戦略的ロジスティクスの確立とIT基盤 - 経営視点に立ったサプライチェーン全体の最適化を目指して はじめに 生産から販売に至るロジスティクスは、企業活動の根幹であり、戦略的ロジスティクス を確立し、経営視点に立ったサプライチェーン全体の最適化には、先進のIT活用が不 可欠である。本書では、ITによりロジスティクスを革新してきた成功企業の事例を挙げ、 ロジスティクスにおける課題とそのソリューションに求められるIT技術の要件について 考察する。 戦略的ロジスティクスの確立とIT基盤 - 経営視点に立ったサプライチェーン全体の最適化を目指して ロジスティクスに課せられる課題 生産から販売に至るロジスティクスは、企業活動あるいは企業経営そのものの根幹のひとつであ る。昨今の厳しい経済状況と変化するビジネス環境のなか、 ロジスティクスに課せられる課題は多 い。企業活動の国際化、特に企業の生産拠点のグローバル化により、 グローバル・サプライチェー ンの深化が進み、物流の国際化が進んでいる。 また、 ネット通販、Eコマースの普及による産業構 造の変化、 さらに消費者ニーズの多様化から、 ロジスティクスにおいても輸送単位の小口化、梱 包の多様化、個別の細かい対応などが求められており、 その中でのさらなる効率化、物流コスト圧 縮など、 これまでにないプレッシャー下にさらされている。一方、温暖化や環境問題への対応や、消 費者意識の高まりから安全・安心確保も求められている。 さらに、物流の根幹を支える人材不足と いった問題も深刻化しており、 ロジスティクス戦略を巡っては、極めて厳しい要件を突きつけられて いる。 一般に日本の企業の物流管理は、非常に高いレベルにあり、保管や梱包、輸送といった物流の 個別機能を効率化することに関しては、既にかなり突き詰められているとも言える。 ただ、物流とロジスティクスは異なる。物流は、物品を物理的に保管したり移動する活動を意味し、 ロジスティクスは、 もとは兵站という軍事用語であることからもわかるように、前線(企業活動におい ては販売部門) の活動を後方から支援するための戦略業務を指す。ロジスティクスは、販売部門 に必要な物品を送り込むためのプロセス全体を意味する。いま企業に問われているのは、物流の 個別機能を単に効率化することではなく、 モノや情報の流れをコントロールして関連するプロセス 全体を最適化していくことだ。これには、経営視点に立ったサプライチェーン全体の最適化が必要 となる。即ち、調達、生産、物流、在庫管理を含めたオペレーション全体のコスト、作業体制、 さらに は、 サービス、管理を含めた、 すべての工程における適正化であり、 サプライチェーン全体の効率 化・最適化ということに他ならない。 経営視点でのロジスティクス戦略とIT 優れた経営戦略の下、 ロジスティクスを改革してきた企業が成功してきた。戦略的成功は、必ず革 新的なIT活用に支えられている。販売・在庫情報を取引先メーカーと共有し、品切れ防止や販売 促進を行ったウォルマートの「リテールリンク」や、 ネット通販のイノベータで最大の成功者である アマゾンも、革新的なIT活用が企業戦略と成功の根幹となっており、経営視点に立ったサプライ チェーン全体の最適化を追求した成功例としてよく言及されている。 高度なロジスティクスは、優れたIT技術に支えられていることは言うまでもない。今日のグローバル 化、消費者ニーズの多様化、安心・安全の確保や環境への配慮などの多くの困難な要求に応え るには、高度なIT活用なくしては不可能である。戦略的ロジスティクス確立において、ITが直面す る重要な課題を、以下に挙げる。 1. 多種多様で膨大な取扱商品数とそれを扱う処理スピード 消費者のニーズは多様化、細分化し、 ますます多品種少数の商品の取扱いが必要である。 商品数、管理項目も複雑膨大で、 そのデータ管理と複雑膨大なデータの迅速な処理が求 められる。 2. 複雑な管理 商品のトレーサビリティは元より、食品等における保存温度、保存状態、鮮度や品質管理、 2 医薬品等における使用期限管理、 ニーズに合わせた異なる管理ロット (個数であったり箱 単位であったり等) への対応等、複雑できめ細やかな商品管理が求められる。 3. 変化への迅速な対応 ロジスティクスにおいては、激しい商品の入れ替え、原料仕入れ先の変更、安全性の要 求や法令の変化などから、 さまざまな変更・変化が常に求められている。そうした変化に迅 速に、容易に対応する柔軟性が必要である。 さらに環境変化、特に昨今では、 モバイルや SNSの利用といった高度化するIT環境への素早い対応は必須である。 4. 高度な分析とビッグデータ対応 ロジスティクスの最適化は、 その全工程における情報を把握し、記録、分析できてこそ可能 である。高度な分析力による予測や、 リアルタイムでの問題の把握・分析が求められる。ロ ジスティクス全般に渡るデータは、正にビッグデータであり、今後はその情報をいかに活用で きるかが、競争力の根幹となる。 5. 多くのシステム・アプリケーションのシームレスな連携 ロジスティクス全般に使用されるシステム、 アプリケーション数は、 どの業界よりも圧倒的に 多いといえる。受注管理、倉庫・在庫管理、配送管理、 トレーサビリティ管理をはじめとする多 くのITシステムを駆使し、 すべてのシステム、 アプリケーションをシームレスに連携させ、全行 程をトータルに管理することが、 ロジスティクスの最適化には不可欠である。 上記の要件は、戦略的ロジスティクス構築に求められる課題の一部である。ロジスティクスは、高 度なサービスと効率性という、 いわば対極にある両方を突き詰めるという極めて困難な要求を突き 付けられている。厳しい環境下で競争優位に立つには、低コストで効率よく困難な要件を満たすIT 基盤の選択が必要で、優れたIT基盤を活用して、経営視点に立つロジスティクスの仕組みを構築 することが、非常に重要である。 ロジスティクス経営 ― イノベーション/ブレークスルーとデータ分析力の課題 企業活動の目標を立て、事業領域や事業展開を計画し、持続的競争優位を保つための施策を立 てて実行することが経営戦略である。顧客の求めるものを、顧客が求める形やタイミングで提供す る小売り・流通業にあっては、企業活動全体において、 ロジスティクスが占める役割は非常に大き く、事業サービスの根幹である。競争力を高めるには、 より効率的、低コストで、確実に、 さらに高度 なサービスで届けることが要求される。 企業が将来に渡って成功し続けるには、 イノベーション/ブレークスルーこそがその原動力になる。 イノベーションは、 これまでの事業サービスを大きく変革する意味だが、継続的な変化も含まれる。 継続的変化の積み重ねが大きな差別化となるからである。ただ、新しいサービスや差別化要因は、 時間を経ると、他社でも実現が可能となることが多い。従って、重要なことは、継続的にイノベー ションやブレークスルーを行うことで、継続的なイノベーション/ブレークスルーなしには、競合力の 維持はあり得ない。イノベーションは、顧客に喜ばれるサービス・商品の創出であり、 それを生み出 すには、顧客・市場の把握がその根本的基盤となる。それは、一言でいうなら 「分析力」である。小 売り・流通では、 さらに、多様化するニーズと変化の激しい環境下にあって、ITを駆使したデータの 分析力と活用力こそが、大きな競争力となる。 小売り・流通におけるデータ分析およびデータ活用は、DWHを構築し、 あるいはBIツールなどを 利用して、品揃えや在庫の適正化、需要予測などに取り組んでいるのが一般的である。 しかし、 DWH構築には、大きなコストが必要である点から、効率性を追求し、 コスト競争が厳しい小売り・流 通での導入の大きな障壁となっている。 しかし、 それ以前に、DWHの構築・活用には本質的な課 題が存在する。その大きな課題の1つが、DWH構築におけるETL( Extract/Transform/Load) 3 と呼ばれる データの抽出・変換・ロードという作業行程である。これは、業務システムで発生した データから分析に必要なデータを抽出し、 それを分析しやすい形に変換・加工して、格納するもので あるが、ETLには、 その作業によるデータ量の急激な増大、使用するツール毎に変換要件が異な り、 その変換は非常に複雑である点など、大きな課題がある。 また、分析には、 リアルタイム性が、 よ り求められるようになっているが、 データのロードにかかる時間や、膨大なデータの分析にかかる時 間も問題となっている。たとえ大きなコストをかけてDWHを構築しても、分析に時間がかかりすぎた り、 データはあっても、多角的な角度からの利用やデータの再利用ができず、十分な洞察が得られ ないといった問題が生じている。 インターシステムズテクノロジ インターシステムズ社は、長年に渡りユニークなIT基盤技術を提供している。その中核となるのは、 高性能データベース管理システム InterSystems Caché® とユニバーサル統合プラットフォーム InterSystems Ensemble® である。 Cachéの最大の特徴は、高速処理にある。Cachéは、 きわめて効率的なデータベースアーキテク チャをもつことで、複雑なデータを効率的かつコンパクトに格納し、物理的なハードウェアリソースを 軽減できる。 さらに、 データ構造の変化にも柔軟に対応し、 メンテナンス性に優れる。Cachéの利 点としては、高性能、拡張性、変化への対応、迅速なアプリケーション開発、 コスト効率などが挙げ られる。高度な分析技術が組み込まれており、構造化、非構造化データの分析が可能だ。 Ensembleは、 ユニークな単一アーキテクチャをもち、迅速なインテグレーション、 および新しい接続 可能な新規アプリケーション開発のためのシームレスなプラットフォームで、組織を横断した統合的 なデータマネージメントが可能だ。 システムの監視機能、 ワークフローの構築、 プロセスの可視化な ど、各種統合タスクに必要な包括的なテクノロジや機能が含まれ、迅速に統合プロジェクトを完了 することができる。Cachéが組み込まれているため、流れるメッセージをすべて格納し、障害時のト レースが容易だ。 インターシステムズテクノロジは、先に挙げたロジスティクスにおける5つのIT課題への優れたソ リューションの1つである。データ分析・データ活用におけるDWH、ETLに存在する困難について は、多次元データエンジンによる高速処理で、 リアルタイムのデータ分析が可能となる。インターシ ステムズのデータベーステクノロジでは、 データの変換や再構築を必要とせず、1つのデータソース で、必要な形でデータ を表現することができるため、ETLの作業もDWHの構築も不要だ。 こうしたインターシステムズテクノロジの特徴から、多品目商品をきめ細やかに管理し、 かつ非常に 高い処理スピードが要求され、 さらに効率性、究極的なコストダウンを追求する小売・流通業者で の活用例も多い。業界をリードする多くの企業が、 インターシステムズテクノロジを活用し、革新的 システムを構築して、高度なサービスを提供する戦略的ロジスティクスを実現している。次に、 そうし た先進的なお客様の活用事例の一部を紹介する。 4 流通・小売業ユーザによるイノベーション/ブレークスルー スパー・オーストリア 1400店舗の高度な在庫管理を支える 食品小売りチェーンの大手であるスパーのグループ企業である スパー・オーストリアは、年間売上 が40億ユーロに上るオーストリア最大の小売企業である。同社は、商品の在庫不足が頻繁に起 こるなどの在庫管理に問題があった。そこで、 スパー・インターナショナルAG(ASPLAG) が開発 した IMAge( 食品小売業向け統合管理アプリケーション) を採用した。このアプリケーションは、 Cachéを基盤に開発したもので、ERP(基幹システム) とPOSシステムのデータを活用して、高度 な在庫管理業務を行う。この導入により、在庫不足といった問題は解消され、商品の動きを把握し て適切な在庫管理を行っている。 スパーの店舗は、 コンビニエンスストア、高級食材販売店、 スーパーマーケットから、単に食料品だ けではなく幅広い商品を扱う大規模小売店の「ハイパーマーケット」 まで、多岐に渡る。導入にあ たって重視されたのは、パフォーマンスと拡張性で、 スパーIGT・スロベニアの経営責任者であり、 ASPIAGのITコーディネータであるゲルド・カルニッチング氏は、 「 Caché の迅速なWeb 開発能 力、拡張性、高パフォーマンスに非常に満足している」 と述べている。IMAgeは50のハイパーマー ケットを含む、1,400 以上の店舗に導入され、世界最大級の食品小売り業者を支えている。 スパー・オーストリア http://www.aspiag.com/en/spar/unternehmen/oesterreichgruppe.htm キンバリークラーク・ヨーロッパ EDI導入で、サービス向上とコスト削減を実現 「クリネックス」 「スコット」等、世界的なブランドで知られるキンバリークラーク・ヨーロッパは、 ヨー ロッパ全域での物流を単一の社内サービスセンターで集中管理するにあたり、InterSystems Ensemble を基盤にしたOmPrompt社のEDI(電子データ交換) システムを導入した。キンバリー クラークは、欧州全域で100社以上のロジスティクス業者を利用し、 それぞれが異なるシステムを 運用していたが、異なる手段で送信されたデータをEDIフォーマットに変換し、輸送システムやERP システムなどと統合し、 メッセージ分析とデータ通信の自動化を行っている。キンバリークラーク社 は、OmPrompt社のEDIの導入について、社内で統合作業を行った場合の7倍の速さで統合が 完了し、大幅なコスト削減となったと高く評価している。 さらにデータの精度が上がったことで、顧客 からの問い合わせに迅速正確に回答できるようになり、 クレームは減少して、請求間違え等のミス も減少した。 このソリューションを開発したOmPrompt社CEO Brian Bolam 氏は、次のように述 べている。 「Ensembleに組み込まれているデータベースは、他のテクノロジに比べ、高速で効果 の高い方法でデータ保存と検索が可能だ。Ensembleを利用することで、 リソースに制限があって も、完全なアプリケーションを開発することができた。」 キンバリークラーク社 http://www.kimberly-clark.com/ 英国のアンダーウェアブランド Kiniki BI導入で大きな成果を上げる 1975年に設立された英国のKiniki は、 タンスルー水着など、画期的でデザイン性にすぐれた下着 と水着で非常に注目され、飛躍的に成長を遂げているアパレルメーカーで、今日では、300万点以 上のアイテムを世界各国で販売している。 5 Kinikiでは、顧客の行動パターンを把握し、効率的に販売を行うためセーフワイヤ社の統合マル チ チャネルビジネス システム ARX BIを導入している。これは、CachéベースのBIシステムで、 Kinikiは、50万人以上の顧客データを分析し、 マーケティング戦略立案に役立てている。このシ ステム導入により、顧客の購入パターンを把握して、 プリント枚数を制限して、 デザインにかかるコ ストやDMなどのコストを削減し、 オーバーヘッドを12%削減した。ARXには、 アクティブ分析ツール InterSystems DeepSeeが組込まれており、在庫、売上等の重要なKPIをダッシュボードでリアル タイムに監視できる。セーフワイヤCEO兼創始者であるピーター・ローンデス氏は、次のように述べ ている。 「ビジネスは、顧客と資産の明確な理解と即座な対応が必要だ。ARX BIは、業務の意思 決定を素早く明確に行い、企業を常に競合優位に置くための支援をしている。」 Kiniki社 http://www.kiniki.com/ 株式会社Paltac 卸売業トップ企業の進化を支える − 流通の最適化から情報活用を目指して − 化粧品・日用品、一般医薬品の卸売業トップ企業のPaltac社は、 ロジスティクスで競合企業を圧 倒してきた。国内1,100社余のメーカーから65,000もの商品を仕入れ、各地の物流センターで仕 分けて、全国の小売企業の各店舗や物流拠点に納入している。納入先は、5,400カ所に及び、1 日500万個の流通量を取扱う。小売業からの注文は多品種少量で、 しかも店頭の品出し作業を 考慮したきめ細やかな納品形態で納入している。膨大な商品と高度なサービスを支えているのは、 全国15カ所にある大規模物流センターRDC (Regional Distribution Center) と 「SAMS」 と呼 ばれる業務系基幹システム (EDI対応卸売り総合システム) である。 「SAMS」は、物流センターに おける入出庫や在庫管理を制御する倉庫管理システムや、商流系の受発注機能を含む総合シ ステムで、Paltac社は一貫して自社開発してきた。Paltac社は、IT活用の先進性ではよく知られ た企業だが、長きに渡り先進のITを駆使して、 あらゆる局面で無駄をなくす効率化を追求し、納品 精度99.999%を15年前から実現している。それを支える 「SAMS」に全面的に採用されているの が、InterSystems Cachéである。同社の情報システム本部IT戦略部 部長 勝尾文哉氏は次の ように述べている。 「Cachéは変化に強いデータベースで、 メンテナンス性がよい。 ビジネスロジッ クはすべてCachéで動かすことで、 スマートフォンなどのフロント部分の開発の選択が柔軟に行 え、時代に即して進化させることができる。」 卸業の効率と精度を極めたPaltac社は、小売業向けのシステム「PARS」 も提供しており、 リアル 店舗の業務支援でも定評がある。 「PARS」 を使うことで、物流センターを含めた流通全体の最適 化を実現し、 サプライチェーン全体としての効率化を目指している。今後は、台頭するECビジネスで のロジスティクスサービスの参入や膨大な情報の活用にも積極的に取り組みたいという。Paltac 社 執行役員情報システム本部長 新谷尚志氏は、次のように今後の抱負を述べている。 「卸とい うのは、情報の宝庫。ストアソリューションをもつことは、 データ活用の点でも強みがある。データ活 用が今後の鍵であり、 ロジスティクス内にある膨大な情報を小売業の視点を加えて分析し、有益な 情報を提供することで、小売業とメーカーをつなぐ役割を果たしたい。お客様への情報提供をする 上でもCachéのスピードは武器になる。」 ITの強みがPaltac社のさらなる進化を支える。 株式会社Paltac http://www.paltac.co.jp/ 株式会社メディセオ 医薬品物流改革 − きめ細やかな商品の定時配送を実現する「ALC構想」− 医薬品、医薬部外品、試薬、医療機器等の総合卸事業で、国内最大手のメディセオ社は、2009年 から 「ALC構想」 (エリア・ロジスティクス・センター) と称する物流改革を本格化している。医薬品 の調剤薬局への配送は、少量の多頻度発注で、 しかも医薬品という特性から欠品が許されず、発 注があればすぐに届ける必要がある。そうした医薬品の物流は、一般的には、郊外に巨大な物流 6 センターをもち、顧客に近い支店や営業所に在庫をおいて、営業担当者が細かく注文に対応して きた。 「ALC構想」 では、都市部に大規模物流センターをおき、顧客別に梱包して、一日数回定時 配送を行い、効率よく低コストで高度なサービスを提供するもので、医薬品物流の改革とも言える 取り組みだ。店頭での棚別仕分けなどのきめ細かいサービスにも対応している。 メディセオ社では、 2009年5月に第1号の神奈川ALCを稼働させ、現在6カ所(神奈川、南大阪、名古屋、札幌、東 北、南東京) にALCを展開する。ALCで定時配送が難しいエリアをカバーする拠点として、FLC (フ ロント・ロジスティクス・センター) を置き、20数カ所が稼働している。今後5〜7年で、ALC 10数カ所、 FLC200カ所を全国で展開する計画だ。 この背景には、医薬品配送という社会インフラを担う企業として「物流力No.1」の実現を目指し、 その最大の競争力の根幹となるシステム刷新を自社で開発するという決断をしたことにある。 こうし て、ALC構想を支える 「MACS」 (メディパル・アドバンスト・センター・システム) が開発された。この 主要な機能はWMSだが、発注支援、在庫管理、作業管理、配送システム、返品管理までをカバー している。 さらに、過去データを基に需要予測まで行い、 システム管理による効率化を徹底的に 追求している。 「MACS」開発の基盤には、InterSystems Cachéが採用され、多品種少量で頻 度の高い物流を支援している。 メディセオ社は、Cachéによる開発生産性の高さを高く評価してお り、従来の体制に比べ、 システム開発の期間が2/3〜半分に短縮できたという。 メディセオ物販物 流システム開発部 部長 横沢昭一氏は、次のように述べている。 「Cachéの使いやすさと同時に サポート体制が充実していたからこそスピーディに安定的な状況をつくれた。」 医薬品物流改革をメディセオ社が推進する。 株式会社メディセオ http://www.mediceo.co.jp/ イオンアイビス株式会社 小売業No.1グループ企業を支えるSCM基盤の最適化 −物流品質・サービスレベルの向上、コストの最適化、環境負荷低減を目指して 「お客様第一」の理念の下、 アジアNo.1のスーパーリージョナルリテイラーを目指す国内最大の 小売業イオングループは、2007年に、 インフラを最大限に活用して、効率化とグループシナジーを 最大化させる狙いで、 さまざまな事業体に共通するサプライチェーン管理、PB商品開発、 マーケ ティング機能を集約して、 それぞれの機能会社を設立した。 さらに、2009年、バックオフィス業務を 行うシェアードサービスセンターおよびITサービスの機能を分割して、 イオンアイビス株式会社が誕 生し、先進のIT技術の活用により、 イオングループの競争力を支えている。イオングループでは、物 流品質・サービスレベルの向上、 コストの最適化、環境負荷低減を目指して、独自の流通網を構築 し、PB商品の拡大とNB商品の直接取引、 サプライチェーンの最適化を推進し、物流拠点として、 常温施設としては、NCD(全国に供給する在庫型拠点)、RDC(ローカルエリアの在庫型拠点)、 XD(非在庫型のクロスドック配送センター)、生鮮施設としてPC/RS(加工と経由型商品在庫拠 点)、生鮮食品向けのXDを合わせ、全国で48カ所の物流拠点を展開している。この物流拠点で のWMS(物流センター構内システム) で、 イオンアイビス社が採用したのが、 データベース管理シ ステムCachéである。この背景には、従来WMSで使用されていたデータベースでは、期待する投 資効果がみられなかったことがある。そこで、従来のデータベースとCachéの徹底した性能評価 が行われた。この評価では、特に、バッチ、 オンラインによる各種検索処理に関する検証では、多く の業務処理で、従来のデータベースより高い性能結果を示し、Caché採用が決定された。 さらに、 Caché導入によって、 システムへの負荷が軽減され、大幅なシステムのサイズダウンも実現してい る。具体的には、最初の置き換え施設においては、CPU数を10から7へ、 ストレージ容量を2TBか ら0.6TBへとスペックダウンして稼働させ、TCO削減や環境負荷の低減に貢献している。最初に 導入された中部XD、広島XDをはじめ、仙台RCD/XD、関東NDC、九州RDC/XDなど、2014 年末までに、30余の物流拠点でInterSystems Cachéが導入される予定で、 イオングループの SCM基盤の最適化を支援している。 イオングループ http://www.aeon.info/index.html 7 まとめ 生産から販売に至るロジスティクスは企業活動の根幹であり、戦略的ロジスティクスを確立し、高 度なサービスと効率を追求して、経営視点に立ったサプライチェーン全体の最適化には、先進の IT活用が不可欠である。流通・小売業者が、 ニーズの多様化、環境変化といった厳しい経営環境 下で、 きめ細やかなサービスを提供して成功するには、 すぐれたIT技術の採用とデータ活用がその 鍵となる。多くの先進事例が示すように、 インターシステムズテクノロジは、小売・流通業における 戦略的ロジスティクス確立とサプライチェーンの最適化を支援するIT基盤である。
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