気象情報自動アナウンス装置

第44回 番組技術展 開催にあたって
今年は我が国において1925年の放送開始から90周年の節目にあたります。ラジオ放送から
始まり、テレビ、衛星放送、デジタル放送へと放送は格段の進化を遂げました。ハイビジョンは今で
はあたりまえの技術でありますが、研究開始は半世紀前、まさに前回の東京オリンピックが開催さ
れた1964年でした。改めて歴史の重さを痛感する今日この頃です。
さて、番組技術展は今回で44回目を迎えます。番組技術展で紹介するアイテムは、現場の技術者
が肌で感じたニーズを知恵と工夫によって機材やシステムとして実現し、放送に活用されてきた
ものです。放送の現場で、技術者たちが脈々とそのDNAを引き継いできた結果だと考えています。
今回は災害報道に資する機材ならびにハイブリッドキャストやスーパーハイビジョンなどに
関する開発を含め、27項目の成果をわかりやすく展示しています。ぜひ、多くの方にご覧いただき、
率直なご意見を頂戴したいと思っています。
2020年のオリンピック・パラリンピックの東京開催が決定し、いっそうNHKの技術に対する期待
が高まっています。私たちは技術の役割をしっかりと果たしていくとともに、
「 信頼をより確かに、
未来へつなぐ創造の力」を念頭に、視聴者のみなさまの期待に応えていきます。
2015年1月
NHK放送技術局長
宮 本
孝
01
【 一般展示 】
1
MAPLE −双方向番組を簡単に行えるシステム−
広島放送局/福岡放送局
04
2
災害情報のデータ放送・ホームページ マルチユース展開
放送技術局/編成局/技術局
04
3
気象情報自動アナウンス装置
4
収録内容確認アプリ BMビューア
放送技術局 メディア技術センター
05
5
基幹放送所のアラーム通報機能の改善
大津放送局
06
6
2TS比較監視 ∼一致/不一致を一目で∼
放送技術局 メディア技術センター
06
7
ラジオ音質評価装置
岐阜放送局
07
8
LEDスポット自動切替器
放送技術局 報道技術センター
07
9
22.2chミュージックアップコンバーター
デザインセンター
08
10 NHK Hybridcast(ハイブリッドキャスト)
放送技術局 メディア技術センター/
放送技術研究所/編成局/メディア企画室
08
11 SHV用 2レイヤーマルチマイクアレイ
名古屋放送局/デザインセンター
09
12 高機能化ハイブリッドセンサーによるバーチャルスタジオ
02
(株)NHKメディアテクノロジー/放送技術研究所
05
放送技術研究所/(一財)NHKエンジニアリングシステム/
09
(株)NHKアート/長野放送局
13 水中ワイヤレスIP伝送装置
放送技術局 報道技術センター/放送技術研究所
10
14 高速トラッキング撮影システム
甲府放送局/放送技術局 報道技術センター
10
15 GPS制御を使った「無人飛行撮影システム」
放送技術局 制作技術センター
11
16 ウルトラロー雲台
大阪放送局
11
17 小型4Kフォーカスアシスト装置
放送技術局 制作技術センター
12
18 山岳中継用 超小型軽量スイッチャー
報道局
12
19 遠赤外線ズームカメラ
放送技術局 報道技術センター
13
20 高演色性白色LEDフラッドライト
放送技術局 制作技術センター
13
21
緊急警報放送対応リモコン「ピロ太郎」
岡山放送局
14
22
河川カメラ放送システム
新潟放送局
14
23
地震・津波・気象警報の館内向け自動アナウンス装置
仙台放送局
15
24
スマートクローズアップシステム
放送技術局 制作技術センター/新潟放送局
15
25
ニュースカーFPU伝送支援アプリケーション
高松放送局
16
26
モバイル回線を利用した緊急報道車両サポートシステム
札幌放送局
16
27
地震速報を用いた揺れ映像の自動伝送システム
松山放送局/放送技術研究所
17
【 技術移転 】
28
放送技術研究所/
(一財)NHKエンジニアリングシステム
NHK技術の移転(技術協力とライセンス)
18
会場案内図
大型モニタ
13
12
14
11
16
15
17
18
10
9
19
23
22
21
20
24
8
25
アンケート
コーナー
7
6
5
4
3
2
1
28
27
26
受付
入口
出口
03
【 一般 展 示 】
ワンボタンで双方向番組をもっと身近に!
1
MAPLE −双方向番組を簡単に行えるシステム−
Making interActive Program controL systEm
広島放送局/福岡放送局
概 要
福岡県・広島県で放送されている夕方の番組で、デー
タ放送を使ったクイズコーナーが人気を集めています。
データ放送を使ったクイズコーナーには、データ放送
の制作設備以外にも、回答受付の開始/終了の制御や、
投票数の表示のために、いくつもの装置を使用します。
そこで、より少ない人数で効率的に番組制作することを
目指して、双方向番組を実施する上で必要な装置を一
括して制御するシステムを開発しました。
特 長
・スタジオで、タブレット端末を用いて演出できる
・
「ニュース送出卓」
と連動して動作するため、個別の制
御が不要である
・番組中に回答数が変化する様子をグラフ化し、盛り上
がる瞬間を把握できる
・コンテンツの登録や各種設定が誰でも簡単にできる
使用予定
NHK広島放送局「お好みワイドひろしま」
協力:(株)メディアキャスト
NHK福岡放送局「熱烈発信!福岡NOW」
あらゆるメディアへ災害情報などを効率的に配信!
2
災害情報のデータ放送・ホームページ マルチユース展開
放送技術局/編成局/技術局
概 要
地震や台風などの自然災害、ライフラインといった
特に重要な情報をいち早く伝える方法として、放送して
いる映像を縮小し余白部分に文字スーパーで情報を
付加する「L字型画面」があります。
NHKでは、L字型画面で伝えた情報をデータ放送や
ホームページにも利用し、各メディアに応じて情報を
提供しています。今回、このL字型画面の文字情報をマ
ルチユースするためのシステムを開発し、より迅速に、
そして効率的に複数のメディアに展開できるようにな
りました。
特 長
・L字型画面の文字情報を利用し、迅速にデータ放送や
ホームページへ情報を提供できる
・データ放送やホームページのコンテンツでは、より多
くの最新情報を一度に表示できる
サービス実績
すでにNHK全国放送局で運用されており、総合テレビ
のL字型画面とデータ放送、各放送局のホームページ
04
で見ることができます。
協力:(株)NHKメディアテクノロジー/(株)ヘッドジャパン
【 一般展示 】
より自然で聞き取りやすい音声に
3
気象情報自動アナウンス装置
(株)NHKメディアテクノロジー/放送技術研究所
概 要
テキスト形式の気象情報を台本に沿って自動アナウ
ンスするシステムです。より人に近い音声で読み上げる
システムを開発しました。放送技術研究所が開発した
話速変換技術を活用し、放送時間枠に合わせてアナウ
ンスできます。
現時点で対応している気象データは気象庁の天気予
報、週間予報、警報・注意報です。
特 長
・クラウド内のサーバーが気象情報のデータを受信・解
析し、音声ファイルを制作します。 ・インターネット接続環境があればクライアント端末の
設置のみで簡単に導入できます。
・WEBブラウザで台本作成や送出スケジュールの設定
が可能です。
今後の展開
ラジオ放送局、ケーブルテレビ局での導入を想定し
ています。
送出スケジュール設定画面
クライアント送出画面
どこでも、だれでも、簡単に!
4
収録内容確認アプリ BMビューア
放送技術局 メディア技術センター
概 要
放送センターでの番組制作・送出のフローは、
「テー
プ」から「ファイル」へ移行し、サーバーから各番組を送
出しています。
現在、番組の制作において、ファイルを持ち運ぶとき
や一時的に保管するときには、BM(ブリッジメディア)
と呼ばれる持ち運び可能な大容量ハードディスクを使
用しています。BMは1台にたくさんの素材や番組を保
BM (左) と BMビューア(右)
存できますが、
どのような内容が保存されているのか、
あとどのくらい収録できるのか、簡単に確認できませ
残容量表示機能
んでした。
そこで、BMと接続するだけで「どこでも、だれでも、
簡単に」保存内容が確認できるツールを作りました。
特 長
・タブレットで持ち運びやすい
・空き容量とともに、収録可能時間の目安を表示
・動画の簡易再生機能
技術情報メタファイル表示機能
・技術情報メタファイル *をわかりやすく表示
*技術情報メタファイル=番組情報などを記述したデータファイル
共同開発:(株)フォトロン
05
【一般展示】
セキュリティも安心。放送所監視をサポートします!
5
基幹放送所のアラーム通報機能の改善
大津放送局
概 要
NHKのテレビやラジオの放送所には、設備障害を検
知して、電話やメールで通報するアラーム通報装置が
あります。
しかし、夜間は設備ごとのアラームの内容が
集約されて管理者に通報されるため、詳細な障害の内
容を的確に把握することができませんでした。そこで、
ログを解析し、詳細な障害内容をメール通報し、さらに
それを視覚化して管理者に伝えるシステムを開発しま
した。
特 長
・設備を監視する放送所リモコンのログファイルを解
析し、内容を自動判別しメール通報
・放送所リモコンとの通信にシリアル通信を採用し、セ
キュリティーに配慮
・ログを解析し、系統図上に障害箇所を表示する作画
機能を搭載(開発中)
今後の展望
滋賀県内での開発を契機に、全国のNHKに導入され
る予定です。
放送の中身がわかるんです!! 見えるんです!!
6
2TS比較監視 ∼一致/不一致を一目で∼
放送技術局 メディア技術センター
概 要
24時間安定した放送を確保するため、送出設備は本
番系と予備系の2重化構成となっています。
デジタル 放 送で は 映 像・音 声 の ほ か に 、番 組 情 報
(EPG)やデータ放送などの信号も多重しており、それ
らの信号を確実に送出・監視する必要があります。
そこで本番系と予備系の2つの信号(TS:Transport
Stream)を比較し、設備障害時に迅速なバックアップ
を支援するシステムを開発しました。
特 長
・映像や音声レベルを表示し、本番系/予備系の送出
状況を監視
・TSの一致/不一致を、緑/黄/赤の3色で表示
・映像、音声、EPG、データ放送など項目ごとに監視可能
・各TSの詳細データも確認可能
・地域放送局でも活用できる高い汎用性
今後の展望(現在検証中)
・運用性向上に向けた開発
・放送センターの地上デジタル放送全レンジへの展開
を検討
06
2TS比較監視の画面イメージ
共同開発:(株)トラフィック・シム
【 一般展示 】
勘・コツから客観評価に!
7
ラジオ音質評価装置
岐阜放送局
概 要
ラジオの音質は、主に受信レベルや混信の度合い、
受信機の性能などによって変化します。これまで、ラジ
オの音質評価は測定者の主観によるところが大きく、ば
らつきが生じてしまうという課題がありました。そこで、
「疑似S/N」
という概念を導入し、誰でも簡単に音質を評
価できる装置を開発しました。
疑似S/Nとは、強電界地点で計測した時報音レベル
(基準信号S)
と調査地点での無音レベル(ノイズレベル
N)によって算出する値です。これにより、ラジオ音質の
評価データを効率的に収集でき、より詳細な受信状況
の分析が可能となります。
特 長
・
「疑似S/N」
という、客観的に評価できる指標を導入
・効率的かつ再現性の高い音質評価が可能
今後の展望
・各種サンプル音源を分析し、評価アルゴリズムの向上
を図る予定
・本装置を用いた受信調査エリアを拡大予定
協力: (株)フォービット
次世代照明設備の新たな味方!
8
LEDスポット自動切替器
放送技術局 報道技術センター
概 要
ニューススタジオで人物に照射する照明は、障害時
に備えて予備の照明を準備します。
白熱灯を光源に用いた従来の自動切替器では、断球
時に生じる回路のオープン状態(電流値0)を検出し、
切替動作を行っていました。
本切替器は、障害時にも電流が流れるLED照明器具
の特徴を考慮し、調光信号に対する消費電流値を事前
に記録し、その基準データと不整合が検出された際、
障害と判定し、予備照明への切替を自動で行います。
特 長
①基準データ収録機能
⇒調光信号に対する、消費電流値を記録します。
②アドレス設定機能
⇒512チャンネル分の調光信号から監視灯体の調光
信号を判別します。
③手動切替機能
⇒バックアップ灯体への手動切替を行います。
内照式スイッチにより切替器の状態を表示します。
放送実績
・おはよう日本、ニュース7、ニュースウオッチ9
共同開発:富士ライト商事(株)
07
【一般展示】
あっという間に22.2チャンネルサラウンド音楽に!
!
!
9
22.2chミュージックアップコンバーター
デザインセンター
概 要
ステレオ・モノラル の 音 楽 素 材を、リアルタイムに
22.2チャンネルサラウンドに変換する機器を開発しま
した。音楽だけでなく、過去にステレオで制作された音
源も、22.2チャンネルサラウンドに変換し、再生する
「メディアコンバーター」
としても利用できます。
用 途
既存の音楽素材を、スポーツ、美術、自然、
ドキュメン
タリー、
ドラマなど多岐に渡る8KSHVコンテンツの制
作に使用できます。また、
リアルタイムに変換できるの
で、生放送での音楽再生に最適な機器です。
特 長
・簡単操作で、あっという間に22.2chサラウンドに。
・膨大なステレオ音楽資産が使え、効率的に作品に貢献。
・音場を視覚化し、画面上で自由に操作可能。
・コンパクトな設計で持ち運びも容易。
使用実績
SHV「ワールドカップ TM音楽PV」
「牧野植物図鑑」
「富士
【GUI画面イメージ】
山森羅万象」など多数。
協力:(株)フォービット
進化する放送通信連携サービス!
10
NHK Hybridcast(ハイブリッドキャスト)
放送技術局 メディア技術センター/放送技術研究所/編成局/メディア企画室
概 要
放送と通信を連携させた「NHK Hybridcast」。2014年
9月2 9日からは、総 合テレ ビ に 加え、Eテレ、B S 1、B S
プレミアムでもサービスを展開しています。
ハイブリッドキャストは放送で送られる番組とイン
ターネット経由で提供される情報を連携させることで、
多彩なサービスを実現することができます。
特 長
・放送番組を軸に多様な通信コンテンツでサービスを拡張
・番組の進行に合わせたコンテンツや機能の切替
・スマートフォン・タブレットを使ったインタラクティブ
なサービスの提供
・番組に関連する動画のオンデマンド提供
・データ放送より鮮明な画質・多彩な表現で情報を提示
今後の展開
・マルチビューや多言語字幕など視聴者の個別のニー
ズに応えるサービスを目指し、NHK Hybridcastの更
なる充実を図っていきます。
08
【 一般展示 】
簡単設置!軽量!8Kスーパーハイビジョンのロケ・スポーツ中継・コンサート収録で活躍!
11
SHV用 2レイヤーマルチマイクアレイ
名古屋放送局/デザインセンター
概 要
SHV用 2レイヤーマルチマイクアレイは、SHVコンテ
ンツ制作において、周囲の環境音を収音するための多
数のマイクを取り付ける機材です。これまでのSHV制作
では、和傘職人の技を生かしたアンブレラ型のマイク
アレイを使っていましたが、構造上どうしても発生して
しまう「風切音」がオーディオエンジニアを悩ませてい
ました。今回、このアンブレラ型特有の問題を解消する
と同時に、マイクを付けるロッド角度も変更可能で、軽
量なマイクアレイを製作しました。
特 長
・簡単設置…一人でも2レイヤーの収音が容易に可能
・軽量…ロッド部にカーボンファイバーを採用(重量は980g)
・低コスト…アーチェリー用の矢を再利用し低廉化
・設置場所に応じて形状をアレンジ可能
開口角:90度/60度 ロッド長さ:1m/0.5m
使用実績
平成26年
8月:音響デザイン22.2chサウンドライブラリー収音
9月:SHV新日本百景(立山)、日本オープンゴルフPV
10月:N響コンサートPV、宝塚公演PVなど
今後の展望
強度を高めるためのオプション部品を開発予定。
協力:
(株)アイ・ティー・ケー
豊かな表現を低コストに実現
12
特許出願中
高機能化ハイブリッドセンサーによるバーチャルスタジオ
放送技術研究所/(一財)NHKエンジニアリングシステム/(株)NHKアート/長野放送局
概 要
カメラの映像とCG(コンピューターグラフィックス)をリアルタイ
ムに合成するバーチャルスタジオは、多彩な演出が可能で、
さまざ
まな番組で利用されています。
しかし、バーチャルスタジオは多数
のセンサーを必要とする高価なシステムです。
そこで複数のセンサーを統合してカメラの動きを正確に計測する
ハイブリッドセンサーを開発し、ハンディカメラやクレーンカメラなど
でも手軽にバーチャルスタジオを利用できるシステムを開発しました。
今回、照明センサーを加えてさらにハイブリッドセンサーを高機
能化し、
自然な照明をバーチャルスタジオ内で表現できるようにな
りました。セットには、全天周カメラで撮影した映像を利用でき、低
コストでバーチャルスタジオを構築できます。
特 長
・カメラには小型のセンサーを取り付けるだけ
・撮影映像とCGで照明の一致した自然な合成
・CG描画には低廉なゲーム用描画エンジンを利用
・バーチャルセットに全天周実写映像も利用可能
今後の展望
さらなる高性能化と運用性の向上を図り、全国番組からロー
カル番組まで、幅広く活用する予定です。
ハイブリッドセンサー使用実績
「着信御礼!ケータイ大喜利」、
「ひるとく」、
「海と生きる」など
協力:清水建設株式会社
09
【 一般 展 示 】
ギョギョギョ!? 魚が横切っても途切れない!
13
特許出願中
水中ワイヤレスIP伝送装置
放送技術局 報道技術センター/放送技術研究所
概 要
HD画質の安定した水中ワイヤレス中継を実現する
ため、青色可視光による伝送装置と生中継に適したIP
伝送技術を開発しました。
特 長
・水中での減衰率が低い青色可視光LEDを使用するこ
とで、水中での高速通信を実現しました。
・泡や魚などの障害物により伝送路が遮断され、一時
水中ワイヤレスIP伝送のイメージ
的にデータが欠落した場合でも、受信側からの自動
制御で欠落データを優先的に再送するなど、安定伝
送を可能としたIP伝送技術を開発しました。
・水の抵抗を受けやすい長いカメラケーブルがワイヤ
レス伝送で不要になり、撮影の自由度が増すとともに、
水中撮影における安全確保も容易になりました。
今後の予定
実際に使用する水中環境で試験を行い、中継番組で
の利用を目指します。
水中ワイヤレスIP伝送テストの様子
共同開発:(株)エクスプローラ/太陽誘電(株)/東洋電機(株)
「新」映像表現!ミラーを使って高速フォロー!
14
高速トラッキング撮影システム
甲府放送局/放送技術局 報道技術センター
概 要
卓球のボールのように、高速で動く小さな被写体を撮影
し続けることは、至難の技です。
この撮影システムはカメラ
自体を動かすのではなく、
レンズの前に設置したミラーを
動かすことで、被写体を画面の中央に捉え続けます。今ま
で見たくても見ることが出来なかった まさにその瞬間 を、
全く新しい映像で、視聴者のみなさまにお届けします。
特 長
画像処理ではなく、
ミラーを動かすことで、
「1000分の
1秒の反応速度」
と
「高精細な画質」を実現します。
活用例
・卓 球 高速ラリーやボールの回転
・テニス IN/OUTの判定
・野 球 投球からバットに当たる瞬間
・バレーボール アタックの瞬間やIN/OUTの判定
今後の展開
・オリンピックなどのスポーツ中継
・自然科学番組など
10
共同研究・開発:群馬大学/東京大学/(株)エクスビジョン
【 一般展示 】
小笠原諸島・西之島へ最接近!
15
GPS制御を使った「無人飛行撮影システム」
放送技術局 制作技術センター
概 要
西之島の脇に出現した火山島は、今も活発な噴火活
動により拡大し続けています。1年以上活動する火山島
は大変珍しく、世界中から注目を集めていますが、半径
6キロ圏内は立入りが禁止されているため、研究者さえ
も近づくことはできません。
NHKでは、誰も近寄ることのできない火山島の状況
を伝えるため、自律飛行する無人飛行機に「高解像度・
高感度」カメラを搭載し、日々変化する西之島を上空か
ら撮影しました。撮影に使用した無人飛行機はGPS信
号を使い、小笠原・父島から西之島まで往復260kmを
完全自動で飛行できます。
特 長
・GPS信号を使い260kmを「完全自動飛行」
・離着陸の際にパラシュートを使うため「滑走路レス」
・4Kカメラと高感度カメラで「鮮明な映像」を撮影
・GPSデータを利用し「詳細な3D映像」を生成
放送実績
年始特集「日本列島誕生」
(今後も取材を継続して放送していく予定)
前人未到!究極のローアングル撮影
16
ウルトラロー雲台
協力:フジ・インバック(株)/(株)ゼクー
特許出願中
大阪放送局
概 要
これまで、ロー三脚より低い位置から撮影したいとき
は、カメラを床に置き、クサビや砂袋などで固定してい
ました。
しかし、カメラを固定すると、アングルの微調整
や水平をとるのに時間を要するだけでなく、画角も固
定でパン・チルトといったカメラワークもできないとい
う問題がありました。
そこで、カメラを低い位置に保ったままパン・チルト
ができる雲台を開発しました。
設置が容易で、素早く撮影できるので、現場での運
用性にも優れ、すでにドラマ制作の現場で大活躍して
います。
特 長
・カメラを低い位置に保持したまま、パン方向は360度
以上、チルト方向は±40度という広い可動範囲を実現
・様々なレンズや付属品に対して重量バランス調整可能
・水準器と調整ジャッキによりセッティング時間を大幅に短縮
使用実績
共同開発:実原製作所
連続テレビ小説「マッサン」
・木曜時代劇「銀二貫」
11
【 一般 展 示 】
4K撮影で苦労しているピント合わせ作業を視覚的にアシストします
17
特許出願中
小型4Kフォーカスアシスト装置
放送技術局 制作技術センター
概 要
HD(2K)よりも高精細である4Kコンテンツの制作では、
わずかなフォーカス(ピント)のずれも目立ってしまうため、
正確にフォーカスを合わせることが求められます。現在、制
作現場ではフォーカスを確認するため30インチ以上の4K
モニターを持ち込むなど、フォーカス作業に大きな労力を
費やしています。
そこで、フォーカス作業を支援する小型で軽量なアシスト
装置を開発しました。本装置は、4K映像品質で高周波成分を
抽出した映像と、HDにダウンコンバートした映像を重ね、フ
ォーカスが合った領域のみ色を付加することで、フォーカス
の状態を表示します。スポーツのように動きの速い被写体を
4Kで撮影するときでも、容易にフォーカス作業が可能です。
特 長
・小型軽量で、カメラ背面のVマウントアダプタに装着可能
・4K(SDI)出力機能をもつすべての4Kカメラに対応
・フォーカスアシスト映像とD/C(2K)映像を同時に出力可能
・フォーカスアシストON/OFFとゲインをリモート制御可能
≪対応する映像フォーマット≫
入力モード
4K(square division/2-sample interleave)
入力形式
3G-SDI(level-A/level-B)、1.5G-SDI
入力信号
QFHD 60P, 59.94P, 30P, 29.97P
出力信号
FHD 60P, 59.94P, 30P, 29.97P
共同開発:(株)計測技術研究所
山でのマルチカメラ中継をコンパクトに実現!
18
山岳中継用 超小型軽量スイッチャー
報道局
概 要
山岳中継では、安全確保の観点からできる限り機材
を軽量にしなければなりません。そのため、重くて大き
いスイッチャーを必要とするマルチカメラ中継を山岳
で行うことは難しく、カメラ1台の中継にせざるを得な
いケースが多くありました。
そこで、山岳でのマルチカメラ中継に必要な機能に
特化した、超小型軽量のスイッチャーを製作しました。
外観
スイッチャー部
(W205×D148.5×H91mm)
特 長
・従来の約半分の重量(1.4kg)で運搬容易
・3入力2出力(フェード切替が可能)の映像を確保
・入力映像に付随した音声も任意に選択可能
・スイッチャー部とモニタ部を一体化し耐久性を向上
使用実績
・平成26年5月「情報まるごと」北アルプス燕岳中継
・平成26年5月「イブニング信州」北アルプス燕岳中継
ブロックダイアグラム
12
【 一般展示 】
遠赤外線カメラでの撮影を「より身近に!より実用的に!」
19
遠赤外線ズームカメラ
放送技術局 報道技術センター
概 要
∼遠赤外線ズームカメラ∼
東日本大震災後、福島第一原発を遠方から かすみ
なく撮影することを目的として、遠赤外線を使用した超
望遠カメラを開発してきました。今回さらなる運用性の
向上を目指して、
「レンズのワイドズーム化、軽量化」を
行って機動性の改善に取り組みました。
特 長
・夜間でも撮影可能(主に熱に反応するため、光源が不要)
・カメラ全体の重さを約13kgに軽量化(以前は30kg)
・三脚は通常のロケ用三脚を使用可能
・バッテリー運用が可能(約2時間)
・レンズのワイド端は25㎜、ズーム倍率は9倍
・色調モード(温度の高低を色で表現)も可能
・素材収録用にSDメモリレコーダーを使用
・
「ズーム、フォーカス」の制御は付属のデマンドで操作可能
※映像比較(長野県・木曽福島より御嶽山を撮影)
噴煙
∼通常のカメラ映像∼
噴煙
∼遠赤外線カメラの映像∼
噴煙
∼遠赤外線カメラの映像∼
(色調モード)
人間の目や通常のカメラでは、かす
んでしまう被写体でも、遠赤外線で
ははっきりと輪郭を映す事が可能!
噴煙と雲も温度が違うので識別可能!
協力:(株)昭和機械製作所
光源がひとつでもやわらかい!
20
高演色性白色LEDフラッドライト
概 要
放送技術局 制作技術センター
LEDフラッドライト外観
LEDのフラッドライトといえばLEDの小さな粒がいく
つも並ぶものを想像される方も少なくないと思います。
そんなイメージから脱却し、ひとつの光源から拡がり
があり、やわらかなあかりを照射するLEDフラッドライ
トを製作しました。
特 長
・光源はLEDモジュールただひとつ
・特殊なリフレクタと拡散板により拡がりがあり、やわ
らかなあかりを照射
・消費電力は200W
・演色評価指数はRa90以上
・自然空冷方式での放熱
特殊なリフレクタ
LEDモジュール
・DMX制御による調光が可能
今後の展開
先行して開発したLEDスポットライトとともに利用し、
オールLEDライトスタジオの性能向上を図るため、さら
なる改良に取り組んでいます。
共同開発:丸茂電機(株)/スタンレー電気(株)
13
【 一 般展 示 】
災害情報をいち早く伝える!
21
緊急警報放送対応リモコン「ピロ太郎」
岡山放送局
概 要
緊急警報放送は、地震や津波などの災害が発生した
際に、この放送に対応したテレビやラジオの電源を放
送波によって自動的にONにして、緊急かつ重大な情報
をいち早く視聴者に伝えるための放送です。
今回、緊急警報放送を受信すると、自動でテレビをつ
けるリモコン装置「ピロ太郎」を開発しました。
この装置
により、緊急警報放送に対応していないテレビでも、
災害発生をいち早く知ることができます。
特 長
・災害発生時、自動でテレビの電源をONにしてNHK総
合を選局
・テレビに流れる電流を測定してON/OFF状態を判定
・ガイダンス表示による初期設定
・動作後のテレビつけっぱなしを防止する自動OFF機能
協力:山陽電子工業(株)
あっ、川の水があふれそう!すぐに緊急放送だ!
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河川カメラ放送システム
新潟放送局
概 要
新潟県は信濃川を始め多くの河川が流れる水が豊富
な地域です。その反面、古くから台風や豪雨による水害に
悩まされてきました。国 土 交 通 省 は 県 内 の 河 川 沿 い
214ヵ所にカメラを設置し、河川状況を監視できるように
しています。
新潟放送局では、
この情報をもとに河川状況を把握し、県
民の安全・安心に取り組んできました。従来のシステムでは、
河川映像の確認には各カメラのIPアドレスを一つひとつ入
力する必要があり、映像の取得に手間と時間がかかりました。
そこで、ニュース制作担当者の要望をまとめ、緊急時に誰も
が簡単に扱える「河川カメラ放送システム」を開発しました。
特 長
・地図上のアイコンをクリックするだけで簡単一発表示
・
「河川ごとの絞り込み」や「お気に入り登録」も可能
・緊急生放送と長時間録画のどちらにも対応可能
・洪水予報情報も表示してカメラの選択をサポート
使用実績
新潟放送局にて運用中。緊急報道訓練を随時実施。
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協力:(株)トレックス
【 一般展示 】
耳 でも確認!
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地震・津波・気象警報の館内向け自動アナウンス装置
仙台放送局
概 要
気象庁が発表した地震・津波・気象警報などの情報を、
放送会館内に自動アナウンスする装置を開発しました。
従来は、こうした情報を専用端末や印刷された原稿で
しか確認できませんでしたが、この装置の導入により、
耳 でも内容を確認し、即座に職場全体で情報共有できる
ようになりました。速報スーパー や 上のせ といった一
報を支援するシステムとして、緊急報道に役立っています。
特 長
・パソコン1台のシンプルなシステム
・指定した地域の情報の有無もアナウンス
・収録した人の声を用いることで、自然で聞き取りやす
い合成音声を実現
・全国の地点名を登録しているので、各放送局で容易
に導入可能
運用実績
・仙台放送局では、オフィスやスタジオ副調整室などの
各部屋で運用中
協力:(有)システムデザイン北海道
・秋田放送局、青森放送局で運用中
デジタルデータ上でパン/チルト/ズーム 難しいカメラワークも華麗に決めます!
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スマートクローズアップシステム
放送技術局 制作技術センター/新潟放送局
概 要
取材先から提供される写真や紙の資料は、テレビカメ
ラで撮影(「接写」)
していますが、デジタルカメラの普及
に伴い、データで提供されることも多くなりました。本シ
ステムは、静止画データ上でパン/チルト/ロール/
ズームといったカメラワークを行い、動画ファイルとして
出力することを可能としたものです。カメラワークは、
「お天気カメラ」などで使用されている放送用ロボットカ
メラの操作方法を踏襲しているため、簡単に使用できま
す。システムには最大8192×8192ピクセルの静止画を
取り込み可能で、1920×1080ピクセルまでのズームイ
ン(拡大)
であれば、ハイビジョン解像度を確保できます。
また、静止画に影やモザイクといった特殊効果を加える
ことも可能で、テレビカメラによる写真や紙の資料の撮
影とは異なる、高品質で斬新な「接写」を実現しました。
特 長
・お天気カメラ
(ロボットカメラ)を踏襲した高い操作性
・難しいカメラワークもショットメモリーで滑らかに実行
・ズームイン(拡大)
してもハイビジョン解像度を確保
・影やモザイクも付加できるためポスプロが不要
今後の展望
共同開発:武蔵オプティカルシステム(株)
4Kおよび8K動画に対応するシステムとしても開発中
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【一般展示】
今いる場所からFPU伝送可能な基地局がわかる
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ニュースカーFPU伝送支援アプリケーション
高松放送局
概 要
緊急報道では、ニュースカーなどの緊急報道車両か
ら放送会館へ迅速・確実に素材を伝送しなければなり
ません。少しでも早く素材を伝送するため、報道現場の
担当者を支援するアプリを開発しました。アプリは、付
近の基地局をリスト表示し、現在地から伝送可能かどう
かを「○」
「×」で知らせるAndroid *アプリケーションで
す。
リアルタイムで情報が更新されるため、走行中でも
どの基地局に伝送すべきかを簡単に把握でき、迅速な
伝送体制の構築に大いに役立ちます。
特 長
・移動中でもリアルタイムに情報を更新
・伝送ポイントを随時、蓄積してデータベース化
今後の展望
ニュースカー側のタブレットと会館側のタブレットを
連携させて、会館でニュースカーの現在位置を把握し
たり、目的地を指定してナビゲートする機能を開発中で
す。
*Androidは、Google Inc.の登録商標です。
出動と同時に車載カメラ映像を伝送!クルーの安全確保と一報映像に活用!
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モバイル回線を利用した緊急報道車両サポートシステム
札幌放送局
概 要
近年、LTEなどの高速データ通信網が普及したことで、
緊急報道の現場ではIP技術を利用して伝送する機会が
増えています。
本システムは、ニュースカーなどの緊急報道車両に
設置したモバイル回線を使って、出動と同時に映像を
伝送するなど、緊急報道車両をサポートします。
利用イメージ
・現場にニュースカーが到着すると同時に車載カメラ
で現場映像を会館へ伝送する。
・地理的条件でFPU伝送ができない現場から、取材し
た素材を一報映像として伝送する。
・IP通信環境を有効利用し、現場からの伝送だけでなく
会館からの送り返し映像の伝送にも活用する。
・車載カメラは会館から操作できるため、危険の恐れ
がある場所では、現場状況をカメラで確認し、現場ク
ルーの支援や安全管理に役立てる。
使用実績
札幌局の緊急報道車両で運用し、検証を進めています。
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【 一般展示 】
リアルな地震映像を手間なく取得!
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特許出願中
地震速報を用いた揺れ映像の自動伝送システム
松山放送局/放送技術研究所
概 要
地震発生の瞬間をとらえた情報カメラの映像は、発
災の状況を伝える重要な情報源となります。
しかし、地
震発生後、常時収録している情報カメラの映像の中か
ら探し出すのは、カメラの台数が多くなるほど、大変な
作業となります。今回、気象庁の地震速報を受信すると、
自動的に地震発生時の映像素材を放送局まで公衆IP
網で伝送するシステムを開発しました。
特 長
・カメラから放送局までの回線速度が遅く、
リアルタイム
伝送できない場合でも、映像をファイル化して伝送す
るので、画質の良い揺れ映像を確実に取得できます。
・遠隔操作により、任意の時刻の映像を切り出して伝送
することもできます。
・複数の地点から同時に伝送する際には、震度の大き
い地域の映像を優先して伝送できます。
活用例
○各所の情報カメラから屋外の揺れ映像を取得
○地域の報道室に置いて室内の揺れ映像を取得
共同開発:(株)エクスプローラ
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【 技術 移 転 】
活用してみませんか、NHKの技術!!
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NHK技術の移転(技術協力とライセンス)
放送技術研究所/(一財)NHKエンジニアリングシステム
概 要
N H K の 研 究 開 発 成 果 は 、業 務 用 から民 生 品まで、
幅広い分野でご利用いただいています。
ご 利 用 い た だくことの 可 能 な N H K 保 有 の 技 術と、
その利用方法など技術移転の仕組みをご紹介します。
NHKの研究開発成果を、技術力アップや製品開発にご
活用ください。
技術移転の仕組み
・ライセンス
NHKの特許・ノウハウを実施許諾
・技術協力
NHKの技術者が直接指導
(一財)NHKエンジニアリングシステムが、相談・契約
窓口としてお手伝いします。
お問い合わせ先 www.nes.or.jp/contact.html
NHK技術カタログ www.nes.or.jp/transfer/catalog/
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第44回 実行委員会
実行委員長
放送技術局
嶋田 豊秋 専任局長
事務局長
実行委員
宮 本 孝 局 長
運行技術部
須永 千秋 副部長
クロスメディア部
長 町 亨 副部長
制作・開発推進部
増田 裕康 CE
番組制作技術部
山下 潤治 副部長
清岡 昌吉 副部長
竹原 浩之 副部長
上田 恭徳 副部長
事
務
局
ニュース・ネットワーク部
荒岡 信年 副部長
中継部
清水 義浩 副部長
総務部
平 本 晃 副部長
小坂 泰豊 副部長
宮崎 太郎 副部長
橋 本 勝 副部長
慈 道 悟 主 管
植田 久美子
第44回 番組技術展
平成27年2月9日 発行
日本放送協会 放送技術局 番組技術展 実行委員会
〒150-8001 渋谷区神南2-2-1 問合せ [email protected]