2015年12月タイにおける時限的投資奨励策について

タイにおける時限的投資奨励策について
バンコック駐在員事務所
小沢
康正
サワディーカップ。今回は『タイにおける時限的投資奨励策』についてレポート致します。
タイ経済は 2012 年頃に行われたファーストカー減税の反動で景気が低迷し、2015 年度も回復の足取りは重く、
タイ中央銀行はGDP成長率の見通しを今年度 3 回下方修正し、9 月 25 日には 3.0%から 2.7%へ変更しており
ます。
タイ政府はいわゆる中所得国の罠からの脱却に懸命です。自国資本による成長では限界があるので、日本から
更なる投資を呼び込もうと政府要人が日本向けのセミナー等を何度も実施しています。
ただ、ある程度経済発展を遂げたタイは労働コストが高くなってきており、日本企業(特に製造業)の目は近隣
諸国のベトナム・ミャンマー・カンボジア・ラオス等、労働コストがタイほどは高くない発展途上国へ、向かっ
ています。
タイ政府も労働集約型産業ではコスト競争力がないことは認識しており、高度技術やイノベーションを使用す
る事業へ税制恩典を厚くする等、タイ政府として推奨業種と労働集約型の業種とでは恩典に軽重をつけています。
プラユット首相は景気低迷打破の起爆剤として 8 月に内閣改造を行いました。経済チームの責任者に、タクシ
ン政権時代に活躍したソムキット氏を任命したのです。ソムキット副首相は矢継ぎ早に新しい施策を展開してき
ましたが、更なる景気浮揚策として 11 月 3 日に期間限定の投資奨励策が閣議決定されました。
投資奨励策は大きく分けて2つあり、ひとつは BOI(Board of Investment:タイ投資委員会)の投資奨励策でもう
ひとつは財務省の投資奨励策です。詳細は今後発表される予定ですので概要のみ掲載致します。
BOI 企業
BOI の
投資奨励策
財務省の
・法人税免除期間延長もしくは法人税減免期間追加。
非 BOI 企業
・特になし。
・既に法人税減免の恩典を受けていることが条件。
・BOI から既に恩典を受けている場合で、投資を執行して
・新規投資、事業拡大、事業変更、
いる事業は財務省の恩典を受けることができず、新たな
新技術を導入する場合、経費の 2 倍
投資を行う必要がある。
を控除。
投資奨励策 ・投資を執行していない場合は、BOI による免税や減免を ・ただし既存の事業と変化がない場
選択するか、または財務省による控除措置か、いずれか
合は対象外。
ひとつを選択できる。
ソムキット副首相は、投資を躊躇している民間部門の背中を押すことで投資が動き出し、短期的に雇用創出と
経済システム内の支出が拡大するほか、長期的なタイの民間部門の競争力強化にも寄与することで今回の措置が
経済の刺激に繋がると期待している、と述べています。
今回の施策により、景気回復の足取りが重いタイにおいて投資に二の足を踏んでいた企業が動き出すかどうか、
興味深く見ていきたいと思います。
(2015 年 12 月)
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