度の助成対象者は、
当財団が毎年実施してい
平成 26年 11月1日(土)~平成 27年 1月9日(金)
(必着)
るオムニバス形式の標本調査(サンプル数約 720名)を一
定の枠内でご利用になれます。
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● AD STUDIES Vol.50 2014
11.応募先
究吉田秀雄賞」
を授与します。
公益財団法人 吉田秀雄記念事業財団
●褒賞内容
〔常勤研究者の部〕 吉 田 秀 雄 賞:賞状・副賞 100万円
Eメールでの応募先:[email protected]
準吉田秀雄賞:賞状・副賞 50万円
12.
「助成研究吉田秀雄賞」の授与
〔大学院生の部〕
選考委員会の審査により、優れた研究成果には「助成研
吉 田 秀 雄 賞:賞状・副賞 30万円
準吉田秀雄賞:賞状・副賞 20万円
委託研究報告書『未来がつくる広告 2020
―
循環型情報社会のマーケティング・コミュニケーション』
発行
「2020年のマーケティング・コミュニケーション構造と広告」をテーマに、当財団
が 2011年より3年にわたって進めてきた委託研究の成果報告書を12月15日に刊行
しました。
本報告書は、消費者視点、メディア・コミュニケーション視点、企業視点の3つ
の研究チームによる主要報告と、定量検証調査および有識者調査の報告、ならびに
それらに基づいた2020年の広告コミュニケーションへの提言から構成されています。
この報告書のPDFは、当財団のホームページで2015年 1月より公開いたします。
また、3つの研究チームのフルレポートは、
「アド・ミュージアム東京」広告図書館に
て同じく2015年 1月より閲読いただけます。
3年にわたり鋭意研究を推進いただいた先生方、研究を統括しアドバイスをくださ
った先生方、また、検証調査にご協力いただいた有識者の皆さまに、財団一同心よ
りの御礼を申し上げます。
編集後記
青 経験した、当時高校生や中学生だった
春時代に1964年の東京オリンピックを
人たちが東京オリンピックを語るのを聞くと、顔
の表情、輝きが違う、とよく感じるものである。
日本社会が大きく変わりつつある予感、世界
の中の新しい日本の姿がおぼろげながら見え
始めた予感、つまり明日の日本の夢が、彼ら―
私もその一人であるが―の顔を輝かせていた
のだと思う。
この輝かせる力、それこそが、そ
の後の日本社会を変えていくエネルギーとな
ったことは間違いないはずである。
これこそが
AD STUDIES 2014年12月25日号 通巻50号
公益財団法人 吉田秀雄記念事業財団
〒104-0061
東京都中央区銀座7-4-17 電通銀座ビル
TEL:03-3575-1384 FAX:03-5568-4528
URL:http://www.yhmf.jp
「オリンピック・レガシー」の原点なのだろう。
そ
れはまた、日本人すべての「心のレガシー」と
なっていったのだと思う。
「百年の計」とはよく言ったものだと思う。東
京オリンピック第一世代が支え、創り上げてき
た50年、2020年を目前にした今こそ、それを
第二世代にバトンタッチする時である。東京オ
リンピック第二世代、すなわち2020年の東京
オリンピックを青春時代に経験する若い人々
は、どのような「心のレガシー」を持ちうるのだ
ろうか。明日への夢が描けなくなったと言われ
発行人
森 豊子
佐藤剛介
編集長
編集協力
プレジデント社
表紙デザイン八木義博+畠山 大
(Creative Power Unit)
+浅木 翔
撮影
片村文人
る現代社会、若者が希望を見失っている現
代日本。彼らが夢をはぐくむことができ、豊かな
「心のレガシー」が育つ社会を戦略的に準備
すること、これこそが、彼らに日本の次の50年
を託さなければならない第一世代の責任だと
思う。
本号はオリンピック・レガシーの創出戦略
について、第一線に立つ識者の方々に熱く語
っていただき、
また執筆いただいた。2020年ま
でにまた東京オリンピックの特集を組みたいと
考えている。 (無名草子)
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