DPCの概要 DPCとは,日本独自の「診断群分類」を意味する 「Diagnosis Procedure Combination」の略称で, 「診断 Diagnosis Procedure Combination 「Diagnosis」は「診断」, になります。 「Procedure」 は「 処 置 断群分類に基づく1日あたり定額報酬算定制度」を意味す ( 手 術, 検 査 等 )」, 「Combination」は「組み 合わせ」という意味。 る場合と,患者分類としての「診断群分類」を意味する場 合とが混在していました。本来DPCは「診断群分類」の 意味で作られた単語であったため,平成22年12月に両者 の使い分けを明確にすべく, 「診断群分類に基づく1日あ たり定額報酬算定制度」については,DPC/PDPS (Diagnosis Procedure Combination / Per-Diem Payment System)という略称とするよう整理されまし Diagnosis Procedure Combination / Per-Diem Payment System 「Per-Diem」は「1日あた り」 , 「Payment System」 は「支払い制度」という意 味。 た。 DPC DPC/PDPS 診断と処置(手術, 診断群分類を診療報 検査等)を組み合わ 酬の支払いに応用し せた分類(診断群分 た1日あたり包括支 類)そのもの 払い制度 1 診断群分類とは ●診断群分類の歴史 診断群分類は,1968年(昭和43年)の米国エール大学 における,一般産業でいうQC活動を医療に応用するため 応用されているこの米国で開発された診断群分類は, 「D RG;Diagnosis Related Group」とよばれています。 当時の米国における診断群分類の開発の背景として,病 院管理者は,病院の運営のむだを省いて生産性を向上させ 5 QC活動 QCはQuality Control (品 質管理)の略称。個々の職 場において品質の向上や業 務の効率化・改善に取り組 む活動をいう。 参考・付録 の研究に端を発しています。その後各国でさまざまな形で 診断群分類区分の決定 診断群分類番号の構成 診療報酬額の算定方法 請求とレセプトの記載 と処置(手術,検査等)を組み合わせたもの」という意味 なお,「DPC」という呼称については,これまで「診 DPCの概要 DPCの概要 DPCの概要 〈日本における診断群分類を活用した医療費支払い方式の変遷〉 1 開始時期 対象医療機関 MDC数 平成10年11月 10国立病院等 定額払い試行 13 分類 包括対象 総数 分類数 270 183 10国立病院等 定額払い試行 平成13年4月 5国立病院等 定額払いをと 54民間病院 もなわない調 ICD 9 1入院あたり 15 532 267 (日本版DRG/ PPS) 1特定機能病院 査協力 3 平成15年4月 4 平成16年4月 5 平成18年4月 16 82特定機能病院等 16 62試行的適用病院 195DPC対象病院 16 (平成18年5∼7月)(360病院まで拡大) 平成20年4月 6 82特定機能病院等 2,552 1,860 1,726 3,074 (平成17年7月 から1,717) 2,347 1,438 10 534DPC対象病院 (平成20年7月)(718病院まで拡大) 18 (平成21年4月)(1,052病院まで拡大) 2,451 1,572 7 (DPC/ PDPS) (平成21年7月)(1,284病院まで拡大) 平成22年4月 1日あたり 1,334DPC対象病院 (平成22年7月)(1,391病院まで拡大) (平成22年8月)(1,390病院) 18 1,880 2,658 (平成22年6月 から1,875) (平成23年4月)(1,449病院まで拡大) 8 平成24年4月 1,505DPC対象病院 18 2,927 2,241 9 平成26年4月 1,585DPC対象病院 18 2,873 2,309 * MDCについては,35頁参照。 * 診断群分類はVersion9が最終形というわけではなく,適宜見直しが行われ,必要に応じて改正 される。 急性期入院医療の定額払い方式の試行 平成10年11月から,10国立病院等(当時の8国立病院・2社会保険病院)において行われ た「急性期入院医療の定額払い方式の試行」は,試行期間である5年を超えたのち約半年間の延 長を経て,平成16年3月に終了した。なお, 「急性期入院医療の定額払い方式の試行」の対象で 診断群分類区分の決定 診断群分類番号の構成 診療報酬額の算定方法 請求とレセプトの記載 2 支払い方式 DPCの概要 Version あった当時の10国立病院等のうち,国立豊橋病院(平成17年3月に独立行政法人国立病院機構 院を経て,平成18年4月にDPC対象病院となった。 7 参考・付録 豊橋医療センターへ統合)を除くすべての病院が,平成16年4月からのDPCの試行的適用病 「ツリー図」・「定義テーブル」による診断群分類区分の決定 川崎病 ⑥手術・処置等1 年齢 2歳以上 ⑦手術・処置等2 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 150070x0xx00xx あり 150070x0xx01xx 150070x0xx1xxx 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 ④年齢・出生時体重等 なし 150070x1xx00xx あり 150070x1xx01xx 150070x1xx1xxx あり ツリー図 傷病名 160740 ① ② 肘関節周辺の骨折・脱臼 ⑧定義副傷病 手術 160740xx99xxxx なし ⑤手術 あり 定義副傷病 なし 160740xx97xx0x あり 160740xx97xx1x 傷病名 020110 白内障、水晶体の疾患 ① ② ⑨重症度等 手術 020110xx99xxxx なし あり 重症度等 片眼 020110xx97xxx0 両眼 020110xx97xxx1 020220 医療資源を最も ① ② 傷病名 投入した傷病名 ⑨ 定義副傷病 重症度等 97 97 手術あり 症候群[川崎病] 処置等名称 D206$ 1 9 ガンマグロブリン 1 4 血漿交換療法 1 1 人工呼吸 27 区分 番号等 J039 J045$ 疾患名 疾患コード または ICD コード 重症度 等 参考・付録 02 1 2歳未満 1 1 心臓カテーテル法 による諸検査 (一連の検査につ いて) 区分 番号等 フラグ 99 99 手術なし 処置等名称 フラグ 00 0 2歳以上 区分番号等 フラグ 点数表名称 対応コード ⑧ 手術・処置等2 対応コード 手術分岐 ⑦ 手術・処置等1 フラグ M303 年齢、出生 時体重 ⑥ 手術 対応コード 皮膚粘膜リンパ節 ICD コード ⑤ フラグ 15 0070 川崎病 ICD名称 対応コード 分類名 フラグ MDC コード ④ 医療資源を最も投入した傷病名 年齢,出生時体重等 コード 定義テーブル 診断群分類 診断群分類区分の決定 診断群分類番号の構成 診療報酬額の算定方法 請求とレセプトの記載 なし あり 2歳未満 囲み線が破線で示されている診断群分類番号は包括評価対象外︵出来高で算定︶ 150070 傷病名 DPCの概要 ①MDC ②コード 診断群分類番号の構成 4 診療行為(「⑤手術」・「⑥手術・処置 等1」・「⑦手術・処置等2」) 診療行為 05 0070 x x 99 1 0 1 x ⑤ ⑥ ⑦ 「⑤手術」は,2桁の数字または’xx’で, 「⑥手術・処置等1」 ・ 「⑦手術・処置等2」 は,1桁の数字または’x’であらわされています。’xx’や’x’が使用されるのは,分岐 のないものが該当します。 また,「⑤手術」の’01’,’02’等および「⑥手術・処置等1」 ・ 「⑦手術・処置等2」 の’1’,’2’等は, 「定義テーブル」により定義されており, 「⑤手術」の’97’は「その 他の手術あり(手術あり・なしでしか分岐していない場合は「手術あり」 ) 」 ,’99’は 「手術なし」をあらわしています。 なお,診療行為は, 「定義テーブル」により医科点数表上の区分番号等で定義されて います。 ●複数の手術が並列されている手術 「ツリー図」や「定義テーブル」等の手術の項などにおいて, 「+」により複数の手術 が並列されている手術(複数手術)は,同一入院期間中に並列された手術をすべて実施 した場合に該当するものです。 Q&A Q1 診断群分類区分を決定するにあたり,医科点数表の「手術」に定める輸血の みを実施した場合は「手術あり」 , 「手術なし」のどちらを選択するのですか。 A1 「手術あり」を選択します。ただし,K920-2輸血管理料のみを算定した場合 は,「手術なし」を選択します。 Q2 手術の「あり」 , 「なし」による分岐の決定において,K920-2輸血管理料の みを算定し,ほかの手術がない場合は「手術なし」となるのですか。 A2 そのとおりです。 Q3 入院日Ⅲを超えたあとに手術を行った場合でも,診断群分類区分は「手術あ り」として選択すべきですか。 A3 手術を行うことを決定した日が入院日Ⅲを超えていなければ「手術あり」 ,入 院日Ⅲを超えていれば「手術なし」を選択します。なお,入院後に手術を行う 38 診療報酬額の算定方法 ●「包括評価」から「包括評価対象外」へ変更された場合の取扱い 点数表により算定されていた患者が,その後,包括評価の対象となる診断群分類区分に 該当しないと判断された場合は,その日から出来高の点数表により算定します。 DPCの概要 入院当初は包括評価の対象となる診断群分類区分に該当すると判断され,診断群分類 この場合の入院期間の算定起算日は,入院日です。 診断群分類A 月末 退院 月末 包括評価対象外疾患 入院月 2月目 診断群分類A 診断群分類A 退院月 出来高 出来高 包括評価の対象となっていた患者がその後,診断群分類区分の変更等の理由により包括評価の対象でな いと判断された場合は,判断された日から出来高の点数表により算定します。 ●「包括評価対象外」から「包括評価」へ変更された場合の取扱い 入院当初は包括評価の対象となる診断群分類区分に該当しないと判断され,出来高の 点数表により算定されていた患者が,その後,包括評価の対象となる診断群分類区分に 該当すると判断された場合は,その日から診断群分類点数表により算定します。 この場合の入院期間の算定起算日は,医療資源を最も投入した傷病名が同一である場 合には入院日,同一ではない場合には包括評価の対象となる診断群分類区分に該当する と判断された日です。 包括評価の対象 であると判断 月末 入院 包括評価対象外疾患 月末 退院 月末 診断群分類A 入院月 2月目 出来高 出来高 診断群分類A 退院月 診断群分類A ●「包括対象病棟」から「包括対象外病棟」へ移動した場合の取扱い 包括対象外病棟に転棟した場合には,転棟した日以降は出来高の点数表により算定し ます。この場合において,包括対象外病棟における入院料等の算定にあたっては,入院 期間の算定起算日は入院日とします。 75 参考・付録 包括評価の対象外となっていた患者がその後,包括対象診断群分類区分に該当し包括評価の対象と判断 された場合は,判断された日から診断群分類点数表により算定します。 医療資源を最も投入した傷病が同一である場合は,診断群分類点数表による入院期間の算定起算日は入 院日,同一でない場合には包括評価の対象であると判断された日です。 診断群分類区分の決定 診断群分類番号の構成 診療報酬額の算定方法 請求とレセプトの記載 包括評価の対象外 であると判断 月末 入院 診療報酬額の算定方法 ●同一傷病名とは ここでいう「同一傷病名」とは,前回入院の際の「医療資源を最も投入した傷病名」 の診断群分類番号の上2桁と,再入院の際の「入院の契機となった傷病名」の診断群分 類番号の上2桁が同一である場合をいいます。なお,この同一傷病名とする場合にはあ たらないが,直近の入院時の「医療資源を最も投入した傷病名」と再入院時の「医療資 源を最も投入した傷病名」の診断群分類番号上2桁が同一である場合は,再入院時の 「入院の契機となった傷病名」にかかる治療内容と経過についてレセプトの摘要欄に記 載します。 ●悪性腫瘍にかかる計画的な化学療法を実施する際の再入院について あらかじめ再入院することが決まっており,再入院時の「医療資源を最も投入した傷 病名」が悪性腫瘍であり,かつ,化学療法(28頁参照)にかかる診断群分類(いわゆ る「化学療法あり」の診断群分類区分を含む)に該当する場合は,上記の同一傷病名に よる7日以内の再入院に該当する場合でも一連の入院とはみなさず,入院期間の起算日 は再入院した日とします。この場合,化学療法の実施日(予定日)およびレジメンを含 む化学療法の概要をレセプトの摘要欄に記載します。なお,この規定は再転棟の場合に は適用されません。 ●特定入院料にかかる加算について 同一傷病名による7日以内の再入院にあたっての特定入院料にかかる加算について は,前回入院と一連の入院とみなした日数により算定します。 ●7日以内の再入院(再転棟)における入院期間として算入する日数の取扱い 入院 退院 入院 DPC算定病床 ① ② ③ ④ 退院 DPC算定病床 ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ 入院期間として 算入する日数 7日以内 入院 退院 DPC算定病床 ① ② ③ ④ 対象外病棟 DPC算定病床 ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ 入院期間として 算入する日数 7日以内 入院 退院 入院 退院 DPC算定病床 ① ② ③ ④ 対象外病棟 ⑤ ⑥ ⑧ ⑦ DPC算定病床 ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ 入院期間として 算入する日数 7日以内 入院 退院 入院 対象外病棟 DPC算定病床 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ 78 ⑨ 退院 DPC算定病床 ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ 入院期間として 算入する日数 診療報酬額の請求とレセプトの記載 1 「包括評価部分」欄の記載要領 ●診断群分類区分の変更がない場合(基本形) DPCレセプトの「包括評価部分」欄に,診断群分類点数表にもとづき,各月の算 定式を記載します。入院月が複数月ある場合は,各月診療分を退院するまですべて記載 します。 ※ 入院期間Ⅰ(入院日Ⅰ日以内) :入Ⅰ 入院期間Ⅱ(入院日Ⅰ日を超えⅡ日以内) :入Ⅱ 入院期間Ⅲ(入院日Ⅱ日を超えⅢ日以内) :入Ⅲ 1点未満については四捨五入 (例) 脳腫瘍 頭蓋内腫瘍摘出術等 手術・処置等2 1あり 定義副傷病 なし 010010xx01x10x 番号 以内 点 以内 点 以内 点 22 15日 2,960 30日 2,188 63日 1,860 入院 1日〜15日以内の15日間 2,960点→入Ⅰ 入院16日〜30日以内の15日間 2,188点→入Ⅱ 入院31日〜63日以内の33日間 1,860点→入Ⅲ 4/3入院 4月末 5月末 6/4退院 010010xx01x10x 入院月 2月目 010010xx01x10x 診療報酬の請求内容 退院月 010010xx01x10x 010010xx01x10x 4/3 a 2,960点 4/17 b 4/30 c 5/2 2,188点 2,188点 (15日間) (13日間)(2日間) 入Ⅰ 入Ⅱ d 5/31 1,860点 1,860点 (29日間) (4日間) 入Ⅲ 請求は月々行います。 90 e 6/4
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