UAE: 「30 周年を迎えたアブダビ国際石油展示会・会議(ADIPEC)」での

更新日:2014/12/5
調査部:濱田 秀明
公開可
UAE: 「30 周年を迎えたアブダビ国際石油展示会・会議(ADIPEC)」での要人発言など
(各種報道、各機関企業ウェブサイト他)
UAE(アラブ首長国連邦)のアブダビ首長国で、11 月 10 日~13 日まで、今回 30 周年を迎えた「アブダ
ビ国際石油展示会・会議(ADIPEC)」が開催された。現在、アブダビ陸上油田権益の更改入札が行われ
ており、同会議で新たなパートナーの枠組みの発表が期待されていた。しかし、今回、発表は無く、業界
筋では、早くとも 2014 年末、あるいは 2015 年になるとの見方がある。
しかし、こうしたことを背景に、今回のADIPECはIOC経営層の参加を得て、かつてない規模での参加
となった。さらに原油価格が低落する中、アブダビ側要人および IOC 側からの発言には大きな注目が集
まった。
UAE エネルギー大臣は、自国が石油の持続的供給にコミットして、OPEC の一員として行動していくこ
と、また国内のガス不足解消のために、フジャイラでの LNG 受入基地建設を 2018 年操業開始に向けて
進めていくことについて述べた。ムバダラ CEO は、UAE がエネルギー多様性を進め長期的なエネルギ
ー充足をはかっていくことについて語った。ADNOC 総裁は、2015 年初めに生産開始すべくサワーガス
開発を進めていくことや、陸上権益のパートナーシップ決定は慎重に行われるとの見通しを示した。
ADCO は 2017 年末までに 180 万 b/d の生産能力を達成するが、そのために 50~70 億ドルの投資を進
めることを表明した。
日本からも高木経済産業副大臣が出席して要人との会談をこなし、日本とアブダビ首長国間の石油共
同備蓄プロジェクトに関する覚書更新の署名が行われた。JOGMEC もアブダビ石油との共同ブースを出
展させ、市川理事がコンファレンスで講演を行った。
一方、BP、在 UAE 米国大使、シェルなどからは、EOR 関連などの自分達の高い技術を導入した回収
率向上や開発コストの低減、環境への取り組みなどのアピールや提案が出された。
1.今回の ADIPEC 開催について
11 月 10 日~13 日まで、UAE のアブダビ国際エキジビション・センター(ADNEC)にて、今年で 30 周年
を迎えた「国際石油展示会・会議(Abu Dhabi International Petroleum Exhibition ADIPEC)」が開催された。
今回のテーマは「Challenges and Opportunities for the Next 30 Years」であり、議長役を務めたアリー ハ
リーファ アッ・シャムシーADNOC 理事は開会式で「業界関係者のネットワーク、コラボレーション、相互
学習の場として機能することを期待し、今後ますますその重要性は高まる」と述べた。
UAE でのエネルギー権益は各首長国の専権事項となっているが、アブダビ首長国では、2013 年 1 月
に陸上油ガス田開発に関する開発権益が 75 年間の契約期間を終了し、次の開発パートナー枠組みを
–1–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
決定づけるための、権益更改の入札が現在、行われている。
この入札では、当初、エクソン・モービル、BP、シェル、Total 、Eni、Occidental Petroleum(Oxy)、
Rosneft、Statoil、INPEX、CNPC、KNOC、の 11 社が入札書類を提出したが、後にエクソンが外れたとさ
れている。現在の ADCO のコンセッションは、更改時に 4 つのブロックに区分されるとの報道も出たが、
ADNOC は新コンセッションの構造はまだ未確定とした。それでも、既に IOC 各社からの技術・商業提案
は行われており、新たなパートナーの枠組みについては、アブダビ首長国の最高石油評議会(SPC)の
決定と発表を待つ段階にあると理解され、ADIPEC 会期中に発表があるとの期待もなされていた。
さらに、今回は発表されなかったものの、Oxy がアブダビ陸上のシャー・サワーガス田に保有している
権益をムバダラ石油が取得するとの見方が出ており、ムバダラがアブダビ国内のエネルギー開発に参
加していくことについても関心を集めている。
また、ADNOC は原油生産能力を、現在の 280 万 b/d から 350 万 b/d まで引き上げる目標を掲げてい
るが、このためには今後 5 年間で 480 億ドルの投資が必要になると見られている。
これらのことを背景にして、今回の ADIPEC は、かつてない盛況を呈し、さらには原油価格が低下しつ
つあることも合わせて、アブダビ側要人および IOC 各社の経営陣の発言にも大いなる注目が集まった。
2.UAE/アブダビの要人発言
2.1UAE エネルギー大臣
9 日、UAE 政府のソヘイル ムハンマド アル・マズルーイー・エネルギー大臣の発言を、UAE 国営通
信(WAM)は次のように報じている。「ADNOC は新たな石油・ガス開発に 700 億ドルを投資し、2017 年ま
でに生産能力を 350 万 b/d まで引き上げる。シャー・サワーガス・プロジェクトは 2014 年中には生産を開
始する。Bab サワーガス田も開発を行っている。アブダビ陸上石油操業社(ADCO)の生産能力を現在の
140 万 b/d から、180 万 b/d へ 2017 年までに引き上げる。急激に増加している UAE 国内のガス需要を
満たすために、多くのプロジェクトを計画しており、エネルギーミックスを多様化していく。天然ガス生産
は国内需要の 50%を満たすだけの量があるが、残りの 50%は LNG 輸入でまかなう。このためにガス田
の開発と LNG 輸入プロジェクトを推進していく。フジャイラ首長国での LNG 輸入基地(9 百万トン/年)の建
設契約は 2014 年末あるいは 2015 年初めに締結する予定である。原油価格については、現状は低落し
ているが、過去 4 年間は安定していた。この過去 4 年間の原油価格水準は消費国には受け入れることが
できるレベルであったし、産油国にとっても生産能力の増強をする投資を行えるレベルであった、シェー
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
ルオイルは OPEC にとっては脅威ではなく、なぜなら、シェール開発は生産コストが高いからだ。それで
もシェールは需給バランスを保つ効果をもたらした。生産者にとってはフェアな価格維持をはかれる。
UAE は複数の市場から LNG を調達することを考えており、シェールガスは有力な供給源候補の一つで
ある。」
続いて 10 日、同大臣は ADIPEC 会場で記者からの質問に応じて、「UAE は石油の持続的供給にコミッ
トしている。原油価格の下落にパニックを起こすことなく、ファンダメンタルズを分析したうえで、OPEC と
して全会一致の結論を出す。UAE は OPEC の決議に従うのであり、一方的な行動はとらない」と語ったこ
とを WAM は報じている。
2.1.1. 陸上 LNG 受入基地計画について
マズルーイー・エネルギー大臣が表明した LNG 受入基地
は、エミレーツ LNG 社が、フジャイラ首長国で推進している陸
上 LNG 受入基地建設プロジェクトである。今回は、設計・資材
調達・建設(EPC)契約の締結を 2015 年初頭までに行い、操業
開始を 2018 年に予定していることを明らかにした。 UAE では
ドバイのジャバル・アリーの施設に次いで 2 番目となる LNG 受入基地となる。
エミレーツ LNG 社は、アブダビの政府系投資会社である国際石油投資社(international Petroleum
Investment Company : IPIC)とアブダビのムバダラ開発社の折半によって出資されるが、このプロジェクト
の遂行主体として Emirates Liquefied Natural Gas (LNG) LLC が担う計画である。
2015 年前半を目途に、第 1 フェーズとして、年間 450 万トン(600mmscfd)の受入容量を備えるため現
在、FEED を進めているが、第 2 フェーズではさらに年間 450 万トン(600mmcfd)の受入容量を追加保有
することを見込んでいるため、合計で受入能力は 900 万トン/年となる。受け入れる LNG は、国内での発
電用燃料として主に使用する予定である。世界最大級の LNG 船が受入可能な桟橋等の建設も計画され
ているが、既に仏テクニップ社による基本設計(FEED)が完了し、次段階として EPC 事業者の選定が進
められている。
当初の受入基地計画では、浮体式 LNG 貯蔵/再ガス化設備(FSRU)を用いて操業を開始する内容で
あり、2013 年 6 月には FSRU 提供者にエクセラレートが選定されたとの報道もあった。しかし、その後、
FSRU 計画に関する進捗は発表されていない。
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
フジャイラ首長国は UAE 国内で唯一、東側のオマー
ン湾/インド洋に面し、ペルシャ湾の外側に位置している。
このため、ホルムズ海峡が封鎖されるという事態に陥った
としても、フジャイラから LNG 供給が途絶するというリスク
は低い。
UAE は、国内の急激な経済発展と、それに伴う人口流
入および国民人口の自然増によって、電力需要が増大し
ている。このため、主要発電燃料である天然ガスの需給
が近年逼迫し、ガス不足解消のために、2007年にはドルフィン・プロジェクトを立ち上げた。これはカタル
のノースフィールド・ガス田から産出される天然ガスを、輸送能力 32 億 cfd(LNG 換算約 2,400 万トン/年)
のガスパイプラインを通じて、UAE に輸入するもの。2014 年版の BP 統計によれば、UAE の 2013 年の
パイプラインガス輸入量は 178 億㎥(LNG 換算約 1,300 万トン)で、全量がこのドルフィン・プロジェクトに
よるものであった。
さらに、2010 年にはドバイ供給庁(DUSUP)が、ジャバル・アリー港に、再ガス化能力 51 億 cf/年(LNG
換算約 370 万トン/年)の浮体式貯蔵再ガス化装置(FSRU)を使って LNG 受入の操業を開始している。
また、LNG 輸入事業者による国際機関 International Group of LNG Importers(GIIGNL)の資料によれ
ば、UAE の LNG 輸入量は 2013 年に 115 万トンであり、輸入先はカタル、エジプト、アルジェリアであっ
た。DUSUP は、カタル・ガスとシェルとの間で、2011 年から 15 年間にわたって 65 万トン/年の LNG を、
主にカタル・ガス 4 から購入する長期 LNG 売買契約(SPA)を締結している。
2.2. ムバダラ CEO
10 日、Dr スルターン ビン・アハマド アル・ジャーベル UAE 国務相兼ムバダラ・エナジーCEO は、
ADIPEC 開会式でスピーチし、その内容を WAM は次のように報じている。「UAE はエネルギー構成を多
様化することで、石油・ガス資源の寿命を延ばし、長期的エネルギーの安定供給を確実なものとしている。
最近は原油価格が下落しているが、このような短期的な価格の動きに関わらず、長期的なエネルギー需
要を充足させるための努力を継続すべきである」。
2.3. ADNOC
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アブダビ国営石油社(ADNOC)のアブドッラー ナーセル アッ・スウェイディ総裁によって、シャー・サワ
ーガス田で操業している Al Hosn が、2015 年初めの生産開始に向けて、現在、試運転中であるとの発言
を 11 日の MEED は次のように報じている。
「統合ガス開発(IGD)の拡張工事は 2019 年に完了する。これにより、洋上から陸上へのガス輸送量は、
現在の1bcfdから 2019 年には 1.6bcfd に増加する。」
12 日のブルームバーグは、スウェイディ総裁が、陸上新利権の入札を 9 社から受領したが、まだアブ
ダビ最高石油評議会(SPC)に、上程していないとの発言を報じた。これによれば、推薦する企業リストが
正しい選択であることを期するため、時間をかけて厳正な審査を行わなければならないということであ
る。
ADNOC 総裁の、この発言に関しては、13 日の International Oil Daily が「SPC への推薦は既になされ
たとみていた石油会社は、驚きをもってこの発言を受け止めた。しかし、これまでアブダビ政府や
ADNOCは(自ら設定した)締切を超えることをあまり気にしたことが無い。今回も最終決定は2015年にず
れ込むのではないかと見ている会社もある。旧パートナーに加え、中国、韓国、日本、アメリカ、ロシア、
イタリア、ノルウェーからなる応札企業の中から、どれを選択するかは、技術面、商業面、政治面での優
先度を、どのようにバランスさせるかと言う難しい問題であり、アブダビは、さらに時間をかけるかもしれな
い。また ADNOC 総裁は SPC 委員が決定遅れの責任を問われないように、このように発言したとの見方
を示す向きもある」と論評した。
また、ADNOC は、13 日に ADIPEC で、Wintershall、OMV と協力してシュウェイハット・ガス・コンデンセ
ート田の評価に関する協定を結んだ。これについて WAM は同日付で次のように報じた。
「現場は、アブダビ西部地域のルワイスからさらに西方25km にあり、Wintershall がオペレーターとなっ
て、3 坑の評価井を掘削して3D 震探作業を実施するもの。2014 年春から陸上で掘削した評価井から得
られたデータでの評価作業を実施。残りの 2 坑井と地震探鉱は今後数年間で実施する。このガス田から
の生産サワーガスは H2S を20%、CO2 を 7%含んでいる。Wintershall は 40 年間にわたってドイツ国内
で 16 か所のガス田から累計で 30b ㎥のサワーガスを生産してきた。この実績をシュウェイハットでもパイ
プライン素材や安全停止弁(Safety Shutoff Valve)、検知装置などに活かすとともに、安全基準、緊急時対
策、訓練などに適用するとしている。さらに、生産設備においても、Wintershall の株主である BASF の硫
化水素除去技術(OASE)を導入していくとし、硫化水素は除去して硫黄回収装置(Claus Plant)で、販売
用の硫黄に製造・加工する。2013 年末、BASF はアブダビ石油大学(PI)と、サワーガスから腐食性の硫黄
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
化合物を除去する技術の省エネ化を共同研究するための協定を結んでおり、研究成果がシュウェイハッ
トで活用されることが期待されている。」
また、13 日、ADNOC の戦略調整担当理事で、ADIPEC2014 の会長を務めたアリー ハリーファ アッ・
シャムシー氏の談話を WAM は、次のように報じている。
「ADNOC は社会と環境へのコミットメントを中核に据えている。ゼロフレアへの取り組みがその一例で
ある。安全確保と施設のメンテナンスは、経費が掛かっても最優先事項である。アブダビの陸上権益の
入札結果については、アブダビの指導者と SPC が検討している。審査においては、環境に配慮した新し
い解決方法の提示が、評価の対象として重要な要素になる。Statoil は環境に配慮した技術に強い。陸上
権益のパートナーシップ構成はアブダビの指導者、特にSPCの専権事項である。ADNOCは既に選考と
評価を終えて、指導者による決定を待っているところである。決定の発表は 2015 年第1 四半期になろう。
今後、約 30 年間に大きなインパクトを及ぼすことであるだけに、決定は慎重に行われる」。
2.4. アブダビ陸上操業会社(ADCO)
10 日、ADCO のアル・キンディ CEO の談話を WAM は次の通りに報じた。「ADCO は 2017 年末まで
に 180 万 b/d の生産能力を達成するために 50~70 億ドルの投資を行う。現在の原油生産能力は 161.3
万 b/d であるが、これには 2012 年末までに 50 億ドルを投資して 22.5 万 b/d の生産能力を追加したも
のである。アブダビ政府は技術力、市場などを確保するためにパートナーを必要としている。利権付与
に関しては政府が決定することであり、政府は慎重に検討している。また ADIPEC に参加している各国
石油大臣、IOC 首脳は、最近の原油価格低落にもかかわらず、エネルギー分野での投資を増加してい
く姿勢を示している。」
3.我が国の動き
高木経済産業副大臣が、11 月8 日から 10 日までの日程で UAE を訪問し、ADIPEC に出席した。さらに、
開会式を執り行った Sh ハッザア ビン・ザーイド・アブダビ執行評議会副議長および、SH ハーミド ビン・
ザーイド・アブダビ皇太子府長官との意見交換、並びにスウェイディ・アブダビ最高石油評議会(SPC)委
員兼 ADNOC 総裁、マズルーイー・エネルギー大臣との会談が行われた。加えて、エル・バドリ石油輸出
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
国機構(OPEC)事務局長との会談も行っている。
ドバイの英字紙ガルフ・ニュースは、10 日版で、「日本は権益原油の増加を図っており、アブダビの石油
利権獲得を目指している。日本政府は民間と共に、日本企業が参加する石油生産プロジェクト成功のた
めに努めており、日本とアブダビはエネルギーを始めとする分野で緊密に連携している」との高木副大
臣の発言を掲載している。
さらに、9 日には、スウェイディ SPC 委員との間で、日本とアブダビ首長国間の石油共同備蓄プロジェク
トに関する覚書更新の署名が行われた。
JOGMEC もアブダビ石油との共同ブースを出展させてアブダビ側要人を受入れ、さらには市川理事が
コンファレンスで講演を行っている。
4.外国エネルギー各社の動きおよび経営陣の発言
ADIPEC 開催のタイミングで、IOC 各社首脳がアブダビを訪問しており、迎える UAE 側と共に、要人
の発言に注目が集まった。
4.1.BP
10 日、BP は自社が世界で初めてとなる Robotic Coreflooding System を稼働させていると発表したこと
を WAM が報じた。このシステムは LoSal EOR を開発しているチームが運営しており、24 時間稼働できる
ため、従来の Corelooding と比較して新しい EOR 技術を開発する時間を少なくとも 50%削減できるもの。
BP はアラスカでの LoSal EOR テストに先立ち、45 回以上にわたって Coreflooding テストを実施した。BP
とそのパートナーは北海の Clair Ridge で LoSal EOR を実施しているが、これによって 2014 年の洋上技
術会議(Offshore Tchnology Conference)で Distinguished Achivement Award を受賞した。
BP の Bob Dudley CEO は、「ADIPEC に参加することは、メジャーにとって湾岸地域の重要性が増して
いることの証だ。」、「BP経営陣は、11月、今後10年間の計画中及び開発中のプロジェクト 50 件を検討。
メキシコ湾、アンゴラ、アゼルバイジャン、北海の巨大プロジェクトが重きをなしているが、中東の重要性
が再び増しつつある。イラクのルメイラ、キルクーク、オマーンの Khazan タイト・ガスがその具体例である。
アブダビも引き続き重視している。BP は、長年にわたりアブダビで事業を行ってきており、アブダビの利
権を得て、貢献できることを熱望している。かつて石油開発における回収率は 35%程度とされてきたが、
BP の EOR によって Prudhoe Bay の回収率を 60%まで引き上げることが出来たことをみれば、アブダビ
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
が目標としている回収率 70%の達成も、合理性のあるものだ。」とのコメントをアブダビの英字紙「ザ・ナ
ショナル」は 11 日に報じた。
さらに、同 CEO による、「最近の原油価格低落によって、BP は既に決定した投資を変更することは無
い。BP のプロジェクトは 80 ドル/bを前提としており、油価下落は、石油産業のコストに規律を回復すると
いうポジティブな面もある」との発言をガルフ・ニュースが 11 日付で報じている。
4.2.米国大使の発言
11 日付のガルフ・ニュースは、UAE 駐箚のミシェル・コルビン米国大使が、「米国の石油・ガス企業が
UAE の利権を得られることを期待していると述べたことを、伝えている。コルビン大使によれば、ADIPEC
には 160 社以上の米国企業が参加した。さらに米国企業はコスト引き下げをもたらす技術を有しており、
原油価格が急落している状況下で提案できることが増えている」との談話を報じた。
4.3.Total
11 日、のザ・ナショナルは Total の探鉱・生産部門トップのアルノー・ブルイヤック(Arnaud Breuillac)氏
の発言を次の通りに報じている。「10 月 20 日に、前クリストファー・デュ・マルジェリ Total 会長・CEO がモ
スクワにて飛行事故で死亡したが、Total の事業方針は不変である。Total 社の第 3 四半期の生産量は、
210 万 b/d であったが。2017 年までに 15 のプロジェクトが生産段階に入ることで、生産量は 280 万 b/d
となる予定である。他方、100 億ドルの資産売却および年間 20 億ドルのコスト削減を進め、スーパーメジ
ャーの中では、最もコストの低い会社となった。Total はアブダビとの関係を今後共、維持していくことに
取り組んでいる。Total は原価管理、プロジェクトデリバリーの能力に加えて技術力の優位性も持っている。
アブダビの ABK 油田では、ポリマー、サーファクタント圧入パイロットを昨年に開始し、ABK 油田での回
収率は油層によっては既に 55%に達している。Total はアブダビの油層を熟知しており、先端技術も持
っている。但し、アブダビ側が市場の変化を踏まえて、新たなパートナーを加えるであろうことも理解す
る」。
4.4. シェル
シェル・アブダビ会長兼アブダビ・クウェイト担当副社長のアンドリュー・ボーン(Andrew Vaughan)は、
ADIPEC 開会を前にした 8 日、シェルのアブダビおよび ADIPEC への取り組みについて次のように語っ
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
た。「陸上のバブ・サワーガス開発は、まだ開発計画策定段階であり、生産見通しなどはまだ言えない。
2014 年の夏季にテスト井を掘削し、その結果には満足している。今回の ADIPEC におおける 400 名の発
表者中、26 名がシェルでサワーガス開発、EOR、掘削シミュレーションを中心テーマとしていた。Andy
Brown Upstream International DirectorがExecutive Plenary Sessionでも登壇した。また入社間もない掘削
技術者の学習ツールとしてシェルが支援している ADCO の「Imtiaz 掘削構想」を展示紹介した。また、高
等科学技術単科大学(HCT)との協力にも焦点をあてており、HCT のシェル・シュミレーション・センターで
は、学生が実務的知識を学習可能にしている。またHCTの学生が製造した燃料効率の高い車両は今年
の「シェル・エコ・マラソン大会」で優秀な成績を収めた。さらにエミレーツ基金(Emirates Foundation)とは
2005 年の創設以来、「Think Science Program」の支援を通じて強いパートナーシップを維持。アブダビ環
境庁(EAD)とも 2000 年から「EnviroSpellathon」を実施し、既に 160 万人の児童・生徒が受講した。
4.5 Statoil
11 日付の WAM はノルウェーの Statoil が、環境に配慮したエネルギー操業を行うことが同社の重要な
鍵となっており、陸上開発のパートナーに選ばれたならば、技術ソリューションの治験を提案していくこと
を表明したと報じている。
5.各種協定・覚書調印
10 日、ADNOC とマスダールが、CO2 の回収・利用・貯蔵(CCUS)を商業レベルでのプロジェクトとして
実施するために、調査・開発の合弁企業を設立するための協定に調印した。出資比率は ADNOC が
51%、マスダールが 49%であり、既に両社は 4.5 億ディルハム(約 144 億円)で Dodsal グループと CO2
圧縮設備、パイプライン(50km)などの EPC 契約を結んでおり、次の内容から成る。
① エミレーツ・スチール社の工場での CO2 回収
② CO2 工場からパイプライン(50km)で ADNOC が操業する油田までの輸送
③ 油田への CO2 圧入により、石油生産の増収及び地下油層での CO2 貯蔵
新会社は Al Reyadah(アラビア語で「探検」、「探究」の意味)と名付けられる予定。分離回収される CO2
は 80 万トン/年で、プロジェクト完成は 2016 年の見込である。
11 日、アブ ダビ首長国政府機関である 「ア ブ ダビ技術開発委員会(Abu Dhabi Technology
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
Development Committee : TDC)」と、ADNOC とが ADIPEC 会場にて、知的財産(IP)プロセスに関するパ
ートナーシップ協定の調印式を行った。本協定は、アブダビ石油大学(PI)を含む ADNOC グループの IP
プロセスを TDC が支援する内容。アブダビおよび UAE 連邦政府が目指す知識集約型経済の基盤とな
る IP の創出、評価、申請、管理、商業化などに関する専門家の助言などの Takamul プログラムによる支
援をさらに強化するもの。Takamul はアラビア語で「統合」、「積分」を意味する 。
6. ADIPEC 開催データ(アブダビ側発表)など
出展者:法人 2000 以上。1000 以上の石油・ガス関連製品を出展。
参加者:業界関係者 6 万人以上。内 53%が調達・購買に関与。
前年の 54,000 人から 10%以上の増加。
開会式: 国家公安顧問・アブダビ執行評議会副議長である
Sh ハッ ザア ビン・ザーイド殿下が行った。
サポーター:UAE エネルギー省、ADNOC、アブダビ商工会
議所
ストラテジック・スポンサー:アラブ開発(ARDECO)
ADIPEC は、当初、石油工業技術者協会(The Society of Petroleum Engineers:SPE)が主催する国際会
議に併設された石油上流部門の国際展示会として 1984 年に出発し、今年で 30 周年を迎えた。近年は、
業界関係者のネットワークや共同研究・開発、相互情報交換の機会としての役割を果たすことが期待さ
れ、商談や契約成立など商業面へも注目が集まるようになっている。参加者によれば、前年にも増して、
今年はさらに来場者の数が増えたとのことだ。
今年は 16 社の政府系石油会社(NOC)、17 社の国際石油会社(IOC)が参加したが、NOC ではメキシ
コ、インドネシア、チュニジアが初参加となった。また、20 ヶ国による国別のナショナルパビリオンのうち、
マレーシア、インド、ナイジェリア、インドネシア、台湾が初開設であった。
今回で 30 年目であり、次の 30 年を目指したものだとテーマを設定している。しかし、当初は隔年開催
であったため、国際展示交易会の回数としては今回で 17 回目である。あるいは間もなく決定されるであ
ろう新たな陸上利権の契約期間が 30年間であるかの印象を与えるが、この点についても、そうだと決定・
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Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
発表されたものではない。
次回の開催は、2015 年 11 月 9 日~12 日まで、アブダビ国際エキジビションセンターで開催が予定さ
れている。
以上
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