(2016 年1月号掲載) 北陸新幹線金沢延伸に伴う群馬県観光関連業界への影響 一般財団法人群馬経済研究所 主任研究員 伊勢 和広 【 要 約 】 1.北陸新幹線は、2015 年3月 14 日に長野駅~金沢駅間が開業した。東日本旅客 鉄道株式会社の発表によれば、ゴールデンウィークや夏休み期間における大宮駅 ~軽井沢駅間の新幹線利用客数と、高崎駅の新幹線乗降客数は、それぞれ前年同 時期と比べて増加した。 2. 金沢延伸によって本県への移動時間が短縮したことで、北陸地方からの観光客 を本県に呼び込むチャンスは広がっており、群馬県観光物産国際協会等の誘客活 動も活発化して いる。 3.旅行客を受け入れる側の「旅館・ホテル、観光施設等」や、旅行の申し込み窓 口となる「旅行業」などの県内観光関連企業に対して、当研究所が行ったアンケ ートによると、金沢延伸による影響は、「旅館・ホテル、観光施設等」ではあま りみられないが、「旅行業」では「プラス影響あり」とする割合が比較的高い。 4. 金沢延伸による旅行客の動きをみると 、「旅館・ホテル、観光施設等」 では、富 山県、石川県からの来客数が増える一方、東京都、埼玉県、神奈川県からの来客 数は減少している。「 旅 行 業」 では 、石川県、富山県、福井県への旅行が増加す る一方、長野県、新潟県、栃木県への旅行は減少している。 5. 金沢延伸と「富岡製糸場と絹産業遺産群の世界遺産登録」とを比較して、どち らの影響度が大きいかを聞いたところ、「旅行業」では金沢延伸とする割合が高 い。一方、「旅館・ホテル、観光施設等」では世界遺産登録の影響度の方が大き く、対照的な結果となった。 6. 金沢延伸に伴う対応では、「旅館・ホテル、観光施設等」、「旅行業」ともに 「特に対策は講じない」が多い。 7. 「旅館・ホテル、観光施設等」は自ら積極的に動かない限り、金沢延伸による プラス効果を十分に活かせないと思われる。複数の観光地を組み込んだ周遊コー スなど魅力的な旅行プランを提案し、官民挙げて群馬の魅力を売り込んでいく工 夫が必要であろう。このような提案は、東京圏からの観光客数の回復や、外国人 観光客の更なる増加にも資するものだと思われる。
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