保険ショップの現状 大沼 主任研究員 はじめに 八重子 1.保険ショップの認知は半数以上 駅前やショッピングモール、テレビCMな 保険ショップは、消費者にどのくらい認知 どでもしばしば見かけるようになった保険シ があるのだろうか。まず、保険ショップの認 ョップは、消費者にも認知度が上がりつつあ 知や利用がどの程度あるのかを調べるため、 るのではないだろうか。 出現率調査を実施した。調査は、過去1年間 実際、保険ショップの店舗数は、上位5社 に結婚、 就職などのライフイベントがあった、 だけで1,200店を超え、急速な拡大傾向にある 比較的保険に関与の高いと思われる全国男女 といえる(図表1) 。 20~69歳を対象に実施した。保険ショップを 身近な存在になってきたようにも思える保 「知っているか」を尋ねたところ、 「知ってい 険ショップであるが、消費者における保険シ る」と回答した人は54.1%に上り、保険ショ ョップの認知度や利用状況はなかなか実態が ップの認知度が高まっていることがうかがえ 掴めていない状況にあるように思われる。保 る(図表2) 。 険ショップは、どのような人が利用し、どの また、 「知っているし、利用もしたことがあ ように利用されているのであろうか。また、 る」と回答した人は17.5%で、このうち、 「生命 保険ショップの拡大には何か理由があるのだ 保険や損害保険に加入した」は12.0%であっ ろうか。 た。加入した保険の内訳は、生命保険91.6%、 当研究所では、保険ショップの利用者を対 損害保険15.3%で(複数回答) 、保険ショップ 象に、ネットを通じて調査を実施した。その の主力は生命保険となっているようだ。 結果の一部を紹介したい。 図表2 保険ショップの認知度と利用状況お 図表1 主な保険ショップ店舗数 よび保険の加入状況 (平成27年9月末現在) n=9,907 (単位:店) 保険の窓口 528 保険見直し本舗 206 保険ほっとライン 189 みつばち保険 154 保険クリニック 153 保険の110番 知っている が、利用した ことはない 36.6% 知っているし、 利用もしたこ とがある 17.5% 生命保険・ 損害保険に 加入した 12.0% 加入しな かった 5.6% ※当研究所「保険ショップ利用に関する出現率調 査」 (平成27年9月) 93 ライフサロン ほけん百花 (住友生命) 知らない 45.9% 2.保険ショップの利用者は30歳代・ 40歳代が中心 102 72 保険ショップの認知度は高まっているよう ※各社HPより作成 18 共済総研レポート 2015.12 一般社団法人 JA共済総合研究所 (http://www.jkri.or.jp/) であるが、どのような人が利用しているので 意見が聞けるから」(36.3%)、「土日休日や あろうか。次に、生命保険に関する相談のた 平日の遅い時間でもできるから」 (30.4%)が めに保険ショップを利用した人に対象を絞 続いていた(図表4) 。 (注) 。 り、調査を実施した 上位の項目に着目すると、保険ショップを 基本属性をみると、年齢別では30歳代が 利用した理由には、保険商品を複数比較して 39.7%で最多、次に40歳代が24.1%で、30歳 選びたいという「商品比較」、必ずしも加入 代と40歳代で6割強を占める(図表3)。特 しなくてもよい「気軽さ」 、保険に対する「専 に、30歳代では既婚・子あり層が半数以上と 門性」が大きな要因となっている。営業職員 なっている。保険ショップの利用者の中心は チャネルの強みは、担当者が自宅や職場まで 30・40歳代、30歳代では既婚・子あり層に利 来てくれる、といった利便性にあると考えら 用者が多いようである。 れるが、保険ショップの利用者は、それとは 異なる点に注目して、利用しているようであ 図表3 回答者の基本属性 0.0 20歳代 10.0 20.0 40.0 (単位:%) 図表4 保険ショップを利用した理由(複数 12.3% 4.3 3.4 4.6 30歳代 30.0 る。 21.8 回答) 9.2 8.7 39.7% (単位:%) 0 40歳代 10.8 4.9 8.4 24.1% 60歳代 6.2 5.7 4.5 3.0 3.0 1.5 7.5% 16.4% 既婚・子なし n=738 40 複数の保険会社の保険商品を 比較できるから 既婚・子あり 50歳代 20 48.4 必ずしも加入する必要がなく、 気軽に相談できそうだから 未婚 45.8 保険の専門家(FPなど)の 意見が聞けるから ※(注)調査概要は次のとおり。 ■調査方法:インターネット調査 ■調査対象:平成25年9月以降(2年以内)に 生命保険の相談のために保険ショップを利用 した人、全国20~69歳男女 ■サンプル数:738名(男性337名、女性401名) ■調査時期:平成27年10月 36.3 土日休日や平日の遅い時間 でも利用できるから 30.4 じっくり保険に関する相談が できそうだから 29.4 仕事帰りや買い物のついでに 行けるから 子ども連れでも安心そうだから 3.保険ショップを利用した理由は、 「商品比較」 「気軽さ」 「専門性」 60 22.8 13.0 n=738 4.多岐にわたる相談内容 保険ショップを利用した理由はどのような 保険ショップ利用者の相談内容をみると、 「生命保険への加入」が最も高く、そのほか、 ものだろうか。 保険ショップを利用した理由について尋ね 保障や保険料の見直し、情報収集、生活設計 たところ、「複数の保険会社の保険商品を比 や貯蓄・投資および相続などの相談、検討中 較できるから」が最多の48.4%、 「必ずしも加 の保険のセカンドオピニオンなど、相談内容 入する必要がなく、気軽に相談できそうだか は多岐にわたっている(図表5) 。加入が中心 ら」 (45.8%) 、 「保険の専門家(FPなど)の である営業職員チャネルに比べ、保険ショッ 19 共済総研レポート 2015.12 一般社団法人 JA共済総合研究所 (http://www.jkri.or.jp/) プは、加入を前提とせず、営業職員チャネル また、 「一時払い終身・養老」などの貯蓄型 では需要が満たされない、保険の情報収集や の保険商品や、「こども保険」「個人年金保 生活全般に関する相談、といったもっと幅広 険」の加入も少なくなく、保険ショップで加 な利用がされていることがみてとれる。 入する商品は様々な商品となっていることが わかる。 図表5 保険ショップ利用者の相談内容 (複数回答) 図表6 保険ショップで加入した保険商品種類 (単位:%) 0.0 20.0 40.0 60.0 生命保険への加入 14.5 9.5 (単位:%) 60 80 75.3 54.1 貯蓄型の生命保険(一時払い終身 保険・一時払い養老保険など) 23.0 貯蓄や投資に関する相談 40 死亡保障 28.7 14.5 20 第三分野 第三分野商品 47.0 生活設計に関する相談 相続対策に関する相談 0 63.1 加入中の生命保険の保障 内容や保障金額の見直し 加入中の生命保険の 保険料に関する見直し 検討中の生命保険の参考 とするための情報収集 検討中の生命保険の セカンドオピニオンとして (複数回答) 80.0 15.6 こども保険(学資保険) 個人年金保険(定額型) 全体(n=738) 2.4 11.6 8.1 介護保険 3.7 資産運用型の生命保険や年金 保険(変額・外貨建て・円建てなど) 2.5 n=405 5.加入した保険商品種類 第三分野と死亡保障が主力 第三分野に死亡保障のクロスセル 保険ショップで相談後に生命保険に加入し 加入者が何種類の保険に加入したか、前項 たかどうかを尋ねたところ、 「加入した」と回 で列挙した保険商品種類からみてみると、1 答した人は54.9%であった。この成約率は、 種類38.0%、2種類32.3%、3種類17.8%、 営業職員チャネルと比べても高い数値である 4種類8.6%、5種類以上3.2%で、2種類以 といえるだろう。 上の保険に加入した人は62.0%に上っている 加入した保険商品種類をみると、医療・ガ (図表7) 。 ン保険の第三分野は75.3%、終身・養老保険 2種類および3種類に加入している人につ や定期・収入保障保険などの死亡保障は いて、多くみられる組合せをみたところ、2 54.1%を占め、死亡保障は、第三分野と並び 種類では、 「医療・ガン」 (32.8%)が最も多 主力商品となっている(図表6) 。第三分野の く、 「医療・終身」 (24.4%) 、 「ガン・終身」 内訳は、 「医療保険」 (63.5%)と「ガン保険」 (9.2%)が続いている。3種類では、 「医療・ (43.5%) 、死亡保障の内訳は「終身保険・定 ガン・終身」 (48.6%)が最も多い。第三分野 期付終身保険・養老保険・定期付養老保険」 商品に死亡保障を組み合わせて加入するクロ (48.9%)と「定期保険、収入保障保険」 スセルの傾向がみてとれる。 (13.1%)である。個別では、 「医療保険」の 加入が最も多い。 20 共済総研レポート 2015.12 一般社団法人 JA共済総合研究所 (http://www.jkri.or.jp/) 図表7 保険ショップ加入者の加入した保険 図表8 保険ショップ利用者の評価 商品種類数 5種類 以上 3.2% (複数回答) (単位:%) 0.0 4種類 8.6% 3種類 17.8% 20.0 40.0 60.0 保険の内容等に関する 理解が高まった 51.5 保険の相談から加入まで、 1カ所ですませることができた 1種類 38.0% 49.9 複数の保険会社の 保険商品を比較できた 42.8 保険の専門家( FPなど)の 意見が聞けた 2種類 32.3% 41.2 気軽に相談できた 39.2 保険に関する情報収集の 手間や時間を省くことができた n=405 37.0 じっくり保険に関する相談ができた 6.保険ショップに対する高い評価 35.6 n=738 図表9 保険ショップ利用者・加入者の再利 保険ショップの評価をみると、「保険の内 用意向 容等に関する理解が高まった」 (51.5%) が最 (単位:%) 0 も高く、次いで、 「保険の相談から加入まで、 1カ所ですませることができた」 (49.9%) 、 「複数の保険会社の保険商品を比較できた」 (42.8%) 、 「保険の専門家(FPなど)の意見 が聞けた」 (41.2%)が続いている(図表8) 。 保険ショップ 利用者 (n=738) 20 30 40 利用してみたいと思う, 41.6 保険ショップ 加入者 (n=405) 保険ショップを利用しようと思った理由と 10 50 60 70 やや利用してみたい と思う, 40.4 利用してみたいと思う, 50.9 利用してみたいと思う やや利用してみたいと思う あまり利用してみたいとは思わない 利用したいとは思わない やや利用してみたい と思う, 38.3 80 90 100 どちらともいえない, 15.2 1.9 どちらともいえない, 10.4 0.2 どちらともいえない して、 「複数の保険会社の保険商品を比較でき た」は最上位で挙げられていたが、利用後も 入者(保険ショップで生命保険に加入した 高く評価されている。ただ、商品比較に対す 人)は89.2%で、利用者も加入者も8割以上 る評価より、保険に対するリテラシーの向上 と高い再利用意向を示している。 や、ワンストップで保険加入ができた利便性 おわりに が若干上回る。 また、全体的に、保険ショップを利用した 保険ショップの再利用意向は高く、従来の 理由と同様、どの評価項目も営業職員チャネ 営業職員チャネルにはない点で評価を受けて ルにはない点であることが特徴である。 いた。従来のチャネルにはない利点が利用拡 図表9は、今後生命保険を検討する際に、 大の要因とも考えられる。また、利用後の評 再度保険ショップを利用したいか、再利用意 価として、保険に対する理解が高まったとす 向について尋ねたものである。「利用してみ る人の割合が高く、リテラシーの向上が複数 たいと思う」 「やや利用してみたいと思う」を 加入の要因の1つとも考えられなくもない。 あわせた合計は、保険ショップ利用者(対象 拡大傾向を続ける保険ショップの動向を、今 者全体)は82.0%、そのうち保険ショップ加 後も注視していきたい。 21 共済総研レポート 2015.12 一般社団法人 JA共済総合研究所 (http://www.jkri.or.jp/)
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