共通プラットフォーム 18 最強の現場を目指し仮説検証重ねる ついに「ID倉庫」の姿が見えてきた 第 回 ベテラン作業員の勘と経験に頼った現場運営からの脱却 を目指し、 「 ID倉庫」をキーワードに新たなオペレーショ ンの開発を進めてきた。スタッフ全員に「iPad mini」を 配布、データ分析と仮説検証を飽きずに繰り返した。そ の結果、最高の効率を発揮する現場の姿が見えてきた。 (進行役:本誌編集部) 物流業の景色を変えよう ── 大 塚 倉 庫 は2 0 1 2 年 に社 員 と現 場ス タッフ全 員に「 i P a d m i n i 」 を配 布 しました。その狙いは? 大 塚 倉 庫 西 牟 田 克 之 役 員 待 遇ロジスティ クス本 部 長「 あまりにもアナログな物 流 業 界 ばその場で簡 易な見 積もりを提 示することが しても、 商 品や出 荷の特 性をヒアリングすれ グデータを活 用することで、 新たな顧 客に対 だけでなく荷主も共有できるようにする。ビッ ごとの保管状況や出荷作業の進捗をわれわれ 進めていこうという考え方です。 そして商 品 数値化して、検証を繰り返すことで効率化を 出荷に至る各工程を作業単位・作業者単位で レス化 し、『 見 え る化 』 す る。 入 庫・ 保 管・ した。 I Tツールを導 入して現 場をペーパー そのキーワードとして『 I D 倉 庫 』 を掲げま 意とするシーオスさんに技術指導とシステム開 それを実 現するために物 流データの活 用を得 の切り口がID倉庫というコンセプトであり、 ンを新 た に開 発 す る必 要 が あ り ま し た。 そ 荷主の共同物流に対応した新しいオペレーショ 5 倍に膨れ上がっ ています。 多アイテム・ 多 増え まし た が、 アイテム数 は そ れ以 上 の2・ に打って出て以 降、 売り上げは約 1・ 6 倍に 処理していました。しかし、当社が拡大戦略 うに、荷主単位で担当者を置いて庫内作業を 内オペレーションは一般的なメーカー物流のよ 大塚倉庫・西牟田「それまでのわれわれの庫 の景 色を変えようというのが出 発 点でした。 できるようになると考えました」 発をお願いしました」 ──大塚倉庫の取り組みを松島社長はどうご たが、さらに現状の倍以上に事業を拡大しな ました。 まさしくわれわれがやってきたこと シーオス 松 島 聡 代 表 取 締 役 社 長「『 I D 倉 庫 』 のコンセプトは聞いてすぐにピンと来 覧になったのですか。 ければなりません。 それには経 営の在り方を でしたから。ただし、『ビッグデータ』という 億 円ペースで伸ばしてきまし 全て見 直す必 要がありました。 現 場 作 業もベ 言 葉にみんなよくだまされてしまうのですが、 年 度 以 降、 年 テランの勘と経 験に頼っ た従 来のやり方では データは何でもかんでも集めればいいという は実は何も生まれない。 大 事なのは、 現 場は いずれ限界が来てしまうことが明らかでした」 り上げは 年度時点で約430億円です。 「 それは売 上 高 1 千 億 円という経 営 目 標を 達 成する上でも必 要なことでした。 当 社の売 大塚倉庫 西牟田克之 ロジスティクス本部長兼 営業本部 国際物流部長 ものではない。 そうしたじゅうたん爆 撃から 09 ── 従 来のやり方のどこに問 題があったので しょうか。 30 13 企 画 広 告 されたのは、 トヨタ生 産 方 式の産みの親とし 大塚倉庫・西牟田「最初に松島社長から指示 分析軸は出てこない。そこを指導しました」 れを仮 説に当てていくというやり方でないと 説に必 要な範 囲と粒 度でデータを把 握し、 そ こうあるべきだという仮 説であって、 その仮 大 塚 倉 庫・ 西 牟 田「 最 初はアイテム別の出 荷 ロセスを繰り返していきます」 して結 果を検 証して設 定を調 整するというプ を工 程やレイアウトの設 計に落とし込む。 そ その見 当が付く。 それが仮 説です。 その仮 説 業効率と保管効率が最高になるのか、おおよ なった。移動の回数が減っているわけですから、 た。 それが今はどこにでも格 納できるように 別の場 所に一 時 置きしておく必 要がありまし ていたので、そこが空くまで格納できなかった。 なった。 従 来は商 品ごとに保 管 場 所が決まっ は確 実に速くなりました。 入 荷も格 段に楽に 「 『ID倉庫』も全く同じなんです。勘と経 験を頼りに作業指示を出していた世界を、デー ンたちは当然ながら当初は強く反発した」 に変えようというのですから、 現 場のベテラ きたところを、 〝 売れるものだけ作る 〟 よう 〝作れるだけ作る〟という考えでずっとやって 正反対にしようとする試みでした。それまで は、 言ってみれば、 物の作り方をそれまでと シーオス・ 松 島「 大 野さんのかんばん方 式と 作を読むことでした」 る。そうしたことがデータから分かってきた」 めに他の三 百 数 十 日の効 率が犠 牲になってい が明けてからの1 週 間だけなんです。 そのた し、 実 際にそこまで物 量が増えるのは海の日 乗り切ることを念 頭に現 場を設 計する。 しか のイメージが頭 か ら離 れ な い の で、 ピークを 量が通 常の5 倍にも膨れあがる。 担 当 者はそ 夏場のピーク時には『ポカリスエット』の出荷 うちに見えてくるものがありました。 例えば、 落ちていませんでした。 しかし、 やっていく そんなことする必 要があるのか今ひとつふに に、 その都 度、 問い合わせをする必 要があり ドライバー不足の有効な対策になるはずです。 で、配送の『誰でもできる化』を実現します。 します。同時にi P-honeを通じてドライ バー に配 送ルートや納 品 方 法を指 示すること トの実績値と積載率を分析し、運行を効率化 G P Sと配 車ソフトを連 携させて、 配 送ルー 入れていきます。 いわば『 I D 運 輸 』 です。 ために、ID倉庫の考え方を輸配送にも採り せるのと並行して、安定的に商品を供給する 大塚倉庫・西牟田「まず今の仕組みを完成さ ──今後の展開は? 効率だけでなく作業品質も向上しています」 傾 向を タと仮 説 に よ るロジスティクスに変 え る と い 次は『ID運輸』に展開 ましたが、ウェブ上に配送ステータスを公開し、 週 で分 析 し ろ と言 わ れ て も、 何 で て知られる大野耐一さん(故人)の3冊の著 ギャップを乗り越えようとするときには一 体 ──実際に効率は上がっていますか。 問い合わせしなくても納 品 状 況が分かる仕 組 医療材料の納品・管理を担 うロジスティクス企業メディカ ルストリームとして2000年に創 業、03年シーオスに社名変更。 現在は通販などBtoC分野にも 進 出し、 システム構 築から現 場作業まで幅広い業務を行っ ている。 大塚製薬をはじめ大塚グルー プ各社の物流を担う。食品分 野では全国約50カ所にストック ポイントを設置。そのインフラ をベースとして、近年はグルー プ以外の企業との共同物流「共 通プラットフォーム」事業を展 開している。 また、今まで荷主は納品状況を確認するため 何が起きるのか、 改 革にはどのような覚 悟が 大 塚 倉 庫・ 西 牟 田「 ま だ取 り組 み の途 中 で みへ展開を進めていきます」 シーオス株式会社 うのは劇的な構造変化です。それだけ大きな 要るのか、 大野さんの著作を通じて最初に知っ すが、新しい仕組みを入れた部分の出荷作業 52 ておいてほしかったんです」 シーオス 松島聡 代表取締役社長 ──次のステップは? 大塚倉庫株式会社 シーオス・ 松 島「 データの収 集です。 取り扱 いアイテムの重量と寸法、商品の仕様、入り数、 出荷明細、その商品の在庫はどこから補給さ 年分かき集めました。荷姿と入出荷の特 れてくるのかといっ た細かな実 績データを過 去 状のどこに問 題があるのか、 どう変えれば作 性を明らかにするためです。 それを見れば現 1
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