Osakafu rigaku ry-oh-oshikai senshu burokku

第 11 回泉州ブロック新人症例発表
会
Osaka Physiotherapy Association Senshu Block 11th Congress
泉州ブロック新人症例発表会
11th
日時:平成 28 年 1 月 31 日(日)
会場:エブノ泉の森ホール(小ホール)
主催:公益社団法人 大阪府理学療法士会 泉州ブロック
0
Vol.11
目
次
ごあいさつ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
会場見取り図、ご案内・・・・・・・・・・・・・・・・・3
演題発表要項、プログラム・・・・・・・・・・・・・・・4
一般演題
一覧
・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
一般演題(第1セクション)・・・・・・・・・・・・・・・7
一般演題(第2セクション)・・・・・・・・・・・・・・・9
一般演題(第3セクション)・・・・・・・・・・・・・・・12
大会運営組織・委員一覧、編集後記・・・・・・ ・・・・・13
1
公益社団法人大阪府理学療法士会泉州ブロック
第 11 回泉州ブロック新人症例発表会を開催するにあたって
公益社団法人大阪府理学療法士会泉州ブロック
第 11 回泉州ブロック新人症例発表会を、
平成 28 年 1 月 31 日(日)エブノ泉の森ホール(小ホール)で開催いたします。
泉州ブロックは、大阪府理学療法士会のブロック活動のさきがけとして活動を開始し、地
域における医療・保健・福祉の連携を深めてまいりました。特にこの新人症例発表会では、
以前より(一社)大阪府作業療法士会泉州ブロック、(一社)大阪府言語聴覚士会泉州ブロ
ックのご協力を得て、理学療法のみでなく、作業療法および言語聴覚療法に関する演題も発
表していただくことができ、地域での連携も確かなものになっております。あらためてお礼
申し上げます。この新人症例発表会で、泉州ブロックにおけるリハビリテーションのレベル
も飛躍的に向上し、地域の患者様によりよいサービスを提供できるようになってきたと自負
しております。
今回の大会でも、作業療法士会と言語聴覚士会のセッションを合わせて推薦演題の発表と、
今回ブロック役員である西田大希氏(ひがしはら整形外科リウマチクリニック)による「骨
折に対する手術の基礎と術後理学療法」という講演会を企画しております。
本大会が皆様にとりまして、実りのあるものになりますよう心から願っております。
第 11 回泉州ブロック新人症例発表会
大会長
鈴木俊明
2
会場案内・見取り図
小ホール
正面玄関
受付
喫煙所
第 11 回泉州ブロック新人症例発表会のご案内
1、参加費:無料
2、参加受付について
①受付は当日 9 時00分より行います。
②ネームカードに所属・氏名をご記入の上、ご着用をお願いします。ご着用されていない方のご入場はお
断りします。
3、留意事項
①会場内は飲食禁止です。また、当日弁当の準備はしておりません。近隣の飲食店をご利用下さい。
②喫煙は所定の場所でお願いします。
③会場内での携帯電話のご使用はご遠慮下さい。
④アナウンスによる呼び出しは原則として行いません。
⑤ご来場は公共交通機関をご利用下さい。
3
演題発表要項
Ⅰ 演者へのお願い



発表 7 分・質疑応答 5 分の時間を設定しています。発表および質疑応答に関しては
座長の指示に従ってください。
演者や所属などの変更がある場合には、当会場の演者受付に申し出てください。
原則としてアナウンスによる呼び出しは行いませんので、時間厳守をお願いします。
不測の事態で所定の時間に間に合わない場合は、大会本部または当会場の受付
までご連絡下さい。
Ⅱ 座長へのお願い
 開始時刻の 10 分前までに次座長席にお越し下さい。
 演題発表は 7 分の口頭説明の時間を設定しています。質疑応答時間の設定および
進行については座長に一任します。座長は討議が円滑に進むようにご配慮下さい。
 不測の事態にて座長の職務が遂行不可能であると判断された場合は、速やかに大
会本部または当会場の受付までご連絡下さい。
Ⅲ 質疑応答について
座長の指示に従って、活発なご討議をお願いします。なお、質問の際には必ず所属と氏
名を告げ、簡潔明瞭にして下さい。
第 11 回泉州ブロック新人症例発表会 タイムスケジュール
9:00~
受付開始
9:30~
開会式・大会長挨拶
9:40~
教育講演
11:10~
第 1 セクション 運動器系/神経系
12:00~
昼休憩
13:00~
第 2 セクション 運動器系/OT・ST 推薦演題
14:00~
第 3 セクション 神経系
14:50~
閉会式
15:00
終了
4
教育講演
「骨折に対する手術の基礎と術後理学療法」
ひがしはら整形外科リウマチクリニック
西田 大希 氏
一般演題発表
プログラム
一般演題発表プログラム
第 1 セクション 運動器系/神経系
11:10~12:00
座長:森 健一郎(佐野記念病院)
平 勝秀 (葛城病院)
1.大腿骨頚部骨折を受傷し対側変形性股関節症と同時に人工股関節全置換術を施行した一症例
佐野記念病院 井上 雄太
2.左大腿骨頚部骨折による THA 術後の患者に対し大殿筋へ介入した結果歩行動作の改善を認めた一症例
野上病院 吉田 将太
3.橋出血により右片麻痺を呈し、床上動作練習を追加したことにより杖歩行の安全性が向上した一症
例
大阪リハビリテーション病院 奥 英晃
4.小脳梗塞後の座位の体幹・骨盤のアライメントに着目した一症例
永山病院 中村 綾乃
第2セクション 運動器系/OT・ST 推薦演題
13:00~13:50
座長:今津 義智(野上病院)
OT 推薦座長:中川 幸太郎(葛城病院)
5.足関節固定術後の患者に対して、船底形状靴を用いた一症例
葛城病院 笹井 美伽
6.病的体験が強い症例に対して絵カード評価法を用いた経験
7.自分らしく生きる
七山病院
嶋吉 晃宏(OT)
阪南市民病院
山中 利恵(OT)
~「また海で釣りをしたい」~
8.姿勢異常の改善が嚥下機能の向上につながった廃用症候群の一例
河崎病院
第3セクション
神経系
仲原 元清(ST)
14:00~14:50
座長:岡 健司(大阪河﨑リハビリテーション大学)
9.起立動作の殿部離床に着目した脳梗塞患者の一症例
永山病院
10.麻痺側内腹斜筋・中殿筋の筋緊張、下肢の感覚改善により歩行の改善を認めた一症例
小池 伸拓
河崎病院 田村 匠
11.左片麻痺を呈し左立脚期に左側への不安定性を認めた一例
河崎病院 金田 大貴
12.心原性脳塞栓症により高次脳機能障害を呈した重度左片麻痺患者の座位保持獲得に向けて
大阪リハビリテーション病院 一宮 亮太
5
【一
第 1 セクション
(運動器系/神経系)
第 2 セクション
(運動器系/OT・ST 推薦演題)
第 3 セクション
(神経系)
6
般
演
題】
1
第 1 セクション 運動器系/神経系
大腿骨頸部骨折を受傷し対側変形性股関節症と同時に人工
股関節全置換術を施行した一症例
2
第 1 セクション 運動器系/神経系
左大腿骨頚部骨折による THA 術後の患者に対し大殿筋へ介入した
結果歩行動作の改善を認めた一症例
井上 雄太、森 健一郎、松本 隆幸
佐野記念病院 リハビリテーション科
吉田 将大、外村 翔平
野上病院 リハビリテーション部
key word:THA・腰部・腸腰筋
key word:THA 術後・歩行・大殿筋
【はじめに】左大腿骨頚部骨折による全人工股関節置換術(以
下 THA)後の症例の歩行動作に対し、左大殿筋に着目して理
学療法を行った結果、動作改善に繋がった為報告する。尚、
症例には発表の趣旨を説明し同意を得た。
【症例紹介】50 歳代女性。転倒により左大腿骨頸部骨折を受
傷。左 THA(前外側アプローチ)を施行され、術後 1 日目か
ら理学療法開始となる。医師の指示より術後 1 日目から全荷
重の許可があったが、手術侵襲の為、術後 28 日間は左中殿筋
の伸張運動、筋力増強訓練は禁忌であった。本症例は、術後
約1ヶ月での退院希望があり、入院期間と禁忌事項を考慮し、
T 字杖歩行獲得を目標にアプローチを行った。
【初期評価】T 字杖歩行は術後 11 日目より開始。2 動作揃え
型近位見守りレベル。左初期接地は、骨盤前傾位、左股関節
過屈曲・軽度外転位である。左立脚中期は左股関節屈曲位で
左股関節内外転中間位である。その後、立脚終期にかけて左
股関節の急な内転、体幹左側屈、骨盤右下制し、左単脚支持
時間の短縮が見られ安全性の低下を認めた。関節可動域(以下
ROM)は、左股関節伸展 0°、左下肢の徒手筋力検査(以下 MMT)
は腸腰筋 2、大殿筋 3、大腿四頭筋 4、ハムストリングス 5、
下腿三頭筋 3 であった。左片脚立位ではトレンデレンブルグ
徴候陽性であり、歩行時の疼痛は認めなかった。
【理学療法】左股関節を中心に ROM 訓練、左大殿筋の筋力増
強訓練では、側臥位での自動介助運動、徒手抵抗運動を行っ
た。また、立位姿勢で徒手抵抗運動を筋力向上に合わせて負
荷を漸増し open kinetic chain の状態で行った。また立位、
歩行練習を並行して行った。
【最終評価】術後 22 日目では ROM は左股関節伸展 10°、MMT
は左腸腰筋 4、左大殿筋 4 となった。左片脚立位はトレンデ
レンブルグ徴候陽性だが支持時間は延長した。T 字杖歩行 2
動作前型自立レベル。左初期接地では、骨盤前傾位、左股関
節過屈曲が軽減し、左股関節内外転中間位での接地となった。
左立脚中期では左股関節伸展を認め、その後の立脚終期にか
けての左股関節の急な内転、体幹左側屈、骨盤右下制も軽減
し、左単脚支持時間が延長した。
【考察】本症例は、左立脚中期の骨盤右下制により、安全性
が低下し、立脚中期の主動作筋である左中殿筋の筋力増強訓
練は禁忌であった。Perry(1992)は立脚中期において大殿筋上
部線維の活動が骨盤を水平に安定させるとしている。
Kirsten(2005)は遊脚期の振り出しが身体を上方へ持ち上げ、
立脚中期の床反力が減少するとしている。このことから、左
大殿筋の筋力向上が骨盤右下制の軽減に繋がったと考えた。
また、左初期接地が安定し右下肢を振り出せたことで、左中
殿筋の負荷が減少したことも骨盤右下制の軽減に繋がったと
考えた。また、立位・歩行練習で左中殿筋の活動を促せたこ
とで筋力維持出来たことも歩行動作向上の要因と考える。
【はじめに】転倒により左大腿骨頸部骨折を受傷し、重度の
右変形性股関節症(以下股 OA)と同時に人工股関節全置換術
(以下 THA)を施行された症例を担当したので報告する。尚、
患者様には発表の主旨を説明し同意を得た。
【症例紹介】60 歳代の女性、農作業中の転倒で左大腿骨頸部
骨折を受傷。2 年程前から右股 OA の強い痛みを我慢して生活
していた。今回 X 線で変形進行も指摘され、医師の十分な説
明のうえ、受傷後7日目に両側前方進入で同時に THA を施行
した。
翌日より術後療法を開始し、
術後 5 日目に歩行器歩行、
18 日目に左T字杖で歩行練習を開始した。
【初期評価】術後 7 日目の立位は、体幹軽度右側屈、骨盤前
傾・右下制、腰椎前彎が著明で、両股関節・膝関節屈曲位で
あった。歩行は右立脚中~後期に右股関節伸展が乏しく、腰
椎前彎が増強し骨盤右回旋を認めた。右遊脚中~後期は反対
側の同時期と比べ骨盤挙上での振り出しを認めた。左立脚中
~後期は対側の同時期と比べ股関節伸展を認めた。ROM(右/
左)は胸腰部屈曲 25°、伸展 15°、側屈 40°/30°、回旋 30°
/35°、股関節屈曲 90°/90°P、股関節伸展 0°P/0°P、腹
臥位の膝関節屈曲 135P/130P。MMT は股関節屈曲 2/3、股関
節伸展 2/3、股関節外転 2/2、体幹屈曲 2、体幹伸展 3、体幹
回旋 2/2。トーマステスト、 エリーテスト両側陽性。
【理学療法】腰椎前彎の原因は、右股 OA の変形や拘縮による
受傷前からの姿勢、両 THA の侵襲から生じた両腸腰筋・大腿
直筋の過緊張によるものと考えた。さらに右股 OA により中
殿筋の作用効率が低下し、立脚相で右体幹側方傾斜を生じ、
触診で右体幹側屈筋群の過緊張を認め、さらに大殿筋・中殿
筋が機能しにくくなると考えた。治療はまず右体幹側屈筋群
のストレッチを行い、腹臥位で大腿直筋・腸腰筋のストレッ
チを実施し、背臥位でドローインや深呼吸で腹横筋・多裂筋
の促通を図った。また座位で骨盤前・後傾運動を反復し、背
筋群の緊張を緩和したのち、左右リーチ動作で内外腹斜筋の
促通を行った。また、下部体幹の収縮を意識させ腰椎安定化
を目的としたステップ練習による殿筋群の促通を行った。
【最終評価】術後3週目、ROM は股関節屈曲 100/95P、伸展
5P/5P、
腹臥位の膝関節屈曲 145P/145P、
胸腰部屈曲 35°、
伸展 25°と改善。MMT は股関節屈曲 3/4、股関節伸展 3/3、
股関節外転 3/3、体幹屈曲 3、体幹回旋 3/3 へ向上。立位姿
勢は骨盤前傾、腰椎前彎が軽減した。歩行では腰椎前彎が軽
減し、左右立脚後期の股関節伸展が増大した。
【考察】右体幹側屈筋群の過緊張による胸腰部可動性低下、
腸腰筋・大腿直筋の過緊張による股関節伸展 ROM 制限、腹筋
群・中殿筋の筋力低下に対しアプローチし、OA により生じた
二次性 impairment と、骨折・手術により生じた一次性・二
次性 impairment が改善し、早期に歩容改善が得られたと考
える。
7
3
第 1 セクション 運動器系/神経系
橋出血により右片麻痺を呈し、床上動作練習を追加したことによ
り杖歩行の安全性が向上した一症例
4
第 1 セクション 運動器系/神経系
小脳梗塞後の座位の体幹・骨盤のアライメントに着目した一症例
中村 彩乃、今奈良 有
永山病院 リハビリテーション部
奥 英晃、山下 大輝
大阪リハビリテーション病院 リハビリテーション療法部
key word:小脳梗塞・体幹と骨盤のアライメント・座位姿勢
key word:橋出血・床上動作・杖歩行
【はじめに】今回、橋出血により右片麻痺を呈した症例を担当し
た。床上動作練習の追加により、杖歩行の安全性が向上したので
報告する。尚、発表に際し、症例・家族の同意を得た。
【症例紹介及び初期評価】発症後、降圧療法が選択され 9 週が経
過した 50 歳代の女性である。杖歩行は、右荷重応答期から立脚
中期に胸腰部伸展、骨盤前傾・右回旋・左下制、右股関節屈曲・
内転、右膝関節屈曲が増大し、膝折れを認めた。また、右前遊脚
期から遊脚中期では骨盤右下制が生じ、躓きを認めた。これらに
より前方転倒傾向を認め、中等度介助を要した。Stroke
Impairment Assessment Set(以下 SIAS)は 51/76 点であった。
筋緊張(触診)は、右側内・外腹斜筋、大・中殿筋、大腿四頭筋
に低下(以下筋緊張低下筋群)、両側脊柱起立筋群、及び右側股
関節内転筋群、ハムストリングス、下腿三頭筋に亢進(以下筋緊
張亢進筋群)を認めた。また、右股関節深部感覚(位置覚)は中
等度鈍麻し、関節可動域(以下 ROM;右/左)は足関節背屈(膝
伸展位)が-10°/-5°であった。以上から、右立脚期では、右側
内・外腹斜筋、大殿筋の筋緊張低下により胸腰部伸展・骨盤前傾
位を呈し、更に、右側大・中殿筋、大腿四頭筋の筋緊張低下によ
り骨盤右回旋・左下制、右股関節屈曲・内転、右膝関節屈曲が生
じ、また右遊脚期では、右側内・外腹斜筋の筋緊張低下により骨
盤右下制が生じていると考えた。それぞれの拮抗筋の筋緊張亢進、
右股関節深部感覚低下、右足関節 ROM 制限と相俟って、膝折れや
躓きの要因と考えた。
【理学療法及び経過】杖歩行の安全性向上を目的に、右足関節
背屈 ROM 練習に加え、筋緊張低下筋群の促通、右股関節荷重
感覚入力を狙った立位練習(ステップ・歩行練習)を実施した。
しかし、胸腰部伸展、骨盤前傾・左下制、右股関節屈曲・内転、
右膝関節屈曲が増大し、筋緊張亢進筋群の活動が生じた。よって、
発症 11 週目から床上動作(膝立ち・寝返り動作)練習を追加し、
筋緊張亢進筋群を抑制した中、筋緊張低下筋群を促通した。
【最終評価】発症 14 週目の杖歩行は、右荷重応答期から立脚中
期の胸腰部伸展、骨盤前傾・左下制、右股関節屈曲・内転、右膝
関節屈曲が軽減し、右前遊脚期から遊脚中期の骨盤右下制が軽減
した。右立脚期の膝折れ、右遊脚期の躓きといった転倒要因が軽
減し、軽介助となった。SIAS は 60/76 点となり、筋緊張(触診)
は低下筋群に改善、亢進筋群に軽減を認めた。また、右股関節深
部感覚(位置覚)は軽度鈍麻、右足関節背屈 ROM は 10°/10°とな
った。
【考察】介入当初、立位練習では筋緊張亢進筋群の活動によ
り、筋緊張低下筋群の促通が困難であった。平山は「歩容を
改善するための筋活動の賦活や筋力の改善を目的として、歩
行動作以外での介入も必要である」と述べている。床上動作
練習は、支持基底面が広く、身体重心が低いため、安定した
姿勢で介入でき、筋緊張亢進筋群を抑制した中、低下筋群を
促通できたと考える。その結果、膝折れや躓きによる前方転
倒傾向は軽減し、杖歩行時の安全性向上に至ったと考察する。
8
【はじめに】小脳梗塞を発症した患者を担当した。座位での
体幹‐骨盤のアライメントに着目してアプローチをした結
果、歩行の実用性向上に繋がった為、ここに報告する。
【症例紹介】70 歳代女性。自宅にてふらつきを感じ、当院へ
受診。小脳梗塞と診断される。発表に際し患者に説明のうえ
同意を得た。
【初期評価 発症後 8 日~12 日】座位は、体幹屈曲・左側屈
位、骨盤後傾・左挙上位である。独歩は常に骨盤後傾位であ
り、右立脚初期から中期にかけて右股関節内転が乏しく、右
立脚後期にふらつきが見られ、また股関節伸展の減少がみら
れた。DTR は上腕二頭筋・上腕三頭筋・大腿四頭筋・下腿三
頭筋にて左右差なし。MMT(右/左)は体幹屈曲 2、回旋 2/2、
股関節伸展 3/3、外転 3/3 である。ROM-T(右/左°)は股関
節伸展 10/10 である。SARA は 21 点である。画像解析ソフト
Image J を用いた安静座位での体幹角度は、体幹屈曲 30°、
左側屈 5.8°であった。静止時筋緊張検査及び座位での重心
移動にて右内腹斜筋・腸肋筋・多裂筋・最長筋(以下、腰背
筋群)の筋緊張低下を認めた。また、座位にて骨盤前傾を促
すと腰椎は軽度伸展を認めるも、胸椎屈曲の軽減は認めず、
体幹の前傾が見られた。胸椎屈曲の増大に伴い右肩甲骨は外
転・上方回旋位であったため、上肢前方支持位にて肩甲骨内
転・下方回旋を促しながら骨盤前傾運動を実施すると腰椎の
伸展に伴い、胸椎屈曲の軽減が見られた。右肩甲骨外転・上
方回旋位は菱形筋の筋緊張低下、大・小胸筋の筋緊張亢進が
問題と考えた。今回、座位・歩行において、骨盤後傾・左拳
上位を認め、胸腰椎が屈曲・左側屈位を呈していた。これは、
右内腹斜筋・腰背筋群の筋緊張低下が問題であると考えた。
また、骨盤後傾位に伴い胸腰椎屈曲が増加したことにより、
右肩甲骨は外転・上方回旋位のアライメントを呈していたと
考えた。上記の体幹-骨盤のアライメント不良が右立脚中期
での体幹の垂直方向への伸展を低下させ、右立脚後期で左側
へのふらつきを認めていたと考えた。
【理学療法】大・小胸筋のストレッチング後、座位アライメ
ントの改善を図るため、右内腹斜筋、腰背筋群の筋緊張向上
目的に肩甲骨の内転・下方回旋を促通しながら座位での骨盤
前後傾・右挙上運動実施。立位アライメントの改善を図るた
め、右内腹斜筋・腰背筋群の筋緊張向上目的に右下肢への重
心移動訓練を実施し、歩行訓練を実施した。
【最終評価 発症後 32 日~35 日】image Jでは体幹屈曲
25°、側屈 0.9°となった。座位は体幹軽度屈曲位、骨盤軽
度後傾位である。独歩は骨盤後傾位が改善し、右立脚中期で
の体幹左側屈が軽減したことで股関節内転が増加し、右立脚
後期でのふらつきが軽減した。また股関節伸展の増大もみら
れた。MMT は体幹屈曲 3、回旋 3/3 である。SARA は 9 点であ
る。静止時筋緊張検査・座位での重心移動で右内腹斜筋、腰
背筋群、菱形筋の筋緊張改善を認めた。
【考察】本症例は、右内腹斜筋・腰背筋群の筋緊張低下によ
り、座位での体幹‐骨盤の静的アライメント不良が生じてい
た。そのため、右立脚中期での動的アライメント保持ができ
ず、左側へふらつきが生じていた。右内腹斜筋、腰背筋群に
加えて菱形筋の筋緊張が向上したことで、静的アライメント
の改善が右立脚中期の動的アライメント保持を可能にし、右
股関節内転の増加に繋がったと考える。
5
第 2 セクション 運動器系/OT・ST 推薦演題
足関節固定術後の患者に対して、船底形状靴を用いた一症例
6
第 2 セクション 運動器系/OT・ST 推薦演題
病的体験が強い症例に対して絵カード評価法を用いた経験
笹井 美伽、吉川 雅夫、福本竜太郎
葛城病院 リハビリテーション部
嶋吉 晃宏、奥森 篤志
七山病院 診療部リハビリ課 OT 係
key word:関節リウマチ・足関節固定術・船底形状靴
key word:統合失調症・意味のある作業・ストレス
【はじめに】足関節固定術施行後より可動域制限のため、歩行
能力が低下した症例を担当した。運動学的に考察し、船底形状靴
を用いた結果、歩行能力の向上を認めたので報告する。
【症例紹介】68 歳の女性。幼少期から関節リウマチ(以下 RA)
による足部の変形があり、数年前から右足部の疼痛が増悪し、歩
行困難となる。主訴は右足首が痛くて歩けないとのことであった。
今回、除痛目的のため、足関節固定術を施行。術前 ADL は自立し
ており、職業は美容院を経営している。
【初期評価・理学療法】足関節は底背屈 0 度で固定。術後翌日か
ら理学療法開始、術後 78 日目から全荷重開始。歩行動作では右
立脚初期は足底外側から接地し、右足関節背屈による下腿前傾が
みられず、右膝関節過伸展位・右股関節屈曲位・体幹前傾位とな
る。右立脚中期から後期において右股関節伸展運動に伴い、右膝
関節過伸展が増強する。歩行時の現象から、右足関節背屈による
下腿前傾がみられず、前方への重心移動が阻害されていると考え
た。術後 97 日目、日本足の外科学会による hindfoot scale(以
下 JSSF hs)にて歩行能力を含む機能項目は 20/50 点、連続最大
歩行可能距離は 400m以上 600m未満であり、10m歩行は 18.25
秒であった。歩行時の足関節機能の代償として、足関節固定術後
の歩容の改善に有効とされている船底形状靴 1)を選択し、アウト
ソールに加工を施した。
【結果】術後 129 日目、JSSF hs の機能は 36/50 点、連続最大歩
行可能距離は 600m以上可能、10m歩行も 14.52 秒と改善がみら
れた。船底形状靴を着用することで右立脚期での右膝関節過伸展
位・右股関節屈曲位・体幹前傾が軽減し、歩容の改善が認められ
た。また、ADL は向上し、復職可能となった。
【考察】本症例は、RA による足部の拘縮及び距腿関節・距骨下
関節の可動域制限により下腿前傾がみられず、前方への重心移動
が阻害されたため代償動作として右立脚期での右膝関節過伸展
位・右股関節屈曲位・体幹前傾がみられた。そのため、前方への
推進力と回転作用を代償する船底形状靴を選択した。その結果、
代償動作が改善し、更にアウトソール加工を施した事によって、
歩容の改善と歩行能力が向上した。
【はじめに】今回、活動への興味関心が乏しく、独語等の病
的体験がある症例に対し絵カード評価法を用いる事で意味
のある作業活動の提供と希望する環境調整を行う事が出来
たため以下に報告する。
【症例紹介】統合失調症を呈した 70 歳代の女性。20 歳頃、
「泥棒が入った」等の被害的内容の発言があり精神科に 13
年間入院。退院となるも独語、空笑などの陽性症状や他者に
対して易怒的になる等、状態に合わせ入退院を繰り返す。今
回、老人ホームで他者に怒声をあげる事が増え当院閉鎖病棟
へ入院。日中は病棟詰所前で独語を話しており、他者交流無
く孤立的に過ごす。日常生活では言語にてコミュニケーショ
ンは図れるが、苛立ちや独語など病的体験により阻害される
事が多い。OT 活動は参加を誘われるも「何もしたくない」と
断る。Dr からは現在の症状が落ち着けば老人ホームへ退院す
る予定とあり、Ns からは私物(衣類等)は病棟管理と申し送
りを受ける。
【初期評価】慢性的な陽性症状が因子となり言語によるコミ
ュニケーションが阻害される事に加え、活動への興味関心が
乏しい本氏にとって、意味のある作業を明らかにする為、視
覚的に認知しやすく現実課題となる絵カード評価法(以下
APCD)を実施。
「とても重要である」に分類された作業は「爪
を切る」
「顔を洗う」
「着替えをする」
「髪を整える」等の 26
種類。特に身辺処理・身嗜みの項目が多く「今は自由に出来
やんけど、自分の事は自分でしたい」
「お洒落するん好きや」
と話す。検査中の発言内容は被害的な訴えが多い。
【介入経過】APCD から興味を把握した為、装飾品となるビー
ズのブレスレット作りを OTR から提案されると抵抗なく行う。
2 日目以降は本人希望により作成。作成後のブレスレットは
自己管理とした。「自分の事は自分でしたい」という発言か
ら Ns へ相談し私物の一部(衣類等)を自己管理とした。ま
た PSW に退院後も私物を自己管理出来るように相談した。
【最終評価】OT では自ら希望し毎回ブレスレット作りに集中
して取り組み「面白いわ」と話す。病棟では日中、独語や怒
声などの病的体験が減り、自席に座り周りの他患者や Ns に
ブレスレットや自分の私物を見せ笑顔で会話する事が増え
る。
【考察】病的体験が強い本氏に対して現実課題となる APCD
を応用した事により、本氏の思いが明らかになった。APCD
による評価からニーズに沿った活動提供が本氏にとって価
値のある作業を見出したと考える。また他職種との連携によ
り物品の自己管理という環境調整で自己有能感を満たす事
ができた。その結果、被害的思考になりやすい本氏にとって
ストレスフルな現状を改善した事で病的体験の緩和と他者
との交流機会の提供を行う事が出来たと考えられる。本症例
は症状自体の寛解は難しいと考えるが、退院後も再入院を防
ぐため本氏にとってストレスの少ない環境調整を継続して
模索していく必要がある。
1)
Jones DA, Moed BR, Karges DE: Does Modified Footwear
improve gait after ankle arthrodesis? J Foot Ankle
Surg.2015.1-4.
9
7
第 2 セクション 運動器系/OT・ST 推薦演題
自分らしく生きる ~「また海で釣りをしたい」~
8
第 2 セクション 運動器系/OT・ST 推薦演題
姿勢異常の改善が嚥下機能の向上につながった廃用症候群の一例
山中 利恵
仲原 元清1)、鍜治 亮祐2)、桧垣 貴徳2)
阪南市民病院 リハビリテーション室
1)河崎病院 リハビリテーション科 言語聴覚士
2)河崎病院 リハビリテーション科 理学療法士
key word:生きがい、意味のある作業、QOL
【はじめに】作業療法介入当初は、悲観的な発言が聞かれて
いたクライエントに対し、マズローの自己実現理論に基づい
て介入を行うことで、前向きに作業に取り組めるようになっ
た症例を紹介する。
【症例紹介】左出血性脳幹梗塞。60 歳代男性。病前の生活は、
独居で ADL、IADL 自立。
「釣り」という一つの作業を通して、
多様な作業の意味を持っていた。運動麻痺は軽度、運動失調
は体幹、四肢共に陽性。ADL は FIM84 点(運動項目 55 点、認
知項目 29 点)
【解釈と介入計画】ADL の不安定さから不安感が出現し、作業
遂行困難となったことで喪失感を抱いていると推測された
為、下位欲求から介入を開始。また作業に意識が向きやすい
よう作業に関連した会話や訓練内容をクライエントと共有
しながら実施していくこととした。
【介入経過】Ⅰ期:ADL、IADL の安定性向上を目指し、機能
訓練、ADL 訓練を行い、徐々に出来ることが増えてきた為、
家事動作訓練等へと移行。FIM の点数が 104 点に向上し、
「ま
た海で釣りをしたい」との発言が聞かれるようになったこと
で、出来ている部分と課題とを共有した。
Ⅱ期:作業を遂行する為には、自転車での移動が必要である
ことが分かった。機能訓練を継続しながら運転の模擬訓練を
開始した。しかし模擬的な動作では自信には繋がらなかった。
Ⅲ期:実際の自転車運転も可能と判断したため、理学療法士
協力のもと実動作での訓練を開始。実車訓練を行っていくこ
とで前向きな発言やリハビリ時間外に自発的に自主訓練を
実施するようになった。
【結果】
COPM(遂行度/満足度)の変化をⅢ期に分けて示すと、
Ⅰ期は聞き取り不可。Ⅱ期からⅢ期で①歩きたい(2/1)→
(6/4)②自転車に乗りたい(2/2)→(4/5)③友人と交流したい
(2/2)→(5/6)④釣りをしたい(1/6)→(3/3)⑤仕事をしたい
(4/4)→(4/4)FIM は 119 点(運動項目 87 点、認知項目 32 点)
となった。
【考察】今回はマズローの自己実現理論に合わせた介入を行
ったことで自己有能感を高め、作業に対して前向きな気持ち
を引き起こしたと考えられる。さらに実動作訓練を行ったこ
とで自己実現欲求を引き出せたことは、今後クライエントが
積極的な地域生活を送っていく糸口になったと思われる。今
回の介入は本人の語りの中から介入の方向性を見出すこと
を重視し、その人らしい生活の実現に向けて寄り添うことが
できた。また身体面のみならず、精神面の賦活が重要である
という身体と精神の相関性を強く感じた事例であった。今後
作業への経験を増やし、段階的に作業遂行できる機会が増え
るよう引き続き調整し、習慣化していく支援をする必要があ
ると考える。
10
key word:嚥下障害・廃用症候群・姿勢
【緒言】廃用症候群における姿勢異常は嚥下機能や呼吸機能を低
下させ、誤嚥性肺炎の原因となる。その改善が可能であった一例
を報告する。
【症例】80 歳代女性、発動性低下を伴う重度認知症により全介助
の状態であった。特別養護老人ホーム入所中に緩徐に嚥下障害を
発症、誤嚥性肺炎にて入院した。
【身体所見】コミュニケーションを含め自発的な動作は認めなか
った。また、全身の拘縮が著明で、四肢、体幹、頸部肩甲帯、口
腔にかけて筋緊張が亢進していた(体幹伸展、頸部後屈)。
【嚥下障害】食事介助に対して閉口した。また、咽頭期嚥下遅延、
喉頭挙上範囲低下により、少量の水分摂取も困難だった。
【姿勢異常】エアマット上での支持基底面のない長期臥床により
体幹を伸展、四肢を屈曲させた。頸部は安定性を得るために代償
的に緊張を高める必要があったと仮説を立てた。
【訓練】①支持基底面を得るための訓練(ROM 訓練、体幹頸部モ
ビライセーション)、②ポジショニングおよびシーティング、③
自発運動の誘導(反復運動)、④直接的嚥下訓練(ゼリー食)
【結果】ベッドや座位で支持基底面が得られるとともに四肢や頸
部の緊張は緩和した。その後、無目的ではあったが自発運動が恒
常的に認められ、改善傾向は増進した。頸部や口部の緊張の緩和
に伴い能動的な嚥下活動が得られ始め、呼吸機能も向上した。訓
練開始から 1 ヶ月後 3 食経口摂取が可能となり、2 ヶ月で施設再
入所が可能となった。
9
第 3 セクション 神経系
起立動作の殿部離床に着目した脳梗塞患者の一症例
10
第 3 セクション 神経系
麻痺側内腹斜筋・中殿筋の筋緊張、下肢の感覚改善により歩行
の改善を認めた一症例
小池 伸拓、北山 涼太
永山病院 リハビリテーション部
田村
匠、藤原 佳晃
河崎病院 リハビリテーション科
key word:立ち上がり動作・大殿筋・腸腰筋
key word:内腹斜筋・感覚障害・歩行
【はじめに】今回左アテローム血栓性脳塞栓症後、左放線冠
梗塞により、右片麻痺を呈した症例を担当した。右大殿筋、
右腸腰筋の筋緊張が改善したことで座位姿勢、起立動作の改
善を認めたのでここに報告する。尚、症例に発表の趣旨を説
明し同意を得た。
【症例紹介】80 代男性、左アテローム血栓性脳塞栓症、9日
後に左放線冠に再梗塞を発症した。既往歴に 1 年前に脳梗塞
(左片麻痺)があり、入院前の Brunnstrom Recovery Stage
Test(以下、BRS-t)左上肢・手指Ⅴ、下肢Ⅳ、屋内は歩行
器歩行自立、屋外は車いすであった。
【初期評価(再梗塞後 7 日目)】移乗動作は 2 人介助を要し、
今回、移乗動作の獲得に向けて起立動作に着目した。端座位
は体幹屈曲、右回旋、右側屈し、右股関節内転、外旋位で骨
盤後傾、右回旋し右後方への転倒傾向があり近位監視を要し
た。前方支持物把持での起立動作は、屈曲相は上部体幹が屈
曲、右側屈し、股関節屈曲に伴う骨盤前傾が乏しく、殿部離
床相では骨盤は右回旋し、殿部離床が出来ず軽介助を要した。
BRS-tは右上肢・手指Ⅲ、下肢Ⅳであり、右手指、足指の表
在、深部感覚中等度鈍麻であった。触診では左右の内外腹斜
筋、腹直筋、右腸腰筋、右大殿筋の筋緊張低下、左多裂筋、
左腸肋筋の筋緊張亢進を認めた。起立動作の問題点は座位で
の腹直筋、左右の内外腹斜筋、右大殿筋、右腸腰筋の筋緊張
低下により骨盤後傾、右回旋位であること、殿部離床時に右
腸腰筋、右大殿筋の筋緊張低下により骨盤前傾に伴う体幹の
屈曲が乏しいことが問題と考えた。
【理学療法】臥位にて右大殿筋、右腸腰筋の神経筋促通訓練、
左右の内外腹斜筋の促通を目的に座位、立位での左右への重
心移動を行った。また、骨盤の前傾を促す目的で高座位での
立ち上がり訓練を行った。
【最終評価((再梗塞後 35 日目)】端座位は骨盤後傾、右回旋、
体幹の右側屈、右回旋位が軽減、右股関節内転、外旋が軽減
し遠位監視となった。前方支持物把持での起立動作は屈曲相
での股関節屈曲に伴う骨盤前傾が増加し、殿部離床相は骨盤
右回旋、体幹右側屈が軽減し、膝関節屈曲、足関節背屈が出
現し殿部離床が可能となったことで監視となった。移乗動作
の介助量は軽減した。BRS-T、感覚検査では変化を認めなか
った。触診では、左右の内外腹斜筋、右腸腰筋、右大殿筋の
筋緊張低下、左多裂筋、腸肋筋の筋緊張亢進は改善を認めた。
【考察】座位での右大殿筋、右腸腰筋、左右の内外腹斜筋の
筋緊張低下が改善したことにより座位の安定性が向上した。
太田尾らは端座位での骨盤前傾角度と立ち上がり動作能力
について有意な差があると報告している。座位での非対称な
アライメントが改善し、骨盤前傾角度が増大したことに加え
て、起立動作の屈曲相での右腸腰筋、右大殿筋による骨盤前
傾運動が可能となり、殿部離床が監視で可能となったと考え
る。
11
【はじめに】今回、脳梗塞による右片麻痺のため、歩行の実用
性が低下した症例に対し、右内腹斜筋・右中殿筋の筋緊張・右
下肢の感覚が改善することで歩行能力が改善した症例を報告す
る。なお、発表の趣旨を説明し同意を得た。
【症例紹介】60 歳代半ばの男性であり、診断名は左内包後脚・
視床梗塞。現病歴は、右下肢の違和感が出現し、2 日後に脳梗
塞と診断され、その 2 日後より理学療法が開始となった。
【評価・経過】Brunnstrom Recovery Stage test(以下 BRST)は
右上肢Ⅳ、手指Ⅳ、下肢Ⅱ。右下肢の感覚は表在軽度・深部中
等度鈍麻。立位での触診は右内腹斜筋・右脊柱起立筋・右中殿
筋の筋緊張低下、右下腿三頭筋の筋緊張亢進を認めた。平行棒
内歩行は、全周期で視線は下方を向いていた。立脚初期では右
膝関節軽度屈曲、足関節底屈・内反位で足底を接地する。荷重
応答期には右膝関節が急激に伸展し、立脚中期にかけて右膝関
節の過伸展が出現する。同時に体幹屈曲、右股関節屈曲・内転
し骨盤は右後方回旋し左側に転倒傾向がみられ中等度介助を要
した。遊脚期では、股関節外転・外旋位で膝関節軽度屈曲し足
関節底屈・内反位で右下肢を振り出す。問題点を下腿三頭筋の
筋緊張亢進・感覚障害と考えストレッチ・自動運動と鏡・体重
計を用いた荷重訓練を実施した。4週後の四点杖歩行では、立
脚初期で右膝関節屈曲角度が減少し踵接地が僅かにみられ、荷
重応答期での右膝関節の急激な伸展が減少し、立脚中期にかけ
ての右膝関節の過伸展が減少した。また、遊脚期での膝関節屈
曲角度が減少し足関節背屈が僅かにみられた。しかし体幹屈曲、
右股関節屈曲・内転し骨盤右後方回旋が残存し、軽介助を要し
た。そこで、再評価し右立脚期での右内腹斜筋・中殿筋の筋緊
張の低下を新たな問題点と考えた。
【理学療法】歩行の問題点に右内腹斜筋・中殿筋の筋緊張低下
を追加し、膝立ち位にて外乱刺激を加え感覚の促通と右内腹斜
筋・中殿筋の収縮を確認し、ステップ動作・歩行訓練を実施し
た。
【結果】BRST は右上肢Ⅴ、手指Ⅴ、下肢Ⅳ。下肢の感覚は表在・
深部軽度鈍麻。立位での触診にて右内腹斜筋・中殿筋の筋緊張
は改善したが、下腿三頭筋の筋緊張亢進は残存した。T 字杖歩
行では全体を通して体幹屈曲角度・骨盤後傾が軽減した。荷重
応答期での右膝関節の急激な伸展はさらに減少した。立脚中期
での体幹屈曲・骨盤後傾、骨盤の右後方回旋、膝関節過伸展、
足関節底屈角度が減少し、著名な右膝関節過伸展及び骨盤の右
後方への偏位が軽減した。その結果、歩行は T 字杖で近位監視
と改善した。
【考察】本症例は右下肢の感覚障害・右下腿三頭筋の筋緊張亢
進により歩行の実用性が低下していると考え、訓練を実施した
が介助を要した。訓練を再考し右内腹斜筋・右中殿筋の訓練を
追加した結果、右下肢の感覚、右下腿三頭筋・右内腹斜筋・右
中殿筋の筋緊張の改善により歩行の安全性・安定性が向上した
と考えた。
11
第 3 セクション 神経系
左片麻痺を呈し左立脚期に左側への不安定性を認めた一例
12
第 3 セクション 神経系
心原性脳塞栓症により高次脳機能障害を呈した重度左片麻痺患
者の座位保持獲得に向けて
金田 大貴、松田 健吾
河崎病院 リハビリテーション科
一宮 亮太 1)、濵田 直輝 1)、栗山 泰典 2)
key word:歩行・左片麻痺・内腹斜筋
1)大阪リハビリテーション病院 リハビリテーション療法部
2)元大阪リハビリテーション病院 リハビリテーション療法部
【はじめに】今回、脳梗塞を発症し左片麻痺を呈し歩行の安
全性・安定性が低下した患者様を担当する機会を得たので報
告する。尚、患者様には発表の趣旨を説明し同意を得た。
【症例紹介】症例は 70 代前半の女性であった。左半身脱力に
より発症し、A 病院に救急搬送され、右基底核から放線冠の
梗塞と診断され保存療法が行われた。発症後より 26 日後、
当院転院し理学療法を開始した。
【初期評価】歩行(独歩)は、左足底接地から立脚中期にか
けて、右側と比べて足関節は外がえし、下腿は外旋する。左
立脚中期に左股関節内転、体幹左側屈し、骨盤右下制かつ左
側へ移動する。左立脚中期から後期への移行期に左側へ大き
く崩れ安全性、安定性が低下していた。機能的評価では、
Stroke Impairment Assessment set(以下 SIAS)で 59/76
点であった。感覚検査は表在、深部とも正常で左右差は認め
なかった。反射反応テストでは左側立ち直り反応は減弱して
おり、左足クローヌスは陽性であった。Timed Up and Go(以
下 TUG)は右周り 21.6 秒、左周り 22.3 秒であった。筋緊張
は、左内・外腹斜筋、左腸腰筋、左大殿筋、左中殿筋、左腓
骨筋に低下を認め、左脊柱起立筋、左ハムストリングス、左
腓腹筋、後脛骨筋に亢進を認めた。左立脚中期での骨盤右下
制かつ左側へ移動する原因は、股関節周囲筋と体幹筋の筋緊
張低下が考えられた。Snijders らは一側下肢への荷重量の増
大に伴う仙腸関節への剪断力に対し骨盤の安定化を図るた
め、立脚側の内腹斜筋の筋活動が増加すると述べている。同
様に、左立脚中期での骨盤右下制は左内腹斜筋の筋緊張低下
により仙腸関節への剪断力に対し骨盤安定させることがで
きず、骨盤右下制していると考えた。また骨盤が大きく左側
へ移動する原因としては左中殿筋の筋緊張低下が考えられ
る。
【理学療法】左立脚期における左内腹斜筋、左中殿筋の筋緊
張を促すために立位にて骨盤から誘導し、骨盤水平位を保っ
たまま左下肢への荷重を繰り返し行った。しかし体幹が左側
屈位となった為、上肢・体幹上部の重さを支え練習を行った。
立位で筋緊張を賦活させ、ステップ動作、歩行練習を行った。
【最終評価】歩行(独歩)では左内腹斜筋、中殿筋の筋緊張
の向上により歩行動作での左立脚中期での骨盤帯を正中位
保持することが可能となり、安全性・安定性ともに改善した
ために独歩自立となった。機能評価では SIAS で 62/76、基本
動作は全自立。TUG では右周り 16.2 秒、左周り 17.7 秒であ
った。筋緊張は初期と比較し、内腹斜筋と中殿筋に改善を認
めた。
【考察】左内腹斜筋に着目しアプローチした結果、歩行動作
での左立脚中期での骨盤帯を正中位保持することが可能と
なり、左立脚期の延長を認めた。左内腹斜筋の筋緊張が向上
したことで、仙腸関節への剪断力に対して骨盤が安定し、ま
た骨盤の側方移動の制御が可能となり左立脚中期での左側
への崩れが改善し、歩行の安全性・安定性が向上したと考え
る。
key word:pusher 現象・端座位・重度左片麻痺
【はじめに】今回、心原性脳塞栓症の症例を担当した。重度左
片麻痺に加え、pusher 現象や高次脳機能障害を呈し、端座位保
持困難となったが、pusher 現象の軽減や筋緊張の改善に伴い、
端座位の介助量が軽減したので報告する。尚、本症例の家族には
発表の趣旨を説明し、同意を得た。
【症例紹介及び初期評価】90 歳代男性。心原性脳塞栓症の発症 5
週後、回復期病棟へ入棟する。発症 8 週後、全体像は、注意の持
続が困難で、特に左側からの視覚刺激反応が乏しかった。Scale
for Contraversive Pushing(以下 SCP)は計 5 点、Leg Orientation
は陽性であり、pusher 現象を認めた。端座位姿勢は頭部伸展、
頸部屈曲・右回旋、胸腰椎屈曲・左側屈・右回旋、骨盤後傾・右
下制、右股関節外転・内旋、右足関節底屈位であり、麻痺側前方・
後方への転倒傾向を呈し、中等度介助を要した。また、車椅子座
位保持は背もたれへの押し付けが強く、保持困難であった。
Brunnstrom recovery stage test は左上下肢Ⅱ・手指Ⅲであり、
下肢粗大筋力(右/左)は 4/1 であった。注意障害を認め精査困難
であったが、左上下肢の表在感覚は中等度鈍麻、深部感覚は重度
鈍麻であった。座位での筋緊張は、腸肋筋(右>左)、左大腿直筋・
ハムストリングスが亢進しており、内腹斜筋(右<左)、両大殿筋
下部や中殿筋後部(右<左)に低下を認めた。
【理学療法】端座位保持の介助量軽減と車椅子座位保持時間の延
長に向け、内腹斜筋・大殿筋・中殿筋の筋緊張改善や pusher 現
象の軽減を目的とした、座位・立位練習を行った。座位練習では、
右前方の台に右手掌を接触させたまま右前方へリーチし、右殿部
への荷重を自動運動で促した。立位練習は、左下肢長下肢装具装
着下で壁の左側に位置し、右上肢外側を壁に接触させながら、右
下肢への重心移動を促した。また、右上肢外側の接触面が前後方
向へ移動するよう、体幹の左右回旋運動を反復して介助誘導した。
【結果】発症 19 週後、全体像では左半側の視覚刺激に対する反
応が向上した。SCP は計1点、Leg Orientation は陰性となり、
端座位姿勢は頭部伸展、頸部屈曲・右回旋、胸腰椎屈曲・左側屈、
骨盤後傾・右下制が軽減し、右上肢での pushing が軽減した。そ
の結果、麻痺側前方への転倒傾向が軽減し、軽介助となった。ま
た車椅子座位は、背もたれへの押し付けなく、50 分間保持が可
能となった。右下肢粗大筋力 2 へ改善し、座位での筋緊張は、腸
肋筋(右>左)、左大腿直筋・ハムストリングスが初期より亢進し、
内腹斜筋(右<左)、両大殿筋下部や中殿筋後部が初期より改善し
た。
【考察】台や壁への接触による右上肢・手掌からの体性感覚が、
姿勢を安定させ、右への重心移動を自動運動で行い易くさせた。
また、壁という垂直の視覚情報により、身体軸が修正され、pusher
現象が軽減したと考える。加えて、左大腿直筋・ハムストリング
スの筋緊張の亢進を認めたが、左内腹斜筋・大殿筋・中殿筋の筋
緊張が改善したため、座位保持の介助量が軽減、車椅子座位保持
時間が延長したと考えられる。
12
第 11 回泉州ブロック新人症例発表会
運営組織・委員一覧
(下線は責任者、順不同)
大 会 長
準備委員長
相 談 役
鈴木 俊明
松本 隆幸
三原
修
運
営 局
演題部
西田
今津
岡
末継
橋本
会場部
宮前 直希
荒井 亨子
務 局
広報部
総務部
浜田 仙子
西川正一郎
竪川 勇樹
富山
真
南口
真
事
財務部
大希
義智
健司
真子
雅至
中村 昌司
守安
久尚
村西 壽祥
米田 浩久
岩見 大輔
文野 住文
法所 遼汰
松田 洋平
平
勝秀
塩田 修平
今奈良 有
竹村 享子
濱田 直輝
南田 史子
森 健一郎
藤野 文崇
加島 知明
斉藤 徹也
谷埜予士次
打越慶一郎
楠田 啓介
森岡 研介
大仲 知子
西川 依里
西廼
健
甲斐 昭嘉
下代
鈴木
鳥山 公成
岡
賢良
速水 翔平
辻井健太郎
伊達
真也
貴子
嵩
久保 侑平
編
集 後 記
新人症例発表会は第 11 回を迎えます。これは泉州ブロックの理学療法士のみならず、作業療法士、言語
聴覚士、皆様方のご尽力の賜物と感謝しております。
本発表会は、泉州ブロックの理学療法士がコーディネータ、査読指導者、予演会指導者となり、新人理
学療法士に発表の協力を行います。このスタイルは第 1 回から続けています。これは職場で指導者のいな
い 1 人職場の新人理学療法士にもより良い発表ができるように、地域で新人理学療法士を育てようと言う
想いからです。この温かい想いが実り、第 20 回、30 回と続くことを願いたいと思います。
最後になりましたが、運営にご尽力賜りました皆様に深く感謝いたします。
(公社)大阪府理学療法士会泉州ブロック
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第 11 回泉州ブロック新人症例発表会
準備委員長 松本 隆幸
会場案内図
〒598-0005
泉佐野市市場東 1 丁目 295 番地の 1
TEL:072-469-7101
エブノ泉の森ホール
公益社団法人 大阪府理学療法士会 泉州ブロック
・泉州ブロックホームページ
・Facebook ページ
http://senshubrock.blog.fc2.com/
http://www.facebook.com/opta.senshu
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