平成26年度 (公社)日本実験動物学会 維持会員懇談会 オゾンを活用した医薬,医療,及び農業分野向け 滅菌・除染技術の開発 2014年11月21日 産業・ロジスティックスセクター 黒松 久 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 目次 1,ホルマリンに対する規制と代替消毒法 2,オゾンとは? 3,オゾンの消毒効果について 4,オゾンガスによる部材への影響 5,オゾンの安全性 6,IHIのさらなる挑戦 7,最後に Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 1,ホルマリンに対する規制と代替消毒法 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 特定化学物質障害予防規則等の改正(ホルムアルデヒドについて) 1,発散抑制措置 ⇒ホルムアルデヒドのガス発散による労働者の暴露を 防止するための機器的処置 2,漏えい防止又は緊急時のための措置等 ⇒ホルムアルデヒドのガス漏えい事故等による 労働者の健康障害を予防するための処置 発ガン性物質を含むホルマリンは, 特定化学物質 第3類物質⇒第2類物質へ! (EOGと同等の扱いに・・・) 改正省令・告知は,平成20年3月1日から 施行・適用されています! 検索キーワード: 厚生労働省+特化則+ホルムアルデヒド 3,作業主任者 ⇒特定化学物質作業主任者を選任し,作業の監視 を行わねばならない。 4,作業環境測定 ⇒6ヶ月以内毎に1回,定期に,作業環境測定師(国 家資格)による作業環境測定を行わねばならない。 又,その測定記録は30年間保存しなければならない。 5,健康診断 ⇒ホルムアルデヒドのガスが発散する場所における 作業従事者は6ヶ月毎に健康診断を行わなければ ならない。 6,その他の措置 ⇒保護具,保護衣,保護手袋等を備えなければなら ない。 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 現状と代替消毒法 高度消毒 耐熱性消毒対象物 オートクレーブ → 非耐熱性消毒対象物 6 ← 過酸化水素(残留△) ← EOG(残留毒性あり) 問題点:高濃度過酸化水素の結露による壁材の劣化 5 ← ホルマリン(残留毒性あり) ← オゾン(残留なし) 問題点:高濃度オゾンによる天然ゴムの劣化 4 3 消毒効果の低下 従来効果の確保 2 1 低度消毒 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. ← 紫外線照射 ← 噴霧消毒 ← 清拭消毒 ガス消毒剤の比較 ガス種類 人体への 影響 法律規制 殺菌能力 ホルムアルデヒド エチレンオキサイド オゾン 過酸化水素 発がん性: あり (IARCグループ1) 管理濃度:0.1ppm 許容濃度:0.1ppm 発がん性: あり (IARCグループ1) 管理濃度:1ppm 許容濃度:1ppm 発がん性:認められていない (IARC記載なし) 管理濃度:なし 許容濃度:0.1ppm 発がん性:ヒトに対する発ガン 性が分類できない (IARCグループ3) 管理濃度:なし 許容濃度:1ppm 労働安全衛生法 ・特定化学物質等「第2類」 ・作業主任者の選任 毒物及び劇物取締法 ・劇物 労働安全衛生法 ・特定化学物質等「第2類」 ・作業主任者の選任 毒物及び劇物取締法 ・劇物 特になし 労働安全衛生法 ・名称等を表示すべき 危険物,有害物 毒物及び劇物取締法 ・劇物 殺菌効果 (設定により滅菌効果) 滅菌効果 殺菌効果 (設定により滅菌効果) 滅菌効果 参考文献:日本産業衛生学会許容濃度委員会 国際がん研究センター(IARC) Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 2,オゾンとは? Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. オゾンとは? 放電 O2 自然分解 O3 O2 ★ 酸素原子3個で分子を構成する物質 ★ フッ素に次ぐ酸化力がある ★ 対象物を酸化した後は酸素に戻る ★ 酸化、消毒、脱臭、漂白の4つの作用 ★ 非常に分解しやすい Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 8 オゾンとは? 実験動物施設 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 病院でのオゾン使用事例 オゾンとは? オゾン水生成装置 脱臭除菌装置eZ-100 OW-20Z、OW-40G 無菌室 リネン消毒庫OR-5V 脱臭除菌装置eZ‐2000 天井取り付脱臭システム eZ-1s リネン室 脱臭除菌装置eZ‐2000 厨房 病室 トイレ 手術室 診察室 NICU 室内殺菌装置OP-10 内視鏡室 待合室 脱臭除菌装置eZ‐2000 ナースステーション 内視鏡殺菌装置OED-1000 スリッパ殺菌装置SSDX Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 車内用除菌装置OUV-Ⅱ 天井取り付脱臭システム eZ-1s オゾンとは? 実験動物施設でのオゾン使用事例 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. オゾンとは? 実験度物施設での使用例 (消毒庫の場合) IHIシバウラ製 HZ-SVシリーズ 通常区側 クリーン側 オゾン消毒庫 通常区側 オートクレーブ 殺菌処理+パスボックス 庫内:W600×L450×H600mm タッチパネル ・Vシリーズでは、常圧処理、減圧処理のどちらでも作業が可能。 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. オゾンとは? 実験動物施設での使用例 (くん蒸消毒の場合) STEP1 オゾンくん蒸開始 接続キット 室内機 室外機 IHIシバウラ製オゾンガス燻蒸装置 HZ-100 STEP2 オゾン分解開始 室外風景 残オゾンは処理後に 吸引し強制分解する。 室内風景 写真提供:三協ラボサービス㈱ 殿 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 3,オゾンの消毒効果について Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. オゾンの消毒効果について オゾンによる殺菌メカニズム オゾンO3 ヒドロキシラジカルOH DNA オゾン処理前 細胞表層構造の変化 (溶菌) オゾン処理後 DNA 損傷 撮影協力:国立感染症研究所 斎藤典子先生 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 15 オゾンの消毒効果について オゾン消毒を管理するCT値とは? オゾン濃度 Ozone Concentration CT値=オゾン濃度×暴露時間 この面積が CT値 暴露時間 Exposure Time Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 16 オゾンの消毒効果について オゾン消毒による生残曲線とD値 ※ 試験に使用した芽胞 :枯草菌芽胞 Bacillus atrophaeus spores ATCC#9372 (米国レーベン社製) 0D 死滅率指数 死滅率 100 106 0% 1 D 90 % 10-1 105 2D 99 % 10-2 104 3D 99.9 % 10-3 103 4D 99.99 % 10-4 102 5D 99.999 % 10-5 101 生残菌数 生残率 生残菌数 生残率= 初発菌数 死滅率=1-生残率 D値(90%死滅CT値) CT値 D値=死滅率指数 指標が芽胞(ATCC9372 106cfu)の場合、 十分な湿度とCT値72000以上が必要 6 D 99.9999 %10-6 100 指標が一般細菌(106cfu)の場合 CT値6000以上が必要 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. CT値(オゾン暴露) 17 4,オゾンガスによる部材への影響 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. オゾンガスによる部材への影響 注意!! ・消毒対象物によって目に見えて劣化 するものがあります。 ・減圧により壊れるものもあります。 ・オゾンは,酸素原料で生成してください。 撮影協力:信州大学 ヒト環境科学研究支援センター Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 19 オゾンガスによる部材への影響 O3 AC 150000ppm・min. 感熱紙(印字) ボールペン(字) 撮影協力:信州大学 ヒト環境科学研究支援センター Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 20 オゾンガスによる部材への影響 150000ppm・min 50000ppm・min x 3 times タッパー 電気バリカン (モーター) シリンジ、注射器etc.. 撮影協力:信州大学 ヒト環境科学研究支援センター Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 21 オゾンガスによる部材への影響 × ラテックスグローブは× Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 撮影協力:信州大学 ヒト環境科学研究支援センター 22 5,オゾンの安全性 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. オゾンの安全性 オゾンガス消毒庫内濃度 (MAX5000ppm) オゾンガス燻蒸濃度 (MAX200ppm) 分解後 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 参考文献:日本産業衛生学会許容濃度委員会 国際がん研究センター(IARC) オゾンの安全性 オゾン直接の発ガン性は認められておらず,国際がん研究機構 IARC(International Agency For Research On Cancer)の発ガン性物質リストには取り上げられていない。 但し,高濃度オゾンを吸引すると気管支炎,肺水腫を起こす可能性があるので,注意が必要である。 オゾン使用時の心得! 1,オゾンの本質を十分に理解して使用すること。 2,オゾン使用時は濃度計,漏洩センサーなどを設置 し,直接オゾンを吸引しないよう注意すること。 3,分解システムを用いた装置を使用すること。 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 6,IHIのさらなる挑戦 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. IHIのさらなる挑戦 従来のCBRN除染技術 化学(Chemical)、生物(Biological)、放射性物質(Radiological)、核(Nuclear) 防衛 事業 分野 民間事業分野 新除染技術の研究開発 オゾンをベースにした 促進酸化法による 新除染技術の開発 従来,化学兵器(Chemical)、生物兵器(Biological)の 除染には次亜塩素酸カルシウム(さらし粉)溶液等塩 素系除染剤を使用することが中心 強い酸化力 化学兵器 ⇒ 分解 生物兵器 ⇒ 不活化 除染剤は塩素成分を含有 金属の腐食など装備品の機能損耗招く 精密機器等の機能損耗なく 除染できる技術 精密機器 施設内部 この技術を民生転用したい。 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 参考文献 エンドトキシンとは 本プロジェクトメンバーNIHS菊池先生資料引用 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 医薬製造分野への適用 例) インフルエンザワクチンの製造工程 無菌環境 完全除染が必要 10℃以下で自動倉庫に保管 ワクチンの種類によっては ▲20℃以下で管理 無菌環境 完全除染が必要 品質確認用の一時保管 製品に菌などの混入がないかを 確認するため一定期間自動倉 庫で保存し,菌の生育をみる。 梱包⇒保管⇒出荷 参考資料:デンカ生研株式会社殿HP引用 自動化ニーズ⇒人の介入を減らしコンタミリスクを回避する必要がある。 除染ニーズ ⇒ 既存設備を傷めず,病原性微生物,エンドトキシンなどのコンタミリスクを回避し なければならない。 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 農業分野への適用 (東京農工大学と共同研究中) 例) 口蹄疫,鳥インフルエンザに対する農家の対策 石灰を水に溶かす スプレー散布 石灰の残留が問題に 例) 動物検疫所での対策 輸入羽毛 動物検疫所ホルマリン消毒 (減圧型ホルマリン滅菌装置) 残留毒性は? 除染ニーズ ⇒残留毒性がなく,環境に影響のない消毒剤の使用が求められる。 ※家畜伝染病予防法にはホルマリン,EOGを用いた消毒法しか記載されていない。 農水省による消毒法改正が必要 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 7,最後に Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved. 最後に ホルマリン代替消毒法: 様々な消毒法の長所,短所を見極め,消毒対象物に合わせた消毒 を実施することが,施設内での感染制御に繋がる。 又,施設の特性に合わせて消毒法を選ぶことが,極めて重要。 IHIに課せられた使命: 安全で設備を傷めない消毒法の開発が急務! 新除染技術を広めるには? 医薬・医療向け・・・薬局方に収載。 農業分野向け・・・・家畜伝染病予防法に収載。 Copyright © 2014 IHI Corporation All Rights Reserved.
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