No.66 [C-4] 基礎コンクリート下の杭を対象とした非破壊手法による探査

全地連「技術フォーラム2014」秋田
【66】
基礎コンクリート下の杭を対象とした非破壊手法による探査
㈱ジオテック
○野本
川村
真吾、関
1. はじめに
晃、堀田
克郎
淳
(2) 結果
本発表は、付替え工事が予定されている定置式クレー
図-2に地中レーダ探査結果例を示す。レーダチャート
ンの基礎杭の位置および長さを把握することを目的とし
は、連続して得た波形を集合させ濃淡表示した図であり、
て、非破壊探査である地中レーダ探査と高周波衝撃弾性
縦軸は電磁波を放出し反射して戻るまでの時間(ns)、横
1)
波法(オーリス )を併用して調査した結果について報
軸は距離(m)で表される。波形図はレーダチャート上の
告する。
区間 A および B の代表的な波形を示し、縦軸は時間(ns)、
横軸は振幅であり中央点線部付近では振幅:弱、左右両
2. 調査目的
端部ほど振幅:強として表される。
図-1に定置式クレーンのイメージ断面図を示す。付替
レーダチャートにおいて、区間 A では21~23ns 程度の
え工事では、クレーン基礎部が健全な場合には基礎部を
時間に強い反射波が水平方向に連続して認められる。こ
再利用したいという発注者の意向があったが、基礎部に
の反射パターンは全測線で全体的に検出されることか
関する既往資料がないため、地表面にある基礎コンクリ
ら、基礎コンクリート底面(埋め戻し土との境界)から
ート部より下の部分については、基礎杭の有無も含めて
の反射と判断した。
不明な状況であった。そこで、クレーン台座周辺の基礎
一方、区間 B では21~23ns 程度の時間の反射が相対的
コンクリート表面部から非破壊手法の探査により、基礎
に弱く、水平方向に連続した反射波が途切れるような反
杭の有無や長さ等の情報を得るために調査を実施した。
射パターンを示している。このことから区間 B では基礎
はじめに地中レーダ探査により基礎杭の有無と位置を
コンクリート下部の物質が埋め戻し土とは異なるもの
探査した。次に高周波衝撃弾性波法を実施して、地中レ
で、基礎杭の可能性があると考えられた。同様の反射パ
ーダ探査結果と同じ位置に基礎杭が検出されることを確
ターンを全測線から抽出した結果、X 方向:2.2m、Y 方
認するとともに基礎杭の長さを探査した。
向:2.25m の間隔で規則的に検出されたことから、区間
B の反射パターンは基礎杭の可能性が高いと判断した。
上述のように基礎コンクリート下部が埋め戻し土と判
クレーン本体
断される区間 A の反射パターンと比べ区間 B では反射が
クレーン台座
弱いため、基礎杭は基礎コンクリートと比誘電率の差が
基礎コンクリ ート
少ない物質であると推定できることから、基礎杭はコン
クリート製である可能性が高いと考えられる。
埋め戻し土
?
?
埋め戻し土
?
海
【基礎杭無しと判定】
【基礎杭有りと判定】
距離 2m
A B
基礎杭
基礎杭
基礎杭
A
A
B
0
図-1 定置式クレーンのイメージ断面図
えることにより地中を探査する方法である。
20
間
地中レーダ探査は地中に電磁波を放射し、電気特性(主
に比誘電率)の異なる物質の境界で反射した電磁波を捉
時
10
3. 地中レーダ探査
(ns)
30
(1) 測定
本調査では基礎コンクリートの厚さが1m 程度と想定
40
されたため、中心周波数500MHzのアンテナを用いた。
また、基礎杭を検出するために0.25m と極めて密な測線
間隔を設定し、測定中にリアルタイムでデータを確認す
50
レーダチャート
波形図:代表的地点
ることができ、作業性が良いことが特徴であるプロファ
イル法により測定を行った。
図-2 地中レーダ探査結果例
全地連「技術フォーラム2014」秋田
4. 高周波衝撃弾性波法
受振器
本調査で使用したシステムは高周波数・高感度受振セ
ハンマーによる打撃
弾性波の発生
基礎
コンクリート
ンサーを用い、特定の周波数範囲で指向性の強い反射波
⊿Tf
を選択できるのが特徴である。図-3に高周波衝撃弾性波
法の模式図を示す。高周波衝撃弾性波法では、発生させ
⊿Tt
た弾性波が対象物の先端や亀裂等から反射して戻ってく
⊿Tt:基礎杭先端からの
反射走時
基礎杭
る走時(時間)を測定し、対象物の弾性波の伝播速度と
⊿Tp
走時から長さ(距離)を算出する。
⊿Tf:基礎コンクリ ート底
面からの反射走時
(1) 測定
⊿Tp:基礎杭部分の往復走時
地中レーダ探査で「基礎杭有り」と判断した地点:No.1
~No.3、「基礎杭無し」と判断した地点:No.4の計4箇所で
図-3 高周波衝撃弾性波法の模式図
高周波衝撃弾性波法を実施した(図-5参照)。
基礎コンクリート底面からの走時(⊿Tf)と基礎杭先
⊿Tt
端からの走時(⊿Tt)は検出される時間帯が大きく異な
ると予想されたため、測定する時間レンジを調整し各探
査地点で⊿Tfと⊿Ttの2種類の走時を測定した。
得られる波形には反射波とともにノイズが含まれる。
基礎杭先端
からの反射
複数回測定を行うと、基礎杭先端等の境界からの反射波
は再現性があり一定の走時で検出されるのに対し、ノイ
ズはランダムな走時で検出される。そこで、各探査地点
2.0ms
において繰返し(数10回程度)測定を行い、一定の走時で
再現性の高い反射波が検出されていることを確認した。
ハンマーで起振した瞬間(=0ms)
(2) 結果
図-4に高周波衝撃弾性波法の測定波形例を示す。縦軸
図-4 高周波衝撃弾性波法による測定波形例
は振幅、横軸は時間で示されている。上下2つの波形は異
なる周波数帯域のフィルターを設定して表示したもので
ある。図中丸印で囲まれた部分は、基礎杭先端からの反
射と考えられる。どちらも再現性が高い波形である。
表-1 基礎杭の長さの算出例
調査
位置
①:⊿Tt
②:⊿Tf
③:⊿Tp=①-②
伝播速度
(km/s)
④
8.68
0.53
8.15
3.5~4.0
平均走時(ms)
推定杭長(m)
=③×④/2
表-1に基礎杭の長さの算出例を示す。得られた走時は
再現性のあるデータの平均値を用いた。基礎杭における
No.1
14.3~16.3
弾性波の伝播速度は、実測値を得ることができなかった
が、地中レーダ探査において基礎杭はコンクリート杭の
X 0
可能性が高いと考えられたので、伝播速度は過去のコン
クリート杭での実績値3.5~4.0km/sとした。
2.0
Y
No.1
2.0
2.25m
No.1~No.3では図-4で示したような波形が得られたこ
とから「基礎杭有り」と判断し、
基礎杭の長さを算出した。
4.0
6.0
8.0(m)
0
◎
◎
◎
◎
◎
◎
No.4
No.4では⊿Ttに相当する再現性のある波形が得られなか
有無に関する地中レーダ探査の結果と整合した。図-5に
4.0
探査結果平面図を示す。
2.25m
ったため「基礎杭無し」と判断した。これらは、基礎杭の
No.2
2.2m
5. おわりに
本調査では地中レーダ探査を実施し基礎杭の位置を把
握することで、高周波衝撃弾性波法を効率よく実施する
クレーン台座
No.3
◎
6.0
(m)
:地中レーダにより検出された基礎杭
:高周波衝撃弾性波実施地点(No.1~No.4)
◎:探査結果から推定される基礎杭
ことができ、存在自体が不明であった基礎コンクリート
図-5 探査結果平面図
下部の基礎杭について、その位置(配置)、種類、長さを
推定することができた。特に基礎杭の有無については、2
《引用・参考文献》
種類の探査の結果は整合しており信頼性の高い結果とな
1) 財団法人先端技術センター:オーリス(非破壊探査シ
った。
ステム),先端建設技術・技術審査証明報告書,1997.