2016年の投資環境展望 - 野村アセットマネジメント

Vol.212
2016
1
2016年の投資環境展望
○2015年は、世界景気が新興国を中心に減速し、金融市場のボラティリティは高まった
ものの、主要国の株価はわずかに値上がり、債券利回りはやや上昇した。為替市場で
は、米ドル高の流れが続き、米ドルはユーロや新興国通貨に対して大きく上昇した。
○2016年は、世界の経済成長率は改善すると見込まれるが、後半にかけては金融政
策への期待の変化に注意することが必要だろう。
○株式市場は実体経済の動向に敏感なため、利上げが進む環境下でも景気が堅調
を維持できるかが鍵となる。米国で利上げが進むなかで景気の堅調さを確認するこ
とが必要となるため、金融市場はボラティリティの高い展開になるだろう。
○リスク資産の適正価格が再評価される過程では、国・資産別の選別が一層進むだろう。
図1 主要金融市場の2015年の変化
14年末
株式指数(ポイント)
日本 TOPIX
米国 S&P500
欧州 ユーロ・ファースト300
中国 上海総合
香港 ハンセン
インド ニフティ
ブラジル ボベスパ
債券利回り(%)
日本 10年国債利回り
米国 10年国債利回り
ドイツ 10年国債利回り
為替相場
円/米ドル
円/ユーロ
円/豪ドル
円/ブラジル・レアル
米ドル/ユーロ
米ドル/豪ドル
ブラジル・レアル/米ドル
15年末
年間変化
高値
(月/日)
安値
(月/日)
<変化率、%>
1,408
2,059
1,369
3,235
23,605
8,283
50,007
1,547
2,044
1,438
3,539
21,914
7,946
43,350
0.33
2.17
0.54
0.27
2.27
0.63
119.68
144.90
97.86
45.05
1.21
0.82
2.65
120.06
130.69
87.60
30.37
1.09
0.73
3.96
9.9
-0.7
5.0
9.4
-7.2
-4.1
-13.3
1,691
2,131
1,650
5,166
28,443
8,996
58,052
(8/10)
(5/21)
(4/15)
(6/12)
(4/28)
(3/3)
(5/5)
1,358
1,868
1,323
2,927
20,557
7,559
43,200
(1/14)
(8/25)
(1/6)
(8/26)
(9/29)
(9/7)
(12/21)
0.54
2.48
0.98
(6/11)
(6/10)
(6/10)
0.20
1.64
0.08
(1/19)
(1/30)
(4/20)
125.60
144.94
97.98
46.02
1.21
0.82
4.18
(6/5)
(1/1)
(1/1)
(1/22)
(1/1)
(1/16)
(9/23)
116.17
126.96
82.18
28.80
1.05
0.69
2.57
(1/15)
(4/13)
(9/4)
(9/23)
(3/13)
(9/4)
(1/22)
<前年差、%>
-0.06
0.10
0.09
<変化率、%>
0.3
-9.8
-10.5
-32.6
-10.3
-10.8
49.6
(注) 為替相場はニューヨーク時間17時の値。為替相場の年間変化について、円/米ドル、円/ユーロ、円/豪ドル、円/ブ
ラジル・レアルのプラスは円安方向、米ドル/ユーロ、米ドル/豪ドルのプラスは米ドル安方向、ブラジル・レアル/米ド
ルのプラスは米ドル高方向に動いたことをそれぞれ示している。
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。
投資環境レポート
1
Vol.212 2016.1
投資の視点
2016年の投資環境展望
たこと、またECBドラギ総裁が再び追加金融緩和を示唆し
たことも好感され、株価は反発に転じた。12月には、大方
の市場参加者の予想通り、米国で利上げが開始され、ユ
ーロ圏で追加緩和が実施されたが、株式、債券市場の反
応は限定的だった。しかし、ユーロ圏の追加緩和に関して
は金融市場でより大規模な緩和が期待されていたことか
ら、10月以降下落したユーロが対米ドルで再び上昇した。
●2015年の世界経済と金融市場回顧
2015年は、前年からの米ドル高、原油安が継続すると
ともに、ユーロ圏の追加金融緩和期待が高まる中で年が
明けた。原油安による資源開発投資の減少と米ドル高で
米国の企業収益に対する懸念は高まっていたものの、先
進国需要全体はむしろ改善するとの見方が強く、年初来
株式市場は好調を維持した。こうした中、欧州中央銀行
(ECB)は、1月、資産買取プログラムの対象資産に国債を
加えることを決定し、本格的な量的金融緩和に乗り出した。
これを受け、ユーロは対米ドルで下落し、独国債は一時7
年までの年限でマイナス金利となるなど世界の債券利回
りは歴史的低水準まで低下した。しかし、こうした環境は
長く続かず、ユーロ圏でのデフレ懸念が徐々に後退したこ
とや、米国の利上げ期待が徐々に高まったことで、4月末
には債券利回りは上昇に転じた。一方、株式市場は米国
を中心に世界経済が概ね堅調さを維持したことで年半ば
にかけて上昇を続けた。
1年を通してみると、世界景気は新興国を中心に減速し、
インフレ率は原油安の影響もあって低下した。世界の金融
市場はボラティリティが高まったものの、年を通じてはほ
ぼ横這い圏に留まり、主要国の株価はわずかに値上がり、
債券利回りはやや上昇した。株式市場では、現地通貨ベ
ースでみて、欧州株や日本株など先進国株と中国株が値
上がりした一方、ブラジル株やインド株など新興国株は下
落した。為替市場では、米ドル高の流れが続き、米ドルは
ユーロや新興国通貨に対して大きく上昇した(図1、2参照)。
●景気サイクルと2016年の経済見通し
こうした比較的良好な市場環境を一変させたのが、中
国の金融市場の混乱である。3月以降急騰していた中国
の株価は、6月に当局が信用取引に対する規制を強化す
るとの思惑が広がったことをきっかけに急落した。また、8
月には、中国当局が人民元の基準値の算出方法を変更
したことで、人民元が3営業日連続で切り下げられた。これ
らの動きは、中国で景気減速の動きが続いていたこととあ
いまって、金融市場のリスク回避姿勢を強めた。9月には、
米連邦準備制度理事会(FRB)も、中国の金融市場動向
に対する懸念を主な理由として利上げを見送った。
2015年の世界の実質国内総生産(GDP)成長率とインフ
レ率は、2014年から共に低下した。2016年は、成長率は先
進国で堅調な成長が維持される一方で、昨年大幅なマイナ
ス成長に陥った一部の新興国でマイナス幅の縮小が生じる
ことが期待されている。こうした中、インフレ率は原油安効
果の剥落から2014年並みまで上昇するだろう(図3参照)。
先進国では、雇用の改善が続く米国や欧州で堅調な成
長が続き、世界経済を牽引するだろう。日本経済は、賃金
上昇が続くと期待され、個人消費や設備投資が緩やかな
がらも回復に向かうだろう。利上げが開始された米国では、
年後半には景気の勢いが鈍るだろうが、大幅な景気後退
は回避されるだろう。
10月以降は、中国に対する懸念が徐々に後退するなか
で原油価格が一旦上昇し、米国経済の堅調さも確認され
図2
2015年の株価と債券利回り、為替
図3 世界の実質GDP成長率とインフレ率
7
世界株式(左軸)
(%)
世界債券の利回り(右軸) 1.3
(ポイント)
5,400
5,200
1.2
5,000
1.1
4,800
1.0
4,600
0.9
4,400
(円/米ドル)
130
円/米ドルレート(左軸)
米ドル/ユーロレート(右軸)
2008年
6
イ
ン 5
フ
レ
率 4
(%)
0.8
(米ドル/ユーロ)
1.25
1.20
125
1.15
120
2007年
2012年
2013年
2014年
2015年
3
1.10
115
2011年
2016年
2010年
2009年
1.05
110
15/1
15/3
15/5
15/7
15/9
15/11
1.00
(年/月)
2
-2
(注) 世界株式はMSCIワールドインデックス(現地通貨ベー
ス)、世界債券はシティ世界国債インデックス。
(出所) Citi Velocity、DataStream、Bloombergデータより野村
アセットマネジメント作成
0
2
4
実質GDP成長率 (%)
6
(注) 2015年、2016年のデータはIMFによる2015年10月時点
の見通し。
(出所) IMFデータより野村アセットマネジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。
投資環境レポート
2
Vol.212 2016.1
興国が危機的な状況に陥るリスクは回避されるだろう。
2016年は、米国で利上げが進むなかで景気の堅調さを確
認することが必要となる。このため、金融市場はボラティリ
ティの高い展開になると予想される。また、新興国株は先
進国株との対比で割安感が強まっているため、更なる新
興国リスクの深刻化が生じなければ、一部の国で反転の
可能性が出てくるだろう。
一方、新興国経済は、過去に積みあがった民間部門の
債務問題など構造改革の必要性に直面する国も多いこと
から景気回復には依然として時間がかかる可能性が高い。
新興国は債券利回りの上昇に対して脆弱な状況が続くだ
ろう。また、当面は原油市場の供給過剰懸念は払しょくさ
れないと見られることから、資源輸出国には厳しい状況が
続きそうだ。新興国では資源企業の多くが国営であること
から、資金繰り問題が一部新興国の国債の格下げを誘発
するリスクも残る。
為替市場では、米国と他国の金融政策の方向感の違
いで米ドル高が進み、この結果一部通貨は歴史的低水準
となっている(図5参照)。米国の利上げの動向次第では、
これらの通貨は反転しやすいだろう。
●2016年は金融政策期待の変化に注意
2015年は、米国で利上げが実施される一方で、欧州で
は追加金融緩和が実施され、日本でも緩和的な金融環境
が維持されるなど、日米欧の金融政策が大きくかい離した。
この流れは、2016年前半は続くだろうが、年後半にかけて
は金融政策への期待が変化することで金融市場のボラテ
ィリティを高める可能性がある。
●2016年の投資機会を探る
2016年は緩和的な金融政策に支えられた投資環境の
転換が進むタイミングとなる。日欧の景気は概ね堅調さを
維持すると見られるが、米国の景気動向と利上げに対す
る不確実性は高まる。インフレ率は当面は抑制された水
準に留まると見込まれることから、金融市場環境の大幅な
悪化は回避されるだろうが、既に新興国債やハイイールド
債などリスクの高い資産市場の調整が進んでいることも
事実だ。金融市場のボラティリティの高まりが、市場全体
の調整や実体経済の悪化につながるリスクには注意を払
う必要があるだろう。
米国の利上げ開始にも関わらず、債券利回りの上昇は
小幅に留まっている。一方、2014年まで利益の伸びよりも
株価が大きく上昇した結果、過去10年の最低水準まで低
下した株式の益利回りは、2015年には僅かながら上昇し
た(図4参照)。こうした中、FRBは年1%程度の利上げペー
スを示唆しており、これが実現した場合には債券利回りの
更なる上昇は避けられないだろう。株式市場は実体経済
の動向により敏感なため、利上げが進む環境下でも景気
が堅調を維持できるかが鍵となろう。
投資国別では、各国の経済情勢の変化に引き続き気を
配るべきだろう。新興国全体の景気が目立って回復する
可能性は低いだろうが、すべての国が構造問題を抱えて
いる訳ではない。リスク資産の適正価格が再評価される
過程では、国・資産別の選別が一層進むことが予想される。
もっとも、米国景気は既に成熟期にあると見られ、FRB
が示唆するほどに順調に利上げが進まない可能性もある。
この場合には、債券利回り上昇は限定的なものに留まり、
米国の利上げが実体景気に悪影響を与える、もしくは新
図4
(%)
12
藤田 亜矢子(経済調査部)
世界株式と世界債券の利回り格差
図5 主要国・地域の実質実効為替レート
(ポイント)
80
スプレッド
世界債券利回り
世界株式益利回り
上下2標準偏差
過去平均
2015年11月
70
10
60
8
50
6
40
30
4
0
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年)
(注) 世界株式益利回りはMSCIワールドインデックス(現地通
貨、予想利益ベース)の益利回り、世界債券利回りはシテ
ィ世界国債インデックスの利回り。スプレッドは(世界株式
益利回り-世界債券利回り)で算出。
(出所) Factset、IDS-QEデータより野村アセットマネジメント作成
マレーシア
ペルー
インド
チリ
ポーランド
ユーロ圏
シンガポール
タイ
米国
メキシコ
ハンガリー
英国
韓国
トルコ
インドネシア
ニュージーランド
南アフリカ
フィリピン
中国
香港
コロンビア
豪州
日本
ロシア
ブラジル
20
2
(注) 各国・地域の2015年11月時点の実質実効為替レート
を、偏差値換算し、2000年以降平均を50として比較し
たもの。
(出所) BISデータより野村アセットマネジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。
投資環境レポート
3
Vol.212 2016.1
為替レート
円
ユーロ
2015年12月末の対米ドルの円相場は1米ドル=
120.1円となり、11月末の123.1円に対して2.5%の
円高となった。上旬に123円を挟んだ動きとなった
後、月半ばにかけて円高が進み、一時120円台前
半に至った。下旬には概ね120円台で推移した。
2015年12月末の対米ドルのユーロ相場は、1ユ
ーロ=1.09米ドルとなり、11月末の1.06米ドルに対
して2.8%のユーロ高となった。3日に大幅に上昇し
たユーロは、その後、概ね1.09米ドル台で推移し
た。なお、対円では、米ドル安(円高)の影響もあり、
1ユーロ=130.1円から130.7円へ0.5%のユーロ高
となった。
12 月 は 、 15-16 日 の 米 連 邦 公 開 市 場 委 員 会
(FOMC)に注目が集まる中、リスク回避の動きや
日本銀行の措置などを受けて月間では円高となっ
た。4日発表の11月の米国雇用統計は利上げ開
始観測を高める内容となり、円は一時123円台後
半まで下落した。その後、原油安が加速するとリ
スク回避の動きから円が選好された。FOMCで約9
年半ぶりの利上げが決定されると円は再び122円
台後半まで円安となる局面もあった。しかし、日本
銀行が18日に発表した長期国債買入れの平均残
存期間の長期化や新たな上場投資信託(ETF)買入
れ枠の設定などを含む、量的・質的金融緩和を補完
するための措置導入を受け、追加金融緩和に消
極的との見方に繋がったことから、円は上昇した。
欧米の金融政策がユーロ相場の主要な変動要
因となった。3日の欧州中央銀行(ECB)理事会で
は、中銀預金金利の引き下げや資産購入プログ
ラムの最低限の実施期間を6ヵ月延長することを
含む追加金融緩和策が決定された。しかし、金融
市場参加者の多くが、より大規模な追加緩和を期
待していたため、ユーロは対米ドルで前日比3%
程度上昇した。その後、オーストリア中銀総裁が
「ECBが金融市場に左右されることはない」と述べ
ると、一段とユーロ高が進み、1.10米ドル台に至っ
た。月半ばの米国の利上げを受けて1.08米ドルま
でユーロ安となる局面もあったものの、その後ユ
ーロは概ね1.09米ドル台での推移となった。
今後の円相場を見る上では、引き続き日米の
金融政策スタンスが重要だ。今後は米国の利上
げペースや保有資産の償還金再投資停止時期に
焦点が集まるだろう。また、日本銀行による追加
金融緩和策の有無についても金融市場では見解
が分かれており、注意しておきたい。
今後のユーロ相場を見る上では、欧米の景気
や金融政策スタンスが重要だ。ユーロ圏の低イン
フレ長期化懸念が強まれば、ECBに対する追加緩
和期待が強まる可能性がある。欧米の金融政策
格差が一層拡大するかどうか注目される。
円
ユーロ
対円(左軸)
(米ドル/ユーロ)
1.50
対米ドル(右軸)
1.40
124
140
1.30
121
130
1.20
118
120
1.10
115
2014/12
2015/3
2015/6
2015/9
110
2014/12
2015/12
(年/月)
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
2015/3
2015/6
2015/9
ユーロ安
150
円高
127
ユーロ高
(円/ユーロ)
160
円安
(円/米ドル)
130
1.00
2015/12
(年/月)
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
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ブラジル・レアル
豪ドル
2015年12月末の対米ドルの豪ドル相場は、1豪
ドル=0.73米ドルとなり、11月末の0.72米ドルに対
して0.8%の豪ドル高となった。豪ドルは月半ばに
かけて下落基調で推移したものの、その後反発し
た。なお、対円では、米ドル安(円高)の影響もあり、
1豪ドル=89.0円から87.6円へ1.5%の豪ドル安と
なった。
2015年12月末の対米ドルのレアル相場は、1米
ドル=3.96レアルとなり、11月末の3.87レアルに対
して2.4%のレアル安となった。レアルは月初に上
昇したものの、その後は下落基調で推移した。な
お、対円では、米ドル安(円高)の影響もあり、1レア
ル=31.8円から30.4円へ4.6%のレアル安となった。
月初のレアル相場は、ブラジル議会がルセフ大
統領の弾劾手続きを開始したことを受け上昇した。
その後は、原油相場が軟調に推移したことや、大
手格付機関の一つがブラジル国債を格下げしたこ
とに加え、FRBが利上げに踏み切ったことで、レア
ルは下落した。さらに、これまでブラジルの財政再
建を主導してきたレビ財務相が退任することが発
表され、レアルは一段安となった。
月半ばにかけての豪ドル相場は、4日に開催さ
れた石油輸出国機構(OPEC)総会で減産合意に
至らなかったことを受け原油価格が下落したこと
や、主要貿易相手国である中国の人民元が対米
ドルで下落したことを受け、下落基調で推移した。
さらに、15-16日に開催されたFOMCで米連邦準備
制度理事会(FRB)が利上げに踏み切ったことで、
豪ドルは一段安となった。しかし、その後は、年末
の休暇を前に取引を手控える動きが広がる中、米
ドルの上昇が一巡し、豪ドルは上昇に転じた。
今後のレアル相場を見る上での注目点はブラ
ジルの財政再建の行方だ。金融市場では、レビ財
務相の退任が、政府の財政緊縮姿勢の後退につ
ながるとの懸念が根強い。ルセフ大統領は引き続
き財政再建を進める方針を示しているものの、金
融市場はその進捗を一層注視するだろう。また、
景気悪化が深刻化しつつあることもあり、財政再
建は今後も難航することが見込まれる。格付機関
によるブラジル国債のさらなる格下げにも注意を
要する。
今後の豪ドル相場を見る上では、引き続き米国
の金融政策が注目される。金融市場はFRBの利
上げペースに注目しており、豪ドルはこうした思惑
に左右されやすい展開となるだろう。一方、中国で
は一部の経済指標で景気の安定化が示唆されつ
つあるものの、人民元は下落基調にある。人民元
安が急速に進めば、金融市場に動揺が広がり、豪
ドル相場に波及する恐れがある。
豪ドル
(米ドル/豪ドル)
1.00
(レアル/米ドル)
2.50
対円(左軸)
0.90
43.5
対米ドル(右軸)
105
0.80
39.5
3.20
95
0.70
35.5
3.55
85
0.60
31.5
3.90
対円(左軸)
115
2015/6
2015/9
0.50
2015/12
(年/月)
27.5
2014/12
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
2015/3
2015/6
2015/9
2.85
レアル安
2015/3
豪ドル安
75
2014/12
対米ドル(右軸)
豪ドル高
(円/レアル)
47.5
レアル高
(円/豪ドル)
125
ブラジル・レアル
4.25
2015/12
(年/月)
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。
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Vol.212 2016.1
株式・債券
先進国株式
先進国債券
2015年12月末のTOPIXは、1,547.30ポイントとな
り、11月末から2.1%下落した。11月の米国雇用統
計など国内外の経済指標は堅調であったものの、
為替相場が米ドル安(円高)傾向に振れたことや
原油価格の下落が続いたことなどから軟調な展開
となった。FRBによる約9年半ぶりの利上げに対す
る反応は限定的だったが、日銀の金融緩和「補完
策」の効果は限られるとの見方が広がったことも
買いが手控えられる要因となった。
2015 年 12 月 末 の 日 本 の 10 年 国 債 利 回 り は
0.27%となり、11月末から0.04%低下した。上旬は、
欧米金利の上昇に連れて利回りは上昇した。その
後は、日銀金融政策決定会合で、長期国債買入
れの平均残存期間の長期化や、グロスでの買入
れ増額が決定されたことなどから、利回りは低下
基調で推移し、月間でも低下した。
2015 年 12 月 末 の 米 国 の 10 年 国 債 利 回 り は
2.27%となり、11月末から0.06%上昇した。月初は、
11月の米国雇用統計が市場予想を上回ったこと
や、ECBの追加緩和策への失望などから、利回り
は大きく上昇した。その後は、原油価格の動向を
巡り、利回りが乱高下する局面もあった。中旬の
FOMCでは、約9年半ぶりの利上げが決定された
が、FRBが緩やかな利上げペースを示唆したことか
ら、利回りはレンジ圏で推移し、月間では上昇した。
2015年12月末のS&P500株価指数は、2,043.94
ポイントとなり、11月末から1.8%下落した。上旬は、
FOMCを前に様子見ムードとなり下落した。中旬は、
市場の予想通り利上げが発表されると金融政策
を巡る不透明感が後退し上昇したが、その後発表
された経済指標が弱かったことを受け反落した。
下旬には、中国政府が景気刺激策を発表したこと
などを好感し上昇したが、月間では下落した。
2015 年 12 月 末 の ドイ ツ の10 年 国 債 利 回 りは
0.63%となり、11月末から0.16%上昇した。月初は、
ECBの追加緩和策が市場予想を下回る内容であ
ったことから、利回りは大きく上昇した。米国利上
げの決定後は、FRBが緩やかな利上げペースを
示唆したことや、ユーロ圏と米国の金融政策格差
に注目した買いも見られたが、その後は原油価格
の動向などを反映して、利回りはレンジ圏で推移
し、月間では上昇した。
2015年12月末のDAX指数は、10,743.01ポイント
となり、11月末から5.6%下落した。月前半は、
ECBの追加緩和策が市場の期待を下回ったことな
どから下落した。月後半は、米国の金融政策に対
する不透明感の後退や、中国の景気刺激策への
期待などから上昇したが、月間では下落した。
株価指数
10年国債利回り
(ポイント)
2,500
(ポイント)
15,000
(%)
1.0
(%)
3.0
2,200
13,000
0.8
2.7
1,900
11,000
0.6
2.4
1,600
9,000
0.4
2.1
7,000
0.2
1,300
1,000
2014/12
TOPIX(左軸)
S&P500(左軸)
DAX(右軸)
2015/3
2015/6
2015/9
5,000
2015/12
(年/月)
0.0
2014/12
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
日本(左軸)
ドイツ(左軸)
米国(右軸)
2015/3
2015/6
2015/9
1.8
1.5
2015/12
(年/月)
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。
投資環境レポート
6
Vol.212 2016.1
データ・グラフ集
新興国株式
新興国債券
(ポイント)
1,300
(ポイント)
750
MSCI新興国(米ドルベース)
JPモルガン新興国債券指数
1,100
700
900
650
700
2013/12
2014/6
2014/12
2015/6
600
2013/12
2015/12
(年/月)
2014/6
リート
(ポイント)
300
2014/12
2015/6
2015/12
(年/月)
コモディティ
(ポイント)
S&P先進国リート指数(左軸)
(ポイント)
400
3,000
東証リート指数(右軸)
(米ドル/バレル)
200
ロイター/ジェフリーズCRB商品価格指数(左軸)
WTI原油スポット価格(右軸)
250
2,500
300
150
200
2,000
200
100
150
1,500
100
50
100
2013/12
0
2013/12
1,000
2014/6
2014/12
2015/6
2015/12
(年/月)
0
2014/6
2014/12
2015/6
2015/12
(年/月)
金融市場の動き
<変化率、%>
■株式
日経平均(日本)
TOPIX(日本)
日経ジャスダック平均(日本)
NYダウ工業株(米国)
S&P500(米国)
NASDAQ(米国)
FTSE100種(英国)
DAX(ドイツ)
ハンセン指数(香港)
上海総合(中国)
S&P/BSE SENSEX(インド)
MSCI新興国(米ドルベース)
<変化率、%>
1ヵ月 3ヵ月 6ヵ月 1年
-3.6
9.5 -5.9
9.1
-2.1
9.6 -5.1
9.9
-1.1
7.8 -2.6 12.0
-1.7
7.0 -1.1 -2.2
-1.8
6.5 -0.9 -0.7
-2.0
8.4
0.4
5.7
-1.8
3.0 -4.3 -4.9
-5.6 11.2 -1.8
9.6
-0.4
5.1 -16.5 -7.2
2.7 15.9 -17.3
9.4
-0.1 -0.1 -6.0 -5.0
-2.5
0.3 -18.3 -17.0
■為替
円/米ドル
円/ユーロ
米ドル/ユーロ
円/英ポンド
円/豪ドル
円/カナダ・ドル
円/ブラジル・レアル
円/トルコ・リラ
円/南アフリカ・ランド
1ヵ月
-2.5
0.5
2.8
-4.4
-1.5
-5.7
-4.6
-2.4
-8.7
3ヵ月
0.2
-2.5
-2.9
-2.3
4.1
-3.5
-0.0
4.1
-10.1
6ヵ月
-2.0
-4.3
-2.6
-8.0
-7.2
-11.4
-23.1
-9.7
-22.7
1年
0.3
-9.8
-10.3
-5.0
-10.5
-15.6
-32.6
-19.4
-24.9
(注) マイナスは円高方向に動いたことを示す
(米ドル/ユーロの場合は米ドル高)
<変化率、%>
■債券
米国ハイイールド債券指数
JPモルガン新興国債券指数
<変化率、%>
■商品・リート
1ヵ月 3ヵ月 6ヵ月 1年
ロイター/ジェフリーズCRB商品価格指数
-3.5 -9.1 -22.5 -23.4
WTI原油スポット価格
-11.1 -17.9 -37.7 -30.5
東証リート指数
-0.3
4.2 -3.1 -7.9
S&P先進国リート指数
0.7
4.4
3.4 -2.7
1ヵ月
-2.5
-1.5
3ヵ月
-2.1
1.5
6ヵ月
-6.8
-0.5
1年
-4.5
1.2
<%>
■債券利回り
日本10年国債
米国10年国債
ドイツ10年国債
11月末 12月末 前月差
0.31
0.27 -0.04
2.21
2.27
0.06
0.47
0.63
0.16
記載されている市場データは野村アセットマネジメントのホームページでご覧になれます(一部掲載されていない場合があります)。
(注) 変化率は2015年12月末を基準として算出している。
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。
投資環境レポート
7
Vol.212 2016.1
経済カレンダー
SUN
1/
17
2016年1月17日~2016年2月13日
MON
18
TUE
WED
19
20
(独)1月ZEW景況感指数
(中)10-12月期GDP
(トルコ)金融政策発表
24
25
(日)12月貿易収支
(独)1月Ifo景況感指数
31
2/
1
26
27
8
(日)12月経常収支
(日)1月景気ウォッチャー
調査
(独)12月鉱工業生産指数
(ユーロ圏)金融政策発表
9
4
10
(米)12月中古住宅販売件
数
(米)12月景気先行指数
30
(日)金融政策発表
(日)12月失業率
(日)12月有効求人倍率
(日)12月家計調査
(日)12月消費者物価指数
(日)12月鉱工業生産指数
(日)12月新設住宅着工戸数
(米)10-12月期GDP(速報
値)
(ユーロ圏)1月消費者物
価指数
5
(米)1月ADP雇用統計
(米)12月製造業受注
(米)1月ISM非製造業景況 (英)金融政策発表
感指数
(メキシコ)金融政策発表
(日)1月マネーストック
23
29
(米)12月耐久財受注
(南ア)金融政策発表
3
SAT
22
28
(米)11月S&Pケース・シラ (米)金融政策発表
ー住宅価格指数
(米)12月新築住宅販売件
数
(米)1月コンファレンスボー
ド消費者信頼感指数 (豪)10-12月期消費者物
(ブラジル)12月経常収支
価指数
2
FRI
21
(米)12月住宅着工件数
(米)12月消費者物価指数
(ブラジル)金融政策発表
(米)12月個人消費支出
(ユーロ圏)12月失業率
(米)1月ISM製造業景況感 (豪)金融政策発表
指数
(中)1月製造業PMI(購買
担当者景気指数)
(ブラジル)1月貿易収支
7
THU
11
6
(米)12月貿易収支
(米)1月雇用統計
(ブラジル)1月消費者物価
指数(IPCA)
12
(日)1月国内企業物価指
数
(中)1月マネーサプライ
(2/10~15)
13
(米)2月ミシガン大学消費
者信頼感指数
(ユーロ圏)10-12月期GDP
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
※経済カレンダーは作成時点で利用可能な最新の情報を用いておりますが、経済指標等の発表日は変更される可能性があります。
日本・米国・欧州経済指標
<年間>
2013年 2014年 2015年
日
本
米
国
欧
州
日銀短観(大企業製造業)(ポイント)
実質GDP成長率(前期比年率、%)
消費者物価指数(前年同月比、%)
完全失業率(%)
実質GDP成長率(前期比年率、%)
消費者物価指数(前年同月比、%)
失業率(%)
実質GDP成長率(前期比、%)
消費者物価指数(前年同月比、%)
失業率(%)
16
1.4
0.4
3.7
1.5
1.5
6.7
-0.3
1.4
11.9
12
0.0
2.7
3.4
2.4
1.6
5.6
0.9
0.4
11.4
12
-
-
-
-
-
-
-
-
-
<月次>
1月
2月
3月
4月
5月
2015年
6月
7月
-
-
2.4
3.6
-
-0.1
5.7
-
-0.6
11.2
-
-
2.2
3.5
-
0.0
5.5
-
-0.3
11.2
12
4.4
2.3
3.4
0.6
-0.1
5.5
0.5
-0.1
11.1
-
-
0.6
3.3
-
-0.2
5.4
-
0.0
11.1
-
-
0.5
3.3
-
0.0
5.5
-
0.3
11.0
15
-0.5
0.4
3.4
3.9
0.1
5.3
0.4
0.2
11.0
-
-
0.2
3.3
-
0.2
5.3
-
0.2
10.9
8月
9月
10月
11月
12月
-
-
0.2
3.4
-
0.2
5.1
-
0.1
10.8
12
1.0
0.0
3.4
2.0
0.0
5.1
0.3
-0.1
10.8
-
-
0.3
3.1
-
0.2
5.0
-
0.1
10.7
-
-
0.3
3.3
-
0.5
5.0
-
0.2
-
12
-
-
-
-
-
-
-
0.2
-
(注) 欧州はユーロ圏。年間の値について、消費者物価指数は平均値、日銀短観、失業率は期末値。月次の値について、日銀短観、GDPは四半期。
(出所) 日本銀行等、当局データより野村アセットマネジメント作成
※投資環境レポートでは作成時点で利用可能な最新の経済指標を用いておりますが、経済指標等は発表後に訂正や改定が行われることがあります。
商 号:野村アセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第373号
加入協会:一般社団法人投資信託協会/一般社団法人日本投資顧問業協会
www.nomura-am.co.jp/
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
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投資環境レポート
8
Vol.212 2016.1