エンタープライズICT総合誌 月刊ビジネスコミューニケーション(Webサイトへ) 特 集 NTTコミュニケーションズ 技術開発部の取り組み 1 技術戦略 / 知財戦略 技術開発部 技術戦略部門の取り組み 技術開発部長 山下 達也 技術開発部ではグローバル市場での競争力強化のための技術開発の推進や、更に重要性の高まりつつある知的財産へ取り組むだけでなく、 NTT 研究所やグループ会社、 各種団体との連携の推進も行っている。それらをリードする技術戦略部門の活動を紹介する。 技術戦略部門の役割 術 革 新 に よ る 新 た な 機 会 を 捉 え、 将来の市場の成長を取込むための 先行的な技術開発を推進すること 技術戦略部門は、NTT Com の事業 である。この方針に基づき、技術 戦略に基づいた技術戦略の策定機能 開発部では主に以下の開発に取り として、グローバル市場での競争力 組んでいる。 強化のため、技術開発戦略や知財戦 略を統合した新たな戦略を立案、推 進している。 また、適正な技術輸出管理を一元 (1)NTT Com の事業戦略に基づく 技術開発 ・クラウドサービス向け SDN 制御 基盤の開発 的に行う技術輸出管理室を設置する ・セキュリティ独自防御技術の開発 と共に、NTT グループや社外の各 ・DDoS 攻 撃 に 対 す る 防 御 技 術 種団体、コミュニティと連携をする ための技術連携戦略を策定、推進す る役割も担っている。 (SAMURAI)の開発 ・UX デザイン手法を活用した自社 サービスの UX 改善 ・IoT データを含むビッグデータ解 開発業務の取り組み方針 開発業務を推進していく上で、3 つの方針を定めている。1 つ目は、 析技術の開発 (2)オール仮想化、徹底的な自動化 ー 4.1J の推進 ・W3C における Web of Things の標 準化 ・Deep Learning による IoT データ 分析用 AI の開発 知的財産に関する取り組み また、技術開発の推進のみならず、 知的財産に関しても下記の取り組み を実施している。 (1)事業戦略に基づく特許取得等の 推進、リスクマネジメント グローバル市場での競争、オール 仮想化時代の新たな技術で優位性を 発揮すべく、自社開発技術について 早期に特許取得の行うことで、自社 の市場優位性を高めることが有効で のフロントランナーとして市場 あ る。 「Global Cloud Vision」 の 下、 をリードする技術開発 特にクラウド、セキュリティ、マネ NTT Com のサービス戦略やオペレ ・OpenStack の運用技術検証・開発 ージド ICT 等などの分野において ーション戦略等の事業戦略に基づ ・トランスポート SDN の分散制御 NTT Com が強みを発揮できるよう、 き、高度な技術スキルをベースとし コントローラー開発 重点的に特許出願に取り組んでいる。 たグローバル市場での競争に勝つた ・クラウド・ネットワークリソース また、グローバル市場に進展する めの技術開発を推進すること。2 つ をシームレスに連携させるオー 際には、世界規模での知的財産侵害 目 は、 オ ー ル 仮 想 化(Software ケストレーション基盤開発 リスクのマネジメントも重要となっ Defined 化) 、徹底的な自動化のフ ロントランナーとして、他社との差 ・WebR TC プ ラ ッ ト フ ォ ー ム (SkyWay)の開発 てくる。既に、海外グループ会社と も特許調査・出願等の連携を進めて 異化を図り、市場をリードする技術 (3)将来のための先行的な技術開発 いるが、各社保有の「特許の見える 開発を推進すること。3 つ目は、技 ・製造業界と連携したインダストリ 化」を行うなど更なる情報連携強化 44 ビジネスコミュニケーション 2016 Vol.53 No.1 エンタープライズICT総合誌 月刊ビジネスコミューニケーション(Webサイトへ) を推進し、NTT Com グループ全体 行っている。NTT Com のビジネス をお客さま向けサービスの改善や発 での効果的な知的財産マネジメント 領域のグローバル化に伴うケース以 展、新たなサービス開発等へ適用で を行っている。 外にも、昨今ではクラウド系サービ きるよう推進している。 スが輸出規制対象になるなどの法改 また、社内の業務プロセス改善(効 ジメント 正の要因で輸出関連相談が年々増加 率化、自動化等)にもその成果を活 先述のとおり拡大するグローバル しつつある中で、クラウド等のビジ 用することで、業務品質向上、コス 展開にあわせて世界 60 ヵ国以上で ネススキーム単位で輸出管理を一括 ト削減等を図っている。 自社ブランドの商標登録を推進する チェックする等の効率化に取り組む 等により、NTT Com のプレゼンス ことで、適正な法令の順守だけでな ONF(Open Networking 向上にも貢献している。 く、サービス提供の迅速化にもつな Foundation)や IETF、W3C といっ がっている。 た社外の各種団体や標準化組織に参 (2)ブランド戦略に基づく商標マネ 具体的には、世界約 50 ヵ国で権 利取得している「Arcstar」ブラン NTT 研究所および各種団体、 コミュニティとの連携 ド の 他、 デ ー タ セ ン タ ブ ラ ン ド 「Nexcenter」、ワンストップ ICT マ ネジメントサービスブランド 自社開発の推進に加え、中長期的 「Global Management One」といっ な視点で NTT 研究所や各種団体と た各種ブランドの商標登録を世界各 いった外部組織との連携強化を図っ 国で行った。 ている。 また、近年では NTT グループの (1)NTT 研究所との連携 (2)社外の各種団体との連携 画し、SDN や WebR TC における新 たな技術やユースケースの提案を積 極的に行っており、グローバルで各 種団体と連携した技術開発を進めて いる。 (3)コミュニティとの連携 さらに国内外のパートナー企業、 ベンチャー企業やコミュニティと連 グローバルでのプレゼンス拡大に伴 技術戦略部門では、NTT 研究所の 携し、新たな技術やサービスの創出 い、NTT グループブランドの不適 研究開発技術を HP 等を通じて社内 を積極的に進めている。OpenStack 切な使用例も世界各国で見受けられ 関係者へ発信し、また、NTT 研究所 Foundation に対してはバグ修正を中 るようになってきている。こういっ と社内関係者との意見交換の場を用 心に様々なコントリビュート活動を たケースに対しては、他社商標への 意し、事業者目線の声を直に伝え、 実施すると共に、クラウドサービス 異議申立てや無効化対策等の NTT さらに経営陣クラスで NTT Com の への商用導入など、NTT グループと グループ全体での対策を行うことで 技 術 戦 略 を 提 示 し 議 論 す る な ど、 しての活動が評価され、2015 年の NTT グループ全体のブランド価値 NTT 研究所の研究開発が NTT Com OpenStack Summit Tokyo での Open 向上に寄与している。 の事業に資するような活動を積極的 Stack Superuser Award の受賞につな に行い、NTT 研究所の研究開発成果 げることができた(図 1 がその受賞 の際の模様である)。 技術輸出に関する取り組み 適正な技術輸出管理を図るべく法 このような取り組み 令順守と業務効率化の両面からの運 により、NTT Com およ 用ルールの整備、維持を一元的に行 び NTT 研 究 所 の 成 果、 う技術輸出管理室を設置し、社内各 国内外の最新技術等を 組織からの輸出案件相談に対する適 連携させ、グローバルな 切な社内手続きの遂行のためのサポ 競争を勝ち抜く技術開 ートやアドバイス、また社内研修を ビジネスコミュニケーション 2016 Vol.53 No.1 図 1 OpenStack Superuser Award 授賞式 発を加速させている。 45
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