2014年12月号 - ミハル通信

Inter BEE
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注目展示ブース解説
周年大特集
「必見の展示はこれだ」
ミハル通信
●展示場所
小間番号3306(幕張メッセ ホール3
映像・放送関連機材部門)
業界初の4K対応CATV監視装置やヘッドエンド
放送局向け地デジIP回線バックアップ装置も展示
ミハル通信はInter BEE 2014にケーブルテレビ事業者向けには4K対応のCATV監視
装置、4K対応ヘッドエンド、放送局向けにはSTLやTTLをIP回線でバックアップす
る装置などの最新製品を出展する。4KやIP活用という放送技術の新展開にいち早く
対応したソリューションを揃えた。4K対応の映像信号監視などミハル通信製品にし
かない機能を持つ製品もデモ展示される。ケーブルテレビ事業者、放送局にとって
(取材・文:渡辺 元・本誌編集部、写真:広瀬まり)
必見の展示ブースだ。
「4K対応ヘッドエンド」
のHITSで使われる製品だ。
第2は「QAM/
状にも対応したと
QAMシステム」。HITSから配信する4K
いうことです。4K
番組に各ケーブルテレビ事業者が独自サ
実用放送開始後に
ミハル通信はInter BEE 2014に3分野
ービスを追加する場合などに用いられる
は、既 存 のHD放
の最新製品を出展する。3分野とは、❶
共同ヘッドエンド(統合ヘッドエンド)で
送と4K実 用 放 送
4K対応ソリューション、❷ネットワークソリ
使用する製品だ。第3は「SI/QAMシス
のサイマル運用の
ューション、❸ノンストップソリューションだ。
テム」。これはケーブルテレビ事業者が
時期がケーブルテ
第1の分野「4K対応ソリューション」で
調達した素材を独自編成で放送するため
レビ事業者様で一
は、ケーブルテレビでの4K実用放送に向
のリマックスシステムや自主放送に対応
定期間続くことになります。その期間にも
4K試験放送でトップシェア
門馬 稔
ミハル通信(株)
新規事業推進部部長
けたRF方式(TS方式)のヘッドエンドを
する製品だ。この3種類の4K対応ヘッド
両方のヘッドエンドを共用できるように、
出展する。3種類のシステムを展示する
エンドの特長を門馬 稔・ミハル通信
(株)
サブラックの形状を揃えました。製品の
予定だ。第1は「4K対応HITS共用トラン
新規事業推進部部長が説明する。
形状だけでなく、コントローラの監視や
スモジュレーションシステム」。4K実用放
「当社の4K対応ヘッドエンドの大きな
運用などのポリシーもサイマル運用でき
送でもJDS、JCCがHD放送と同じように
ポイントは、現在でも多数のケーブルテ
るように揃えました。従来のHD放送とほ
プラットフォーマーとして各ケーブルテレ
レビ事業者様で運用されているヘッドエ
とんど同じオペレーションで4K放送を提
ビ事業者に配信することになるだろう。こ
ンドと全く同じ当社の9Uサブラックの形
供できるのです。一方で、4K実用放送
開始を機にヘッドエンドを小型の製品に
入れ替えたいとお考えのケーブルテレビ
事業者様のニーズにも応えるために、全
く新しい3Uタイプのサブラック『MDSR
シリーズ』でも4K実用放送用ヘッドエン
ドを発売する予定です。4K実用放送は
3Uサブラックタイプの
ヘッドエンド「MDSRシリーズ」
ケーブルテレビの4K実用放送用ヘッドエンド
「4K対応HITS共用トランスモジュレーションシステム」
(左)
、
「4K対応SI/QAMシステム」
(右)
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12-2014
これまでの4Kトライアル(Channel 4K)
とは違って、そのための新旧ヘッドエン
ドのサイマル運用時のオペレーションに
配慮しました。これが他のヘッドエンド
メーカーに対する大きな差別化となる点
です。今回のInter BEE 2014では、9U
での冗長化では、大地震などで鉄塔が
VODなどのサービスをスマートフォンやタ
タイプと3Uタイプの両方の4K対応ヘッ
倒壊した場合、STLとTTLの冗長系も
ブレット端末に提供できるシステムだ。
ドエンドを展示します」
同時に被害を受けて使用不可能になる
IPDCサービスの利点は、通常のIP放送
ミハル通信の4K対応ヘッドエンドは、
恐れがある。そのためさらに違うルート
と異なり、下り受信のみで情報を得るこ
現在4K試験放送をRF方式で行っている
や方式で冗長化することが重要だ。ミハ
とが可能で、確実にユーザーに情報を配
ケーブルテレビ事業者19社のうちの8社
ル通信の「地デジIP回線バックアップ
信できることだ。情報を誰と誰に配信す
が導入している。RF方式の4K試験放送
装置」は、メインタワーと中継局の間、さ
るかを設定することもできる。マルチメデ
におけるシェアではトップの実績だ。
らに中継局から先の伝送をネットワーク
ィア放送で運用が決定しているIPDCによ
網としては全国を網羅して既にスタンダ
る緊急警報放送は警報の種類が自然災
ードとなっているIP回線によって冗長化
害からテロまで多数用意されており、今
するシステムだ。
「地デジIP回線バック
後、他の放送形態もIPDCによる地域の
「MR3300X」
放送局の本局・支局間でIP伝送
アップ装置」はすでにある放送局で、離
防災情報の配信の形がスタンダードにな
ミハル通信のInter BEE 2014展示で
島への長距離配信のシステムとして実証
る可能性が高い。地域密着の事業展開を
の第2の分野「ネットワークソリューショ
実験に使われているという実績もある。
行っているケーブルテレビ事業 者は、
ン」では、放送にIPを活用する製品を出
「ネットワークソリューション」分野では
IPDCサービスを手掛ける事業者としても
展する。この分野の展示製品として、地
「IPDCシステム」も参考展示する。ケー
優位性がある。ミハル通信は展示会場で、
デジ方式を使った館内デジタル自主放送
ブルテレビ事業者や放送局がコミュニテ
ケーブルテレビでの用途を想定したIPDC
システム「MR3300X」を放送局向け用
ィーチャンネル、ラジオ、防 災 情 報、
サービスと製品のデモ展示を行う予定だ。
途で提案する。放送局の本局と支局を
結んで番組素材などをIP伝送するという
使い方だ。この製品にはTS-IP変換機能
映像素材IPネットワーク配信システム
があり、本局と支局を結ぶ場合はそれぞ
れの施設の両方に同じ製品を設置すれ
ばよい。番組素材だけでなく、ローカル
局が東京支社に地元の放送番組をIP伝
送してTSに変換し、普通のテレビに映
すこともできる。社員が業務で視聴する
だけでなく、例えば東京支局を地元のア
ンテナショップのようにして物産展やキ
ャラクターのイベントを開催し、お客さん
館内デジタル自主放送システム「MR3300X」によ
る、映像素材IPネットワーク配信システム
に地元のテレビ番組を見てもらうという
サービスも考えられる。 「MR3300X」
はすでに複数の放送局で導入実績があ
「地デジIP回線バックアップ装置」
り、好評な製品だ。放送局だけでなく市
議会中継を市庁舎に伝送するという用途
でも導入実績が多い。
放送局向けの「地デジIP回線バックア
ップ装置」も出展する。通常、地デジ放
送局のメインタワーから中継局への伝送
は、マイクロ波によるSTLやTTLの冗長
化と、さらに専用の光回線でバックアッ
プされている。しかし中継局から先は専
用の光回線によるバックアップが取られ
ていないところもある。STLやTTLのみ
「地デジIP回線バックアップ装置」は、放送局のメインタワーと中継
局の間、さらに中継局から先の伝送をIP回線によって冗長化する
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Inter BEE
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周年大特集
注目展示ブース解説
「必見の展示はこれだ」
「CATV監視装置」
「CATV監視装置」
業界初の4K映像監視機能
ミハル通信がInter BEE 2014で展示
する第3の分野「ノンストップソリューシ
ョン」は、放送を強靭化して障害時にも
サービスを止めないための製品である。
「CATV監視装置」は全チャンネルの映像・音声の状態をマルチ画面で一覧表示。チャン
ネル数が多い場合でも、複数のディスプレイポートがあれば、複数のモニタに表示できる。
障害が発生したことを検出すると、そのチャンネルの画面に「ブラック」「フリーズ」など
の文字を大きく表示して知らせる
この分野ではまず、映像信号の障害を
自動監視する「CATV監視装置」を展示
する。ミハル通信の「CATV監視装置」
は、ケーブル技術ショー 2014に初めて
出展してケーブルテレビ事業者から注目
された新製品だ。この製品には他社の映
像監視装置にはない大きな特長がある。
それは4K映像の監視ができることだ。
他社の映像監視装置では4K映像の監視
はできない。しかし、そのことにまだ気
が付いていないケーブルテレビ事業者は
「CATV監視装置」のTS監視のメイン画面
多 い。そ れ で は な ぜミハ ル 通 信 の
「CATV監視装置」にはできて、他社の
映像監視装置にはできないのか。その
理由を尾花 毅・ミハル通信(株)デジタ
ル応用技術部部長はこう解説する。
「他社の映像監視システムはSTBを使
用しています。映像信号をSTBから取り
出し、ビデオ信号監視装置で監視すると
いうシステムです。それに対して当社の
『CATV監視装置』はSTBを必要としま
せ ん。
『CATV監
視 装 置 』本 体 で
4K映像信号をデ
スクランブ ルし、
「CATV監視装置」のTS詳細情報の画面
映像の中から静止
尾花 毅
ミハル通信(株)
デジタル応用技術部部長
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ェアデコーダでデコードします。他社の
般的です。しかしHEVCでエンコードされ
PC側 のHEVCに
HD映像監視システムではSTBから出力さ
た4K信号は、コンポジット端子から出力
対応したソフトウ
れたコンポジット信号を監視することが一
できない仕様になっています。4K信号を
画 を 抜 き 出 し、
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STBから出力するにはHDMIを使うしかあ
りませんが、HDMIにはHDCP による著作
権保護が掛かっているため、それを解除す
ることができません。したがってSTBでは
4K信号を取り出す方法がないのです。当
社の『CATV監視装置』は4K映像から抜
社長に聞く「Inter BEE 2014展示のコンセプト」
「4K」を主軸に
「IP活用」
「強靱化」の新製品を
放送・ケーブルテレビ・情報通信の3領域に提案
き出した静止画を独自の方式で監視して
いるため、
4K映像の監視が可能なのです」
独自の方式とは、周波数多重された複
数の搬送波に含まれる多くの映像信号を
順番にデスクランブルしデコードすること
で間欠的に得られる静止画を使用して映
像状態を監視する方式だ。この方式の場
合、今後の放送に8K映像が採用された場
合でも4Kと同じように対応できる可能性
が高い。この製品の技術はCATVの映像
監視だけでなく、地上波などの映像監視
にも応用できる。ミハル通信は本方式を用
いた映像監視技術を特許出願中である。
ミハル通信の「CATV監視装置」には
4K映像監視の他にも特長がある。まず
全ての伝送されている信号に対応し、か
つ、検出できる障害の範囲も多岐にわた
り、監視できる対象が広いことだ。この
製品で監視できるのはブラックアウト、
フリーズ、無音などの映像・音声監視だ
けでなく、RF監視、TS監視も可能だ。
またCATV局で使用されることを想定し
てFM信号、パイロット信号などの監視
が可能なことも特長の一つである。独立
した映像・音声監視システムでは、障害
の検出はできるが障害復旧のために必要
な原因の特定が難しい。
「CATV監視装
今回のInter BEE 2014でのミハル通
信の展 示テーマは「 次 世 代 放 送Next
Solution」です。放送業界の潮流と当社
の心意気を示しています。放送業界では
次世代に向けた動きとして、放送・ケーブ
ルテレビ・情報通信の融合が進行してい
ます。4Kも2020年の東京オリンピックに
向けて総務省のロードマップに則り、より
綿密な対応施策が提示されて、4Kは本格
的な具体化のフェーズに入っています。今
回の当社の展示でもCATV監視装置、新
型ヘッドエンドなど4Kの新製品に力を入
れています。ケーブルテレビ・放送の強
靱化のための新製品も展示し市場に問い
ます。
新製品はシステムの概念も改善しまし
た。まだまだケーブルテレビ局や放送局
機器は単独動作が多いと思いますが、シ
ステムを高度化するために、システム内機
器の相互連携、アダプティブ(状況適応
型)インテリジェントシステム化、IPレイヤ
の活用などを実現しました。
当社の強みは、ケーブルテレビ機器で
培ってきたコア技術を持ち、それを放送業
界・情報通信業界の機器にも横展開して
いることです。ケーブルテレビ・放送・情
報通信の3つの領域の技術を持ち、この
3 領域が一体化していく今後の市場の中
で、お客様にとって重要なソリューション
を優先して開発・リリースしていきます。
数年来、当社では「MIHARU NEXT」
という社内組織改革プロジェクトを立ち上
げ、来年2015年のミハル通信創業60周
年に向けて、体制と意識の改革を進めて
二ノ宮隆夫
ミハル通信(株)
代表取締役社長
います。お客様の要求を先取りして迅速
に製品開発する取り組みも行っています。
今回展示する新製品はその成果です。
ミハル通信はケーブルテレビ・放送機
器の主要なサプライヤーの一社として、放
送の「Next」に対応し、お客様にとってメ
リットのある課題解決型ソリューションを
ご提案していきます。ミハル通信のInter
BEE 2014展示にご期待ください。(談)
置」はRF監視、TS監視と連携すること
により障害の原因を突き止めることがで
きるため、短時間での復旧が可能となる。
台だけで、同等の機能をオールインワン
能も持っている。ケーブルテレビ事業者
他社の映像監視装置に比べて低コスト
で持つことができるため、導入コストは圧
は担当者を常駐させて映像監視や障害
で導入できることも特長だ。これほど多
倒的に低い。オールインワンの監視機能
時の予備機切り替え作業に当たらせる必
機能な監視システムを導入しようとする
を小型・低価格で提供できるのは、全て
要がなくなる。この「CATV監視装置」
と、STBや各機能の監視装置を個別に
をミハル通信が自社開発しているためだ。
に対しては、現在全国約250社のケーブ
準備する必要がある。導入費用は監視す
さらにミハル通信の「CATV監視装
ルテレビ事業者からデモを見たいという
る規模に応じで増大するだろう。それに
置」は監視機能だけでなく、障害を検出
要望が寄せられており、ミハル通信の担
対してミハル通信の「CATV監視装置」
するとシステム全体と連携させて、ヘッ
当者が全国各地を回ってデモを行ってい
は、1Uサイズの監視装置が1台とPCが1
ドエンド予備機に自動的に切り替える機
るところだ。
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