京都第二赤十字病院 - 京都府立医科大学

医学フォーラム
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<病 院 だ よ り>
京都第二赤十字病院
院長
は
じ
め
日下部 虎 夫
に
日本赤十字社には全国に 92の医療施設があ
りますが,それぞれの日赤病院は各都道府県の
日赤支部の管理下にあり,それぞれ独立採算で
運営されています.
京都の支部は山田啓二京都府知事を支部長と
して京都第一,第二赤十字病院および舞鶴赤十
字病院の三病院と血液センターを有していま
す.京都府立医大の関連病院として地理的に非
常に近距離に位置し,日常診療や臨床研究面で
重要な役割を有しています.
病 院 の 沿 革
当院の歴史は明治 45年の府庁敷地内の常設
救護所にはじまり,大正 15年(1926年)25床
の入院病床設備を有する病院が設けられ,この
〒6028026京都市上京区釜座通丸太町上ル春帯町355
‐5
日をもって当院の創立記念日としています.そ
の後,昭和 9年に病院の規模拡張の必要性から
東福寺近くに新病院(現:京都第一赤十字病院)
ができ,当時の職員の大半はそちらに移動しま
した.しかし,当地の近隣住民からの強い要望
によって診療が継続され,昭和 17年 1月に現在
地において 50床の新たな病院(日本赤十字社京
都府支部中御門病院)が設立され,翌年に京都
第二赤十字病院と改称され今日に至っておりま
す.このような歴史的背景により第一,第二の
名称逆転現象が生じました.その後も現在地で
増床,増改築が繰り返され現在に至っておりま
す.
当院の診療上の特徴としては,京都府で初,
全国的にも初期に設置された救命救急センター
を中心とした救急医療が挙げられます.その救
命センターも建物や設備の老朽化と相次ぐ救急
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医の退職によるマンパワーの低下によって一時
期低迷し,歴史ある当院の救急医療は苦難の冬
の時代でありました.平成 16年には救命セン
ターを中心とした A棟が新築され,その後救急
専門医の増員など,病院を揚げて全職員の努力
により,現在では救急車・患者搬入件数および
受け入れ体制を含めて診療内容・実績ともに府
下 No
.
1の座に返り咲くことができました.し
かし,低迷期間には災害拠点病院や DMAT認可
病院の指定も受けられず救急に関係する診療科
や患者さんからの不満の声も多く,病院経営上
にも大きな負債となりました.その後 10数年
が経過し,先日漸く京都府医療課等関連機関の
協力により DMAT研修に参加,チームも編成さ
れ災害医療への体制も整いました.
その他には,地域がん診療連携拠点病院であ
ることから,がん診療を中心とした重症患者の
高度先進医療においても,その実績は府民から
高く評価されています.
当院の歴史および京都の中心地という地理的
な特徴から鑑みても,多くの患者さんや職員が
集まる良質な病院ですが,狭隘な敷地面積であ
ることから,これまで小規模な増改築を繰り返
して整備を行ってきました.その結果,病院建
物は複雑老朽化し,診療提供上誠に非効率な病
院となりました.しかしながら,前述のとおり
救命救急センターを中心とした新病棟建設,そ
の後の旧病棟改修工事などで耐えてきました.
新棟建設後赤字となった時期がありましたが,
病院経営面も比較的安定しており,職員の気質
や実力についても非常に高く評価されてきたこ
とを自負しています.DPC包括医療適用病院
認定や地域医療支援病院承認,日本病院機能評
価認定など種々の運営面の病院改革がなされ,
前中島院長(現:名誉院長)の時代には,現在
ではほとんどの病院で導入されている I
T
(電子
カルテ総合医療情報システム)が全国的に先駆
けて導入され高く評価されました.
病
院
概
要
1.現況
病床数は公証許可病床数 680床,稼働病床数
639床であり,その中に救命救急センターとし
てI
CU10床と一般救急病床として 30床を有す
る高度急性期病院です.診療科としては 26科
および健診部,感染制御部と病理部,リハビリ
テーション部があり,心臓血管センター,消化
器センター,外来化学療法センター,内視鏡セ
ンターなどを設置し高度かつ効率的な医療を目
指しています.病院には一学年定員 40名,三年
制の看護専門学校を有しており,看護師養成を
大きな役割・使命の一つとする日赤の看護理念
のもとに優秀な看護師養成に努めています.ま
た,研修医制度発足当初から京都府立医科大学
からの「たすきがけ研修医」を含めて年間 20名
前後と京都府内で両大学に続いて多くの研修医
を養成し,その後の後期研修医(前期専攻医)
としての 3年間の臨床修練医制度を持ち良質な
若手医師の養成に力を注いでいます.常勤職員
数は1,
176人であり,常勤医師数は136人で臨床
修練医数 48人,研修医数 44人,看護師数 641
人を有しています.
新医師臨床研修制度認定施設,日本医療機能
評価機構認定施設,地域医療支援病院,地域が
ん診療連携拠点病院,DPC(診断群分類別包括
評価)対象病院,レセプトオンライン請求病院
など地域中核病院としての確固たる重要な役割
を担っています.
DPC制度には平成 18年発足当初より参入し
ており,平成 26年度診療報酬改定時には大学病
院と同程度の高度医療を提供する病院として評
価される DPCⅡ群病院として認定されました.
看護単位は救命センターの I
CU 2
:1
,救急病棟
4
:1
,一般病棟は全て 7
:1です.昨年度の地域
ビジョンにもとづく病床機能報告制度の申請で
は高度急性期病院として届出しています.地域
中核病院として,病診連携の充実化はもとより
近隣病院との病々連携,役割分担のための議論
を進めています.
2.病院建物の現状と将来計画
当院は京都御所,京都府庁や京都府警察本部
に近い京都市の中心部にあり,狭隘な敷地の中
で,増改築を繰り返してきた歴史があり,建物
は先に述べた救命救急センター新設時の建物で
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ある A棟以外の B(旧:南館)
,C(旧:本館)
,
D(旧:救命救急センター)棟は築 40~50年経
過しており,耐震診断結果ではかなり不安な要
素が含まれており,地震発生時の危機的状況が
予測されました.狭隘なこの地においての先の
A棟(救命救急センターを含む)の新棟建設に
おいても,旧梅屋小学校跡地を借用するにあた
り近隣住民の当院への温かいご支援によって実
施できたものであります.過去の東福寺近くへ
の病院移転後における当地での病院診療再開お
よび当院の発展には近隣住民の信頼・支援によ
るものであり,近隣住民から厚い信頼を受けて
いる病院であることは変わりません.
現在の老朽化した当院の新病院建設について
は,新棟建設準備(将来計画検討)委員会を設
置し検討していますが,職員はもとより近隣住
民は当地における新病院建設を切望しておりま
す.しかしながら,狭隘な現在地での建設には
問題が山積みです.
京都市からの今年 12月の建物耐震診断公表
をひかえて,昨年 12月から B,C,D棟の耐震
補強工事を実施しました.その期間中,病床が
40~60床減少することになり,在院日数の短縮
化や病床の効率利用を全職員の協力と工夫で先
日ようやく工事が終了しました.これからの巻
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き返しに期待しています.今回の工事を含め
て,狭隘な当院は増改築を繰り返して現在に
至っており,ハード面では非常に非効率的な病
院です.しかし,近隣病院の新設化を横目に,
当所の立地条件,府・市民からの深い信頼性お
よび良質な職員の資質などで,頑張ってきまし
た.当院北に隣接する京都府警察本部別館の移
転先およびその計画が公になった今,その跡地
を借用しての新病院を全職員が熱望しており,
当院の中・長期計画案として府知事への申請を
行っています.
京都府支部長である知事の了解が得られれ
ば,全職員がそれぞれの職域別に将来の理想的
病院新設に向けての準備を進めるつもりでおり
ます.新病院においては,ヘリポートの設置,
広域災害拠点病院,感染症対策拠点病院,小児
三次救急センター,健康長寿支援センター,外
来日帰り手術センター,入院サポートセンター
など京都府民に対する種々の医療支援事業を含
めたものになるものと思います.これらの事業
構想も京都府立医科大学の最も近くにある関連
病院として,深く連携が可能となるために,そ
れぞれの役割・機能と関連付けて計画すること
が大切であると考え,大学との親密な協力によっ
て成り立つものと考えています.