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ROAD TEST No 5182
VOLKSWAGEN e-GOLF
フォルクスワーゲン e-ゴルフ
いよいよ日本仕様が発表されたゴルフのEV仕様だが、そのルックスは驚くほど普通だ。
果たしてその性能も控えめな外観なりなのか。それとも爪を隠した能ある鷹なのだろうか。
photo: Luc Lacey
WE LIKE.............................EVとしては平均以上の航続距離、パフォーマンスと効率の組み合わせ、ゴルフ・ブランドのクオリティと使いやすさ
WE DON’T LIKE.........急速充電インフラ普及への不安、先行き不透明なリセールバリュー
開口部にグロスブラックのカバーが装着された
グリルは、eゴルフの外観でもっとも目立つ特徴
であろう。電力駆動を示唆するブルーのライン
はVWロゴにもあしらわれる。
106
AUTOCAR 12/2014
新意匠のフロントバンパーに組み込まれたC字
形のデイタイムランニングランプは、今後、VW
の電気自動車のシンボルとなりそうだ。ただし、
日本仕様の e-アップ!では、リフレクターに置き
換えられている。
※掲載車両は英国仕様であり、
装備そのほかが日本仕様と異なる場合があります。
16インチのアルミホールは、エアロダイナミク
スの向上を考慮してデザインされた。また、タイ
ヤはさらなる最適化を行い、転がり抵抗を従来
のものより10%も軽減している。
ほかのゴルフと同様、アダプティブクルーズコン
トロールとフロントビューカメラ、緊急ブレーキ
用レーダーのユニットはナンバープレートの下
に取り付けられている。
Volkswagen e-Golf ROAD TEST
HISTORY
MODEL TESTED
テスト車両概要
●モデル名:フォルクスワーゲン e-ゴルフ
●車両本体価格: 邦貨換算約490万円
●日本発売時期: 2015年中頃(予定)
●最高出力: 115ps
●最大トルク: 25.5kgm
●0-97km/h加速: 10.5秒
●113-0km/h制動距離: 49.5m
●最大求心加速度: 0.88G
●テスト平均燃費: 152Wh/km
●二酸化炭素排出量: na
標準装備のリヤスポイラーとCピラーのエアガ
イドは、ともに優れたCd値に貢献している。
エンジンからモーターへ
VW の歴史には多数の低燃費車が現れ
るが、そのほとんどが内燃機関を積んでい
た。たとえば2002年の1リッターカー・コン
セプトがそうだ。これを起点に、最終的には
ハイブリッド車のXL1が生まれている。
EVのコンセプトカーとしては、日本導入
が発表された2009年登場のe-アップ!があ
る。また、2011年のNILSは、日産チョイモ
ビのようなシングルシーターで、跳ね上げ
式ドアを持つシティコミューターだ。いずれ
もeゴルフの直接的な先祖ではないが、こ
れらのプロジェクトの成果は活かされてい “1リッターカー”
の名は100kmの走行に必要とする
ると見ていいだろう。
燃料の量に由来している。
eゴルフの車名バッジはとてもシンプルなデザイ
ンだ。
しかも、テールゲートの車名表示以外に目
立った装飾はない。ただしそれがなかったとして
も、エグゾーストパイプの不在が、このゴルフが
EVであることを明確に物語る。
フロントと同様、テールライトもLEDのみを使用
する。通常のフィラメント式バルブよりも高価だ
が、エネルギー効率に優れ、なおかつ明るい。
急速充電はチャデモ式で、ソケットはボディ右側
のCピラー付け根に配置されている。通常充電
用ソケットはフロントのVWエンブレムの裏側に
あり、付属のコードを用いて電源と接続する。
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107
ON THE INSIDE
ノーマル/エコ/エコ+の3モードは、
シフトレバー脇に 一般的なステアリングホイールだが、欧州ではシフトパドルをオプション装着で “シフトレバー”
はドライブ/パーキング/リバースの切り替えに加え、エネ
設置されたスイッチで選択する。エコとエコ+ではパ きる。
これを使うと、エネルギー回生のモード調節をもっと簡単に行える。
ルギー回生度の選択機能も併せ持つ。
レバーを引いて
“B”
レンジに入れ
ワーと最高速度が制限される。
ると、
ブレーキからのエネルギー回生の度合いは最大となる。
ずれは可能になるだろう。
サービ
また、車両購入費用には、
“Car-net”
マルチメディアシステム
スの3年契約が含まれている。今回はこれをテ
今のところeゴルフは単一グレード設定で ストするチャンスがなかったが、対応するアプ
あり、
したがって装備内容はかなり充実してい リケーションをiPhoneやAndroidを採用した
る。純正インフォテインメントシステムの
“ディ スマートフォンで使うと、エアコンの操作、充電
スカバー・プロ”
と8 インチカラータッチスク 状態や積算走行距離および時間のチェックが
車外でできる。
リーンは標準装備だ。
GPSナビはクリアで視認性が高い。航続可 それ以外の部分でも、eゴルフのマルチメ
フルセグ地デジ
能距離を算出し、その範囲内に存在する充電 ディアシステムは素晴らしい。
ステーションを表示してくれる機能も備えて チューナーやBluetoothはゴルフ全車に標準
タッチスクリーンも含め、
ク
いる。
これはEVにとって重要な情報だ。充電 装備されているが、
フォーマットの詳細を表示したり、長距離移動 ルマそのものの直感的な操作感覚と同様に扱
こうした部分もフォルクスワーゲン
時には急速充電場所を経由するよう、分岐点 いやすい。
やルートを設定できればなおいいのだが、い への信頼感を高めている。
MULTIMEDIA SYSTEM
108
AUTOCAR 12/2014
Volkswagen e-Golf ROAD TEST
HOW BIG IS IT?
855mm
3451233 litres
n
mi
m ax
0m m
60 0mm
96
2632mm
55%
1453mm
n
mi ax
mm m
810 0mm
9
10
950m
m
0.28
820m
1000m m min
m max
サイズはどれくらい?
763mm
39%
45%
4254mm
VISIBILITY TEST
視認性テスト
HEADLIGHTS
ほかのゴルフと同様、
ドライビングポジションは優秀で、スペースにも余裕がある。室内にはeゴルフ
ならではの差別化ポイントは少ないが、ステッチなどの青いディテールはそのひとつだ。
1549mm
前後にLEDライトを備える唯
一のゴルフだ。クリアで配光
が広く、さらには自動防眩機
能まで備えている。
1799mm
視認性は良好。左右どちらも、
前方視界の死角は10度未満
である。後方と斜め後ろの視
認性にも優れている。
8.8º
obscured
Turning circle: 10.9m
FRONT
1518mm
9.2º
obscured
標準的なシート位置での
足元スペース:820mm
WHEEL AND PEDAL
ALIGNMENT
手
Centre
50mm
優秀。ほかのゴルフと同様、ステアリングコ
ラムの調節範囲は広く、ペダル位置は右足
にぴったりと合っている。
175mm
ステアリングホイールとペダルの配置
頃な価格帯のEVがいかに進歩
が現実となりつつある。現時点で期待
してきたかを、おおまかに知る
がかかるのは、
このVWのeゴルフだ。
ことのできる物差しがある。テディント
日産リーフやBMW i3と競合する価格
ンにあるオートカー編集部からテスト
とサイズのニューモデルは、今回、ど
コースまでの移動ルートだ。
んな走りを見せてくれるのだろうか。
われわれが写真撮影に使うサーキッ
テストコースとそこへ向かう途中のあ
トは、編集部から50kmほど離れた場
らゆる道で、それを確かめてみたい。
所にある。ルノー・トゥイジーなど、到着
後に再充電が必要だった例外も一部
あるが、これまでにテストした
“普通”
意匠と技術 DESIGN&ENGINEERING
★★★★★★★★☆☆
のEVはどれも自力で到着できた。
VWがEVのパーティへ参加するに
だが、ロードテストの舞台となるレス
あたり、ゴルフのコスチュームを選ん
タシャー州のMIRAテストコースへの
だのは意外ではない。控えめなアピー
バッテリー搭載の不利益は後席が被りがちだが、eゴルフのパッケージングにはまったくといってい
いほどそんな悪影響が見られない。スペースは一般的なCセグメントハッチバックと同等だ。
幅:960-1270mm
奥行き:750-1480mm
高さ:530-870mm
荷室容量もEV化の犠牲にはなっていない。付属の充電ケーブルは、荷室フロア下のバッグに収納
できる。充電切れの際は退避のため、約100mと約50mの2回、短距離移動が可能である。
道のりとなると話は別だ。テスラなら
ルはこのメーカーの基本スタンスであ
ロードスターでもモデル Sでも難なく
り、ウォルフスブルクの意志決定者た
めて控えめに徹している。
る。ボディも同じく高張力スティール製
こなせるはずだが、
ミニE 、ルノー・ゾ
ちは市場調査に頼らずとも、自分たち
いうまでもないが、ボディサイズは
だ。ただし空力面は改善されており、
エ、そして初期の日産リーフでは、途
の保守主義が正しいと確信しているこ
通常のゴルフⅦ 5ドアと同じだ。そし
Cd値は10%ほど軽減している。これ
中で充電するかトレーラーで輸送しな
とだろう。BMW i3ときわめて派手な
て、フロア下にリチウムイオン電池を
は主として、通常なら冷却に使われる
ければならなかった。
レンジエクステン
その同類はゼロエミッション車市場の
搭載するためにトランクスペースが少
気流を内部へ取り入れずに受け流し
ダーEV であれば、
リザーブの化石燃
一端に位置し、eゴルフはもう片方の
しだけ目減りしている点を除けば、実
ているグリルによる成果だ。
料に頼ることになるだろう。
端に位置する。大手コンビニがPB 商
用性についてもほとんど同等の素晴
バッテリー搭載による重量増以外
の大きな違いは、エンジンに代わって
けれど、
ドライバーが電池切れの心
品のCMを流すように「普通に乗れる
らしいレベルに達している。それとい
配に冷や汗を流すことなく、走行可能
電気自動車ができましたよ!」と大衆に
うのもeゴルフは、その何もかもがVW
搭載されたEEM85同期電動機、つま
距離をいくらか残してテストコースの
向けて安心感を積極的にアピールし
のスタンダードとなったMQBプラット
り電気モーターである。VW自身が開
駐車場に滑り込めるEVが、徐々にだ
ている前者に対し、後者の態度はきわ
フォームで構築されているからであ
発したこのユニットは12000rpmまで
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109
ON THE ROAD
TRACK NOTES サーキットテスト
回り、115psの出力と最大25.5kgm
のトルクを前輪に伝える。
ギヤボックス
T3
は、同じく自社開発の1段式だ。
■ドライサーキット
フォルクスワーゲン e-ゴルフ
ラップタイム: 1 分 30 秒 3
日産リーフ(2011)
参考タイム: 1 分 29 秒 9
T6
T2 T5
T7
み込むことに成功した点だ。eゴルフ
T1
T4
特筆すべきは、VWがこの新しいテ
クノロジーを既存車の生産方式へ組
Start/finish
は、内燃エンジンを搭載するゴルフと
eゴルフは強力なボディコントロールと
同じ生産ラインを流れるのである。識
グリップの、良好なバランスを発揮し
た。グリップレベルがもっと高く、動力性
能がもっと優れていればなおいいとは
思うものの、このコースでもっとも遅い
EVというわけではない。
変速機なしにT3への進入速度をコ
ントロールするのはむずかしい。慎
重にコーナーへと進入し、スムーズ
に立ち上がるのがベターだ。
T1進入時のブレーキングでは強
力な制動性能を発揮するが、横
グリップに制約があり、エイペッ
クスを正確に狙うのは困難だ。
別ポイントは専用デザインのLEDヘッ
ドライトとアルミホイール、
フロントバ
ンパー、そして閉鎖されたグリルだ。
付
け加えるなら、ほとんど無音に近い走
■ウェットサーキット
フォルクスワーゲン e-ゴルフ
ラップタイム: 1分21秒3
日産リーフ
(2011)
参考タイム: 1分19秒6
行音もeゴルフならではの特徴である。
リニアなスロットルレスポンスは、
T 2からT 4 へ抜ける際に、きわめて
正確なパワー制御を可能とした。
T5
室内 INTERIOR
★★★★★★★★★☆
T6
T7
T3
サイズ的に同等なクルマとの比較では、
eゴルフの走りはたいていのライバルと
同程度だ。
タイヤはBMW i3ほど細くな
いながらも、冠水路面でも水切れはよ
かった。ESPは解除できないが、さほど
頻繁には介入しない。
T4
T2
T1
T8
シャシーとステアリングの
ダ イレクトさのおかげで、
長いコーナーのエイペック
スをたやすくとらえられた。
Start/finish
3.4s
0
80km/h
5.1s
7.5s
いのものが多いバッテリー残量計さえ
113km/h
10.5s
14.4s
10s
129km/h
も、燃料計に手を加えただけのシンプ
19.6s
ルな設えだ。同様にエネルギー回生の
15s
作動状況モニターも、電気モーターの
日産リーフ(2011)
48km/h
3.6s
0
64km/h
80km/h
5.4s
7.7s
5s
97km/h
113km/h
10.9s
15.0s
10s
129km/h
20.7s
15s
20s
80-0km/h
24.9m
10m
WET
デザインや仕上げ、エルゴノミクス、
使いやすさ、そして実用性に関するク
ファミリーハッチのスタンダードとなり
48-0km/h
8.9m
0
回転計に統合されている。
オリティはほかのゴルフと変わらず、
■制動距離
97-0km/h 制動時間 : 2.71 秒
DRY
ギヤセレクターのノッチが2 段階増
え、計器盤が若干だが変更されている
まである。通常はイルミネーションまが
97km/h
5s
保守的ポリシーが最良の結果をもたら
している箇所ともいえるだろう。
クピットの風景は見慣れているそのま
フォルクスワーゲン e-ゴルフ
64km/h
は、室内でも継承されている。VW の
点を別にすれば、運転席から眺めるコ
■発進加速
テストトラック条件 : 乾燥路面 / 気温 18℃
0-402m 発進加速 : 17.9 秒(到達速度 : 124.1km/h)
0-1000m 発進加速 : 32.5 秒(到達速度 : 140.0km/h)
48km/h
慣れ親しんだ、安心感あるデザイン
20m
9.2m
48-0km/h
得る水準である。運転席に座れば慣
113-0km/h
49.5m
30m
40m
26.1m
80-0km/h
れ親しんだ感覚に包まれ、後席は快適
50m
56.8m
113-0km/h
で、ほとんどあらゆるものが指先での
操作でアジャストできる環境には感謝
したくなる。さらに、2ゾーンエアコン
ON THE LIMIT 限界時の挙動
110
一般的にEVでMIRAテストコースを走
残量を温存する必要があるからだ。当然な
のラップタイムであれば通常の内燃エン
不足のせいであり、グリップレベルやシャ
行する場合、
ドライとウェットのいずれの
がら、そういうふうにサーキットで走らせて
ジンを積む5ドア車にひけを取らない。EV
シーバランス、ボディコントロールの欠如
サーキットでも、限界時の挙動に慣れるた
も、わかることは限られてしまう。
だからといって航続距離を稼ぐための超
が原因ではない。eゴルフは、内燃エンジ
めの時間が足りなくなる。
なぜなら、再充電
それはともかく、eゴルフはたいていの
低抵抗タイヤは必ずしも必要ではないこ
ンを積んだ兄弟車よりもフラットで鋭い
しなければならなくなると時間のロスにな
EVよりも優れた走りを見せた。低転がり抵
との、
これは証明だといえるだろう。
コーナリングをする。
もっとサイドウォール
るため、電力を使い切る前にすべてのテ
抗タイヤでありながら純粋なグリップ力は
その一方でドライサーキットのラップ
の硬いタイヤを装着していれば、
より引き
ストを終了させるのが望ましく、バッテリー
BMW i3より強力で、ウェットサーキットで
は遅かったが、これは絶対的な動力性能
締まった走りを見せるに違いない。
AUTOCAR 12/2014
Volkswagen e-Golf ROAD TEST
や360°
パーキングセンサー、GPSナ
ビ、8 インチのタッチスクリーンなど、
装備も充実している。洗練度も素晴ら
しく、113km/hでの騒音は63dBと、
先代ゴルフの48km/h時に近い。
唯一の短所は、ダブルフロア機構
が省かれてしまったラゲッジスペー
スである。
これで容量は39ℓも減って
しまった。
とはいえ341ℓは、フォード・
フォーカスよりも若干だが広い。
動力性能 PERFORMANCE
★★★★★★★★★☆
パワートレインは、現代のEVを基準
に見てもきわめて静かだ。たいていの
EVでは小さいながらも高音の唸りが、
ロードノイズや風切り音が大きくなる
前の低速走行時に耳に入る。だが、e
ゴルフのモーターと高電圧インバー
巡航時の静粛性はEVの基準に照らしても高い。だが、乗り心地は少しばかり落ち着きがない。
ターは、ほとんど音を発しない。アクセ
ルペダルを踏み込んでみても、発進時
高速道路を制限速度内で低速巡航す
操作に慣れれば慣れるほど、燃費なら
ションタワー間の高い位置にぶら下が
にタイヤがアスファルトの上で滑る音
るような状況を除けばあらゆる状況で
ぬ電費は高められるはずだ。実際、エ
るのではなく、キャビンフロアの下に
が聞こえるだけである。
eゴルフにおよばない。また、変速のな
ネルギー回生のセッティングの変更に
配置されている。
これによって得られ
このパワートレインはまた、低回転
いeゴルフは、追い越しも容易だ。
よって、意のままに操縦している感覚
たアドバンテージは、走り出してすぐ
域の力強さでも秀でている。VW車に
高度な回生エネルギー制御もまた、
が高まるばかりでなく、今年のはじめ
に感じられる。純粋なグリップレベルは
期待される上品な洗練度だけでなく、
走りやすさにつながっている。たとえ
にテストしたi3のエネルギー効率を上
高くないが低速および中速ではロー
競争力のあるパフォーマンスとフレキ
ばリーフは、車速に応じて決められた
回る結果が得られている。
ルが少なく、
ダイレクトかつ正確、そし
シビリティが印象深い。0-97km/h加
回生制御パターンしか備えていない
速のタイムは、われわれが3 年前にテ
ため、スロットルペダルを戻したときに
ストした日産リーフを0.4秒しのいでい
どのくらい減速するのか、正確な予測
て俊敏に向きを変えるのである。
乗り心地と操縦安定性 RIDE&HANDLING
★★★★★★★★☆☆
クルマではないが、
ラウンドアバウトや
通常ならハイペースで走らせる類の
る。150psの現行ゴルフ・ディーゼル
がむずかしい。i3だと、選択されたドラ
あるポイントまでは、eゴルフのハン
タイトなジャンクションを元気に駆け抜
と比べても、48km/hまでの発進加速
イビングモードに応じて、
リーフよりは
ドリングは平均的なエコノミーハッチ
けることができ、それがじつに楽しい。
は0.3秒も速いのだ。
多様な制御を行っている。
より優れている。乗り心地は同クラス
結局のところ、このクルマのシャシー
この数字から、市街地での活発さは
eゴルフはというと、
ドライバーが
のたいていのガソリン車やディーゼル
はゴルフなのだ。ほかのグレードと同じ
想像できるだろう。一般的な道の法定
回生の度合いを選択できる。
まったく
車に比べると劣るが、運動性能は、平
ように、eゴルフのハンドリングには完
速度くらいまではレスポンスがよく、生
行わせない指示さえできるのだ。指示
均的なゼロエミッションカーよりもむし
全に計算された一貫性と挙動の読み
やすさが備わっている。
気にあふれた走りをする。車列の隙間
は、ギヤセレクターを左右に振るか、あ
ろスポーツ志向のドライバーの高い関
に飛び込むような動きはBMW i3に分
るいは後方に引いて
“B”
レンジへ入れ
心を引けるほど良好だ。
だが、路面の荒れた道での乗り心
があるが、それ以外の超低燃費車は、
ることによって行う。
ドライバーがこの
主要な重量物は、フロントサスペン
地に関しては、注意深く躾けられた素
UNDER THE SKIN バッテリーに技あり
eゴルフは、その中身を奥まで探るにつれて、ゴルフらしくは見
MQBプラットフォームは当初よ
り、電気式パワートレインの搭
載を考慮して開発されている。
えなくなっていく。フロアの基本的なレイアウトはMQBプラット
フォームのアーキテクチャーだが、前後シートの下に補強フレーム
に収めた318kgのリチウムイオンバッテリーパックを配置するた
め、大幅な改修が施されているからだ。
フォルクスワーゲンは社内で開発したと説明するが、電気系の
専門技術には限界がある。そのため、264個のセルで構成される
27 個のバッテリーモジュールは、電子機器業界の巨人、パナソ
ニックから供給を受けている。ユニットの公称電圧は323Vで、蓄
えられた直流電力はパワーエレクトロニクスモジュールによって
交流へ変換され、電気モーターへと送られる。
トータルのエネルギー容量は24.2kWhだが、バッテリーを保護
するため、すべてを使い切らないような制御が組み込まれている。
318kgのバッテリーを積む
eゴルフは、ゴルフ2.0TDI
よりも200kg近く重い。
家庭用200V電源を用いる専用ウォールボックスを使えば、約9時
間でフル充電が完了できる。400Vのチャデモ式急速充電器を使
用すれば、約30分で80%までチャージ可能だ。
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111
DATA LOG
SPECIFICATIONS 計測テストデータ
■今月の数字
3.4sec
■メカニカルレイアウト
電気モーターやギヤボッ
クス、インバーターなどの
駆動系はすべてエンジン
ルーム内に設置されてい
る。MQBプラットフォーム
は当初よりEV 化が折り込
み済みで、318kgものバッ
テリーを搭載するスペー
スを想定して開発された。
車重はゴルフ2 . 0 TDIより
も150kg以上重い。
24.2kWh
0-48km/hの加速タイムは、同等の
装備を積み込んでいるTDI 搭載の
ゴルフを0.3秒もしのぐ。
55%
前輪荷重比はエンジン車よりも小さ
い。ちなみにTDIモデルは62%、ゴ
ルフRは64%である。
■電気モーター
駆動方式: フロント横置き前輪駆動
形式: 交流同期
ブロック/ヘッド: na
ボア×ストローク: na
圧縮比: na
バルブ配置: na
最高出力: 115ps
最大トルク: 25.5kgm
許容回転数: 12000rpm
馬力荷重比: 72.6ps/t
トルク荷重比: 16.1kgm/t
比出力: na
■シャシー/ボディ
構造: スティールモノコック
車両重量: 1585/1545kg(実測)
抗力係数: 0.28
ホイール: 6.5J×16
タイヤ: 205/55R16
コンチネンタル・コンチ eコンタクト
スペアタイヤ: スペースセーバー
■変速機
形式: 1段リダクションギヤ
1000rpm時車速〈km/h〉: 12.2
最終減速比: 3.6
晴らしい振る舞いの兄弟分たちに、わ
ずかながらおよばない。空気抵抗低減
のために車高が下げられているが、そ
のせいで、ボディのピッチングや小刻
みな動きを抑制するために必要なホ
イールストロークが多少なりとも不足
してしまったのだろう。大きなバンプ
を通過すると、それまでは安定してい
た挙動が若干だが乱される。大きな欠
点ではないが、同種の経験は以前にも
あった。われわれが再三にわたって指
摘してきた、VW のブルーモーション
■燃料消費率
オートカー実測値
総平均
ツーリング
動力性能計測時
メーカー公表値
混合
バッテリー容量
消費率
航続距離
152Wh/km 159km
168Wh/km 144km
270Wh/km 90km
消費率
航続距離
127Wh/km 190km
24.2kWh
■サスペンション
前: マクファーソン・ストラット/
■静粛性
コイル+スタビライザー
後: マルチリンク/コイル+スタビライザー
■ステアリング
形式: ラック&ピニオン
(電動アシスト)
ロック・
トゥ・ロック: 3.00回転
最小回転半径: 5.45m
■ブレーキ
前: φ288mm通気冷却式ディスク
後: φ272mm通気冷却式ディスク
アイドリング: 35dB
最高回転時: 65dB
48km/h走行時: 56dB
80km/h走行時: 60dB
113km/h走行時: 63dB
■安全装備
ABS, ESP, EBD, BA, EDL, XDS
Euro N CAP/na
乗員保護性能: 成人na, 子供na
歩行者保護性能: na
安全補助装置性能: na
モデルに共通する悪癖である。
購入と維持 BUYING&OWNING
★★★★★★★☆☆☆
EVには、内燃機関搭載車と比べる
とどうしても妥協しなければならない
弱点が付きものである。それを考慮
せず購入に踏み切る人はいないだろ
う。そう、最大の懸案は航続距離であ
る。われわれのテストでは、最良の状
況であれば eゴルフは予定どおりに
■発進加速
160 kmほどを走ったところで減速し
■中間加速
〈秒〉
はじめ、やがて静かに停止した。エン
実測車速mph(km/h)
秒
実測車速mph(km/h)
秒
30(48)
3.4
20-40(32-64)
3.0
40(64)
5.1
30-50(48-80)
ジン車と比較すれば短いといわざる
4.1
50(80)
7.5
40-60(64-97)
5.4
を得ない。だが、i3が電力のみで走破
60(97)
10.5
50-70(80-113)
7.0
70(113)
14.4
60-80(97-129)
9.2
80(129)
19.6
70-90(113-145)
-
する距離を約20%も、
リーフのそれに
比べても15%も上回っている。
急速充電は、欧州仕様では標準的
90(145)
-
80-100(129-161)
-
100(161)
-
90-110(145-177)
-
110(177)
100-120(161-193)
なコンバインドチャージングシステム
-
-
120(193)
-
110-130(177-209)
-
を採用しているeゴルフだが、日本で
130(209)
-
120-140(193-225)
-
はそれよりも普及しているチャデモ式
140(225)
-
130-150(209-241)
-
150(241)
-
140-160(193-257)
-
対応に改修されている。
EVのリセールバリューは前例があ
まりに少なく、eゴルフに限らず予測が
ROAD TEST
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AUTOCAR 12/2014
注意事項:馬力荷重比とトルク荷重比の計算にはメーカー公称車両重
量を使用しています。 © Autocar 2014. テスト結果は権利者の書
面による承諾なしに転用することはできません。
むずかしい。ゴルフは通常、4 年後に
40%の価値を維持するが、EV仕様は
今後の経過観察が必要だ。
Volkswagen e-Golf ROAD TEST
ROAD TEST
No 5182
Volkswagen e-Golf
AUTOCAR VERDICT
「フォルクスワーゲンらしい完全さと
細かい配慮を備えている希有なEV」
●オートカーの結論
★★★★★★★★☆☆
TESTERS’ NOTES
●テスターのひと言コメント
エネルギー回生時にありがちな減速不
足を予想したが、eゴルフはエネルギー
回生モードでも、アクセルペダルを戻し
たときに十分な減速が得られる。
ニック・キャケット
eゴルフのCCS急速充電器はまだあま
り普及していない。配置されているもの
も、英国では初期トラブルが頻発してい
どちらの問題もすぐに
る。ただしVWは、
解決されると楽観的だ。
マット・ソーンダース
SPEC ADVICE
●購入にあたっての助言
リヤビューカメラなど、欧州市場ではオ
プションとなるアイテムの多くが標準装
備される日本仕様だが、シフトパドルと
ヒーター付きステアリングホイールへ
の言及はない。少なくとも前者は、あれ
ばなお楽しいのだが。
フ
ォルクスワーゲンは、ほかのどのメーカーよりも優
だまだ普及の初期段階にあり、運転する距離と速度域、充
れたハッチバックEVを造り上げたようだ。消費者が
電する場所、そして場合によっては自宅に帰りつけないと
必要だと考えるすべてを、確立された基準の範疇で達成
いう解決しがたい現実を受け入れる覚悟が、少なくとも今
した。際物ではなく、
ゴルフの新たなグレードが誕生したと
のところは求められるクルマであるのは間違いない。
いっていい。eゴルフは哲学的な思想の表現ではない。容
EVのライバルを見渡せば、
日産リーフのほうがより使い
易に理解できて使い勝手もよく、大衆車としてほぼ不満の
やすいし、BMW i3のほうがもっと運転が楽しく魅力的だ。
ないレベルに仕上げられた、希有なピュアEVである。
それでもeゴルフは素晴らしいEVである。そして、環境が整
もちろん、EVゆえに犠牲になっている点はある。EVはま
うにつれて、その地位は高まるに違いない。
TOP
FIVE
1st
3rd
2nd
JOBS FOR THE
FACELIFT
●マイナーチェンジ時に望むこと
・ON/OFF可能な、歩行者に接近を知ら
せるための音を発生させる装置を付け
てほしい。
・乗り心地を改善し、ほかのゴルフと同
等にしてほしい。
2nd
5th
BMW
VOLKSWAGEN
NISSAN
VAUXHALL
TOYOTA
BMW
i3
フォルクスワーゲン
e-ゴルフ
日産
リーフ G
ヴォグゾール
アンペラ エレクトロン
トヨタ
プリウス PHV G
車両価格
最高出力
最大トルク
0-97km/h加速
最高速度
(公称値)
燃料消費率
(混合)
車両重量
(公称値)
CO₂排出量
499.0万円
170ps/5200rpm
25.5kgm/100-4800rpm
7.2秒
(0-100km/h公称)
150km/h
(リミッター)
130Wh/km
1195kg
na
邦貨換算約490万円
115ps
27.5kgm
10.5秒
140km/h
(リミッター)
127Wh/km
1585kg
na
367.956万円
109ps/3008-10000rpm
25.9kgm/0-3008rpm
11.5秒
(0-100km/h公称)
140km/h
(リミッター)
150Wh/km
1460kg
na
邦貨換算約580万円
150ps/5000rpm
37.7kgm
10.1秒
160km/h
(リミッター)
83.3km/ℓ
1732kg
27g/km
329.1429万円
136ps
14.5kgm/4000rpm+21.1kgm
11.3秒
(0-100km/h公称)
180km/h
47. km/ℓ
1420kg
49g/km
われわれは
こう考える
素晴らしい。個性的で、
クレバー
で、
eゴルフにはないイマジネーショ
ンにあふれている。
VWらしい自信に満ちた表現。
あら
ゆる点において、
われわれがVWに
期待していたとおりのEVである。
今なお競争力は高いが、
最新のラ
イバルと比べると、
時代遅れになり
はじめている感は否めない。
優れたライバルでさえ持ち合わせ
ていないフレキシビリティを備えて
いるが、
この価格は高すぎる。
歴史に名を残す存在になるのは間
違いないだろうが、
プラグイン化がプ
リウスの魅力を通常モデル以上に
向上させているとはいいがたい。
結論
★★★★★★★★★☆
★★★★★★★★☆☆
★★★★★★★☆☆☆
★★★★★★☆☆☆☆
★★★★★★☆☆☆☆
i3
e-Golf
Leaf G
Ampera Electron
Prius PHV G
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