脳卒中で入院された方へ(PDF/2153KB)

脳卒中で入院
された方へ
パンフレットの内容
1. 脳卒中とは
2. 再発予防のための生活習慣
①血圧 ②たばこ ③お酒
④水分
⑤食事 ⑥運動
⑧服薬
⑦肥満
3. 再発時の対応
4. 退院後の生活について
豊橋市民病院
神経内科・脳神経外科
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脳卒中で入院された方へ
「手足が動かない」
「しゃべれない」などの症状で、とても不安で怖
い体験をされ、これからの生活についていろいろお悩みのことと思
います。脳卒中は再発しやすい病気で、5人に 1 人が再発するとい
われています。脳卒中になられた患者様やそのご家族が、脳卒中のこ
とを良く知り、生活習慣を改善しながら「再び素敵な生活を送れます
ように」という願いでこのパンフレットを作成しました。患者様やご
家族そろって手にとっていただけますと幸いです。
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◆1◆
脳卒中とは
脳卒中は脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血のことをいいます。動脈
硬化や血管の奇形などが原因で、脳の組織に血液を運んでいる血管
が詰まったり、破れたりすることで発症します。脳は、私たちが生
活をする中で、考えたり動いたりするための指令を出すところなの
で、障害されることで手足が動かなくなったり、しゃべれなくなっ
たり、時には意識がなくなることもあります。突然起きるものもあ
りますが、徐々に進行するものもあり人それぞれです。
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◆2◆
再発予防のための生活習慣
①血圧
脳の血管に強い圧力がかかると脳の血管が破れたり、詰まったり
することで再発をする危険性が高くなります。自分で血圧を測る習
慣をつけることで、血圧の変動に早期に気が付き対処することがで
きます。毎日、同じ時間に血圧を測定してメモを取る習慣をつけてい
きましょう。
血圧を測定する時間
☆私の血圧目標値(
朝
① 起きて1時間以内
② トイレは済ませてから
③ 朝食前
④ 血圧の薬を飲む前に
/
夜
①寝る前
②リラックスした状態で
血圧を上げないための日常生活での注意点
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)
②たばこ
たばこは動脈硬化を進行させて脳卒中を起こし易くなるので禁
止です。たばこを吸わない人に比べて吸う人は男性で1.8倍、女
性で2.8倍の方が脳卒中で死亡するといわれています。禁煙を2
~4年続ければリスクは低下し始めるといわれていますので禁煙
しましょう。
禁煙の対処方法
どうしても禁煙できない方は禁煙外来も一つの手です
禁煙外来とは、お薬や精神的なサポートにより禁煙への支援を
行うところです。やめられない自分を責める前に、専門家に相談し
てみましょう。保健所などで行われている禁煙サポートもありま
すので自分にあった方法を見つけていきましょう。
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③お酒
少量の飲酒は脳梗塞の発症を抑えると言われていますが再発に
関しては明らかではありません。一方、脳出血は飲酒量に比例し
て発症率が増加します。適量を超える飲酒は避けましょう。
1日に摂取するお酒の適量のめやす
厚生労働省推奨の適量(純アルコール20g以内/日)を参考にしています
好ましいお酒の飲み方
楽しい雰囲気
強いお酒は薄める
無理強いしな
薬剤と一緒に飲まない
時間をかける
夜 12 時以降はやめる
食べながら
毎日続けて飲まない
適量を守る
楽しみとして飲む
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④水分
心不全・腎不全の注意
体の中の水分が不足すると(脱水)血液中の成分が濃くなり、血液
の流れが悪くなることで脳卒中が再発する可能性が高くなります。
予防するためには一日に必要な水分を摂取することが大切です。
摂取量のめやす
体重(
)kg×30mL=(
)mL/日
*食事でとれる水分は 700mL ほどといわれています
水分摂取に好ましくない飲料
カフェインの多いアルコールやコーヒー・紅茶は利尿作用があり取
りすぎると逆効果です
効果的な水分摂取の方法
次のタイミングでコップ1杯(200~250mL)の水またはお
茶を飲むのがお勧めです。また、お出かけの際には必ず水分を持っ
ていく習慣をつけましょう。
①
起きたとき
②毎食時と食間
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③寝る前
⑤食事
脳卒中予防のための食事の基本は、過剰なエネルギー摂取を避け、
塩分を控えること、カリウムを摂取すること、脂質の少ない食品を
摂取することです。
減塩のめやす
1日10g未満(高血圧の方は 6g 未満)を目標とします。
食品成分表にはナトリウムの量を記載しているものもありますの
で次の換算表を参考にしてください。
ナトリウム(g)×2.54=食塩(g)
食品に含まれる塩分の相当量
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減塩の工夫
カリウム摂取に取り入れるとよい食品
カリウムは 1 日2~4gが適正量です。
腎臓病や糖尿病を
お持ちの方は取り
すぎにご注意くだ
さい
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脂質の摂取の仕方
脂質のとりすぎはコレステロール値を上げ脳卒中のリスクを高めま
す。一日 50~60g未満を目標にしましょう。
<脂肪摂取を減らす工夫>
揚げ物や炒め物は脂肪を多く含みます。以下の絵では大さじ(30m
L)で脂質量があらわされています。このようなおかずは 1 日 1 皿
までにするなど続けて摂取しないように工夫しましょう。
豊橋市保健所ほいっぷでの栄養指導
豊橋市保健所・健康増進課では、糖尿病予防や生活習慣病予防のため
の栄養相談を行っています。退院後のお食事のとり方などでご相談
のある方はご利用ください。
<申し込み・問い合わせ>
豊橋市保健所・健康増進課 39-9145
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⑥運動
運動は代謝を促すだけでなく善玉コレステロールを増やす効果も
あります。肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症など生活習慣病の予防
や改善に役立ち、脳卒中再発予防にもつながります。
生活に合わせて無理なく運動をしましょう
筋力や体力を保ち、いつまでも元気に過ごしましょう
リハビリの先生から下肢の筋力トレーニングの指導があった方は、
ご自宅でも継続して行うようにしましょう。
(※リハビリの先生が作成したパンフレットもご覧ください)
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Ⅰ.起居動作のコツ
1)寝返り動作のコツ
悪い例
良い例
① 麻痺した腕を忘れないようにし、肩関節
を保護します。
2)起き上がり動作のコツ
① 麻痺のない足を麻痺のある足の下にいれ、
交差させます。
② 麻痺のある足を麻痺のない足ですくい上
げ、ベッドの端から両足を垂らします。
③ 肘を伸ばしながら起き上がります。
④ 必要であれば手すりを持ちます。
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3)立ち上がり動作のコツ
4)座り込み動作のコツ
① 座面を少し高くすると
立ち上がり動作が簡単に
なります。
① お辞儀をするように座ると
ドスンと腰かけることが減り、
腰を痛めにくい。
② お辞儀をするように立ち上がり
ます。
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Ⅱ.筋力を強くする運動
1)臥位で下肢の力を強くする運動
① 足を上げる運動
※腰痛を予防するため反対側の膝を立てます。
回
×
セット
② 片足を上げながらのヒップアップ運動
※体幹の筋力増強にも繋がります。
※お尻をゆっくりと下すのがコツです。
回
×
セット
③ 片足を上げながらのヒップアップ運動
(両手を組んで行います)
※②の応用動作となります。バランス訓練として
も有用です。
回
×
セット
④ 下肢の空中屈伸運動
※寝たままで自転車を漕ぐ要領で両足を動かし
ます。
回
14
×
セット
⑤ ゴムバンドを使用した股関節の外転運動
※両膝を肩幅まで広げます。
※脚をゆっくりと閉じるのがコツです。
回
×
セット
⑥ 足首を反る運動
※足首だけでなく、足指までしっかり反るよう
に意識して行います。
転倒予防の運動になります。
回
×
セット
⑦ 足首をのばす運動
※足首をのばすだけでなく、足指でゴムバ
ンドをつかむよう意識して行います。
力強く歩くことが出来る運動になります。
回
15
×
セット
2)座位で下肢の力を強くする運動
① 座位で膝伸ばし運動
※座っている状態で片方の膝を伸ばします。
※5秒力を入れたら10秒休憩して下さい。
※出来るだけつま先は天井を向けます。
回
×
セット
② 座位で足踏み運動
※座った状態で足踏みを行います。
回
×
セット
3)立位で下肢の力を強くする運動
① スクワット運動
回
×
②踵上げ運動
セット
回
16
×
セット
Ⅲ.バランス運動
① 四つ這い位での片手片足上げ
※反対側の手と足を上げる運動です。
秒保持
×
セット
② 起床時に行う転倒予防のバランス運動
※朝起きたら、一度四つ這い位となります。
※次に背筋を伸ばす姿勢をとります
(猫のポーズ)
。
③ 正座から膝立ち姿勢となり、可能であれば膝歩きを行います。
※腰が引けたり、前かがみにならないように注意します。
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Ⅳ.有酸素運動
① 運動の種類:ウォ-キングや自転車運動のような 有酸素
運動を行いましょう。重たいものを持つような動作(等尺性
運動)は避けましょう。
② 運動時間:20~30 分としその前後でストレッチ
運動
などの整理体操を行いましょう。運動時間は徐々に増やすよ
うにしましょう。
③ 運動頻度:1 週間に最低 3 日以上が望ましいとされていま
す。また週に 3 日の場合は、隔日の方がより効果が持続する
といわれています。
【有酸素運動を行う際の注意事項】
① 無理をせず、体調の悪い時には行わないで下さい。
② 食後 1~2 時間および入浴後は避けましょう。
③ 運動中に胸の痛みなどの症状が出現した場合は直ちに
運動を中止し、医療機関を受診して下さい。
④ 運動後に不快感や疲労感を覚える場合、また関節や筋肉
の痛みが翌日まで持続する場合は、運動強度が強すぎる
と考えられるので、運動の再処方が必要となります。
その場合は、担当の医師または理学療法士にご相談下さい。
⑤ 夏場は熱中症や脱水に注意しましょう。涼しい時間に運動
することをお勧めします。水分補給を適宜行いましょう。
⑥ 冬場は防寒対策をし、冷たい外気を吸わないようにマスク
を装着しましょう。運動の前後に準備体操と整理体操を行
いましょう。
運動療法は継続して行いましょう!
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Ⅴ.その他
① 脈拍測定
※人差し指、中指、薬指を親指側の手首
に当てて、1 分間の脈拍を数えます。
※普段みられない症状(脈が飛ぶ等)が
あれば医療機関を受診して下さい。
② アキレス腱伸ばし
※散歩の前には必ず行いましょう。
※膝を伸ばして行う方法と膝を曲げて
行う方法があります。可能であれば
両方行った方が効果的です。
1)膝を伸ばして行う方法
2)膝を曲げて行う方法
③ 歩き方のポイント
・目線は前方に
・つま先で地面をける
・着地はかかとから
・歩幅は広めに(無理のない範囲)
・背筋を伸ばしてテンポ良く
④ 自由記載欄
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⑦肥満(メタボリックシンドローム)
メタボリックシンドロームは、エネルギーの過剰摂取により内
臓脂肪が蓄積すると動脈硬化が促進されて高血圧・高脂血症・糖
尿病を経て、脳卒中や心筋梗塞を起こしやすくする病気です。肥
満の方はメタボリックシンドロームの危険性が高く、今回の発症
の原因になっている可能性もありますので予防や改善が必要で
す。
BMIで肥満かどうか確認してみましょう
体重( )kg÷(身長(
BMI
)m×身長(
)m)=BMI(
)
25を超えた方
標準体重に向かって減量の計画を立てましょう
身長(
)m×身長(
)m×22=標準体重(
)kg
BMIが高い方はまずは 3 か月で3kg減らしましょう
運動と食事のバランスを良くして、健康な体を作りましょう。
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⑧お薬
脳卒中患者さんによく処方される薬の例
① 降圧薬(血圧を下げる薬)
 グレープフルーツは薬の効果が出すぎてしまうので食べない
ように注意しましょう。
 血圧が高すぎたり低すぎたりするときには主治医と相談しま
しょう。
② 抗凝固薬・抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)
 血液が固まりやすくするのを押さえる薬ですので、血が止ま
りにくい状態です。怪我や転倒に注意し、他院に受診する際
には必ず内服している事を伝えましょう。
 ワーファリンを内服している方は、納豆・クロレラなどを摂
取すると薬の効果が出にくくなるので食べないようにしまし
ょう。
③ 胃薬
 薬を飲むことで胃が荒れやすくなるのに対して予防します。
胃が痛くないからと言って中断しないようにしましょう。
④ コレステロールを下げる薬
 コレステロール値の調節は動脈硬化の予防につながり脳卒中
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再発の予防に重要です。
⑤ 血糖を下げる薬
 医師の指示量を守り、しっかり飲みましょう。低血糖症状が
ある場合はすぐにブドウ糖を内服してください
薬の飲み忘れをしないようにしましょう。
自己判断で薬を中止しては大変危険です。
お薬についてよくわからないことがありましたら、
看護師または薬剤師へお尋ねください。
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◆3◆再発時の対応
一つでも症状が出ていれば脳卒中の可能性は 70%です
脳卒中は再発しやすい病気です。以下のような症状があったらす
ぐに救急車(119)を呼びましょう。
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◆4◆退院後の生活について
①社会福祉制度
社会福祉制度をうまく利用しましょう。
・地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に相談しましょう。
・当院では医療相談室もあります。気軽に声をかけて下さい。
以下は脳卒中患者が使用できる支援です
介護保険
対象者:第 1 号被保険者 65 歳以上
第 2 号 40 歳以上 65 歳未満
(特定疾病 16 項目脳血管疾患含)
身体障害者手帳
対象者:身体に障害が永続し回復する可能性が極めて低いと判
断された方が対象。
脳卒中の場合:肢体不自由の障害、音声機能、言語機能、咀嚼
機能、平衡機能障害が該当(障害認定は 6 ヵ月後、障害の場合
によっては 3 ヵ月で申請を受け付ける場合もある。介護保険の
給付対象者は介護保険優先。
)
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精神障害者保健福祉手帳
対象者:統合失調症、精神作用物質による急性中毒またはその依
存症、知的障害、精神病質、その他の精神疾患を有する
もの
傷病手当金
対象者:病気やけがで働けなくなった被保険者
(国民健康保険加入者は該当しない)
障害年金
対象者:保険料納付済み期間が加入期間の 2/3 以上あるもの 20
歳前に障害を受けたものでも、20 歳に達したときに障害
の状態となった時
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②高次脳機能障害について
脳卒中や事故で脳に損傷を受けると、記憶障害・注意障害・社会的
行動障害などの後遺症を生じることがあります。具体的には、
「思い
出せない」
「気が散りやすく、ミスが多い」
「計算ができない、時間が
かかる」
「些細なことで怒ってしまう」などです。これらは外見から
はわかりづらく、日常生活や仕事など行いづらくさせることがあり
ます。詳しくは、主治医の先生やリハビリ担当者にご相談ください。
仕事や自動車運転について
病状はもちろん、心身の状態により制限を受けることがあります。高
次脳機能障害が疑われる場合には特に注意が必要です。主治医の先
生に必ず相談しましょう。
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生活習慣を変えるというのは簡単なことで
はありません。お一人で悩みを抱え込まずに、
ご家族や私たち医療者へなんでもご相談くだ
さい。
退院後のお問い合わせは、当院の
神経内科・脳外科外来へご相談ください
0532-33-6111(豊橋市民病院代表)
≪参考文献≫
厚生労働省脳卒中ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/nousottyu/
公益社団法人日本脳卒中協会
福岡支部ホームページ
http://plaza.umin.ac.jp/stroke/nousottyuyobou3.pdf
日本脳卒中協会ホームページ
http://www.jsa-web.org/10/kokufuku.html
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