米国サッカー人気の真実

海外通信 from New York
米国サッカー人気の真実
― 侮れない米国サッカーの底力 ―
4 年に 1 度のサッカーの祭典、ワールドカップ(W
杯)が佳境を迎えている。
高まるサッカー関連ビジネスへの関心
米国のサッカー人気は今ひとつと言われている
が、私の職場の回りはW杯の話題で持ち切りだ。周辺
ファン層の拡大に伴って、映像コンテンツとして
のスポーツパブでは、W 杯の映像を肴にお酒を飲ん
のサッカーの魅力も高まっている。先日、米国大手テ
でいる集団をよく見かける。これも世界各国から人
レビ局 FOX 社が落札した次回 W 杯(開催国ロシア)
が集まるニューヨークならではの光景かと思いき
を含めた国際大会の放映権料は、11 億ドルと今大会
や、どうやらそうでもなさそうだ。
の放映権料(4.3 億ドル)の 2.6 倍に跳ね上がった。そ
れだけの大金を支払ってでも米国での放映権を確保
米国のサッカーファンは9,000万人
したいということだ。
事実、2013 年におけるサッカー関連のテレビ広告
米国で断トツの人気を誇るのはアメリカンフッ
収入は、およそ3.8億ドルと過去3年間で43%も増加
トボールである。最新の世論調査によると、全体の
した。7月11日のW杯決勝戦のスポット広告価格は、
35%が最も好きなスポーツとしてアメリカンフッ
30 秒当たり 40 万ドルとプライムタイムの人気番組
トボールをあげている。第 2 位が 14%の野球で、以
の 3 倍以上と言われている。テレビ局にとってはま
下、自動車レース(7%)、バスケットボール(6%)と
さにドル箱で、高額の放映権料を支払っても元が取
続き、サッカー(2%)はアイスホッケー(5%)に次ぐ
れるということだろう。
6 番目だ。一見、人気がないように思えるが、これは
2015 年には、ここニューヨークに新しいプロサッ
最も好きなスポーツを尋ねている点に注意が必要で
カーチームが誕生する。プレミアリーグの強豪マ
ある。スポーツ観戦が大好きな米国人の中には、ア
ンチェスターシティーとヤンキースが共同出資す
メリカンフットボールや野球と回答しながら、サッ
るニューヨークシティー・フットボール・クラブ
カーを観戦する人も少なくないからだ。
(NYCFC)である。また、マイアミにはイングランド
米ワシントンポストの調査によると、自身をサッ
元代表のデビッド・ベッカムが新たなプロチームの
カーファンだと自認する人の割合は 28%に達する。
設立を計画中だ。プロリーグ創設から 18 年が経過し
米国の人口が3億2千万人なので、およそ9,000万人の
たが、ファン層ならびに球団ビジネスの拡大余地が
サッカーファンがいる計算だ。これはサッカー強豪
いまだにあることを示している。
国であるドイツやフランス、
スペイン、イングランド
長らくサッカー不毛の地と言われてきた米国だ
などの人口を上回っており、数としては各国のサッ
が、次回W杯ではチームとしてだけでなく、ビジネス
カーファンよりも多いことになる。
の面でも世界の強豪国を脅かす存在になるかもしれ
ちなみに、プロサッカーリーグの 1 試合当たり平
ない。
均入場者数は 18,800 人と、アメリカンフットボール
(67,600人)や大リーグ(30,500人)には及ばないもの
の、バスケットボール(17,300 人)やアイスホッケー
(17,500人)
を上回っているのが現状だ。
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みずほ総合研究所 ニューヨーク事務所
所長 太田智之
[email protected]