平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭賞の決定について

平成26年11月28日
平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭賞の決定について
文化庁では, 平成9年度より文化庁メディア芸術祭を実施し, 優れたメディア芸術作品を顕
彰しております。このたび, 平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭賞が決定しました
ので, お知らせいたします。
1.応募概況
本年度は, 平成26年7月7日(月)から9月2日(火)までの間, アート, エンターテインメ
ント, アニメーション, マンガの4部門において作品を募集しました。応募総数は世界71ヶ国・
地域から3,853作品となり, そのうち国内からの応募数2,035作品は過去最多となりまし
た。
2.贈 賞
部門ごとに, 受賞作品(大賞, 優秀賞, 新人賞)を決定し, それぞれ賞状, トロフィー, 副賞(大
賞60万円, 優秀賞30万円, 新人賞20万円)を贈呈します。
また, メディア芸術分野に貢献のあった方々に功労賞を贈呈し, 賞状とトロフィーを贈ります。
3.贈呈式・報道関係者向け内覧会
報道関係者向け内覧会
日時:平成27年2月3日(火)14:00〜15:00(予定)
会場:国立新美術館[2階 企画展示室2E](東京都港区六本木)
※内覧会は17時まで開場(入場は30分前まで)
贈呈式 日時:平成27年2月3日(火)16:30〜17:45(予定)
会場:国立新美術館[3階 講堂]
4.受賞作品展
会期:平成27年2月4日(水)~2月15日(日) ※2月10日(火)休館
メイン会場:国立新美術館
時間:10:00~18:00 金曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
5.参考
11月28日(金)15:00~16:30に, 国立新美術館[3階 講堂]にて報道関係の方々
を対象とした記者発表会を実施いたします。(別紙参照)
※詳細については, 文化庁メディア芸術祭事務局広報担当(hilo Press 内)まで御連絡ください。
<広報問合せ先> TEL:03-5577-4792 FAX:03-6369-3596
<担当> 文化庁文化部芸術文化課支援推進室メディア芸術交流係
支 援 推 進 室 長
石垣 鉄也 (内線 2858)
支援推進室長補佐
猿渡 毅
(内線 2062)
メディア芸術交流係長
横尾 由美子 (内線 2895)
電話:03-5253-4111(代表)
平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭 プレスリリース 2014年11月28日
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
受賞作品発表
3,853作品の応募から、ついに決定 !
http://j-mediaarts.jp
このたび、平成 26 年度[第 18回]文化庁メディア芸術祭の受賞作品及び功労賞受賞者を決定いたしました。
文化庁メディア芸術祭は、
アート、
エンターテインメント、
アニメーション、
マンガの4 部門において優れた作品を
顕彰するとともに、受賞作品の鑑賞機会を提供するメディア芸術の総合フェスティバルです。本年度の作品
応募では、世界 71ヶ国・地域から3 , 853 作品が寄せられました。厳正なる審査の結果、部門ごとに受賞作品
(大賞、優秀賞、新人賞)
を、功労賞としてメディア芸術分野に貢献のあった方を選出しました。
来年2月3日
(火)
に開催する贈呈式では、各受賞者に賞状、
トロフィーを贈呈します。
また、2015年2月4日
(水)
から2月15日(日)
まで、東京・六本木の国立新美術館を中心に、受賞作品等を紹介する受賞作品展を開催
します。作品の展示や上映、国内外の多彩なクリエイターやアーティストが集うシンポジウムやトークイベント、
ワークショップ等の様々なプログラムを通じ、同時代の表現を紹介します。今年度を代表するメディア芸術に
触れることができる貴重な12日間です。
平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭 大賞受賞作品
Photo: Google s Niantic Labs
‫ ף‬Ural-Cinema
近藤ようこ・津原泰水 /KADOKAWA刊
エンターテインメント部門
アニメーション部門
マンガ部門
イン グ レス
『Ingress』
ゲーム、アプリケーション
グー グルズ
ナイアン ティック
ラボ ズ
Google s Niantic Labs
ジョン・ハンケ
(創業者:John HANKE)
ザ ウ ーンド
『The Wound』
短編アニメーション
アン ナ
ブ ダノ ヴ ァ
Anna BUDANOVA ゴシキ
『五色の舟』
近藤 ようこ/原作:津原 泰水
※アート部門の大賞作品は該当なし
広報問合せ先
文化庁メディア芸術祭事務局 広報担当[ hilo Press 内] 鎌倉・星野・佐藤
Email:jmaf18 [email protected] Tel:03 - 5577- 4792 Fax:03 - 6369 - 3596 ※受付時間:平日10 時∼18 時
〒101- 0047 東京都千代田区内神田1-18 -11- 905
1/ 10
平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭 プレスリリース 2014年11月28日
1. 平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭 応募概況
募集部門:4部門(アート、
エンターテインメント、
アニメーション、
マンガ)
募集期間:2014年7月7日
(月)∼ 9月2日
(火)58日間
国内応募数過去最多の2 ,035作品 応募総数3,853作品
平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭の作品募集は、9月2日
(火)
日本時間18:00をもって終了いたし
ました。今年度も多くの作品が寄せられ、世界71ヶ国・地域から3,853作品の応募がありました。
そのうち、国内
からの応募数は2,035作品と過去最多となり、
エンターテインメント部門とマンガ部門の応募数も過去最多を
記録しました。
インタラクティブアート
183
219
556
139
630
70
80
メディアインスタレーション
映像作品
映像インスタレーション
グラフィックアート
ネットアート
メディアパフォーマンス
アート部門
計 1,877
ゲーム
96
映像・音響作品
359
空間表現
83
ガジェット
92
ウェブ
95
アプリケーション
57
エンターテインメント部門
計
劇場アニメーション
テレビアニメーション
オリジナルビデオアニメーション
60
単行本で発行されたマンガ
雑誌等に掲載されたマンガ
コンピュータや携帯情報端末等で
閲覧可能なマンガ
短編アニメーション
371
同人誌等を含む自主制作のマンガ
アニメーション部門
計
431
マンガ部門
応募作品総数
782
573
145
45
計
763
3,853
■海外からの応募
1,818作品/70ヶ国・地域(昨年度[第17回]2,347作品/83ヶ国・地域)
アイルランド、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、アルメニア、イスラエル、イタリア、イラン、インド、インドネシア、ウクライナ、
英国、エジプト、エストニア、エルサルバドル、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カザフスタン、カナダ、韓国、キプロス、
ギリシャ、クロアチア、コロンビア、シンガポール、ジンバブエ、スイス、スウェーデン、スペイン、スリランカ、スロバキア、
スロベニア、セルビア、タイ、台湾、チェコ共和国、中国、チリ、デンマーク、ドイツ、トルコ、ニュージーランド、ノルウェー、
ハンガリー、バングラデシュ、フィリピン、フィンランド、ブラジル、フランス、ブルガリア、米国、米国領太平洋諸島、ベネズエラ、
ベルギー、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ポルトガル、香港、
マカオ、
マケドニア、
マルタ、
マレーシア、南アフリカ、
メキシコ、モーリシャス、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、レバノン、ロシア(五十音順)
2 / 10
平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭 プレスリリース 2014年11月28日
2 . 実行委員会
会長
運営委員
審査委員
青柳 正規(文化庁長官)
青木 保(国立新美術館長)
建畠 晢(京都市立芸術大学長)
古川 タク
(アニメーション作家)
アート部門
植松 由佳(国立国際美術館主任研究員)
岡部 あおみ
(美術評論家)
佐藤 守弘
(視覚文化研究者/京都精華大学教授)
高谷 史郎(アーティスト)
三輪 眞弘
(作曲家/情報科学芸術大学院大学(IAMAS)教授)
エンターテインメント部門
飯田 和敏(ゲーム作家/デジタルハリウッド大学教授)
宇川 直宏(現在美術家/京都造形芸術大学教授/DOMMUNE主宰)
久保田 晃弘
(アーティスト/多摩美術大学教授)
東泉 一郎(デザイナー/クリエイティブディレクター)
米光 一成(ゲームデザイナー/立命館大学教授)
アニメーション部門
大井 文雄(アニメーション作家)
小出 正志(アニメーション研究者/東京造形大学教授)
髙橋 良輔(アニメーション監督)
森本 晃司
(アニメーション監督)
和田 敏克(アニメーション作家)
マンガ部門
伊藤 剛(マンガ評論家/東京工芸大学准教授)
犬木 加奈子(マンガ家/大阪芸術大学客員教授)
斎藤 宣彦(編集者/マンガ研究者)
すがや みつる
(マンガ家/京都精華大学教授)
(マンガ研究者)
ヤマダ トモコ
アート部門
工藤 健志(青森県立美術館学芸員)
小町谷 圭(メディアアーティスト/札幌大谷大学講師)
田坂 博子(東京都写真美術館学芸員/恵比寿映像祭キュレーター)
中尾 智路(福岡アジア美術館学芸員)
西川 美穂子(東京都現代美術館学芸員)
松井 茂(詩人/東京藝術大学芸術情報センター助教)
鷲田 めるろ
(金沢21世紀美術館キュレーター)
あきら
ひがしいずみ
選考委員
たけし
こまちや
ともみち
3. 各 賞
高い芸術性と創造性を基準として、部門ごとに受賞作品
(大賞、優秀賞、新人賞)
を選定
しました。
また、審査委員会の推薦により、
メディア芸術分野に貢献のあった方に対して、
功労賞を贈呈します。
メディア芸術祭賞(文部科学大臣賞)
大 賞:賞状、
トロフィー、副賞 60 万円
優秀賞:賞状、
トロフィー、副賞 30 万円
新人賞:賞状、
トロフィー、副賞 20 万円
功労賞:賞状、
トロフィー
このほか、優れた作品を審査委員会推薦作品として発表します。
昨年度[第17回]
文化庁メディア芸術祭
贈呈式の様子
3 / 10
平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭 プレスリリース 2014年11月28日
4. 報道関係者向け内覧会・贈呈式
※詳細は1月にご案内いたします。
受賞作品展開催に先立ち、2015 年 2月3日
(火)
に内覧会並びに贈呈式を開催します。
■報道関係者向け内覧会 ※受賞者への取材も受け付けます。
日時=2015 年 2月3日
(火)14 : 00 ∼ 15 : 00(予定)
会場=国立新美術館[ 2 階 企画展示室 2 E ]
(入場は閉場の30 分前まで)
※内覧会は17:00まで開場しています。
■贈呈式 ※贈呈式はご招待者のみ参加可能です。
日時=2015 年 2月3日
(火)16 : 30 ∼ 17 : 45(予定)
会場=国立新美術館[ 3 階 講堂]
5. 受賞作品展
※詳細は1月にご案内いたします。
昨年度[第 17 回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品展の様子
■会期 2015年2月4日
(水)∼ 2月15日
(日)
■会場 国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)※2月10日(火)休館
10:00∼18:00 金曜日は20:00まで ※入場は閉館の30 分前まで
シネマート六本木(東京都港区六本木3 - 8 -15)
スーパー・デラックス(東京都港区西麻布3 -1-25 B1F)
※開館時間、休館日は会場によって異なります。
■入場料 無料 ※全てのプログラムは参加無料です。
■主催 文化庁メディア芸術祭実行委員会
■実施内容
展示/上映/マンガライブラリー/パフォーマンス/デモンストレーション/関連イベント 参加無料
■みどころ
● 世界 71ヶ国・地域の3 , 853 作品から選ばれた作品、
約160点を一堂に紹介。
テクノロジーの進化によって変わりゆく、
同時代の芸術表現を体感できる。
現在を代表する、様々なジャンルの作品を横断的に見ることができる。
●トークイベント、
パフォーマンス、
ワークショップ等、約40のプログラムを会期中に開催。
● アニメーションや実写など多様な映像作品をスクリーンで上映。
● ゲームやガジェット作品を、
実際に手に取って体験できるスペースを用意。
● マンガライブラリーでは、
受賞作品・審査委員会推薦作品の全巻を自由に閲覧できる。
●
●
問合せ先
文化庁メディア芸術祭事務局[ CG - ARTS 協会内]
〒 104 - 0061 東京都中央区銀座 1- 8 -16 3 F
[一般受付]Tel:03 - 5459 - 4668 ※受付時間:9 時∼ 20 時
文化庁メディア芸術祭 公式ウェブサイト http://j-mediaarts.jp
http://www.facebook.com/JapanMediaArtsFestival
Facebook
http://twitter.com/JMediaArtsFes
Twitter
4 / 10
平成 26 年度[第18 回]
文化庁メディア芸術祭
受賞作品・受賞者一覧
平成 26 年 11月 28日
文化庁メディア芸術祭実行委員会
第18 回
文化庁メディア芸術祭
受賞一覧
賞名
作品名 作品形態
作者名[国籍]
優秀賞
これは映画ではないらしい メディアインスタレーション
五島 一浩[日本]
03
センシング・ストリームズ―不可視、不可聴
坂本 龍一/真鍋 大度[日本]
03
Drone Survival Guide グラフィックアート、ウェブ
Ruben PATER[オランダ]
04
Nyloïd メディアパフォーマンス
Cod.Act
04
福島 諭[日本]
05
A Tale of Tehrangeles 映像インスタレーション
Anahita RAZMI[ドイツ]
06
Symbiotic Machine ハイブリットアート
Ivan HENRIQUES[ブラジル]
06
Temps mort / Idle times - dinner scene
Alex VERHAEST[ベルギー]
06
大賞
Ingress ゲーム、アプリケーション
) 米国] 07
Googleʼs Niantic Labs(創業者:John HANKE[
優秀賞
のらもじ発見プロジェクト ウェブ、オープンソースプロジェクト 下浜 臨太郎/西村 斉輝/若岡 伸也[日本]
アート部門 メディアインスタレーション
《 patrinia yellow 》for Clarinet and Computer
メディアパフォーマンス
新人賞
インタラクティブ映像インスタレーション
※今年度の大賞は該当なし
エンター
テインメント部門
(Michel DÉCOSTERD / André DÉCOSTERD[
) スイス]
ページ
08
近藤 玄大/山浦 博志/小西 哲哉[日本]
08
APOTROPIA
09
3RD インタラクティブインスタレーション
Hedwig HEINSMAN/Niki SMIT/
Simon van der LINDEN[オランダ]
09
Auto-Complain アプリケーション、ウェブ、ガジェット
Florian BORN[ドイツ]
10
Slime Synthesizer サウンドデバイス
[日本] 10
ドリタ/エアガレージラボ(川内 尚文/佐々木 有美)
5D ARCHIVE DEPT. 映像作品
香月 浩一[日本]
10
The Wound 短編アニメーション
Anna BUDANOVA[ロシア]
11
高橋 渉[日本]
12
handiii ガジェット
Kintsugi 映像作品
アニメーション
部門 新人賞
大賞
優秀賞
映画クレヨンしんちゃん
「ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」 劇場アニメーション
(Antonella MIGNONE / Cristiano PANEPUCCIA[
) イタリア]
ジョバンニの島 劇場アニメーション
西久保 瑞穂[日本]
12
PADRE 短編アニメーション
SantiagoʻBouʼGRASSO[アルゼンチン]
13
The Sense of touch 短編アニメーション
Jean-Charles MBOTTI MALOLO[フランス]
13
コップの中の子牛 短編アニメーション
朱 彦潼[中国]
14
たまこラブストーリー 劇場アニメーション
山田 尚子[日本]
14
Man on the chair 短編アニメーション
JEONG Dahee[韓国]
14
五色の舟
近藤 ようこ/原作:津原 泰水[日本]
15
アオイホノオ
島本 和彦[日本]
16
李 昆武/フィリップ・オティエ/訳:野嶋 剛
16
新人賞
マンガ部門
大賞
優秀賞
チャイニーズ・ライフ
[中国/フランス/日本]
春風のスネグラチカ
沙村 広明[日本]
17
羊の木
いがらし みきお/原作:山上 たつひこ[日本]
17
愛を喰らえ!
!
ルネッサンス吉田[日本]
18
阿部 共実[日本]
18
池辺 葵[日本]
18
新人賞
ちーちゃんはちょっと足りない
どぶがわ
功労賞
岩政 隆一 エンジニアリング・デザイナー
19
小野 耕世 映画評論家/マンガ評論家/海外コミック翻訳家/海外コミック・アニメーション研究家
19
山本 圭吾 アーティスト/教育者
19
渡辺 泰 アニメーション研究者
19
アート部門
優秀賞
これは
映画ではないらしい
メディアインスタレーション
五島 一浩
GOSHIMA Kazuhiro
[日本]
作品概要
贈賞理由
従来の映画や動画を成立させる
「コマ
(静止画)」
幼少時にパラパラマンガを作った経験や、スマー
の連続とは異なり、「コマのない動画カメラ/映
トフォンで動画を撮影・公開する習慣を持つ我々
写 機」によって「動く画 像」を生み出す作 品。本
にとって、「動画」は無意識のうちに日常に溢れ
作ではこれまでの映画/動画の基本概念を問い
直す、かつてない画期的なシステムが考案・実証
されている。本作のカメラ兼映写機は、二眼レフ
ており、その定義に疑問を持つことは稀であろう。
「静止画」の連続性によってもたらされるのが「動
画」そして「映画」だが、この関係性を再検証し、
カメラの対物レンズと、光ファイバーの束、ファイ
「静止画」の連続性を伴わない「動画」の可能性
バーを通った光を露光するフィルム、フィルムフォ
を提示するのが本作のテーマである。作家の五島
ルダーをスライドさせる手動ハンドルなどが内蔵
一浩は、二眼レフを活用し、撮像部に取り付けた
された箱型の構造物である。撮影時、格子状に
光ファイバーによってイメージを画素という情報と
植え付けられた 324 本の光ファイバーは、324
して、フィルム上に記録する。ファイバー 1 本の光
画素のドットの役割を担う。ハンドルを回して内
の明度や変化が 1 本の線として露光され、またそ
部のフィルムフォルダーをスライドさせることで、
のフィルムが再生される。当然のように捉えていた
ファイバーを通った光がフィルムに露光される仕
「動画」の定義は「コマのない動画カメラ/映写
組みとなっている。このフィルムを撮影時と同様
機」により揺らぎ、論を俟たずにいた我々に「これ
にスライドさせることで、光の線として記録された
は映画ではないらしい」
と五島からの諧 謔 精神
動画を再生することができる。
(植松 由佳)
が突き付けられるのだ。
作品概要
贈賞理由
人間が知覚できない電磁波を感知(センシング)
本作は坂本龍一と真鍋大度により札幌国際芸
ま
かい ぎゃく
© 2014 Kazuhiro GOSHIMA All Rights Reserved.
優秀賞
センシング・
ストリームズ
―不可視、不可聴
し可視化・可聴化するインスタレーション作品。本
術祭のために制作された作品だ。電磁波に焦点を
作は、札幌駅前地下歩行空間(チ・カ・ホ)、モ
あて「可視化、可聴化する」
というコンセプトに二
エレ沼公園内ガラスのピラミッドの札幌市内 2ヵ
人のアーティストがコラボレーションという形で
所で展開された。モエレ沼公園では、設置され
答えている。
坂本 龍一/真鍋 大度
たアンテナが電磁波を収集、そのデータが巨大
携帯電話、ラジオやテレビなどから発せられる異
な自発光型超高精細大型ビジョンとスピーカーを
なる周波数を持つ「電磁波」は、生活環境の中で
通じてリアルタイムで可視化・可聴化された。鑑
どのように存在しているのか? 私たちは日頃、目
賞者はコントローラーで周波数を変更すること
や耳から得られる情報を元に考え、判断し、行
メディアインスタレーション
SAKAMOTO Ryuichi / MANABE Daito
[日本]
ができ、同時に存在するさまざまな電磁波を、絶
動している。本作が興味深いのは、その電磁波
え間なく変化するヴィジュアルとサウンドで体験
と札幌の地下に流れる「水 脈」とを重ね合わせ、
することになる。加えてチ・カ・ホで記録した電磁
直接的には見えないが確かに人間の生活に影響
波と対比することで、場所と時間に応じて、電磁
を与える存在を、感じ取ることができる情報に変
ストリームズ
波に生じる顕著な差異が明らかになる。現代で
換しているところだ。誰もが鑑賞できるようにする
は、必要不可欠となったインフラでありながら、
ことで、認識できなかった存在を改めて意識する
普段意識されることのない電磁波の流 れを多様
ことを促している。
な形で顕在化することで、私たちに電磁波を意
また、作品に使用されている大型ビジョンは、1mm
ストリームズ
識させ、携帯電話やスマートフォンを通じて能動
SMD(基盤表面実装型 LED)が 1.9mm ピッチ
的に関わっていることを喚起させる。
に配置され、超高精細の画像解像度だけではな
く、その表面の質感とともに新たな表現を可能
(高谷 史郎)
にしている。
Photo: Keizo Kioku, Courtesy of Creative City Sapporo
International Art Festival Executive Committee
© SAKAMOTO Ryuichi / MANABE Daito
03
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
アート部門
優秀賞
ドローン
サバイバル
Drone Survival
Guide
ガイド
グラフィックアート、ウェブ
Ruben PATER
ルーベン・パーテル
[オランダ]
作品概要
贈賞理由
一般的に使用されているドローン(無人航空機)
あらゆる場所に監視カメラが設置され、通信が傍
26 種のシルエットと、それらの使用用途、国籍、
受やハッキングにさらされる現代、ドローンのセ
そして無人航空機の偵察や攻撃から身を守るた
ンサーに検知される不安を日々生きねばならない
めのサバイバル・ガイドを記載したパンフレット。
近未来も間近かもしれない。和製レンズがよくド
特設ウェブサイトからは、印刷用データと31ヵ国
ローンに装備されるとも聞く。本作は、審査委員
語に翻訳された説明資料のダウンロードや、無
会 推 薦 作 品『 Double Standards - Somali
人航空機の監視センサーを阻害する反射性のア
と同様、Ruben PATER
Seajacks 2010−2012』
ルミ用紙への印刷が注文できる。ある報告による
が修士論文をきっかけにまとめたプロジェクトで
と2032 年にはアメリカ全土の上空を飛ぶ無人
ある。木陰に隠れる、囮を使うなど、作者が提案
航空機は 30 , 000 に上ると言う。残虐性と人道
する身を守る心得はまじめそうでいて冗談めいて
的な問題が指摘される無人爆撃機の他、運送や
もいる。無料で彼のウェブからダウンロードが可
救護のための民生機など、幅広い用途に広がる
能な、世界中の賛同者が訳したガイド、また高
無人航空機。本作は、近い将来には身近になる
反射性素材の作品を妨害用に有料で頒 布 する
この飛行体に、私たちが慣れ親しみ熟知すること
行為もユニークだ。科学技術の発達がもたらす
おとり
はん ぷ
を目的に制作された。無人航空機が私たちの上
安全性の侵害を緻密に研究して広く社会に提起
空を飛び回ることをどのような条件で許し、どう
し、対抗知性と創造的ユーモアを介して命を守
やって事故を回避するのか―。本作は、無人
る権利と行動を喚起する。身近な対処法を編み
航空機に関する知識を普及し、こうした状況をよ
出すことで、危機の実在をいち早く知らせ、認識
り身近に議論していく必要性を示唆している。
●
作品 URL 力と批評性を高める果敢な実践だと評価した。
(岡部 あおみ)
http://www.dronesurvivalguide.org
©Ruben Pater
優秀賞
ナイロイド
Nyloïd
メディアパフォーマンス
Cod.Act
(Michel DÉCOSTERD / André DÉCOSTERD)
コッドアクト(ミシェル・デコステール/アンドレ・デコステール)
[スイス]
作品概要
贈賞理由
動きに連動する音響装置を携えた長さ 6 m のナ
第 14 回そして第 16 回文化庁メディア芸術祭で
イロン製のトライポッド(三脚)が、まるで巨大な
二度の大賞を受賞している Cod.Act 。音楽家と
生物のように、複雑かつ有機的な動きと音を生
建築家のバックグラウンドを持つ兄弟ユニットに
み出す音響彫刻である。地面に固定されたエン
よる作品は常々、我々を魅了するが、今回の応
ジンの回転の影響を受けて、トライポッドは大き
募作品『 Nyloïd 』は、第 14 回に大賞を受賞した
く湾曲し、ねじれていく。構造による抵抗と、ナ
『 Cycloïd-E 』の延 長 線 上にある作 品とも言え
イロン素材の弾力で増幅された力によって、時に
るものであり、彼らのあくなき探究心をうかがう
は大らかな弧を描くように舞い、特に苦悩するか
ことができる秀作である。 6 m の巨大なナイロン
のように地面に打ちつける。肉声を分解した音
製の三脚を持った彫刻作品の 3 本の「手足」の
源が、動きに合わせて不断に組み合わされるこ
動きは、生物的なムーブメントのようでもあるが、
とにより、緊張感や怒り、親密さといったさまざ
完璧なコントロールは不可能という極めて制限
まな感情を鑑賞者に想起させる。
的なものであり、この不規則な動きに電子音響
だが、不気味な生物のようなパフォーマンスは、
が加わり、しなやかで官能的かつ力強くもありな
素材の性質、ミニマルかつ高度な機械構造、音
がら、どこか邪 悪で畏 怖の念すら抱かせる。メ
の結合という完全に無作為な動きから生み出さ
ディアアートの特性でもある高度なテクノロジー
れている。
を根幹に有しながらも、我々に作品の可動範囲
や音響によってもたらされる空間認識、身体感
覚そして感情の変容をもたらすものとして成立す
(植松 由佳)
ることが重要なのである。
Photo: Xavier Voirol
©Cod.Act
04
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
アート部門
優秀賞
パトリニア
イエロー
《 patrinia yellow》
フォー
クラリネット
アンド
for Clarinet and
Computer
コンピュータ
メディアパフォーマンス
福島 諭
FUKUSHIMA Satoshi
[日本]
作品概要
オミナエシ
本作は、女郎花(Patrinia Yellow)
という植物の
普通なら作曲コンクールに応募されたであろう、
一年の周期を表現した、クラリネットとコンピュー
このような「音 楽」作 品 がこの 文 化 庁メディア
タによる楽曲とそのライブパフォーマンスである。
芸術祭に送られてきたことをうれしく思う。それ
2013 年に韓国で初演された本作は、クラリネッ
だけではなく、作品の完成度はもとより、テクノ
ト演 奏と、その一 部をリアルタイムで録 音した
ロジーを使う意味や現代に生きる僕たちにとっ
音、更にその音源をコンピュータで処理した音
「音 楽」ではない数 多くの応 募 作 品と比 較して
分かれており、第 1 部と第 2 部はクラリネットと
卓越していた。更に、このような作品を作品とし
コンピュータの共演、それに挟まれる中間部はコ
て規定する記 譜 法 や技術解説を含む精緻な記
ンピュータのみによる独奏となっている。本作の
述、言わば「コンピュータ音楽のエクリチュール」
作曲法では、題材となった植物が持つ生命の循
にも強い必然性と説得力があり、作者の独創性
環/伸縮/リズムをさまざまなスケールで表現
(三輪 眞弘)
が感じられた。
法、パラメータが緻 密に設 定されている。本 作
は、リアルタイムの演奏と、その録音データをデ
ジタル処理して楽曲を制作する「リアルタイム・サ
ンプリング」
という手法を植物の生態的な周期に
なぞらえ、現代音楽における独自の音楽論を探
求する試みだと言える。
05
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
ての「美」とは何かを問いかける真摯な姿勢が、
で構成される。約 10 分の楽曲は 3 つのパートに
すべく、楽器演奏とコンピュータによる音の組織
©2014 FUKUSHIMA Satoshi All Rights Reserved.
贈賞理由
き
ふ ほう
アート部門
新人賞
ア
テイル
オブ
A Tale of
Tehrangeles
テランジェルス
映像インスタレーション
Anahita RAZMI
アナヒタ・ラズミ
[ドイツ]
作品概要
贈賞理由
本作はチャールズ・ディケンズの小説『 A Tale of
イラン系ドイツ人の作者は、長引く米国とイラン
Two Cities(二都物語)』に着想を得た、テヘラン
の緊張関係のさなか、両国の文化的・社会的差
とロサンゼルスの視覚的コラージュである。タイト
異を浮き彫りにする作品を既に数点、手掛けて
ルにある「Tehrangeles(テランジェルス)」
とは、
いる。本作はむしろ逆に、多民族や多文化が入
ロサンゼルス地域にあるイラン人移民の国外最大
り交じり融合するグローバル社会に生きる人々と
のコミュニティの俗称だ。作品は都市風景を映す
都市の共通性を提示する手法で、現代の不条
二つのスクリーンと、チャールズ・ディケンズの小
理を描き、問いかける。緑の空間でニュースキャ
説の序章を読み上げる作家の姿が映る解説モニ
スターのように自らが読む 2 都市をテーマにした
ターから構成される。テヘランと「Tehrangeles」
チャールズ・ディケンズの小説の言葉にも、人生
の断絶が浮き彫りになると同時に、二つの都市
と世界の両極の行く末が予感のように暗示され
の視覚的共通点から、やがて領土的・歴史的な
る。明快なコンセプトに基づく秀逸な構造化と完
境界が曖昧になり、ひとつの物語として鑑賞者に
(岡部 あおみ)
成度が、今後の活動を期待させる。
語られる。
©2013 Anahita Razmi
シンビオティック
マシーン
Symbiotic Machine
ハイブリットアート
Ivan HENRIQUES
イヴァン・ヘンリケス
[ブラジル]
作品概要
贈賞理由
『 Symbiotic Machine 』は、藻類が光合成に
生態系と共生する機械、すなわち自らの中にもう
よって放出するエネルギーを吸 収し、それを原
ひとつの生態系を抱え込んでいる機構という着
動力として水面を移動する浮遊型のバイオマシ
想は、かつての写真術の登場を思い起こさせる。
ンである。移動しながら、エネルギーの供 給源
写真 術とは、光(photo)
という自然によって対
になる光合成生物を探して集め、生き物が餌を
象を技術によって刻印(graphia)する技術であ
捕獲するように、自然環境から得たエネルギー
り、目と脳をシミュレートしたものであった。それは
を体内に取り込んで活動する。池、用水路、川
「自然」
と「文化」を架橋するメディアと言える。こ
や海に生息する微生物をエネルギー源とし、ま
の「共生機械」は現時点ではまだ試行の段階にあ
た有害な藻が発生した場合には、それらを除去
るものだろうが、これが科学とアートの間で宙吊り
する機能も備えている。アート、デザイン、バイ
になりながら、今後どのような展開を見せてくれる
オテクノロジーの融合によって、人間と自然の新
(佐藤 守弘)
のか、そこに大いなる期待を抱く。
しい共生関係を示唆する作品である。
Image: Lyndsey Housden
©Ivan Henriques
タン
モール
アイドル
Temps mort / Idle
times - dinner scene
タイムズ
ディナー
シーン
インタラクティブ映像インスタレーション
Alex VERHAEST
アレックス・ヴェルヘスト
[ベルギー]
作品概要
本作は、死というロマン主義的な主題を、集団
ある古 典 的な家 族の物 語を描く映 像インスタ
肖像画や静物画といったヨーロッパの古典的な
レーション。会場には、映像が映し出される複数
絵画の様式を採用しながら、映像や電話による
のモニターがあるが、すべてがひとつの物語とし
インタラクションという現代的なテクノロジーを
て構成されている。鑑賞者がモニター前で電話
使用することで、そこに「時 間」という次 元を付
をかけると作中の人物が応答するなど、インタラ
け加えている。映像などの諸メディアによる記録
クティブな仕掛けにより、映像に登場する人物や
が出現したことによって、時間が直線的に進むも
現実世界が関係を結ぶようになる。物語やキャ
のではなくなっている現代を、アレゴリカルに示
ラクターはいかにして作られるのか、創作プロセ
唆した意欲的な作品である。美術史を参照する
スにおける編集という操作が果たす役割、また鑑
ことで、現代における事象を異化する作品がし
賞者をいかにして幻想の世界へと誘うことができ
ばしば見られる中、作者が今後どのような展開
るのか、そしてインタラクションがどのように作用
(佐藤 守弘)
を見せてくれるのかに期待したい。
するかといった観点から、映像という作品形態を
Image: Still from Temps Mort/Idle Times
©Alex Verhaest 2014
06
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
贈賞理由
伝統的な絵画様式を彷彿とさせる映像によって、
探求する作品だと言える。
エンターテインメント部門
大賞
イングレス
Ingress
ゲーム、アプリケーション
[米国]
Googleʼs Niantic Labs(創業者:John HANKE)
グーグルズ ナイアンティック ラボズ
ジョン・ハンケ
作品概要
『 Ingress 』は、現 実 の 世 界を、多 人 数 の同
時参加型ゲームへと変えるモバイルアプリケー
ションだ。 GPS と世 界 地 図のデータベースを
使ってゲームの中の仮想世界を、現実の世界
と融合して体験することができる。ゲームの設
定では、街中のあらゆるところに「ポータル」と
呼ばれる別の次元への入り口があり、ポータル
からは「エキゾチック・マター( XM )」と呼ばれ
る不思議なエネルギーが漏れ出ている。このエ
ネルギーにはクリエイティブで知的な力があり、
ポータルにはパブリックアートや史跡、建築物
など、歴史的・文化的価値のある現実の場が
設定されている。ゲームのプレイヤーは、ポー
タルや XM を操る「シェイパー(形 成 者)」に対
抗する「レジスタンス(抵抗勢力)」と、受け入
れる「エンライテンド(覚醒者)」の二つの組織
に分かれ、仲間と協力して地図上に組織の陣
地を形成していく。
『 Ingress 』を通して現実の
世界を探検するうちに、他のプレイヤーと交流
作品 URL
http://www.ingress.com
Photo: Google's Niantic Labs
©Google / Niantic Labs
●
したり、世界中の文化的な価値が宿る場所に
たどり着いたりすることが意図されている。
贈賞理由
インターネットは新しい文化を生み出す基盤と
なった。私たちはネットに常時接続された端末
を持ち歩く生活を選択した。ネットはかつて想
定されていた「仮想空間」ではもはやない。近年
のメディア芸術では、この情報環境の中で「私た
ちはどこへ向かうのか?」を描くことが課題だっ
John HANKE
Google 副社長、Niantic Labs 創業者
Googleʼs Niantic Labs
た。これに対して『 Ingress 』は決定的なビジョ
[受賞者コメント]
グーグルズ ナイアンティック ラボズ
Niantic Labs チームの代表として、今回の文化庁メ
Niantic Labsとは John HANKE が Google で社内起
業したプロジェクトである。Google Maps や Google
Earth などの Google Geo チームを指揮してきた John
HANKE が創設した本プロジェクトは、人々を野外に
ディア芸術祭での受賞を光栄に思います。歴代の受
連れ出し、自分の足で冒険や探検させることを目的と
する。その土地の環境や他の人々との、有意義で偶
然に満ち溢れた出会いを、テクノロジーを通じて全く
新しい形で実現するものである。
賞者は、最先端の革新的な手法でアート、エンター
テインメント、テクノロジーの領域に関わる人々に大
きな影響を与えてきた方々です。そこに名前を連ねる
ことに対しては、興奮を覚えるとともに謙虚に受け止
めざるを得ません。
チック・マター」
という虚構を付加したものだ。こ
の大掛かりな仕組みとシンプルな仕掛けによっ
て、私たちは世界中のプレイヤーたちとともに、
再び現実の路上を歩き始めている。2 万歩を歩
いた日は足が痛むが、翌日は 3 万歩を歩けるよ
ての物語と、新鮮な外気を吸えるゲーム体験と、建築
うになる。明日はもっと遠くへ……! さまざま
て、インタラクティブなエンターテインメントの領域を、
な手段を用いて活動領域を広げてきた私たち
家の中での体験を超えて実世界に広げることです。
は、どこへでも行くことができるのだ。そして、そ
そうすることで、すべての『 Ingress 』プレイヤーが新
の先々で世界がずっと豊かであり続けてきたとい
たな視点で世界やお互いの存在を見ることができるよ
うなきっかけになればと思っています。
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
くの人々が共有している動的な地図に「エキゾ
Niantic Labs での私たちの使命は、フィクションとし
やアートや歴史が織り込まれた世界を豊かに紡ぎ出し
07
ンを示すことに成功している。このゲームは、多
John HANKE
う現実と出会う。
『 Ingress 』は日常を旅行者の
(飯田 和敏)
眼差しで再構築していく。
エンターテインメント部門
優秀賞
のらもじ
発見プロジェクト
作品概要
贈賞理由
町のあちこちにひっそりと佇む看板の手書き文
高齢化、過疎化が進んだ地方都市で、地元商
字には、データとしてきれいに整えられたフォン
店街の風情を継承し、地域活性化を推進する取
ウェブ、オープンソースプロジェクト
トにはない魅力がある。不思議な愛らしさや人
り組みはこれまでたくさん見られてきた。しかし、
下浜 臨太郎/西村 斉輝/若岡 伸也
間味をたたえた「のらもじ」。このプロジェクトは
この試みはさすがに前代未聞だ。都市景観に昭
風雨にさらされ経年変化し素材と馴染んだその
和レトロな佇まいを色濃く残す、商店看板の手
SHIMOHAMA Rintaro / NISHIMURA Naoki /
WAKAOKA Shinya
[日本]
様子に、デザイン的な魅力や古道具的、民藝的
書き文字を保護し、それら一点もののタイポグラ
な魅力を積極的に見出し、愛でることから始まっ
フィを形状分析の上、フォント化して、デジタル
た。本プロジェクトでは発見した「のらもじ」を鑑
ネットワーク上で配布するのだ。しかもデータの
賞し、形状を分析してコンピュータで使用可能
売り上げは持ち主に還元されるという。
「のらい
なフォントを制 作する。そのフォントはウェブ上
ぬ」でも「のらねこ」でもなく、名もなき職人達が
で配布され、ユーザーはダウンロードのうえ「の
肉筆で描き、地元コミュニティに解き放ったこれら
らもじ」を使うことでその魅力を知ることができ
「のらもじ」は、セピア色のストリートに今もひっ
る。更に「のらもじ」を後 世に残すサポートとし
そりと佇むアルカイックなタギングである。そし
て、フォントデータの代金を持ち主に還元してい
て保護された「のらもじ」たちは、フォントデータ
る。本プロジェクトは、地方都市の景観の伝承
として未来永劫生き抜くはずだ。そしてこのプロ
であり、タイポグラフィにおける「民藝運動」
とも
ジェクトは今後、列島全域に発展させる計画らし
言える。
●
作品 URL い。これは、国土地理院も Google マップも発想
(宇川 直宏)
できなかった「民藝運動」なのだ。
http://noramoji.jp
Photo: 池田陽美
©2014 Noramoji Project
優秀賞
ハンディ
handiii
ガジェット
近藤 玄大/山浦 博志/小西 哲哉
KONDO Genta / YAMAURA Hiroshi / KONISHI Tetsuya
[日本]
作品概要
『 handiii 』は 3 D プリンターで出力したパーツと
贈賞理由
『 handiii 』は筋電義手(筋肉の電気信号で操
スマートフォンを制 御に利用した「気 軽な選 択
作する義手)であり、義手を巡るプロジェクトだ。
肢」をコンセプトとした筋電義手だ。筋電義手と
高 機 能・高 性 能を目指すことで、へヴィかつ高
は、腕の皮膚上で計測される筋肉の微弱な電気
価になりがちだった筋電 義手の実用化を図る。
信号(=筋電)
を介して、直感的に操作できる義
パーツを 3 D プリンターで作り、電気信号の読み
手のことである。技術そのものは戦前からあった
取りはスマートフォンで行う。機能を必要最小限
が、市販価格は非常に高価であり、普及率は極
に制限し構造をシンプルにした。これらが生み出
めて低かった。本作では 3 D プリンターとスマー
すのは製造コストの削減だけではない。個人で
トフォンを活用することで、材料費を 3 万円以内
修理交換が可能になる。取り回しが用意になる。
に抑えている。またデザイン面においても、既存
カスタマイズ可能性が向上する。ファッションと
の義手が人肌に似せているのに対し、本作は腕
して機能させることができる。義手そのものを強
時計やスニーカーのように使う人が気分や場面
く高度化するのではなく、「弱さ」を強みとし、他
に応じて色やパーツを変更できるようになってい
者と関わることで活きてくるオープンなモノへと目
る。更に外観だけでなく、指先に IC チップやマイ
指す方向へ転換した。失われたモノの復元にと
クを組み込むなど機能面での拡張性を加えるこ
どまらず、新しい機能としての義手になり得るだ
とで、あらゆる人々が羨ましいと思う義手を目指
ろう(プロジェクトの映 像を見ていると「第 三の
す。現 在は実用化に向け、ユーザーとともに開
腕」という方向性も想像してしまう)。補助装置
発を進めている。
を超えたガジェットとしての可能性を指し示した。
(米光 一成)
ワクワクする。
©2014 exiii Inc.
08
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
エンターテインメント部門
優秀賞
キンツギ
K intsugi
作品概要
贈賞理由
本 作は作 家の自伝 的な物 語に基づいて制 作さ
ダンサーと、ヴィジュアル/音楽作家のデュオに
れた映 像 作 品である。作 者のミニョーネとパネ
よるコラボレーションワーク。そのひとり、ダン
APOTROPIA
プッチャは、2003 年に人生を大きく変えるほど
サーのミニョーネは、交通事故によってダンサー
アポトロピア(アントネッラ・ミニョーネ/クリスティアーノ・パネプッチャ)
の交 通事 故に遭った。作中で、ミニョーネは長
の命とも言える身体に深刻なダメージを受けた。
年使用してきた松葉杖を用いて情動的なダンス
この作 品に象 徴 的なモチーフのひとつとして登
映像作品
(Antonella MIGNONE / Cristiano PANEPUCCIA)
[イタリア]
きん つ
を繰り広げる。タイトルの由来となった「金 継ぎ」
場する「金継ぎ」は、日本の伝統的な修復技法
とは、壊れた陶器の継ぎ目を金で覆い修繕する
であり、破損以 前とはまた異なる趣とその履歴
日本の技法だ。破損した物を修復し、その継ぎ
に、美を見出し愛でるものだ。彼女の葛藤と闘
目に新たな趣を見出すこの技法は、物質の尊さ
いを「金継ぎ」になぞらえ、映像は展開していく。
や美しさはそこに積み重ねられた時間に宿るとい
物理的な欠損そして絶望から再生へ― 。異な
う価値観に根差したものと言える。作中で金継
るフェーズへと向かう再 生への希 望は、見る側
ぎは、肉体的・精神的な回復のプロセスの詩的
の私たち個々の事情にも重ね合わされ、希望を
なメタファーとして引用されている。彼女の涙が
与えてくれる。私小説には終わらない強さ、異質
「金 色の樹脂」になって自らの傷を癒し、トラウ
なモチーフを多彩な映像技法で提示していく方
マを受け入れて変わることで、新しい可能性が
法、そしてそのクオリティは、技術と表現、身体
開かれていく―。金継ぎの技法と、作家自身
と精神の融合を見せ、多くの作品の中でも峻 立
のリアルな個人史とを重ね合わせ、ひとりの女性
した異彩を放っていた。パーソナルな切実さの投
が再生へと向かうさまが描かれる。
影が、表層の表現以上に作品にリアリティを与
しゅん
(東泉 一郎)
え、普遍性に昇華されていると思う。
©Antonella Mignone, Cristiano Panepuccia
優秀賞
サード
3RD
インタラクティブインスタレーション
Hedwig HEINSMAN / Niki SMIT /
Simon van der LINDEN
ヘドウィッヒ・ヘインスマン/ニキ・スミット/
シーモン・ファン・デル・リンデン
[オランダ]
作品概要
贈賞理由
インタラクティブインスタレーション作品『 3 RD 』
体験者が手製の被りものを身に着けて、俯瞰的
は、公 共 空 間におけるソーシャルメディアの活
な視点から捉えた周囲の状況を頼りに、フィール
用と、それに伴う知覚の変化に着想を得た作品
ドを徘徊する作品だ。そのくちばしに似た形は、
だ。参加者たちは、鳥を模した ヘルメット を身
触覚の鋭利化と動物の攻撃性、そして逃避距離
に着けて、空間の中を歩き回る。ヘルメットの中
を想起させる。主観的な視覚は遮断され、客観
のモニターには、外 部のカメラを通じて俯 瞰さ
的な視点に置き換わるとともに、今ここにいる自
れた自らの姿が映し出される。目の前にデジタル
分の体感との間にもどかしいギャップが生じる。
な分身が現れ、まるでゲームのように感じられる
本作は、ヘッドマウント・ディスプレイを使用した
現実世界に、超・現実主義的な感覚が芽生えて
多くのバーチャル・リアリティ作品とは一線を画
いく。ヘルメットを着用した参加者たちは、俯瞰
している。ここでの興味は、そこにある空間を、
的に捉えられたモニターの映像から、空間を把
その中にいる生身の自分や他者が、情報を経由
握しようとする。客観的な視点と、主観的な感
して捉えたときどのように感じるか? 主観と客
覚のズレを感じながらも、他者や周囲の環境を
観、視 点のシフト、理 解と体 感の遊 離、といっ
知覚していく。本作は現実に対する新しい視点
た事柄についてだ。作者のこれまでの作品を見
を投げかける、新しい形のソーシャルインタラク
ても、空間の認識と体感、そのズレと一致など
ションと言える。
への興味を一貫して抱いているようだ。ここに、
はっきりとした仮説の提示はない。けれども、空
間と知覚・認知への何らかの気付きの体験をも
(東泉 一郎)
たらすだろう。
Monobanda PLAY / DUS architects
09
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
エンターテインメント部門
新人賞
オート
コンプレイン
Auto-Complain
アプリケーション、ウェブ、ガジェット
Florian BORN
フローリアン・ボルン
[ドイツ]
作品概要
贈賞理由
『 Auto-Complain 』はインタラクティブなアプリ
このアプリをサイクルコンピュータやナビのよう
ケーションと装置によって、サイクリストがより快適
に自転車に搭載し、走行中に道路のバンプを検
に走るためのシステムを実現する。アプリケーショ
知すると(道路の修復が必要な)
その箇所をスプ
ンをインストールしたスマートフォンを自転車に取
レーでマークし、更にその位置を地図に記載し
り付けて走ると、大きな道の凹みを自動的に記録
て行政に報告することができる。この作品はアプ
したり、凹みの部分にスプレーを噴射して目印を
リケーションのカテゴリーで応募され、確かにそ
付けたりすることができる。そしてその走行データ
の中核にあるのは自転車に搭載される iPhone
は、凹みの情報とともにウェブ上のプラットフォー
アプリではあるが、作品自体は単なるアプリを超
ム「auto-complain.com」に送られ、目的地に
えてガジェットやウェブ、コミュニティやポリティ
着くと、修復が必要な道路のマップが出来上がる。
クスへと広がっている。アプリは決してディスプ
マップを PDFファイルで公的な道路改修の担当部
レイやデバイスの中に収まるものではないことを
署に送れば、改善への注意を喚起することもでき
(久保田 晃弘)
示す好例でもある。
る。更にスプレーデバイスを使い、道路の凹みを
他のサイクリストへ知らせることも可能だ。
©2014 Florian Born
●
スライム
シンセサイザー
Slime S ynthesizer
サウンドデバイス
ドリタ/
エアガレージラボ(川内 尚文/佐々木 有美)
Dorita / Airgarage lab (KAWAUCHI Naofumi / SASAKI Yumi)
[日本]
作品 URL http://auto-complain.com
作品概要
贈賞理由
本作は全く新しい楽器体験をもたらす流動体、不
溶 解 するオシレーター、液 化 する LFO( Low
定形のシンセサイザーだ。スライムを触る、あるい
Frequency Oscillator )、解 凍されるエンベ
は変形させることで音が変わるこのサウンドデバイ
ローブ ……。このシンセサイザーは、不 定 形の
スは、まるで音の雲を掴んでいるような音波を作り
流動体であるスライムがパラメータとなり、演奏
出すことができる。シンセサイザー本体と自分をつ
中の身体がスライムを媒介にテクノロジーとの融
なぎ、別の接点をスライムにつなげることで、スラ
合を果たす。小説家、ウィリアム・S・バロウズが
イムを触った時に音が出る仕組みだ。本作は「ワー
提唱したソフトマシーンが女性型アンドロイドを
ボ・フォルマント・オーゲル」
(1937 年)、レイモ
想定するならば、これは、液状型トラウトニウム
ンド・スコットのシンセサイザー「Clavivox」
(52
(宇川 直宏)
だ。原生生物の想いに浸れ!
年)、そしてロバート・モーグの「モーグ・シンセサ
イザー」
(64 年)以降、かつてない不定形のシン
セサイザーを試行する楽器でもある。また音を生
み出すこと、音を変化させることに特化しているた
め、音階を出すことにこだわらず、リズムボックスと
©2014 Slime Synthesizer
しての側面も持ち合わせている。
ファイブディー
5D
ARCHIVE DEPT.
アーカイヴ
デパートメント
映像作品
作品概要
贈賞理由
次世代に残したい風景や文化を映像で保存し、伝
博多織の織機の音、陶土を砕く唐臼の音、和紙
えるプロジェクト。
「伝統的な音」をテーマに福岡・
を漉く音 ……。それら福岡県内で採 掘された、
九州朝日放送(KBC)
の地域プロモーション TV 番
古来より続く伝統文化が奏でる音たちをフィール
組として制作された。博多織の織機が奏でる筬打
ドレコーディングし、ダンストラックに組み込み、
ちの音、簀桁で和紙を溜め漉く音、木片を削る鉋
工房内でご当地アイドルとセッションを果たす、
おさ
香月 浩一
KATSUKI Kohichi
[日本]
す けた
す
かんな
がけの音―。そんな伝統工芸が奏でる音を収録
奥ゆかしくも異 形なる地 域 振 興コンテンツ。こ
し、九州発のアイドルグループ LinQ によるテーマ曲
れはクールジャパンではなく、トラディショナル・
「GARNET」のイントロとして編集し、番組ではア
イドルが博多織の工房内でダンスパフォーマンスを
繰り広げる。タイトルは、時空間(4D)
と音(1D)
を合わせた 5 次元のデータを保存する架空の部
署の名称で、未来から来た美少女キャラクター
のヒビキ・ガーネットが、音や景色、人々の想いを
シュート(撮影)
し後世に残すという設定だ。この
©KBC Video Production Co.,Ltd/Kyushu Asahi
Broadcasting Co.,Ltd
10
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
映像自体が、現代的な感性がミックスされた伝統
的な技術の映像アーカイヴとなっている。
(宇川 直宏)
ジャパン・ニューウェイヴなのだ。
アニメーション部門
大賞
ザ
ウーンド
The Wound
短編アニメーション( 9 分 21秒)
Anna BUDANOVA[ロシア]
アンナ・ブタノヴァ
作品概要
ウ ー ン ド
心 の 傷(英・w ound )に苦しむ 少 女。その 傷
が少女の空想の中で、毛むくじゃらの生き物・
ウーンドとして誕生するところから物語は始ま
る。かけがえのない親友として少女とともに成
長していくウーンドは、彼女の頭の中にすっか
り居ついて、段々と存在感を増し、やがてその
人生を完全にコントロールするようになる。作
者の幼い頃の記 憶をもとに作られた本 作は、
数名の友人から成る少人数のチームで制作さ
れた。特に音作りにはこだわりがあり、独特な
サウンドトラックを作るために、楽器以外の音
源を用いるなどの工夫がなされている。少女と
ウーンドが繰り広げる、悪夢のようでありなが
らも美しい友情を描いた短編アニメーション。
贈賞理由
動きに躍動感、重さ、ワクワク感や愛嬌があり
見ていて気持ちが良い。個々のキャラクターの
表現、アイデアなどが丁寧に整理されている。
場面毎の緊張感を絶やさず背中を押すように
©Ural-Cinema
荒々しく続いていく音楽のセンス、そして、どこ
で映像を止めても、まるで絵本を開いたような
完成度のあるレイアウトに驚かされる。心の傷
の深さは、本人にしか分からないと諦めている
人に見て欲しい。生きていく上で、自身の心の
傷をどう愛せるのか、間違った愛し方を選んだ
場合はどうだろうか。孤独、恋愛から生じる嫉
妬や誤解、悲しみ、痛みは、ひとりの人間が成
長するためには避けては通れないものである。
Anna BUDANOVA アンナ・ブダノヴァ
ロシア、エカテリンブルグ生まれ。2005 年、Architectural Academy of Art アニメーション科入学。
在学中から作家及びさまざまな映像作品のアニメー
ターとして活動し、複数の学生映画祭にて高い評価を
得た。11 年に卒業後、初監督作品『 The Wound 』
が、
複数の国際的な賞を受賞した。
人は他人なしで生きてはいけない。友達を作り
[受賞者コメント]
世界中の人々に私の作品『 The Wound 』が受け入れ
られて、非常にうれしく思っています。
しい扉を開く挑戦を途中でやめてしまう……。
このような反響をいただけるとは夢にも思いませんで
そういった感情は君だけじゃないということを
した。
私は以前から日本の美術に興味を持っていて、日本
第 18 回文化庁メディア芸術祭で高い評価をいただい
たことを、本当にうれしく思います。
Anna BUDANOVA
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
いても何も変わらないことも分かっている、新
この作品を制作し終えたとき、私たち制作チームは、
美術に関する書籍や画集、記事などを集めています。
11
たいが失敗を恐れて声をかけられない、待って
示してくれる。作者の若干 26 歳という年齢が
(森本 晃司)
次の作品を大いに期待させる。
アニメーション部門
優秀賞
映画クレヨンしんちゃん
「ガチンコ!逆襲の
ロボとーちゃん」
劇場アニメーション(1 時間 37 分)
高橋 渉
TAKAHASHI Wataru
[日本]
作品概要
贈賞理由
埼玉県春日部に住む野原家は 5 歳の主人公・し
脚本を担当している中島かずきの構成が実に素
んのすけと父・ひろし、母・みさえ、妹・ひまわり
晴らしく、エンターテインメントの大切な要素が
の 4 人家族。ある日、父・ひろしがロボットに改
生かされていると感じる。そこにはキャラクター
造されて帰ってくる。最初は戸惑う一同だが「ロ
の持つ魅力があふれているのだ。良い作品には
ボひろし」の奮 闘により、次 第に心を通わせ家
必ず「愛すべきキャラクター」が住んでいる。
「愛
族の絆を深めていく。しかし、すべては父性の復
すべきキャラクター」の生活を描くことによって、
権をもくろむ組織によって仕組まれたことだった。
そのキャラクターが住む街が攻 撃されるなどの
「ロボひろし」の暴走をきっかけにその事実を知
危険が迫ると、観客は自然と感情移入し、応援
る野原一家。また、生身のひろしが生きているこ
したくなる。魅力あるキャラクターが完 成すれ
とも発覚する。自分がコピーであることに衝撃を
ば、後は箱庭(作品としてのフォーマット)に放て
受ける「ロボひろし」だが、家族を守るために組
ばよい。その魅力で、自由に、生き生きと遊び始
織の陰謀に立ち向かう―。シリーズ第 22 弾と
めてくれる。今回の作品にはそういった魅力を強
なる本作では、初めて父親のひろしにスポットを
く感じた。魅力ある世界を作るには、人間臭い
当て、姿形はどうであれ父親であろうとするひろし
部分を丁寧に表現することが大切だと感じる。し
と、父は父であると自然に受け止めるしんのすけ
んちゃんや家族たちが繰り出すチームプレイや、
の姿を通して、現代の父子のあり方が描かれる。
アニメーションの良さである弾みのある「動き」
が、制作スタッフのチームプレイとシンクロしてい
るようで、作り手のポジティブさが作品を通して
伝わってくる。こういったスタッフの熱量を感じら
(森本 晃司)
れる作品もなかなか少ない。
© 臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2014
優秀賞
ジョバンニの島
劇場アニメーション(1 時間 41 分 25 秒)
西久保 瑞穂
NISHIKUBO Mizuho
[日本]
作品概要
贈賞理由
設 定は 1945 年、北 海 道 沖に戦 火を免れて浮
まことに美しい作品である。そのアニメーション
かぶ小さな島・色 丹 島 。ここに、戦 争の実 感が
技 術と表 現は精 華であり、国 産アニメーション
ないまま 10 歳の兄・純平と 7 歳の弟・寛太が暮
100 年を前にその水 準、到 達 点を世 界に示す
らしていた。しかし 8 月 15 日の敗戦に伴い、彼
作品のひとつと言える。当時子どもだった旧島民
らの生活に大きな変化が訪れる。明日にでも米
の回想に依拠した事実に基づく映画として作ら
しこ たん とう
国軍がやってくるのでは……と不安な日々を送る
れたこの作品は、ドキュメンタリーアニメーショ
島民たちであったが、突然上陸したのはソ連軍
ンの埒 内とも見えるが、単なる記録や記憶の再
らち ない
だった。そして、いつの間にか国境線が変わり、
現ではなく、一個人のみならず、他の島民の体験
やがて島にソ連兵の家族が移住することになる。
や諸島内での出来事などを巧みに織り交ぜた集
島民と新しい隣人との共同生活が始まるのだが
合的な体験と記憶から成る、構成的な作品であ
―。戦争の不条理と悲劇を純平の目線で辿り
る。本土空襲や沖縄戦ほどには取り上げられる
ながら、言葉と文化の違いを越えて、子どもたち
機会の少ないアジア太平洋戦争末期の北方地
の絆が芽生えていくさまが描かれる。日本、ロシ
域のソ連占領をテーマに、過酷な史実をプロパ
ア、アルゼンチン、韓国、エストニア、アメリカ、
ガンダに流れることなく子どもの視点から描くこ
イタリアからの多国籍スタッフが集結して送る、
とで、児童を含む幅広い世代に歴史を考え直す
実話に基づいたアニメーション。
機会を与えた。まことに重く切ない作品である。
審査会では脚本や演出などいくつかの点で評価
が分かれたが、鑑賞者に健全な感動を与える作
品という点でも本 芸 術 祭の贈 賞にふさわしい。
(小出 正志)
©2014 JAME
12
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
アニメーション部門
優秀賞
パドレ
PADRE
短編アニメーション(11 分 50 秒)
SantiagoʻBouʼGRASSO
サンティアゴ・ブー・グラッソ
[アルゼンチン]
作品概要
贈賞理由
軍事独裁が終わり、民主主義が芽生えつつある
一軒の家。薄暗い午後の室内。刻み続けられる
1983 年のアルゼンチン。軍司令官を引退し、病
時 計の音。 3 粒のカプセル薬が、チリンと陶 器
床に伏す父親の看病にすべてを注ぐひとりの孤
の皿に置かれる― 。研ぎ澄まされた緊張感を
独な女性が描かれる。周囲は彼女に、新しい一
持つ、素晴らしい冒頭である。舞台は、軍政と
歩を踏み出し変化を遂げることを求めるが、彼
民政の狭間で揺れ続ける 1983 年のアルゼンチ
女は時計の振り子に操作されているかのように、
ン。ラジオから聞こえるその民 衆の喧 騒とは対
ただ同じ毎日を繰り返すことに固執する。彼女
照的に、張りつめられた無言の時間の中で静か
はますます家にこもり、差し迫る社会変動を拒む
に続けられる、独りの初 老 女 性の日常 動 作と、
かのように、ひたすら父親の看病に没頭する。し
その視線。映画全体を通じて、描かれるのはた
かし、外の世界は確実に変革をとげ、現実の叫
だそれだけだ。花を生ける。包みを開ける。食器
びに耳を傾け行動を起こすよう彼女に迫る―。
を洗う。盆に盛る。神 経が痛むのか、そっと手
コマ撮りと 3 DCG の技 法を用い、3 年もの期 間
首を押さえてしまう癖がある。台所のシンクを中
をかけて制作されたアニメーション。緻密にモデ
心に、そんな日常のさまざまな所作と視線が、丹
リングされた人物や小道具を撮影し、更にデジ
念に、的確に描かれる。そしてこの映画は、その
タルな処理を加え、重厚かつ独特な質感を生み
日常の凄みを描けなければ成立しない。技法は
出している。質の高い造形美と豊かな表現力で、
3 DCG だが、写実ではなく省略や表現様式を基
日常を描写したアニメーション作品だ。
調とした見事な造形とアニメートには、人形アニ
メーションの伝統が感じられる。確かな手 腕を
持った 35 歳の新鋭監督による、優れた短編作
(和田 敏克)
品である。
©Santiago Grasso
優秀賞
ザ
センス
オブ
タッチ
The Sense of touch
短編アニメーション(14 分 31 秒)
Jean-Charles MBOTTI MALOLO
ジャン=シャルル・ムボッティ=マロロ
[フランス]
作品概要
贈賞理由
耳が聞こえず、口をきくことができない主人公の
一組の男女の愛と心理を、巧みに作画に昇華さ
クロエとルイの関 係を描いたアニメーション作
せた傑作短編。制作はフランスの Folimage ス
品。緻密に練られたアニメーション技法が、見る
タジオである。導入、数ショットで、どのような境
人をその「沈黙」の世界へと引き込む。
遇にいる人の、何についての映画なのか、観る者
ひそかに愛し合っているが、お互いにそれを認め
にはハッキリと伝わってしまう。その確かな設計
ようとしない二人。言葉の代わりにジェスチャー
に、まず舌を巻く。また男女それぞれの性格と日
を使う彼らは、一つひとつの言葉を振付に置き
常、陰と陽を、ほんのわずかなシチュエーション
換えてダンスをするようになる。ルイがクロエを
の動きで自然に浮彫りにするセンスも一級品。そ
夕食に招いたある晩、彼女は 2 匹の捨て猫を連
の前提がしっかりとあって、恋人たちの心理の乖
れてきた。猫アレルギーを持っていたルイはその
離と交 歓とが、言葉を一切使わぬ抽象的な様式
かい
り
こう かん
事実を隠そうとしたが、落ち着くことができず、
で、見事に描き尽くされるのだ。殊にダンスシー
ついに夕食の場で我慢の限界が訪れる。自らの
ンは圧巻。ただ振付をなぞるだけのロトスコープ
ぎこちなさに苛立つ一方、クロエの無邪気さに
でなく、作画の力で、完璧なアニメーションとし
も追いつめられていくルイ。二人のダンスのペー
て完成させている。生き生きと作画された彼らの
スが変化する中、アレルギーで身体がすっかり腫
動き、仕草とタイミング一つひとつが、しっかり
れてしまったルイはクロエをドアの方へと追いや
とテーマに寄り添っている点は感動的だ。シナリ
るが― 。ユーモアとエレガンスに満ちた、精緻
オ、演出、作画、美術の「志」。作品とそこに描
で感動的な物語である。
かれるすべてのものへの限りない愛情。それこそ
が、作品そのものに込められた「優しさ」なのだと
(和田 敏克)
いうことを思い出させてくれる。
©2014 FOLIMAGE STUDIO-LA FABRIQUE ProductionNADASDY FILM
13
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
アニメーション部門
新人賞
コップの中の子牛
短編アニメーション(11 分 3 秒)
シュ ゲンドウ
朱 彦潼
ZHU Yantong
[中国]
作品概要
贈賞理由
父が 4 才の娘・ヌヌに牛乳の入ったコップの中に
雨の日のシーンが良い。父の漕ぐ自転車に乗っ
牛がいるという嘘をついた。それを信じた娘は、
て雨カッパの隙間から覗き見た人の生きざまの
牛乳を飲み干したが、牛はいなかった。ヌヌは、
影 の 部 分 が、痛 烈に物 悲しい。去りゆく車 の
父が常にさまざまな嘘をつくので次第に信頼し
テールランプがにじんで見えるのは、雨のせいば
ないようになる。作者自身の幼い頃の父との思
かりではあるまい。不安にさらされる生活の中、
い出に基づいて制作されたアニメーション作品。
父と娘のやり取りは、ほほえましくて救われるの
日常生活の中にあるあらゆる形態の「嘘」をすく
だが、ほろ苦くもある。随所に現れる子牛の扱
いとって、子どもの視 点から父の姿を描いてい
いも幼い女の子の説明しがたい心の陰影を投影
る。柔らかいパステルの質感が印象的な多彩な
しているようである。作 者の幼 少 期を物 語った
ドローイングが際 立つ手 描きアニメーションの
作品なのであろう。その骨太な描画と繊細な心
技法を用いることで、80 年代中国江南地方の小
理描写を伴って新人らしからぬ成熟した作品と
さな町の雰囲気が再現されている。
(大井 文雄)
なっている。
作品概要
贈賞理由
高校 3 年生に進級した主人公・北白川たまこの
新人賞ではあるが、ある意味においては現在の
©2014 Yantong ZHU / Tokyo University of the Arts
たまこラブストーリー
劇場アニメーション(1 時間 23 分 50 秒)
山田 尚子
YAMADA Naoko
[日本]
頭の中は、大好きなお餅のことばかり。学校の
日本のアニメの到 達 点と言えるだろう。日本の
帰り道、たまこは仲の良い友人たちと進路の話
アニメは世界の中でも特異な発展を続けている
をしていた。不安を抱えながらも将来のことを考
が、何気ない日常の中にみずみずしい感動を見
えている友人たちに対して、彼女は何気なく、将
つけるという視点はやはり独特と言える。映像を
来は家業のお餅屋を継ぐと答える。周りが変わっ
注意深く見ると、その鋭敏な感性だけでなく、ア
ていく予感を少しずつ感じ始めた頃、たまこは幼
ニメーターとしての技量や演出者としての計算、
なじみの大 路もち蔵から、東京の大学へ行くこと
そして強い意 志に裏 付けられていることがよく
を告げられる。幼い頃からもち蔵とずっと一緒に
分かる。
「ジャパニメーション」
という言葉がある
おお じ
ぞう
過ごしてきたたまこにとって、それは思いもよらな
が、まさに本作はその 1 ジャンルを担う作品であ
いことだった。そしてもち蔵から「俺、たまこが好
(高橋 良輔)
ると確信している。
きだ」と告白を受ける― 。突 如 訪れた 恋 と
いうきっかけが、ひとりの少女を大人の階段へと
©Kyoto Animation/
Usagiyama
Shopping Street
マン
オン
導く。テレビアニメーション『タマコマーケット』
の続編となる青春物語。
ザ
チェア
Man on the chair
短編アニメーション(6 分 55 秒)
JEONG Dahee
チョン・ダヒ
[韓国]
作品概要
作者の「私」
と、その「私」によって描かれた「彼」
座っている。記 憶、空 想と現 実が交 錯し、目の
の世 界とが無 限 反 射を繰り返す。立 方 体の部
前の世界を疑っている自分自身こそが空想の産
屋の中と外側の宇宙、その裏と表がシームレス
物ではないかという思いにとらわれるようになる
に同一平面をなすメビウスの輪のように、イメー
―。作者は美術史を学ぶ過程で、座って思索
ジが展開される。この作品構成の仕組みがとて
する人間をモチーフにした絵画や彫刻に数多く出
も面白い。終わりのクレジットが出始めるころか
会ってきた。本作では、何世紀にもわたって多く
ら、時空間は逆回転をし始める。これは何を暗
の芸術家が「人間の存在」をテーマに、椅子に座
示しているのだろうか? 目を凝らして見てみる
る人間を描いてきたという発見から着想を得て、
とこのような知的な仕 掛けが所々に施されてい
作者独自の解釈と洗練された手法で、これまで
て、なかなかに興 味 深い作 品となっている。整
にない「椅子に座り深く思索にふける男」を描き出
理された中にも緊張感のある画面作りがなされ
した。楽しげで斬新な視覚表現を用い、哲学的
(大井 文雄)
ている。
なタッチで展開される本作は、「我々がどこから
©Sacrebleu Productions
14
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
贈賞理由
自らの存在を疑い苦悩するひとりの男が椅子に
来たのか、どこにいるのか?」そして「宇宙とは何
か?」
という実存主義的な問いを投げかける。
マンガ部門
大賞
ゴシキ
五色の舟
近藤 ようこ/原作:津原 泰水[日本]
KONDO Youko / Original author: TSUHARA Yasumi
作品概要
たん
津原泰水の傑作幻想譚 が、近藤ようこの手に
よって儚くも鮮烈にマンガ化された作品。
先の見えない戦時下、太平洋戦争末期を時代
背景に、見世物小屋の一座として糊口をしのぐ
異形の者たちの哀切な運命が描かれる。主人公
だっ そ
ゆき の すけ
は、脱 疽で足を失った元花形旅役者・雪 之 助、
しょう すけ
一寸法師だが怪力の 昭 助、結合双生児だった
さくら
が手術を受けひとり蛇女として生きる桜、膝関
きよ こ
節の障害を逆手に牛女となった清 子、そして両
かず お
腕のない少年・和 郎の 5 人。彼らは古い舟を住
処として、まるで家族のように暮らしていた。ある
日、未来を言い当てるという怪物・くだんの噂を
知った雪之助は、一座の仲間にしようと家族総
出で岩国に向かうことに。くだんは既に軍の手中
にあったが、目を合わせた和郎は、その日から舟
で海原を漂い、離合集散を繰り返す一座の夢を
見るようになる。これはくだんの仕業に違いない
近藤ようこ・津原泰水 / KADOKAWA 刊
©Youko Kondo/Yasumi Tsuhara 2014
と確信した和郎だったが―。小説での発表も
困難と目された原作に、近藤ようこが挑んだ奇
跡のマンガ化作品。 『月刊コミックビーム』
連載開始:2013 年 8 月号
[受賞者コメント]
連載終了:2014 年 3 月号
賞に無縁な者でしたので大変驚いています。しかも大
賞というのは青天の霹靂でした。
デビューして 36 年目になります。マンガ家としての自
分の立ち位置も定まったと思い、先のことはわからな
いけれど、できるところまではいってみようと考えてい
近藤 ようこ KONDO Youko
津原 泰水 TSUHARA Yasumi
1964 年生まれ、広島県出身。少女小説家・津原やす
みとしての活動を経て、97 年、現名義で『妖都』を発
表。 2012 年『 11 eleven 』
( 河出書房新社、11 年)
が第 2 回 Twitter 文学賞国内部門 1 位、14 年『五色
の舟』が『 SF マガジン』700 号記念企画「オールタイ
ム・ベスト SF 」国内短編部門 1 位。
http://www.tsuhara.net/
長年にわたり、淡々と素晴らしい作品群を発表
し続けてきた近藤ようこが、またしても『奇跡の
たところでした。
マンガ化』
と言わしめる作品をこの世に送り出し
ありがとうございます。
た。病気で両足を切断した元旅芝居の女形、元
1957 年生まれ、新潟県出身。 79 年『ガロ』に投稿、
入選。同年『劇画アリス』でデビュー。 86 年『見晴ら 『五色の舟』を描くにあたっては、小説とマンガの表現
の違いをはじめ、多くのことを学び直しました。いつま
しガ丘にて』で第 15 回日本漫画家協会賞優秀賞を受
でも勉強ができるのはうれしいことです。
賞。他の作品に『ルームメイツ』
( 小学館、92 年)
『心
の迷宮』
『アカシアの道』
『 水鏡綺譚』
『 戦争と一人の女』
(原作:坂口安吾/青林工藝舎、2012 年)
など。
贈賞理由
原作の使用を許可してくださった津原泰水さんと、こ
の難しい題材で連載させていただいた『コミックビー
ム』に感謝いたします。
近藤 ようこ
結合双生児の少女、両腕のない少年などの 5 人
が、戦時下の混乱の中、見世物小屋の一座と
なり、顔が人間の牛・くだんを購入するため旅を
する。舞台は広島、並行世界というSF 的設定
……。この少しの説明ですら発表の困難を感じ
させる本作を世に出したのは、原作者・津原泰
水の達成。原作者が、文章での発表でさえ没書
を覚悟したという本作の視覚化に自ら望んで挑
み、原作にはない改変も加えたうえで成功したの
は、近藤ようこの達成である。近藤の、問題に向
かう真摯な態度と創作意欲には感嘆せざるを得
ない。世界に潜む残酷さもそのまま、読む者がこ
ぞって美しいと評する品位と、ユーモアまでをも
備え、生きる勇気を与えられるこの傑作に、何か
15
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
(ヤマダ トモコ)
を贈り返さずにはおれない。
マンガ部門
優秀賞
アオイホノオ
島本 和彦
SHIMAMOTO Kazuhiko
[日本]
作品概要
ホノオモユル
贈賞理由
マンガ家デビューを志す主人公・焰 燃 の日常を
本 作は、いわゆる「マンガ家マンガ」にジャンル
コミカルに描きだす「マンガ家マンガ」。フィクショ
分けされる作品で、作者自身と思われる芸術系
ンとはされているが、作者の自伝的な側面も持
大学に通う学生が、マンガ家を目指して 1980
ち、実在の人物も登場する。
おお さっ か
年代初頭の芸術系大学で悪戦苦闘する物語で
1980 年代初頭、大阪にある大 作 家 芸術大学 1
ある。実録系の「マンガ家マンガ」には、読者も
回生の 焰 燃 は、「マンガ家になる!」
という熱い
よく知るマンガ 家やアニメーターが不 可 欠だ。
ホノオ モユル
情熱と野望を胸に抱いて、日々を過ごしていた。
本作品もその例に漏れない。やがて『新世紀エ
自分の実力に根拠のない自信を持ち、自らの進む
ヴァンゲリオン』で一世を風靡する庵野秀明や、
べき道を模索中の焰。東京の出版社へ作品を持
オタクの教祖とも言える岡田斗司夫などが、いず
ち込んだり、後に『新世紀エヴァンゲリオン』を作
れも実名のまま重要なバイプレイヤーとして登場
ホノオ
あん の ひで あき
と
し
お
り上げる若き日の庵 野 秀 明を始めとする同級生と
する。当時の人気マンガに対する主人公の批評
確執を抱えたり、憧れの先輩トンコさんと恋の駆
も的確だ。各巻の冒頭にフィクションであること
け引きをしたり―。日本のマンガ・アニメ界が新
が大書されているが、読者は誰も信じていない。
たな局面を迎えようとしていた時代を背景に繰り
多くの著名人を輩出した芸術系大学は、差し詰
広げられる、日々苦悶する熱血芸大生の七転八
め「 1980 年代のトキワ荘」
といったところか。つ
倒エレジー。
まり本 作 品は「平 成の『まんが道』」なのだ。連
『ゲッサン』
連載開始:2007 年 3 月 8 日
連載中
載開始から 7 年になるが、深夜に放映されたテ
レビドラマも話題になって、今、まさに旬のマン
(すがや みつる)
ガとなった。
©Kazuhiko Shimamoto/SHOGAKUKAN
優秀賞
チャイニーズ・ライフ
リー クンウー
李 昆武/フィリップ・オティエ/
訳:野嶋 剛
LI Kunwu / Philippe ÔTIÉ /
Translation: NOJIMA Tsuyoshi
[中国/フランス/日本]
Une vie chinoise 1 - Une vie chinoise T1 ©Kana(DARGAUD-LOMBARD s.a.)2009, by P.Ôtié, LiKunwu
Une vie chinoise 2 - Une vie chinoise T2 ©Kana(DARGAUD-LOMBARD s.a.)2009, by P.Ôtié, LiKunwu
Une vie chinoise 3-UneviechinoiseT3 ©Kana(DARGAUD-LOMBARD s.a.)2011, by P.Ôtié, LiKunwu
www.mangakana.com All rightsreserved
This book is published in Japan by arrangement with
MEDIATOON LICENSING, through le Bureau des Copyrights
Francais, Tokyo.
16
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
作品概要
贈賞理由
中国で生まれ育ったマンガ家が、熱狂と混乱の
この作品を読んで、2000 年に「第 1 回日中交流
時代を生きた自らの人生を振り返った作品。大
漫画大会」に出席した時のことを思い出した。表
躍 進、文 化 大 革 命の真っただ中で少 年 時 代を
現への規制は厳しく、作品内に登場する武器や
過ごした作者 ・ 李。当時どこにでもいた ごく普
血などが白く塗りつぶされていて、中国のマンガ
通の 愛国少年として真っすぐに突き進む姿から
家との交流はなく、交流を持てたのは画家だっ
は、当時の中国の熱狂がリアルに伝わってくる。
た。人民解放運動や文化大革命を題材とした映
その後の驚異的な経済成長への変わり身の早さ
画はあるが、一個人の目線で描かれた本作は非
は、少年時代の李にどのように映ったのか―。
常に興味深い内容だった。ストーリー及びペー
生きていることが既にドラマチックであった時代
ジ構成が完成されており、海外作品の中でも非
を生き抜いてきた李少年。生身の人間としての
常に読みやすく素直に物語に入り込むことができ
彼の姿が読む人の共感を誘う本作には、私たち
た。画法も日本のマンガ家が使用するペンなどで
が知っている急速な発展を遂げた中国とは別の
なく、筆か昔のマンガ家が使った竹ペンのような
顔、戸惑い、悩んできた国の姿が描かれている。
もので描かれ、どこか懐かしく暖かみとともに迫
彼らが生きた時代を知ることで、中国という国、
力も充分伝わってくる。なかなか知り得ない中国
そしてその国の人々をより身近に感じさせる一作
の庶民の生活が質の高い構成と技法で描かれた
である。
(犬木 加奈子)
本作品に強く魅かれた。
ひ
マンガ部門
優秀賞
春風のスネグラチカ
作品概要
贈賞理由
1933 年、極寒のロシアを舞台に「ロシア革命」
デビュー作であり連 載 18 年・30 巻に及んだ代
沙村 広明
によって帝政ロシアから共産主義ソビエトへと変
表作『無限の住人』
( 第 1 回の本賞受賞)は、い
SAMURA Hiroaki
[日本]
化する激動の時代を背景とした歴史ロマン作品。
わゆる時代劇の文法からははみ出た、沙村流の
とある別 荘(ダーチャ)の管 理 人であるイリヤ・
アクション時代劇であった。娯楽劇から猟奇的
エヴゲーニヴィチ・ブイコフは、車 椅 子の少 女・
な作までを多様に描き、作品は「異色」
と称せら
ビエールカと物言わぬ従者・シシェノークに出会
れることが多いが、それは作劇や作画面で、ジャ
い、「私が勝ったら、あの別 荘に一 週 間 泊めて
ンルの先行作を乗り越えようとする意志に溢れ
下さい」と奇妙な賭けを申し込まれる。ブイコフ
た面を指していると言える。本作は、ロシアの国
は賭けに勝ったものの亡命することになり、結果
家体制とロマノフ家周辺の歴史的事実を踏まえ
ビエールカとシシェノークが別荘に住みつく。し
つつ、「秘められた歴史劇(言い換えを許される
かしながらすぐに秘密警察( OGPU )に捕らえら
なら、壮大な法 螺話)」を構築している点が、審
れ、過酷な運命に巻き込まれていく。なぜ、そし
査委員全員の支持を受けた。事実のピースを物
てどこから彼らはこの地にやってきたのか。互い
語に配置し、魅力的な主人公とその従者に大き
ほ
ら
だけを頼りに生きる二人が背負う密かな宿命と
な謎を仕掛け、物語の進展とともに伏線を回収
は―。怪僧ラスプーチン、 OGPU 長官メンジ
し、謎を解いていく。人物のすべてを愛情深く描
ンスキー、ロマノフ朝最大の貴族の後継者ユス
いているのであろう、その表情・動作に美しさが
ポフ公など、ロシアの歴史を動かした実在の人
欠けることがなかった。人物描写の緻密さ、物
物と主人公たちの運命が絡み合っていく。緻密
語運びの緊密さ、1 巻を読んだ時の充実度は、
な人物描写とストーリー展開で、歴史に埋もれ
(斎藤 宣彦)
群を抜いていた。
た物語が明かされる。
©Hiroaki Samura 2014
優秀賞
羊の木
いがらし みきお/原作:山上 たつひこ
IGARASHI Mikio /
Original author: YAMAGAMI Tatsuhiko
[日本]
『マンガ・エロティクス・エフ』
連載開始:2013 年 5 月
連載終了:2014 年 5 月
作品概要
贈賞理由
もしも隣人が凶悪犯罪を犯した元受刑者だった
笑いとシリアスは表裏一体というのは、言い古さ
ら― 。元 受 刑 者との共 存、人 間の恐 怖の源
れた言葉だが真理であろう。本作について語る
泉、そして幸福と不幸の狭間の物語。
とき、最 初に来るのはこの「真 理」である。とも
舞台はとある日本の地方都市。かつては海上交
にギャグ作品を発表し続け、マンガ表現に対す
易で栄えた港町・魚 深 市が、犯罪を犯し刑期を
る批評的言及、表現の臨界というべき作品をも
終えた元受刑者を地方都市へ移住させる政府
のにしてきた熟達の作家二人による作品である。
の極秘プロジェクトの試行都市になった。元受
血 腥 く猟奇的な狂気を匂わせながら、市井の
うお ぶか
刑者の過去を隠し転入させるこのプロジェクトの
人々の滑稽さを挟み込むことで、正気と狂気と
全容を知るのは、市長とその友人の月末、大 塚
いった対 立する二 項がいかに反 転しやすく、そ
つきすえ
の実一体であるかもしれないことを見せていた。
移住するのは、殺人、強盗、傷害、詐欺など凶
その射 程には、善と悪、正 義と邪 悪といったも
悪犯罪を犯した 11 人の元受刑者。
『がきデカ』
のも含まれるかもしれず、またこうした二項の反
の山上たつひこ、『ぼのぼの』のいがらしみきお
転、攪 乱ぶりは、笑いを突き抜けることでシリア
スに至る「ギャグマンガ」が得意としてきたもので
者と、罪を犯さざる者達との共存を試みるプロ
あり、本作の大団円はその到達点という言い方
ジェクトの行方を描く。
もできるだろう。また本作は、途方もない設定を
連載終了:2014 年 9 号
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
かく
というギャグマンガの巨 匠二人が、罪を犯した
連載開始:2011 年 13 号
17
おおつか
の 3 人のみで、一般市民には何も知らされない。
『イブニング』
©IGARASHI Mikio, YAMAGAMI Tatsuhiko/KODANSHA
ち なまぐさ
用いながら、忍び寄る衰退に対応せざるを得な
い地方小都市の問題をつぶさに描写したという
(伊藤 剛)
面でも評価されよう。
マンガ部門
新人賞
愛を喰らえ!
!
作品概要
画面を埋め尽くすモノローグと強迫的に繰り返さ
「個体としての男は別にいいの」
「けど総体として
ルネッサンス吉田
れる会話、ルネッサンス吉田が過剰な言葉をもって
のなんだか漠然とした男っていう存在が嫌いな
Renaissance YOSHIDA
贈賞理由
描き出す、絶望とロマンス、そして救済の物語。古
のよ」― 。男性への嫌悪感をあらわにして生き
い花街で風俗店の店長として生きる女・百花は、男
る主人公の挑発的な言葉の数々、ギスギスした
性関係にトラウマを持ち、男を男に売ることに歪ん
絵柄。粗野で押し付けがましい、でも、どうして
もも か
[日本]
よろこ
だ悦びを覚えている。店で働く青年・内田は、少し
も描かずにおれなかったのだろうと感じさせられ
ずつ言葉を交わすようになった百花に引かれていく
る、繊細な本作。この作品によって救われる人
が、百花はその思いに応えることなく店を閉めて消
間が居るだろう。その人に届いて欲しいと思う。
えてしまう。少しずつ明らかになっていく百花の祖
ずっと描き続けて欲しいという気持ちを込めての
母と母から続く業、父との過去、妹との確執。男が
(ヤマダ トモコ)
贈賞である。
嫌いで、家族が憎くて、自分自身を傷つけたい、そ
んな百花を救う存在とは―。百花の傷と回復の
軌跡が描かれる。
©Renaissance
Yoshida 2013
ちーちゃんは
ちょっと足りない
阿部 共実
ABE Tomomi
[日本]
『マンガ・エロティクス・エフ』
連載開始:2012 年 9 月 連載終了:2013 年 11 月
作品概要
贈賞理由
成績、お金、恋人、友達……いつも何かが足り
中学生たちの小さな狭い世界を鋭く描いた本作
ない気がする中 2 女 子のちーちゃんとナツ。二
は、心理描写の圧倒的なリアリティと、現代とい
人はクラスの中で成績優秀な友達・旭や、学級
う時代のアクチュアリティが高く評価された。前
委員に助けられながらも、フツウの日々を送って
作でも描かれていたコミュニケーションの齟 齬
いる。そんなある日、ナツとちーちゃんは学校帰
や自意識の問題が、本作では前面に押し出され
りに寄ったお店で、クラスの目立つグループの
ている。それは暗く、重く、自罰的な感情である
女子から「万引きしねえ?」
と声をかけられ―。
が、しかしそこに芽 生える絶 望が、小さな世 界
平凡な中学生活は、ふとしたことで揺らぎ始め
で生きるという希望とないまぜになっているかの
る。いつも何かが不安で不満、そんな自分たち
ようでもある。読む者の感情に強い衝撃を与え、
のような小さな存在がとても美しいと感じられる
多 様な解 釈を許すラストは感 動 的ですらある。
日もあれば、ため息をつきたくなる日もある。希
作者の登場が、近年のマンガの豊かな収穫のひ
望と絶望が交錯するナツとちーちゃんを通して、
(伊藤 剛)
とつであることは間違いないだろう。
「生きること」が正面から描かれる。
©T.ABE2014
どぶがわ
池辺 葵
IKEBE Aoi
[日本]
エレガンスイブ増刊『もっと!』
連載開始:2号 連載終了:7号
作品概要
老婆の夢と現実を、情感豊かに描いた群像劇。
「しあわせとは何か?」という問いに真 正 面から
挑んだ作品。豪華なお城で暮らす美しい 4 姉妹
い裁つ人』
(講談社、11 年)
と作品世界を深めて
きた池 辺の、これは勝負作であろう。描かれた
んで暮らしていたが、やがてそれはひとりの老婆
現実の様子の「綺麗さ」は審査委員の間で議論
が夢に見る妄想の世界であることが明かされる。
にもなったが、連作としての構成の巧みさ、エン
現 実の世 界では、高 級 住 宅 街の傍らにある臭
ディングの妙が評価として勝った。創作者にとっ
気が漂う川沿いで、老婆はひっそりと暮らしてい
て、夢や想像も現実である。池辺はすべてを現
る。頑なで、貧しく、孤独な彼女は、決して周囲
(斎藤 宣彦)
実として読者に差し出したのだ。
るかのように見えても、彼女は日常の中で誰か
とどこかでつながりを持ち、影 響を与え合いな
がら生きていた。その町で暮らす人々の生活が
©AOI IKEBE
18
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
老 婆のみる夢と、やるせないことの多い現 実と
の交 錯。
『サウダーデ』
( 講 談 社、2011 年)
『繕
は、美味しいごちそうを囲み、おしゃべりを楽し
と積極的には関わらない。ひとりで生活をしてい
池辺葵(エレガンスイブ)
贈賞理由
淡々と描かれる中、小さな変化が訪れる― 。
『エレガンスイブ』
連載開始:2012 年 12 月号 連載終了:2013 年 10 月号
功労賞
岩政 隆一 IWAMASA Ryuichi
エンジニアリング・デザイナー
プロフィール
贈賞理由
1948 年生まれ。74 年東京工業大学工学部卒。同大学文化人
類学助手を経て、76 年 GK インダストリアルデザイン研究所入
所。89 年 GK テック設立。千葉大学大学院非常勤講師他、慶
リング分野に精通した、発明家タイプのエンジニア。
応義塾大学大学院非常勤講師、静岡文化芸術大学非常勤講
師、財団法人国際メディア研究財団評議員、株式会社 GK テッ
ク代表取締役を歴任。
オールラウンドなエンジニアリング分野に精通し、その領域は機
械工学、エレクトロニクス、デジタルプログラミング、素材、その
他に及ぶ。日本科学未来館のシンボル『ジオ・コスモス』や『イン
ターネット物理モデル』、平成 17 年度グッドデザイン賞金賞を
受賞しサミットでも披露された『触れる地球』
を始め、多くのイノ
ベーション・プロジェクトをテクニカルな側面から支えてきた。
小野 耕世 ONO Kosei
映画評論家/マンガ評論家/
海外コミック翻訳家/
海外コミック・アニメーション研究家
プロフィール
1939 年、東京都生まれ。日本における海外コミックの翻訳出版
及び研究、紹介の第一人者。日本マンガ学会理事。東京都立
新宿高等学校を経て国際基督教大学教養学部人文科学科卒業
後、NHK に入局。在職中『 SF マガジン』に「SF コミックスの世
界」を連載するなど、外国のマンガの紹介に力を注ぐ。以後、映
画評論やマンガ研究で活躍。海外コミック研究では、アメリカン・
コミックス(アメコミ)から、アンダーグラウンド・コミックス、グラ
フィック・ノベル、ヨーロッパのアート系コミックス、アジア諸国の
マンガまで幅広い。また、それから派生したアニメーションにつ
いても研究。他に、多くの海外コミック作品の翻訳を行っており、
頻繁に海外を訪れ、海外のコミック作家たちと交流。長年の海
外コミックの日本への翻訳出版、紹介と評論活動が認められ、第
10 回手塚治虫文化賞特別賞を受賞。2013 年より日本 SF 作家
クラブ名誉会員。
山本 圭吾 YAMAMOTO Keigo
アーティスト/教育者
日本においては希有な、オールラウンドなエンジニア
日本科学未来館のシンボル『ジオ・コスモス』、『イン
ターネット物理モデル』、『触れる地球』などを始め、
多くのメディアアート作品、公共展示物、イノベーショ
ン・プロジェクトを技術及びアーキテクチャ構築の側
面から支えてきた。サイエンスから民藝運動までに通
ずる知見を融合した発想と、定石を覆すクリエイティ
ブな創意工夫により、問題解決への突破口を開いてく
れる、デザイナーやアーティストにとって唯一無二の人
(東泉 一郎)
である。
贈賞理由
今、日本では、アメリカン・コミックス(アメコミ)やグ
ラフィックノベル、バンド・デシネ( BD )
といった多数の
海外マンガが、美しいカラー印刷で翻訳出版されてい
る。マンガファンにとって幸せなこのような状況も、小
野耕世氏による海外マンガの普及活動がなかったら、
定着しなかったことだろう。小野氏の功績は、既に多
くの人の知るところではあるが、多くのアメコミファン
を誕生させた『バットマンになりたい』
( 晶文社、1974
年)から、最 新 刊の『リトル・ニモ 1905 - 1914 』
(小
学館集 英社プロダクション、2014 年)に至るまでの
旺盛な著作活動も含め、功労賞にふさわしいと判断さ
(すがや みつる)
れた。
プロフィール
贈賞理由
1936 年生まれ。福井県在住。68 年よりビデオアートを始め、
71 年よりコンピュータ、サウンド、通信の融合による異文化の出
ビデオアートや環境芸術をいち早く実践した前衛芸
合いの新芸術ネットワークアートを世界に先駆けて開拓。約半
ビデオアート国 際 展「ふくい国 際ビデオ・ビエンナー
世紀にわたり活動。また第 13 回サンパウロ・ビエンナーレ、ドクメ
ンタ6、モントリオール現代美術館の「ビデオ 84」、ケルンの「ビ
デオ彫刻 25 周年記念展」、北京の「科学+芸術展」などの国際
展に日本代表として招待出品。また、93 年ヴェニス・ビエンナーレ
(アペルト)では風の音の交信など、高く評価される。更に、77
年「日独ビデオアート展」、85 年より「ふくい国際ビデオ・ビエン
ナーレ」、90 年より「World Wide Network Art」など、毎年新
しい視点の企画展を開催。この幅広い活動により次世代に多大
な刺激を与え、多くの後継者を育てた。更に小、中、高、短大、
大学、大学院、博士課程と奉職し、教育技術にも系統的創造性
があり、各分野に多くの人材を輩出。他に類をみない教育者でも
術家である。 1985 年から出身地、福井で手掛けた
レ」は先駆的で、日本と海外をアートで結ぶ画期的な
役割を果たした。メディア系のアーティストや評論家と
して現在活動している世代には、山本圭吾氏から多く
を学び、刺激を受けた者が多数いる。メディアアート
の後継者を育て、幅広い教育を介して次世代への橋
渡しを務めたと同時に、地域への文化的貢献度も大
きい。現在でも独自のネットワークの仕事を展開し、
地方都市を拠点に先端的メディアの可能性を追求し
(岡部 あおみ)
続けている。
ある。88 年より武蔵野美術大学教授、2000 年より京都精華大
学教授(映像メディア研究所所長)
も務めた。
渡辺 泰 WATANABE Yasushi
アニメーション研究者
プロフィール
1934 年、大阪市生まれ。高校 1 年生の時、学校の団体鑑賞で
ロードショーのディズニー長編アニメーション『白雪姫』
を見て感
動。以来、世界のアニメーションの歴史研究を開始。高校卒業
後、毎日新聞大阪本社で 36 年間、新聞制作に従事。友人の山
口旦訓氏、プラネット映画資料図書館、フィルムコレクターの故
杉本五郎各氏の協力を得て、77 年『日本アニメーション映画史』
(共著、有文社刊)を上梓。ついで 89 年『劇場アニメ70 年史』
(共著、アニメージュ編集部編、徳間書店刊)
を出版。以降、非
常勤で大学アニメーション学部の「アニメーション概論」で世界の
アニメーションの歴史を教える。98 年 3 月から竹内オサム氏編
集の『ビランジ』
で「戦後劇場アニメ公開史」連載中。また 2010
年 3 月より文生書院刊の復刻版「昭和戦前期『キネマ旬報』総
目次」号に「日本で上映された外国アニメの歴史」連載中。その
他、アニメーション作家・政岡憲三氏の評伝も執筆中。特にディ
ズニーを中心としたアニメーションの歴史を研究課題とする。
19
平成 26 年度[第 18 回]文化庁メディア芸術祭
贈賞理由
氏ほどアニメーション研究者という呼び方がふさわし
い人はいない。現 在でこそアニメーション関 連の文
献は数多くあるが、とにもかくにも入口は渡辺泰氏の
『日本アニメーション映 画 史』である。信 頼のおける
基礎文献としての価値はもちろん、行間からアニメー
ションへの愛情がにじみ出てくる。関西在住だが、研
究者としての人脈は広く深く全国に及ぶ。後輩研究
者への面倒見の良さは言うまでもなく、その豊富な知
識からくるアドバイスや資料提供など映画会社やテレ
ビ局、出版社、行政機関までもがみな、氏を頼りにし
(高橋 良輔)
恩恵にあずかっている。更なるご活躍を!
広報問合せ先
文化庁メディア芸術祭事務局 広報担当[hilo Press内] 鎌倉・星野・佐藤
Email:jmaf18 [email protected]
Tel:03- 5577- 4792 Fax:03- 6369-3596
※受付時間:平日10 時∼ 18 時
〒 101- 0047 東京都千代田区内神田 1-18 -11- 905
FAX:03 - 6369 -3596 広報担当[hiloPress 内] ▲
平成26年度
[第18回]文化庁メディア芸術祭
広報用素材貸出申請書
「 第 18 回文化庁メディア芸術 祭」広報 用として、下記のデータをご用意しております。貸出をご希望の方は、こちらの申請書に必要事項と希望素材のアル
ファベットを○で囲み、文化庁メディア芸術 祭事務局広報担当[ h i l o Pre s s 内]までお送りください。
【A】ロゴ一式(zip) ※使用規定(pdf)同封
【B】バナー一式(zip) ※使用規定(pdf)同封
・・・・
([第18回]文化庁メディア芸術祭大賞受賞作品画像【1】∼【3】.jpg)
【C】広報画像(zip)
【5】.jpg) ※使用規定(pdf)同封
(昨年度[第17回]文化庁メディア芸術祭受賞作品展の様子【4】
アート部門大賞
【1】エンターテインメント部門大賞
【2】アニメーション部門大賞
【3】マンガ部門大賞
該当なし
キャプション
(
【1】
【2】
【3】
共通)
:[第18回]文化庁メディア芸術祭 指定クレジット :
Google's Niantic Labs
(創業者:John HANKE)
【1】エンターテインメント部門 大賞 『Ingress』
Photo: Google's / Niantic Labs 『The Wound』
Anna BUDANOVA
【2】アニメーション部門 大賞 ⓒUral-Cinema 『五色の舟』 近藤 ようこ/原作:津原 泰水
【3】マンガ部門 大賞 近藤ようこ・津原泰水/KADOKAWA刊
【4】
【5】
キャプション
(
【4】
【5】共通)
:昨年度[第17回]文化庁メディア芸術祭受賞作品展の様子 提供:文化庁メディア芸術祭事務局
<広報画像のご使用にあたって>
フェスティバル終了後は使用できません。
※広報画像のご使用は
「第18回文化庁メディア芸術祭」をご紹介いただく場合に限らせていただきます。
※広報画像【1】
∼
【5】
は全図でご使用ください。部分使用や作品に文字や他のイメージを重ねることはお控えください。
※指定クレジットを必ずご記載いただきますようお願いいたします。またキャプションを可能な限りご記載いただきますようお願いいたします。
※校正ゲラを広報担当までお送りください。
貴社についてお知らせください
○貴社名
○媒体名
○ご担当者名 様
○所属部署
○ご住所 〒
○ Email
○ Fax
○ Tel
<個人情報の取り扱いについて>
○ご掲載・放映の予定日 月 日
ご記入いただきました個人情報は、文化庁メディア芸術祭広報からの情報配信やご案内等必要なご連絡に
のみ使用いたします。許可なく第三者に個人情報を開示することはありません。
広報問合せ先 文化庁メディア芸術祭事務局 広報担当
[hilo Press 内] 鎌倉・星野・佐藤
Email : jmaf18 [email protected] Tel : 03 - 5577- 4792 Fax : 03 - 6369 - 3596 ※受付時間:平日 10 時∼ 18 時 〒 101- 0047 東京都千代田区内神田 1-18 -11- 905
10 / 10
平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭開催要項
平成26年4月1日
文 化 庁 次 長 決 定
1
2
3
4
5
6
7
名称
平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭
主催
文化庁メディア芸術祭実行委員会
募集部門
アート部門
デジタル技術を用いて作られたアート作品
[インタラクティブアート、メディアインスタレーション、映像作品、映像インス
タレーション、グラフィックアート(デジタル写真を含む)
、ネットアート、メディ
アパフォーマンス等]
エンターテインメント部門
デジタル技術を用いて作られたエンターテインメント作品
[ゲーム(テレビゲーム、オンラインゲーム等)
、映像・音響作品(ミュージックビ
デオ、自主制作・広告映像等)、空間表現(特殊映像効果・演出、パフォーマンスを
含む)、ガジェット(プロダクト、ツールを含む)、ウェブ(ウェブプロモーション、
オープンソースプロジェクトを含む)、アプリケーション等]
アニメーション部門
アニメーション作品
[劇場アニメーション、短編アニメーション、テレビアニメーション、オリジナル
ビデオアニメーション(OVA)等]
マンガ部門
マンガ作品
[単行本で発行されたマンガ、雑誌等に掲載されたマンガ(連載中の作品を含む)、
コンピュータや携帯情報端末等で閲覧可能なマンガ、同人誌などの自主制作のマン
ガ等]
各賞
上記の4部門ごとに、高い芸術性と創造性を基準として、大賞1作品、優秀賞4作品、
新人賞3作品を選定する。また、審査委員会の推薦により、メディア芸術分野に貢献の
あった者に対して、功労賞を贈呈することができる。
[大 賞] 賞状(文部科学大臣賞)、トロフィー、副賞 60 万円
[優秀賞] 賞状(文部科学大臣賞)、トロフィー、副賞 30 万円
[新人賞] 賞状(文部科学大臣賞)、トロフィー、副賞 20 万円
[功労賞] 賞状(文部科学大臣賞)、トロフィー
募集期間
平成26年7月7日(月)~ 9月2日(火)
贈 呈 式
平成27年2月3日(火)
[於:国立新美術館]
受賞作品展
平成27年2月4日(水)~15日(日)
[於:国立新美術館]