平成26年10月号 No.442(488KB) - 長瀬ランダウア

●トップコラム/刈谷豊田総合病院 腎・膠原病内科部長・透析センター長・
臨床研修センター長、名古屋市立大学 内科学臨床教授 小山 勝志
● 平成 25 年度/個人被ばく線量集計/返却バッジ経過月数
●お願い/自動引落サービス
(口座振替払い)がおトクです!
!
No.442
●お知らせ/「保物セミナー2014」開催のご案内
平成 26 年 10月発行
定指標の目標値を患者ごとに設定し、その到達への具体的
な医療行為についてアドバイスすることです。もちろん、最
終的な責任は医師にあることには変わりません。こうした
取り組みにより、当センターは急速に成長し、現在では、地
域の透析医療の中核へと育つことが できました。我々が
創 設したシステムは、現在の医療業界に浸透しつつある
Continuous Quality Improvement(CQI)
の具体的実践とし
て位置づけされる「PDCAサイクル」と同様なものであるこ
154
とがわかりましたが、自らで悩みながら構築できたことによ
り多くを学びました。今日、C Q I の概念は KP I−CQI 概念
へと発 展 展 開していま す。設 定 指 標 をKey Performance
indicator(KPI)
とし、CQI を実践(PDCA をまわすこと)
することとされています。KPI に含まれるものは、我々が
小山 勝志
あげた“貧血”
“栄養管理”
“体重管理”
“カルシウム・リン管
理”
“透析効率”
“シャント管理”など(Process relatedといい
Key Performance indicator
and CQIとチーム医療
ます)だけではなく Clinical Outcome relatedの患者生存
率、シャント感染炎発症率など、さらにはManpower and
Infrastructure related(看 護 師/患 者 比 率、施 設 設 備 な
我々の施設は今年で 12 年目を迎えるまだまだ若い施設で
ど)を加え、測定可能な指標を、多くの職種で共有していま
す。当時驚くべきことに、立ち上げに関わったスタッフのほ
す。各 KP I 項 目に 対してP D CA サイクル をまわ すことを
とんどが透析医療の経験がありませんでした。医師も透析専
Continuous Quality Improvement(CQI)
として位置づけ、
門医は私ひとりでのスタートでした。そのため、透析医療の
CQI の実践においては医師、看護師、栄養士、薬剤師、臨
ありかたを、基礎から創りあげる貴重な経験をしました。ス
床工学技士などで形成した多種職チームでおこなうこと、
タッフの飛躍的な知識、技術の向上とそれらを永続的に革新
つまりチーム医療をその柱にすることを必須としています。
していける体制作りがなくてはならないと強く思いました。
CQI活動で具現化される戦略として、クリニカルパスをあげ
そこで導入したのが、
「患者マネージャー」という考え方です。
ることができると思います。クリニカルパスにKPI−CQI
常に患者視点で医療スタッフと患者との仲介役を担うこと
概念を組み入れることにより、各スタッフ間での目的、目標、
で、いつも患者の側に寄り添う人のことを「患者マネージャ
情報の共有を可能とし、チーム全体での協働を可能とします。
ー」と位置付けました。医師の裁量権の多くを、患者マネー
さらに、CQI活動を通じてこれらのパスはさらに有力な戦略
ジャーに委譲し、個々人の力が発揮できるようにしました。
能力をもったパスへと成長させていけると思います。当セン
看護師あるいは、透析技士が患者マネージャーを担当しま
ターではまだ KP I−CQI概念を組み入れるところまではい
した。またチーム医療を推進して、個々人の力量が臨床的に
っていません。しかし、医療現場は医療を提供する側、受け
問題にならない工夫をし、同時にスタッフがともに成長でき
る側ともに「学びの場」であることが望まれます。地域のみ
る職場環境をつくりました。まず実施したのは、各職種間で
なさまと、医療を通じて成長できる姿こそ、未来の医療の姿
共有できる管理項目の絞り込みです。スタッフ全員が客観
ではないでしょうか?これからも「学びの場」の構築をめざ
的視野でディスカッションに加わることを可能とするため、
し、チーム医療を確立していきたいと思います。
測定可能な指標の設定を目指しました。具体的には透析医
学会から発信されるエビデンスを利用し、透析患者の予後
刈谷豊田総合病院 腎・膠原病内科部長・透析センター長・
( )
臨床研修センター長、名古屋市立大学 内科学臨床教授
こやま かつし
に強く影響する因子を抽出しました。
“貧血”
“栄養管理”
“体
重管理”
“カルシウム・リン管理”
“透析効率”
“シャント管理”
プロフィール●1987 年名古屋市立大学医学部卒業、2004 年刈谷豊田
などです。またチームカンファを定期的に実施し、設定指標
総合病院腎・膠原病内科部長、透析センター長に就任。2006 年名古
屋市立大学内科学臨床教授を拝任。2011年刈谷豊田総合病院臨床研
の進捗状況の評価!
(Check!)
。その情報をもとに、なぜ目標
修センター長を兼任。山本五十六の『やってみせ、言って聞かせて、
達成されていないのかディスカッション!
(Act!)
を行い、打
させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』を座右の銘とし、臨床、
開策を計画!
(Plan!)
しました。そして次回のカンファまでに
教育、研究に取り組んでいる。最近の著書では、
“Hospitalist 2014
みんなで計画を実行!
(Do!)
しました。医師の役割は、各設
腎疾患:コラム「ネフローゼ症候群」”がある。
‐1 ‐
NLだより 2014 年 10月・No.442
平 成 25 年 度
平成 25 年度(平成 25 年 4月∼ 平成 26 年 3月)の当社クィ
クセルバッジサービスによる被ばく線量の集計を機関別・
職種別にまとめました。また、クィクセルバッジの着用終
了日からバッジをご返却いただくまでの経過月数につい
ても、昨年度に引き続き報告いたします。
数分布を表 1 に示します。全機関の年間平均被ばく線量は
集計対象者平均で 0 . 362 mSvでした。医療機関について見
ますと、一般医療の集計対象人数は 146 , 575 名で平均線量
は 0. 490 mSv、歯科医療は集計対象人数 2 , 400 名で平均線
量は 0 . 038 mSv、獣医療は集計対象人数 5, 861名で平均線
量は 0.049 mSvでした。
図 1 は、機関別の年間個人被ばく線量の分布を示して
います。集計対象者のうち、7 5 % が年間被ばく線量は「検
出せず」でした。非破壊では「検出せず」が 5 6 %、一般医
療では 6 8 % であるのに対し、一般工業で 9 4 %、研究教育
機関では 9 7 % が検出せずとなっています。また、全体の
0 .10 % が 2 0 mSv 超で、大半が一般医療の方でした。
図 2 は、過去 10 年における機関別の年間平均個人被ばく
線量の推移を表したものです。機関別では 10 年間変わる
ことなく非破壊が最も高く、次いで一般医療、獣医療、一
般工業、歯科医療、研究教育機関と続きます。全機関の年
間平均線量は、昨年と比べて 0. 005 mSv 低くなりました。
(注:医療機関のうち一般医療の着用者数が歯科医療や獣
医療に比べ圧倒的に多いので、平成 21 年度までの医療機
)
関と平成 22 年度の一般医療を結んであります。
[職種別個人被ばく線量の集計結果]
図 3 は、職種別及び男女別の平均個人被ばく線量です。
個人被ばく線量の集計対象
平成 25 年度中に、当社の測定サービスを 1 回以上受けら
れた 205,137 名のデータを対象とし、実効線量について集
計しました。集計には平成 25 年 4 月1日∼ 平成 26 年 3 月 31
日の着用期間で、報告日が平成 26 年 6月 30日までのバッ
ジデータを使用しました。
なお、最小検出限界未満の線量を表す「検出せず」は、年
間被ばく線量を 0 mSvとして計算してあります。
[機関別年間個人被ばく線量の集計結果]
機関を一般医療、歯科医療、* 獣医療、一般工業、非破壊
、研究教育の計 6 つに分類し、個人被ばく線量を集
(検査)
計しました。
(* 平成 24 年度集計までは「動物医」という機関名を使用しておりましたが、平
成 25 年度分より「獣医療」と名称変更しました。なお、集計対象は昨年度までと
変更ありません。)
平成 25 年度における各機関の年間個人被ばく線量の人
表1
個 人 被 ばく線 量
平成25年度 機関別年間個人被ばく線量人数分布(単位:人)
平均線量
(mSv)
機 関 名
検出せず
0.1 mSv∼
1.0 mSv
1.1 mSv∼
5.0 mSv
5.1 mSv∼
10.0 mSv
10.1 mSv∼
15.0 mSv
15.1mSv∼
20.0 mSv
20.1 mSv∼
25.0 mSv
25.1 mSv∼
50.0 mSv
50.1 mSv∼
合計人数
一般医療
0.490
99,283
30,923
13,377
1,985
542
245
112
101
7
146,575
歯科医療
0.038
2,264
115
19
1
1
0
0
0
0
2,400
獣 医 療
0.049
5,480
311
64
3
1
2
0
0
0
5,861
一般工業
0.047
24,561
1,157
292
27
4
2
0
0
0
26,043
非 破 壊
0.566
283
142
69
10
0
0
0
0
0
504
研究教育
0.023
22,961
675
101
14
2
0
0
1
0
23,754
全 機 関
0.362
154,832
33,323
13,922
2,040
550
249
112
102
7
205,137
図1
平成25年度 機関別年間被ばく線量分布(単位:%)
検出せず
(機 関 名)
0
0.1mSv∼
1.0 mSv
1.1mSv∼
5.0 mSv
50
60
一 般 医 療
獣 医 療
70
25.1 mSv∼
50.0 mSv
80
50.1 mSv∼
90
一 般 工 業
1.12
4.44
研 究 教 育
13.69
2.84
0.99
75.48
16.24
6.79
0.27
‐2‐
0.04
0.04
0.10
0.02
0.01
1.98
96.66
平均 0.023 mSv
0.08
0.07
0.05
1.09 0.02
0.03
5.31
28.17
56.15
0.37
1.35
0.17
4.79
0.79
94.31
平均 0.047mSv
100%
9.13
93.50
平均 0.049 mSv
平均 0.362 mSv
20.1mSv∼
25.0 mSv
94.33
平均 0.038 mSv
全 機 関
15.1 mSv∼
20.0 mSv
21.10
歯 科 医 療
平均 0.566 mSv
10.1 mSv∼
15.0 mSv
67.74
平均 0.490 mSv
非 破 壊
5.1 mSv∼
10.0 mSv
0.43
0.06
0.01
0.12
0.05
0.05
NLだより 2014 年 10月・No. 442
集計
返 却 バ ッジ 経 過 月 数
は全て 6 ヶ月以上としました。ただし、平成 26 年 1 月∼ 3
月着用分は着用終了日からの経過日数が 6 ヶ月未満である
ことから、集計対象を平成 25 年 1月∼ 平成 25 年 12 月の着
用バッジとしました。これを見ると、着用月に関わらず、
約 85 % のバッジが 1 ヶ月以内に返却されています。一方、
着用終了後 6 ヶ月が過ぎた時点でご返却いただけなかった
バッジは約 4 % あります。 クィクセルバッジは製造してから測定するまでの期間、
自然放射線を積算し続けます。返却が遅れたり、コントロ
ールバッジと一緒にご返却いただけないと正確な被ばく
量を算出できないことがあります。着用が終了したバッジ
は速やかにご返却いただきますようお願い申し上げます。
(技術室)
診療放射線技師(以下、
「技師」と略す)が男女とも被ばく
が最大の職種となっており、被ばく線量は男女平均で
1. 28 mSv でした。逆に被ばく線量が最も低かった職種は
工員で、被ばく線量は男女平均で 0.01 mSvでした。全職種
の男女別平均被ばく線量は、男性が集計対象人数 126, 209
名で 0. 47mSv、女性が 78, 928 名で 0 .19 mSvでした。
クイクセルバッジ返却経過月数
図4は、バッジの着用終了日からご返却までの経過日数
を月単位で示したものです。着用終了日から当社に届くま
での経過月数を1 月∼ 3 月、4 月∼ 6 月、7 月∼ 9 月および 10
月∼ 12 月分の着用分について各々合算し、グラフにしまし
た。着用終了日から 6 ヶ月経過した時点で未返却のバッジ
機関別年間平均個人被ばく線量推移
図2
100
1 .0
90
集計対象が変わりました。
0.8
非破壊
80
10
1月∼ 3月着用分
4月∼ 6月着用分
7月∼ 9月着用分
10月∼12月着用分
9
8
返却率︵%︶
0 .6
一般医療(平成21 年度まで医療機関)
0 .4
7
6
5
全機関
4
3
0 .2
6ヶ月以上
5ヶ月以上
6ヶ月未満
4ヶ月以上
5ヶ月未満
3ヶ月以上
4ヶ月未満
0
2ヶ月以上
3ヶ月未満
25
1ヶ月以上
2ヶ月未満
24
1ヶ月未満
23
1
年度
22
年度
21
年度
20
年度
19
年度
18
年度
年度
17
歯科医療
一般工業
年度
年度
年度
平成
16
2
獣医療
研究教育
0
経過月数別バッジ返却率
図4
(mSv)
着用終了日からの経過月数
図3
平成25年度 職種別及び男女別年間平均個人被ばく線量
(mSv)
1.6
1.48
男性
女性
平均
1.4
1.28
1.2
1.0
0.8
0.6
0.60
0.59
0.51
0.47
0.46
0.4
0.36
0.32
0.23
0.2
0.20 0.21
0.22
0.06
0.15
0.08
0.17
0.10
0.19
全平均
その他
0.04 0.03
0.01
教員
0.010.020.01
工員
‐3 ‐
技術員
0.02 0.02 0.02
研究員
助手
看護師
医師
技師
0
0.20
0.17
NLだより 2014 年10月・No.442
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お詫びと訂正
「保物セミナー2014」
開催のご案内
毎号、当社のN Lだよりをご愛読いただきましてあ
りがとございます。
2 014 年 8 月号(No. 4 4 0 )4 ページ目の「クイクセル
Webサービス」ご案内において、記載の誤りがござ
いました。ここにお詫びを申し上げますと共に以下
の通り訂正させていただきます。
開催日時:平成 26 年12月9日(火)9:25 ∼17:50
会 場:大阪科学技術センター 8 階大ホール
〒550 - 0004 大阪市西区靭本町1丁目8 番4号
参 加 費:5 ,000 円(ボイリング参加者は別途 5 ,000 円)
主 催:「保物セミナー2014」実行委員会 . 福島復興に向けた取組みと放射線防護
テ − マ:1「
上の課題Ⅲ」
特別講演「最近の安全規制と規制の現状」
.
2「近藤宗平先生 追悼講演」
3 . 風評被害に伴う「リスク」を「確率論的」
に見直す
・本文左、上から3 行目
「専用ソフトをインストールするだけで、使用する
ことができます。また、」を削除
・本文左、下から2 行目
「クライアントソフトを利用した」を削除。
・本文右、上から4 行目
(誤)
「推奨ブラウザ:Internet Explorer 7. 0以降」
(正)
「推奨ブラウザ:Internet Explorer 7. 0 、8 . 0 、9. 0」
なお、ボイリングディスカッションは、セミナー終了後、開催いたします。
「クイクセルWebサービス」は、セキュリティーを
確保するためSSL−VPN通信を採用し、情報の送受
信を行っておりますので安心してご利用いただけま
す。同サービスにつきましてご不明な点等がござい
ましたら弊社カスタマーサービス担当までお問い合
わせください。
正確な情報を提供できるよう努力して参りますの
で、今後とも引き続き、よろしくお願い申し上げます。
連 絡 先:〒542 - 0081 大阪市中央区南船場3−3−27
サンエイビル2 F
NPO安全安心科学アカデミー
「保物セミナー2014」事務局
Tel.&Fax. 06 - 6252 - 0851 Eメール [email protected]
*詳しくは、安全安心科学アカデミーのホームページまで。
http://www.anshin-kagaku.com/
長瀬ランダウア(株)ホームページ・Eメール
編集後記
トップコラムの小
ーマンをしていますと、改善しようと思
山先生の原稿を拝読
っていても中々そうはならないのが現
しました。一人一人
実で、腰を上げようと思いつつ、日常に
が 責 任 を 与 え ら れ 、 流されてしまう。ふと振り返って、これ
自主的に状況を考えながら判断する。ま
ではいけないと思うのですが … こんな
た、それがチームとして成り立っている。 日々の繰り返しです。読者の皆様はどう
最近の医療ドラマでもありましたが、非
ですか。現実の壁を乗り越えるのは難し
常に素晴らしいことですね。これは医療
いですが、理想に向かって一歩前に進み
現場だけでなく、全ての組織に必要なこ
たい今日この頃です。
とだと思いました。しかし、長年サラリ
(八木 信行)
‐4‐
http://www.nagase -landauer.co.jp
E-mail:[email protected]
■当社へのお問い合わせ、ご連絡は
本社 Te l. 029 - 839 - 3322 Fax. 029 - 836 - 8441
大阪 Te l. 06 - 6535 - 2675 Fax. 06 - 6541 - 0931
No. 442
平成 26 年〈10月号〉
毎月1日発行 発行部数:36,200部
発 行 長瀬ランダウア株式会社
〒300 - 2686
茨城県つくば市諏訪C 22 街区 1
発行人 中井 光正