2014年12月号 みずほチャイナマンスリー(PDF/1420KB) - Mizuho Bank

MIZUHO CHINA MONTHLY
みずほ チャイナ マンスリー
2014 年 12 月号
中国経済
1
「依法治国」による「改革の全面的深化」
~「四中全会」のポイントと今後の課題~
産業・地域政策
6
珠江-西江経済ベルト発展推進策と将来展望
-新たなゴールデン水路発展に向けた挑戦と試練-
中国アドバイザリーの現場から
10
中国土地研究 ~最近の土地政策とケーススタディ~
中国戦略
中国の多国籍企業:模倣ではない中国独自のビジネスモデルの重要性
-グローバル企業事例 イーベイ、DHL エクスプレス-
14
法務
22
2014 年の重要立法を振り返る(上)
税務会計
31
中国の移転価格実務
-マーケティング無形資産-
税務会計
37
中国における M&A 手法
-株式移転が存在しない背景と現物出資についての考察-
みず ほ銀 行
みずほ銀行(中国)有限公司
中国営業推進部
中国アドバイザリー部
0
MIZUHO CHINA MONTHLY
2011 年9 月号
- Executive Summary 中国経済
「依法治国」による「改革の全面的深化」
2014 年 10 月 20 日から 23 日にかけて開かれた「四中全会」では、「依法治国の全面的推進」が目標に掲げられ
た。本稿では、この「依法治国」が従来より進められている「改革の全面的深化」へどのように寄与し得るのかに
ついて、検討していく。
産業地域政策
珠江-西江経済ベルト発展推進策と将来展望
中国地域経済の発展推進が活発となる中、「珠江-西江経済ベルト」の発展推進も国家プロジェクトとして承認
され、関心が寄せられている。本稿は先月号の「長江経済ベルト」のトピックに続いて、中国開放経済の先がけ
となった広東省と後発の広西自治区の一体化戦略制定へ至った背景と意義を見た上、新たなゴールデン水路
の発展に向けた同地域開発政策の概要を紹介し、その主な課題と政策効果を展望する。
中国アドバイザリーの現場から
中国土地研究
中国では昨今、都市化政策や環境問題等の要因により、土地についての各種規定が発表されている。一方、中
国で事業展開する日系企業にとって、土地に関する問題は重要な課題である。本稿では、中国における土地政
策の紹介と、土地にかかわる問題点のケーススタディを通じて最近の動向を探る。
中国戦略
中国の多国籍企業:模倣ではない中国独自のビジネスモデルの重要性
E コマースやデジタルメディア等の出現は、既存のビジネスモデルを一変させた。中国企業は素早くこれらの技
術を活用し、グローバル企業との競争に挑んでいる。グローバル企業が成長するためには、中国でのイノベー
ションのスピードアップに対応できなければならない。技術革新を上手に活用し、中国における適切なビジネス
モデルを持つことが極めて重要である。
法務
2014 年の重要立法を振り返る(上)
本稿では、2014 年に中国で公布又は施行された主な法令をピックアップし、その内容を解説、また 2015
年以降の動向について探っていく。今月は、
「工商登記制度改革」
、
「外商投資」
、
「外貨管理」関連分野で
の立法を取り上げる。
税務会計
中国の移転価格実務
本稿では、前月に引き続き中国の移転価格実務を取り上げる。今月はマーケティング無形資産について、「発展
途上国のための移転価格実務マニュアル」の内容から解説し、合わせて 2015 年 9 月までに正式承認が予定さ
れている OECD の「無形資産の移転価格的局面のガイダンス」についても現段階の見解を紹介する。
税務会計
中国における M&A 手法
中国と日本の M&A 手法についてあまり比較されることがないが、複数国・地域をまたぐ企業再編においては、
各国の制度の相違や背景を理解しておく必要がある。本稿では、中国における M&A 手法の基本的概念を解説
し、日本との相違や実務的なポイントについてまとめる。
MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
中国経済
「依法治国」による「改革の全面的深化」
~「四中全会」のポイントと今後の課題~
みずほ総合研究所
アジア調査部
中国室長
伊藤
信悟
[email protected]
2013 年 11 月、中国共産党は第 18 期中央委員会第 3 回全体会議(「三中全会」)を開催し、
「改革の全面的深化」を旗印に力強く改革を進めていく姿勢を示した。それから約 1 年が経過
した 2014 年 10 月 20 日から 23 日にかけて、中国共産党は第 18 期中央委員会第 4 回全体会議(「四
中全会」)を開き、「法による国家統治(中国語で「依法治国」)の全面的推進」を目標に掲
げ、「改革の全面的深化」に向けたガバナンスの改革を進めていくことを高らかに宣言した。
では、「依法治国の全面的推進」はいかなる形で「改革の全面的深化」に寄与するのだろう
か。また、「依法治国」推進上の課題はどこにあるのだろうか。これらの点について本稿で検
討していきたい。具体的な構成は次のとおりである。まず、中国経済が重要な節目に差し掛か
っており、新たな環境に適応するうえで「改革の全面的深化」が待ったなしの状態にあること、
また、その重点が「市場経済化のさらなる推進」と「公平・公正の実現」にあることを説明す
る。そのうえで、「依法治国の全面的推進」によって、どのような問題の解決が期待され、そ
れが「市場経済化のさらなる推進」や「公平・公正の実現」にどのようにつながるのかを検討
する。最後に、「法」の中身を如何に充実させていくかが「依法治国」、「改革の全面的深化」
の成否のカギを握るとの見解を示すことにする。
1.「改革の全面的深化」が目指すものは何か?~「新常態(ニューノーマル)
」への適応~
(1)「改革の全面的深化」が必要な理由
習近平政権は上述のとおり「三中全会」で「改革の全面的深化」を目標に掲げ、改革を力強
く前に進めていく姿勢を示した。その背景には、中国経済が重要な節目に差し掛かっていると
いう情勢認識がある。習近平政権は、こうした認識を発足当初から持っていたが、最近ではそ
れを「新常態(ニューノーマル)」という言葉で表し、国内外に浸透させようとしている。
①「新常態」とは何か?
「新常態」という言葉を習近平国家主席が初めて公式の場で使ったのは 2014 年 5 月だが、習
近平国家主席は 11 月 9 日に開催された APEC・CEO サミットの開会式で「新常態」が何かについ
て初めて詳しく語っている1。それによると、「新常態」には三つの特徴があるという。その特
徴とは、①「高成長から中程度の高成長への移行」、②「経済構造の改善と高度化」(たとえ
ば、経済におけるサービス産業や消費、雇用者報酬のウェイトの高まり、都市・農村間、地域
間の所得格差の縮小など)、③「(労働・資本などの)要素投入主導型、投資主導型からイノ
ベーション主導型への成長パターンの転換」である。
②「新常態」は「自然の摂理」か「努力して実現すべき理想的な姿」か?
この説明が何を意味するのかは、一見わかりにくい。それは、特徴として挙げられた三つの
変化が「自然の摂理」なのか、「努力して実現すべき理想的な姿」なのかがわかりにくいから
であるが、実際には「努力して実現すべき理想的な姿」として理解すべきだろう。
1
「APEC 授权发布:习近平在亚太经合组织工商领导人峰会开幕式上的演讲(全文)」(『新华网』2014 年 11 月 9 日)
http://news.xinhuanet.com/world/2014-11/09/c_1113174791.htm (2014 年 11 月 14 日アクセス)
1
MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
中国経済
まず、「高成長から中程度の高成長への移行」について考えてみよう。所得の向上に伴い、
一般的に成長率は低下していく傾向がある。特に中国の場合、2012 年から生産年齢人口(15~
59 歳)の減少が始まっており、安価な労働力を大量に投入する形で高成長を続けることは難し
くなってきている。それゆえ、成長スピードの鈍化は「自然の摂理」といえなくもない。しか
し、「中所得国の罠」2に陥らずに「中程度の高成長」を保つには、成長を下支えする新たなエ
ンジンを作り出せねばならない。
「経済構造の改善と高度化」についても、努力なくしてその実現は保証されない。生産年齢
人口が減少することで賃金上昇圧力が強まり、その結果として個人消費が喚起されたり、所得
向上によってサービス消費が促されたりする可能性は高まるが、そうなるとの保証は必ずしも
ない。現に中国では所得水準が向上したにもかかわらず、経済に占める個人消費のウェイトは
低下傾向を辿ってきたし、他の同レベルの所得水準の国々と比べて経済に占めるサービス産業
のシェアは小さめである。また、所得格差についても、生産年齢人口の減少と高学歴化の中で
非熟練工の供給が細り、かれらの賃金上昇が進むことで、所得格差が縮小しやすくなる可能性
はあるが、非熟練工の機械への代替が進めばその限りではない。
「イノベーション主導型への成長パターンの転換」についても然りである。賃金上昇に伴い、
価格競争力が低下するため、研究開発を通じた成長が模索されるようになっていく可能性は高
い。しかし、研究開発を担う人材や知的財産権の保護が十分でなければ、成長パターンの転換
スピードは緩慢なものにとどまらざるを得ないだろう。
(2)「改革の全面的深化」の重点~「市場経済化のさらなる推進」と「公平・公正の実現」~
努力なくして理想的な姿に移行できないことは、習近平国家主席も認めている。APEC・CEO サ
ミットの場でも「新常態」に適応できるか否かは、広範囲にわたる改革をやり切れるか否かに
かかっていると述べていることがその表れだ。2020 年代に入ると、生産年齢人口のみならず、
総人口も減少に転じる恐れがあるだけに3、改革にスピード感が必要だとの認識が習近平政権に
もあるように見受けられる。実際、習近平政権は、2013 年 10 月の「三中全会」で「改革の全面
的深化」を旗印に掲げて以降、矢継ぎ早に改革プランを打ち出してきた。
「改革の全面的深化」の重点は、「政府と市場の関係を首尾よく処理する」ことに置かれて
いる。具体的には、①市場に資源配分において決定的な役割を果たさせること、②政府が役割
を果たすべき領域については、政府がその役割をよりいっそう発揮できるようにすること、が
重点だと説明されている4。
①は「市場経済化のさらなる推進」と言い換えることができる。規制緩和を進めることで民
間の活力を引き出し、イノベーション主導型経済への転換を促すことを習近平政権は企図して
いる。それにより「中程度の高成長」を実現しようという公算である。
②は「公平・公正の実現」という言葉に集約できよう。具体的には、環境汚染などの「市場
の失敗」への対応強化、社会的弱者の救済や社会保障制度の整備などが改革メニューに盛り込
まれている。また、①とも密接に関わる問題でもあるが、腐敗・汚職の防止が今までにも増し
2
3
4
「中所得国の罠」とは、所得水準の向上に伴って安価な労働力という競争上の優位性を失う一方、生産性の向上による成長
に必要な人的資本の蓄積が進まず、中所得国から高所得国に移行できない状態に陥ることを指す。
国連の人口推計低位予測による。
(United Nations, World Population Prospects: The 2012 Revision)
。
http://esa.un.org/wpp/unpp/panel_indicators.htm (2014 年 11 月 14 日アクセス)
「三中全会」での決定事項の概要については、伊藤信悟・三浦祐介「中国「三中全会」コミュニケ解読~1 周年を迎えた習
政権の改革への決意と課題」(みずほ総合研究所『みずほインサイト』2013 年 11 月 15 日)を参照されたい。
http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/as131115.pdf
2
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2014 年12 月号
中国経済
て重視されている。経済成長のスピードが鈍化するにつれ、限られたパイの分配に関する国民
の目は厳しさを増すことが予想される。それが腐敗・汚職対策の強化の背景にあると推察され
る。
2.目指すは「依法治国の全面的推進」による「改革の全面的深化」の保証
これらの諸課題を実現するうえで、政府が果たすべき重要な役割がもう一つある。それが今
回「四中全会」で打ち出された「依法治国の全面的推進」である(2014 年 10 月 23 日「依法治
国の全面的推進における若干の重大問題に関する中共中央の決定」を採択、以下「決定」と略)。
習近平政権は「改革の全面的深化」と「依法治国の全面的推進」は姉妹の関係にあると言って
いるほど、両者の関係を密接なものとして捉えている。
では、「依法治国の全面的推進」はどのような形で「改革の全面的深化」につながるのだろ
うか5。「法治」が徹底されず「人治」が残存していることで生じている具体的な問題を挙げな
がら、両者の関係を整理してみたい(図表)。
(1)公務員による恣意的な行政権の行使の抑制
中国には、公務員による恣意的な行政権の行使を法律で抑えきれていないという問題がある。
法に基づかない形での農地や住居の強制収用、腐敗・汚職の広がりなどがその典型例であると
言えよう。こうした状況が改善されなければ、「市場経済化のさらなる推進」も「公平・公正
の実現」も困難である。また、財産権が保障されなければ、安心して消費することもできない
し、腐敗・汚職を抑えられなければ、成果が出るまでに時間がかかるイノベーションよりも袖
の下を使った機会主義的な経営に企業が走りやすくもなり、「新常態」への適応がより困難と
なるだろう。
図表 中国が抱える「法治」に関わる問題の所在と「決定」で示された解決方針
《問題の所在》
:「人治」による歪みの露呈
《解決方針》:
「依法治国」の全面的推進
×公務員による恣意的な行政権の行使
・法に依拠しない財産の強制収用、腐敗・汚職
の広がり、根拠法なき改革の遂行など
○違法な行政行為・行政判断への重罰適用、巨額資
金を動かす行政領域等における腐敗・汚職防止メ
カニズムの形成など
×司法に対する国民の信頼の欠如
・行政による司法への介入など
○裁判権・検察権の独立性の保障、司法に介入した
幹部への責任追及制度の導入、法律適用基準の統
一、情報公開など
×法律の不備に起因する権利保護の不十分さや市
場経済への悪影響
○財産権、公民人身権、基本的な政治的権利、教育・
就業・環境保護等の民生領域、経済領域に関する
法整備の加速など
×立法過程における民意反映の不十分さ、利害調整
の遅れによる法整備の遅れ
○第三者評価、諮問委員活用による利害調整の公
平・公正さの担保と審議加速、パブリックコメン
トの活用強化など
(資料)「中共中央关于全面推进依法治国若干重大问题的决定」(『新华网』2014 年 10 月 28 日)
http://news.xinhuanet.com/politics/2014-10/28/c_1113015330.htm
5
(2014 年 10 月 28 日アクセス)
なお、
「改革の全面的深化」が法律の見直し機運を生み、
「依法治国の全面的推進」を促すという面もあると習近平政権は指
摘しており、互いに影響を与え合う関係にあると位置づけている。
3
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2014 年12 月号
中国経済
こうしたことから、「決定」には、法に基づく行政を徹底させるための制度整備案が多数盛
り込まれた。例えば、法に反する重大な行政上の意思決定を行った者に対する「終身責任追及
制度」という厳罰制度の導入がその端的な事例である。また、巨額の資金が動く行政領域では
腐敗・汚職が起こりやすいため、財政資金の分配や使用、国有資産管理、政府調達、公共投資
などを司る行政機関に対しては、権限の分散をはじめ、人事異動の活発化、情報公開、審査部
門の独立性保障などのメカニズムを導入することになった。
(2)行政による司法への介入の抑制
中国では、行政による司法への介入も問題視されている。運営費用などの面で司法が行政に
従属しているため、例えば農地や住居の強制収用などで財産権が侵害されたとしても、行政訴
訟で原告側が勝訴する可能性は低い。「法の番人」であるはずの司法機関が公平さ、公正さを
欠いているとの批判が強いのが現状だ。合法的な経済的利益が司法によって最終的に守られな
ければ、経済の発展にもマイナスに働く。
こうしたことから、習近平政権は司法に対する国民の信頼回復に努める姿勢を「決定」を通
じて示した。例えば、裁判権・検察権の独立性の保障、司法に介入した政府・党幹部に対する
責任追及制度の導入である。また、正当な理由なく訴状の受け取りを拒否することを禁止する
ことにもなった。その他、法律の適用基準の統一、陪審員の選任制度の見直し、司法プロセス
の各段階における情報公開の推進なども「決定」に盛り込まれている。
(3)法律の不備の解消
さらにいえば、行政や司法が判断・行動の拠り所とする法律自体にも不備が多いため、国民
の権利が十分に守られてこなかったという面がある。公権力の及ぶ範囲や、その行使の際のプ
ロセスが法律で明確に規定されていないため、しっかりと「権力を籠の中に入れる」ことがで
きなかったのである。特に、財産権や公民人身権(生存権や身体的自由権、人格権など)、基
本的な政治的権利に関する立法の遅れが指摘されており、「決定」でこれらの権利に関する法
的整備を急ぐとの方針が示された。
また、立法の遅れは、教育、就業、所得分配、社会保障、医療衛生、食品安全、貧困救済、
女性・児童、高齢者、環境保護といった国民の関心が高く、公平・公正の問題に直結する民生
領域でも目立っており、これらの領域の法律の整備にもさらに力を注ぐことになった。
経済法の整備をさらに加速させるとの方針も確認された。民法、投資・土地管理、エネルギ
ー・鉱物資源、農業、財政・税制、金融、独占禁止、知的財産権、文化産業、インターネット
産業など、「決定」で法整備の対象に指定された経済領域は枚挙に暇ない。「三中全会」で市
場経済化のさらなる推進を謳った領域の多くで法の整備が進められていくことになるだろう。
こうした取り組みがより公平・公正な競争を促し、より正常な市場経済の働きを助け、イノベ
ーションを支える基盤を厚くしていくことが期待される。
加えて、政策と法律の関係も見直されることになった。従来は、法的根拠が不明確なまま、
「実験」と称して改革が行われた結果、経済活動の予測可能性が損なわれ、混乱が生じること
も少なくなかった。その反省から、「決定」では「重大な改革」を行う場合には、事前に必ず
法的根拠をもたせるとの方針が明記された。政策と法律の関係に関する大きな考え方の変化で
あり、それが貫徹されれば、大きな意義を持つことになろう。例えば、中国の「民法通則」第 6
条は、「民事活動は法律を遵守しなければならず、法律に規定がない場合には、国家の政策を
4
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2014 年12 月号
中国経済
遵守すべき」と規定されており、政策に法源性が認められている6。この点が今後、民法典の作
成過程で今後修正されるかどうかが注目に値する。
3.立法過程に民意を反映させられるかが「依法治国」の成否のカギを握る
ただし、上記のように法の整備が進み、法に基づいた行政、司法が行われるようになったと
しても、法律に「民意」という魂が入れられなければ、画餅に帰すどころか混乱を招くことす
らありうる。錯綜する利害関係を公平・公正に調整しながら民意を集約し、かつ、課題解決に
も寄与するような法律を速やかに作っていけるかが、「依法治国」の成否のカギを握ることに
なるだろう。
もちろん、公平・公正かつ効果的な法律を作ることは、中国のみならずどの国にとっても難
題だが、この難題に対し、習近平政権は立法過程における公平・公正の担保、効果的な法案の
制定を図るべく方針を示している。例えば、政府部門間の利害調整のため、今後は第三者評価
を加え、法案審議の加速と公平性の担保を図る方針だ。また、立法段階で政府部門間の重大な
利害調整が必要な場合、その調整方法について政府機関・社会団体・学者などに諮問できるよ
うにすることも今後の検討課題の一つとされた。立法過程における「草の根意見聴取制度」の
拡充、パブリックコメントの活用強化といった方針も打ち出された。
「立法過程への民意の漸進的かつ限定的な反映」、「効果的な法律の制定・施行による国民
への裨益」がどの程度成功するか。その成否が「改革の全面的深化」の進捗度、「新常態」へ
のスムーズな移行を左右することになるだろう。
以
6
上
高見澤磨・鈴木賢『中国にとって法とは何か―統治の道具から市民の権利へ―』岩波書店、2010 年、82~83 頁。
5
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産業・地域政策
みずほ銀行
珠江-西江経済ベルト発展推進策と将来展望
中国営業推進部
-新たなゴールデン水路発展に向けた挑戦と試練-
研究員
邵
Ph.D.
永裕
[email protected]
1.はじめに(珠江-西江経済ベルトの発展推進の背景と意義)
首都圏一体化の発展や東北振興戦略の支援強化及び長江経済ベルトの発展推進政策が相次いで公
表・実施される中、中国開放経済の先がけであった広東省
図1 珠江経済ベルト・長江経済ベルト地帯見取り図
も西隣にある広西チワン族自治区と、域内の主要河川水路
に因んだ新たなゴールデン水路の発展計画(
「珠江-西江
長江デル
タ高等級
航路網
経済ベルト発展計画」以下、
「計画」という)に取り組み、
長江経済ベルトと対峙する形となり(図 1)
、中国の河川ベ
ルト経済の発展が一層活発になってきた。
推进协同发展为主线”,到2020年区域一体化发展水平明显提高,因此要求坚持基础
综合交通枢纽站场建设。完善提升广州、南宁全国性综合交通枢纽功能,加快柳州、
長江経済ベルト地帯
広東省と広西自治区は隣り合う地域でありながら、地域
社会の状況や経済発展の水準が大きく異なることなどで、
これまで中国開発戦略展開の中で全く違う地域区分と位
珠江-西江経済ベルト地帯
置づけがなされてきた。
「東中西」の 3 大地域区分法では、
珠江デルタ高等
級航路網
北部湾
広東省は東部先進地域の代表格として、最も中国の改革開
資料)中国交通部「全国内河航道与港口布局規画」(2007.7.20)より加工・引用。
放経済の恩恵を受けた行政区(GDP と貿易額が全国トッ
プ)である。対して、広西自治区は、西部後進地域に位
チワンぞく
置し、中国最大の少数民族壮 族 自治区という地域性を有
し、他の 4 つの民族自治区と同様、経済発展と対外開放
表1 珠江流域関連の経済・社会発展の計画制定動向
No.
1
2
3
が遅れ、環境悪化、人口流出、貧困問題などに悩まされ
4
てきた。しかし、1990 年代から、特に 2000 年代以降の
5
「ASEAN(アセアン)」諸国との外交・経済関係の改善進
6
トンキン
関連政策・計画の名称
珠江三角州地区の改革発展計画綱要(2008
-2020)
珠江三角州基本公共サービス一体化計画
(2009-2020年)
珠江三角州産業配置一体化計画(20092020年)
珠江三角州インフラ建設一体化計画(20092020年)
珠江三角州都市農村計画一体化計画
(2009-2020年)
珠江三角州環境保護一体化計画(20092020年)
広西の経済社会発展を一層促進することに
関する国務院の若干意見
展により、広西自治区は南側に北部湾を擁することで中
7
国のアセアン諸国への玄関口として重要視された。これ
8 広西北部湾経済区発展計画
により、その対外開放と社会発展に転機が訪れ、わけて
も 2006 年の北部湾経済区の建設よって地域開発の推進
も発展を遂げた珠江デルタ周辺の一体化と持続発展を目
公布年月
2008年12月
2010年7月
2010年7月
2010年7月
2010年7月
2010年7月
2009年12月
国家発展
改革委
広西自治
区政府
2008年1月
2011年8月
珠江・西江経済ベルト発展計画に関する国務
10
国務院
院の承認
2014年7月
資料)中国政府及び広東・広西両地域政府のWEBサイトより作成。
図2 広西自治の外資導入額と北部湾の占める割合
12.0
投
資
10.0 額
(
計画綱要(2008-2020 年)
」1)(表 1 の①)を皮切りに、最
国務院
9 北部湾経済区第12次5カ年発展計画
に弾みが付いた。
広東省では、2008 年末制定の「珠江デルタ地区改革発展
公布機関
国家発展
改革委
広東省政
府
広東省政
府
広東省政
府
広東省政
府
広東省政
府
自治区全体
105
北部湾の割合
90
資料)広西自治区政府
統計などより作成。
億
75 北
8.0 ド
部
湾
指した地域経済・産業発展の計画が 2010 年 7 月に相次い
)
ル
60 の
6.0
割
45 合
%
4.0
30
2009 年末に国務院は「広西の経済社会発展を一層促進する
2.0
15
ことに関する若干意見」
(表 1 の⑦)という通達を出し、
0.0
0
20
20
20
20
20
20
20
20
20
20
20
20
10
11
09
07
08
06
04
05
02
03
00
01
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
同区の社会経済の発展促進について 40 点の具体的な指示
1)
同綱要について、邵 永裕「大都市圏の再開発とレベルアップを目指す中国の地域経済戦略の新動向―「珠江デルタ地区改革発展規画綱要(2008
-2020)
」の制定・実施を中心に―」
『Mizuho China Report 第71 号』みずほコーポレート銀行中国営業推進部、2009 年2 月で紹介した。
6
MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
)
狭いエリアで、広西自治区への言及は見られなかった。
(
で発表されたが、あくまで同省内の珠江デルタ地域という
産業・地域政策
表2 北部湾経済区の近中期発展目標
を出した。その中で広東省との経済連携や北部湾の有利な立地条
[Ⅰ]2005-20年の中長期発展目標
件によるアセアン諸国などとの国際経済協力の推進も明示され、
同区に対する中央政府の発展支援の重要方針が明らかになった。
計画指標(単位)
総人口(万人)
都市化率(%)
R&DのGDP比(%)
1万元GDPのエネル
ギー消費量 (t標準炭)
図2に示す近年の広西自治区の外資導入額の中で北部湾が占める
1万元工業付加価値
生産の水消費量(t)
割合の増大と、表 1 の⑧と⑨の北部湾経済区の近中期の経済発展
二酸化炭素総排出量
(万t)
COD排出量(万t)
森林被覆率(%)
計画からも、広西自治区が北部湾をてこに積極的に地域経済の発
これらを踏まえて、ここにきてようやく広東・広西両省区が共
1
0.9
0.66
300
200
120
22.7
20.5
20.5
31.55
45.1
25
60
25
60
無論、先月号でも触れたように、
「計画」の制定は「長江経済
31.8
40
9.5、50.0、 第1~第3次
40.5
産業の比率
1100
2797
8000
都市化率(%)
46.8
58.2
森林被覆率(%)
45.1
港湾総荷役量(億t)
10年は09年
の実績値
10年は05年
60
の実績値
3.36
1.2
同コンテナ荷役量
(TEU)
ベルト発展計画」の制定・実施に強く影響を受けたものであり、
2015年
備考(注記)
6200
16.6、39.1、
44.3
441
財政収入(億元)
固定資産投資額 (億元)
今年 7 月に中央政府の正式承認を得られたわけである。
56.4
400
資料)[Ⅰ]は「北部湾経済区発展計画」より、[Ⅱ]は「北部湾第12次5カ年発展
計画」より作成。
かつてのデルタ経済を主体とする地域の、より広域な地域経済
図3 珠江-西江経済ベルト4地域の人口規模と全国比の推移
12,000
広東省
広東のシェア
広西自治区
広西のシェア
貴州省
貴州のシェア
9%
全
国 8%
シ
雲南省
雲南のシェア
資料)『中国統計年鑑(2014)』より作成。
ェ
年
末
常
10,000 住
人
口
ア 7%
(
の先進省と西部の後進自治区どうしの共同発展プランと
2020年
1900
60
4
2010年
3022
3次産業構成比(%)
同発展と一体化を目指す「計画」
(表 1 の⑩)の制定に歩み寄り、
長江経済ベルト程の広域ではないものの、隣り合う東部
2010年
1400
45
0.8
[Ⅱ]第12次5カ年計画期の発展目標
計画指標(単位)
域内GDP(億元)
自治区GDPに占める
割合(%)
展に取り組み、大きな成果を上げつつあることが分かる。
発展への指向変化の現れである。しかし、後述のように、
2005年
1230
39.23
0.5
8,000
)
いうだけでなく、河川経済の発展から近海及び海洋経済
6%
万
人
5%
6,000
への展開を目指した新たな地域開発戦略の指向であるだ
けに、大変注目されており、意義深いと考えられる。ま
4%
3%
4,000
2%
た、図 3 の珠江-西江ベルト関連地域の人口推移を見て
2,000
1%
も、同地域経済・産業の共同発展による人口流出・減少
の食い止め効果が特に期待されている。
0%
0
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
図4 珠江-珠江経済ベルトの計画範囲と都市分布地図
貴州省
2.「珠江-西江経済ベルト発展計画」の目標と主旨内容
貴陽
湖南省
珠江-西江流域は長江流域に次ぐ中国で2 番目の河川流域で
桂林
あり、川上は雲南省と貴州省の 4 市に通じ、流域人口は約 1 億
湖北省
2 千万人に上る。西江の上流には広大な内陸部の土地と豊富な
雲南省
資源を擁する雲貴高原があり、下流は珠江の水路ネットワーク
昆明
広東省
広西自治区
広州
に通じ、香港やマカオに流れている。南シナ海を通れば経済が
躍動する東南アジアの国際市場に直接行くことができ、さまざ
まな資源に恵まれた「ゴールデンベルト」とされている。
資料)広西自治区発展改革委員
会公表より加工・引用。注)黄色く
塗りつぶされている部分は経済ベ
ルトの計画エリアで青緑に塗りつ
ぶされている部分は延長区域であ
る。緑の太線は主要都市・地域間
の交通路を示す。
今年 7 月、国務院が「計画」を正式に認可したことで、珠江-西江
経済ベルトの発展推進は国家レベルの開発戦略に昇格した。
「計画」によると、
「珠江-西江経済ベルト」に含まれるのは広東省の広
州、佛山、肇慶、雲浮の 4 市と広西チワン族自治区の南寧、柳州、梧州、
貴港、百色、来賓、崇左の 7 市。総面積は 16 万 5,000 ㎞ 2、2013 年末の常
住人口は 5,228 万人。また、貴州、雲南両省の川沿いの流域も「計画」の「延
長地区」とされている(図 4)
。
「計画」の冒頭に掲げられた予期目標(表 3)は 2020 年までだが、長期
的には 2030 年までの展望を含めている。主旨は「生態系優先」
、
「環境保護」
、
7
南寧
崇左
玉林
澳門
欽州
防城港
北海
北部湾
表3 珠江-西江経済ベルト発展計画の目標値
伸び率 (年平均)
>115,300
9.0%
>4,980
13.0%
指 標
単 位
2013
2020年
①1人当りGDP
②輸出入総額
③常住人口の都
市化率
④戸籍人口の都
市化率
⑤都市住民1人
当り可処分所得
⑥農村住民2人
当り純収入
⑦森林被覆率
⑧水機能区水質
基準達成目標
⑨都市部生活汚
水処理率
⑩都市部ゴミ無
害化処理率
人民元
億ドル
63,100
2,117
%
61.5
66.0
-
%
37.0
≒46.0
—
人民元
30,010
>54,860
9.0%
人民元
12,050
>22,740
9.5%
%
56.0
>60.0
-
%
80.0
90.0
—
%
80.0
>90.0
—
%
85.6
>95.0
—
資料)「珠江-西江経済ベルト発展計画」(2014.7..28)」より作成。
MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
産業・地域政策
表4 珠江‐西江経済ベルトの空間配置と機能区区画 「産業のモデル転換・レベル向上」などを基本方針とした上
で、
「東西部協力発展モデル地区」と「流域生態文明建設モデ
きょうとうほ
ル地区」及び「海のシルクロードの橋頭堡」などの建設を目
指すことにある。
同経済ベルト内での「空間配置」
(交通インフラの整備を中
心に)として、
「1 軸(珠江-西江主幹流域)」、「2 核(広州、
南寧)」、「4 組団(広州-佛山、肇慶-雲浮-梧州-貴港、柳
州-来賓、南寧-崇左-百色の組み合わせ)
」を整備し、地方
の発展促進を図っている(表 4 上段)
。さらに「機能区画」と
して、
「広州・佛山都市区」
、
「肇慶・雲浮・梧州・貴港産業受
継区」
、
「柳州・来賓転換発展区」
、
「南寧・祟左・百色開放門
戸区」
、
「拡張協調連動発展区」の 5 つのエリアが企画されて
いる。すでに大きな発展を遂げた広東省内関連都市の波及効
果の発揮と産業移転、及び広西自治区内主要都市の成長促進
と連携発展を重視するほか、上流地域の生態環境の保護配慮
にも言及している(表 4 下段)
。
また、同経済ベルト内主要都市間の交通経路を早期に開通整
備するために、表 5 に示すような多くのインフラ事業が明記さ
れ、
「長江経済ベルト発展計画」と同様、流域内の航路、港湾、
ダムの整備を中心に、陸・水・空の立体型交通網の整備拡張が
強調された。改革・開放の先進地区広東省に習い、広西自治区
は北部湾への展開を足がかりに、アセアン諸国との経済交流や
「海のシルクロード」への架橋を視野に入れている。
「計画」の中では、河川機能と経路の拡大による国内外諸
<空間配置>
【一軸】珠江-西江の主幹流区域を軸ベルトに広州、佛山、肇慶、雲浮、梧
州、貴港、南寧の7都市が包含される。域内に交通インフラの建設を加速
し、河川流域の環境保護を強化し、特色鮮明で分業が秩序立てられた互
助発展の多層的な成長センターの形成を目指す。
【ニ核】広州と南寧両都市による経済ベルトでの2大核心機能を強化し、既
存の優位性をもとに、香港・マカオに接続し、アセアン諸国に向け、周辺地
域へ奉仕するといった役割を発揮し、経済ベルトを開放的な発展を遂げ、
西南・中南後背地にも波及できる戦略的高地に築き上げる。
【四組団】域内の中心都市を主軸に、流域の特徴と地域のつながりに応
じ、重点的に、「広州―佛山、肇慶―雲浮―梧州―貴港、柳州―来賓、南
寧―崇左―百色の4組の都市クラスターを構築し、産業と人口の集積を誘
導し、特色豊かで相互補完的で分業協業のできる地域発展ブロックを形
成する。
【延長区】珠江-西江の上下流関係を考慮し、西江上流沿いの地区にお
いて重点分野での発展加速を促し、流域における協調連動発展の新局面
を創る。
<機能区画>
【広州・佛山都市区】広州市の中国重要中心都市と国際交通ハブの役割
を発揮し、広州市と佛山市の一体化建設を進め、珠江デルタ一体化の先
行区と我が国の総合的な門戸区域と国際競争力のある「広佛都市圏」に
築き上げる。
【肇慶・雲浮・梧州・貴港産業受継区】東西中継地の優位性と中継港湾の
ハブ機能を発揮し、広西東部を梃子に産業移転受継モデル地区を創り、
玉林・賀州の産業発展を統合し、珠江デルタ及び香港・マカオ地域との連
携を強化。
【柳州・来賓転換発展区】地域間協力協働体制の構築、地域市場の一体
化建設の促進、金融分野の協力・革新のレベルアップ、生態環境の協働
的保全と管理体制の構築
【南寧・祟左・百色開放門戸区】南寧市のアセアンに面し、川と・海に繋が
るという内陸の開放型経済的戦略高地の役割を発揮し、崇左、百色両市
のアセアンに面し、豊かな資源優位を生かし、海・陸・川の連携を強め、国
境地帯の開放を拡大し、北部湾経済区との協働発展を促し開放型経済の
レベルアップを図る。
【拡張協調連動発展区】西江上流川沿い地域の資源優位を生かし、生態
環境の保護を強化し、インフラの機能接続を進め、観光コースの開発と産
業移転の協力を進める。
資料)「珠江―西江経済ベルト発展計画」より抜粋。
表5 珠江-西江経済ベルトの主要交通線路の建設事業
<地域間交通網の整備>
【水運建設】①規模化・専門化による広州、佛山、肇慶、梧州、貴港、南寧の6大主要港湾
の建設、雲浮、柳州、来賓、百色、崇左の5つの重要港湾の発展推進により合理的分業と
機能完備な現代的港湾システムを形成し、2020年までに幹線港湾の荷役能力を3億t、
1000万TEU(コンテナ)に引き上げる。②西江の幹線航路の拡張改築と柳黔江、左江、右
江、南盤江、北盤江、紅水河、桂江、繍江、北江などの重要幹線支線航路の支援保障シ
ステムの建設推進などにより西江からの海への航行能力と通航範囲の拡大を図る。2020
年までにⅢ級以上の航路総延長を2017kmに引き上げる。③龍灘、百色枢軸などの船舶
通過施設を整備・拡張し、珠江の水運機能を雲南・貴州へと繋ぐ。
【鉄道建設】早急に西南地区と珠江デルタ間の快速鉄道網を構築する。
【道路建設】国家級高速道路の地域間接続部分の建設加速と国道と省級幹線道路の改
築と拡張、農村公道の格上により、高速道路と幹線道路及び農村公道の整った道路網を
整備する。
【空港建設】空港配置の最適化を進め、幹線空港のサービス機能を高め、支線空港の建
設を強化し、幹線支線が接合され、運営機能が完備うされた航空体制を構築する。
<交通インフラの重点工事>
【水運】広州-梧州間のⅠ級航路、柳黔江柳州、来賓以下のⅡ級航路、右江百色-南寧
間、左江宋村三江口-崇左間のⅢ級航路の建設加速。大藤峡枢軸の船舶水門の建設と
長洲、貴港、西津、紅花の船舶水門の拡張。百色の水利枢軸、龍灘水力発電所の水運
施設建設。
【鉄道】柳州-肇慶、河池-南寧、黔貴鉄道増ニ線、南寧-凭祥、黄桶-百色、靖西-龍邦の
鉄道建設。南寧-広州、貴陽-広州、雲桂、広州-佛山-肇慶の都市間鉄道及び岑渓-羅定
鉄道の建設。湘桂、益陽-湛江、焦作-柳州、黎塘-湛江鉄道の拡張工事。
【道路】広州-佛山-肇慶、江門-羅定、龍川-懐集などの区域を跨ぐ高速道路、楽業-百色
-龍邦、貴港-隆安、汕頭-湛江、三江-柳州-武宣-貴港-合浦、荔浦-玉林、河池-百色、
賀州-来賓の高速道路の建設。柳州-南寧、南寧-欽州-防城港(北海)の高速道路の拡
張。
【空港】南寧空港の新ターミナルビルと第2滑走路の建設加速と梧州空港の移転建設、玉
林、賀州の支線空港の計画、広州第2空港の建設調査、柳州、百色空港の移転調査。
資料)表4に同じ。
地域との連携協力の強化を謳っており、これまでの香港・マ
カオ地域との協力深化に加え、アセアン諸国との間の北部湾経済協力とメコン川地域の国際協力の更なる
推進を呼びかけ、外国企業の進出と中国企業の海外展開の拡大も期待されている。
3.発展計画推進のための主な課題と展望(結びに代えて)
上記のように、今般の「計画」の制定と中央政府による正式認可は、先進の珠江地域によって後進の西
江地域の発展を牽引し、産業の移転と経済構造のバージョンアップの加速を図りたいという狙いが明らか
である。中国地域開発戦略のベクトルが、東から西へ、沿海地域から内陸地域へ、大型河川や陸上交通の
幹線に沿い海上航路の重要港湾を包含した、より広がりを持った全土への均衡発展へと方向転換したこと
を表している。さらに、経済発展と環境資源の保全を同時に重視する方針が、最近打ち出された複数の地
域発展計画により一様に強調されている。それだけ、環境と資源の 2 大機能を持ち合わせる大河川の経済
ベルトの発展計画は、より注目に値すると言えよう。
「計画」が正式承認・発表された後、広東・広西両地域の政府間交流がこれまでにない頻度で行われ、
10 月上旬には両地域政府による「計画」の実施に関する行動計画の制定調印、11 月上旬には広西自治区
政府による「北部湾自由貿易試験区」設立申請の提出が実施された。これまでにも「北部湾経済区発展計
画」に基づき、北部湾経済区での社会インフラ事業が盛んに進められてきた(表 6)
。今回の広東省との河
8
MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
産業・地域政策
表6 北部湾経済区の社会インフラ重点推進事業
川ベルトにおける国家レベルの地域開発プロジェクトの実施を
交 【港湾】北部湾の港湾群で雑貨、コンテナバースと深水航路を建設。
契機に、河川沿いと沿海部分の連動による新たな地域開発のダ
【高速道路】複数の都市間でハイウェーや高速道路を修築。
【鉄道】南寧‐広州、南寧‐柳州の鉄道、南寧‐昆明の鉄道複線等の建設
通 【空港】南寧空港と桂林空港の改築拡張、北海空港の完成。
エ
ネ 沿海に火力発電所、原子力発電所、バイオマス、風力発電、潮汐発電事
ル 業の推進、農村メタンガスの活用事業、欽州輸入原油備蓄基地の建設事
ギ 業及び沿海石炭の備蓄基地の建設、電力網の建設工事などの推進。
ー
イナミズムが広西自治区に生まれることが期待されているが、
政策の中では中国政府が具体的にどのような方法で、どれだけ
水 南寧市市街部の洪水予防排水工事、北海、欽州、防城港、合浦県標準
化海堤建設工事、危険ダム防災強化工事、沿海工業園区の給水工事、
利 南寧大王灘ダム都市住民安全飲用水水源保護工事の推進。
の政府投資で同経済ベルトの構築推進に関与するのかは特に示
情 広西インターネットパブリックプラットフォームの拡張工事、広西金字系列
電子政府建設工事、中国‐アセアン博覧会ECプラットフォームの建設工
報 事、広西デジタルテレビネットワーク工事の推進など。
されていない。基本的に、経済発展が進んでいる広東
省からの経済支援と産業移転に頼る必要があり、大き
資料)「北部湾経済区発展計画」より作成。
図5 中国における外資系企業の立地動向(2013年)
3,500
利
益
3,000額
残されている。
億
2,500元
広東
江
球の大きさ:企業数
蘇
=1,4090社
(
な発展の可能性があるとともに多くの課題も同時に
)
外資企業進出の動向を見ても、これまで広西自治
区への FDI 実績は増加傾向に見えたが、2010 年以降
2,000
上海
1,500
伸び悩みの状況に転じ、2012 年は前年比約 26%の減
山東
折江
1,000
少となった。北部湾一極(2012 年広西自治区 GDP の
35%を占める)だけでの開発強化に限界があるほか、
福建
天津
500
0
広東省から遠く離れているという立地上のハンデも
企業と都市の集積度の進展の角度から見ると、同経
売上高(億元)
10,000
20,000
30,000
社
会
消
8,000 費
60,000
広州
(
6,000
び上がってくる。広東省には長年中国最大の企業集
50,000
上海
球のサイズ:
工業排水量=
45,400万t
北京
財
小
売
総
額
済ベルトにある都市と地域の格差がより鮮明に浮か
40,000
図6 中国主要都市の工業と市場規模及び工業排水量(2013年)
10,000
ある 2)。特に、地域開発の推進に重要な決め手となる
資料)『中国統計年鑑
(2014)』より作成。
河北
湖南
0
中心都市であり行政府所在地の南寧市は、北部湾や
湖北
広西
遼寧
)
億
元
重慶
積地として国内外の企業が集まっているが、広西自
武漢
4,000
済南
治区などへの企業集積は非常に小さく(図 5)
、いか
に安定的で有利な投資環境を創出し、企業誘致の拡
南
京
杭州
青島
ハルビン
2,000
南寧
昆明
西安 石家庄
長春
鄭州
長沙
大
寧波 連
合肥
大と雇用創出を図るのかが大きな課題である。
海口
西
0 ラサ 寧
0
これに加え、実力ある企業が多数分布している広
ウルムチ
銀川
天津
成都
南昌
資料)『中国統計年鑑(2014)』より作成。注) 広東省に属する
深セン市は重慶市とほぼ同じ規模だが、工業排水量がそれの
36%と小さいので重慶市の球の裏に隠されている。貴州省に
属する貴陽市はウルムチとほぼ同規模だが、工業排水量がそ
れの半分弱であるので頭上に反映されていない。
第2次産業生産額(億元)
厦門
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
東省内の主要 2 都市、広州・深センの GDP 規模は中国の上位 3、4 位であるのに対し、広西自治区(南寧
市)
、雲南省(昆明市)
、貴州省(貴陽市)3 関連地域の主要都市は下位にあり、その工業や地域市場の規
模にも相当の差がある(図 6)
。このように、産業と都市集積によって都市化の経済や地域特化の経済の形
成を図るには限界がある。従って、インフラ整備の充実と空間集積の拡大促進を効果的に実施すべく、広
東省諸都市からの強力な支援を通じて、広西自治区への製造業と労働力の移転拡大と波及効果の増強を促
していくことが重要なカギを握るであろう。その意味で、珠江-西江経済ベルトの一体化発展は、長江経
済ベルトよりも簡単ではなく 3)、地域間・都市間格差の大きい壁を乗り越える挑戦である。とともに、河
川・港湾などの生態資源の利用と保全を目指す厳しい試練でもあるため、中央政府の政策支援に加え、関
連地域政府の長期的な発展視野に立つ地道で前向きな協力推進への取り組みが求められている。
中国地域経済の双璧であった長江デルタ・珠江デルタにリードされる広域な 2 大河川経済ベルトが競い
合いながら中国経済の持続的発展をけん引する新たな成長地帯になることを期待したい。
以上
2)
南寧市の 1 人当り GDP は広西自治区内でも 4 番目の低い水準(2012 年は約 3.7 万元で北部湾岸の防城港市(約 5.03 万元)
の 7 割程度)に留まり、行政中心都市の機能を発揮する上でも限界がある。
3)
ただ、南部沿海に近く中国で最も豊かな降雨量を持つ地域であるため、水資源・環境の利用と保全に関して比較的有利な条
件を持つ。図 6 からも、長江経済ベルト関連都市には工業排水量が大きい都市(上海、重慶、杭州、武漢、南京など)が比較
的多いように見受けられる。
9
MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
中国アドバイザリーの現場から
中国土地研究
みずほ銀行(中国)有限公司
中国アドバイザリー部
~最近の土地政策とケーススタディ~
山田 順子
[email protected]
1.はじめに
中国では昨今、都市化が重点経済政策の一つになっており、第三次産業の成長促進や環境問
題等の要因もあり、土地についてさまざまな意見や規定が出ています。
本稿では、中国における土地政策の紹介や、土地にかかわる問題点のケーススタディを通じ
て、最近の動向を探っていきます。
2.中国における土地制度について 1
中国において外資系企業が土地を使用する場合さまざまな条件があり、これらをクリアして
いかなければなりません。それらの条件を理解する前提として、まずは中国における土地制度
の基本について振り返ります。
【土地の種類】
中国では、全ての土地が全人民所有、すなわち国家所有または集団所有に帰属。
国有土地
都市の市区の土地は国家所有に属する。
集団所有地
農村及び都市郊外区の土地は、農民集団所有に属する。
(法律の規定により国家所有に属するものを除く)
【土地の用途】
土地用途という観点から区別すると、以下の三種類。
農業用地
直接に農業生産に用いる土地をいい、耕地・林地・草地等が含まれる。
建設用地
建築物又は構築物を建造する土地をいい、都市・農村住宅及び公共施設用地、
工業・鉱業用地、交通水利施設他、観光用地及び軍事施設地等が含まれる。
未利用地
農業用地、建設用地以外の土地を指す。
中国では土地利用総体計画を定めており、土地を使用する単位及び個人は、必ず土地利用総
体計画が定める用途に従って土地を使用しなければなりません。また、農業用地を建設用地に
転換することを厳格に制限し、建設用地の裁量を規制し、耕地については特殊保護しています。
【土地使用権の種類】
前述の通り、中国の土地所有権は国家所有または集団所有とされていますが、単位または個
人は土地使用権を取得することにより、土地の使用が認められます。
1
『土地管理法』
(全国人民代表大会常務委員会 2004.8.28 公布)
、
『都市不動産管理法』
(国家主席令第 72 号 2007.8.30 公布)、
『都市・鎮における国有土地使用権払下及び譲渡暫定施行条例』
(国務院令第 55 号 1990.5.19 公布)等の土地関連規定によ
りまとめ。
10
MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
中国アドバイザリーの現場から
国有土地使用権はその取得方式や取得後の使用方法等により、以下の二種類に分けられます。
払下土地使用権
国が国有土地使用権を一定年限で土地使用者に払い下げ、土地使用者が国に
(有償)
対して払下金を支払うことにより取得する。
払下方法:入札募集、競売、公示による払下
使用年限:居住用地
70 年
工業、教育、科学技術、文化、衛生及び体育用地
商業、観光、娯楽用地
40 年
総合用地、その他の用地
割当土地使用権
50 年 2
50 年
県級以上の人民政府が法により認可し、一部有償もしくは無償で土地使用者
に土地を引き渡し使用させる。
割当が認められる土地は以下の通り。
・国家機関の用地及び軍事用地
・都市インフラ用地及び公共事業用地
・国が重点的に奨励するエネルギー、交通及び水利等プロジェクト用地
・法律等が定めるその他の用地
使用年限:法律により割当方式で土地使用権を取得した場合、法律等で別途
定めがある場合を除き、使用年限の制約を受けない。
3.土地に関する最近の政策と動向
上海市人民政府は 2014 年 2 月に『土地節約・集約利用水準の更なる向上に関する若干意見』
(滬府発[2014]14 号)を公布しました。本意見では、2020 年までに、上海市における建設用地
の総規模を計画目標範囲内に抑え、建設用地の「増加ゼロ」を目指すものとしています。
その他、本意見の主な内容は以下の通り。
 都市建設用地規模のコントロールを強化
区と県の建設用地減量化・土地整備・生態用地 3 修復・自然景観保護等の措置を通じて、農
業生産・生態保育・観光リゾート等総合機能を有した郊外公園の建設をする。
 新規増設建設用地規模を徐々に減少
年度の新規増設建設用地計画の調整を強化し、インフラ・公共サービス・民生プロジェク
ト 4 用地を優先的に保障し、新規工業用地の増加を有効的に抑制する。
 土地資源分配効率の着実な向上
土地の回転効率を高める為、一般工業プロジェクト用地の譲渡期間を 20 年間とする。
(市の重点産業プロジェクトは関連部門の認可により 20~50 年間とする)
 既存建設用地の合理化利用の推進
 “104 区画”計画工業用地区域(既存 104 ヶ所)
⇒戦略性新興産業及びハイテク製造業を重点に発展させる。
 “195 区域”集中建設区内の現状建設用地(計画工業用地区域以外の場所、既存 195km2 )
⇒生産性サービス業への転換を重点に発展させる。
2
3
4
一部上海等では使用年限を 20 年間としている地域もある。詳細は本稿「3.土地に関する最近の政策と動向」を参照。
生態用地とは、林・森林等を表す。
民生プロジェクトとは、社会保障関連のプロジェクトを表す。
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
中国アドバイザリーの現場から
 “198 区域”集中建設区外の現状建設用地(既存 198km2 )
⇒減量化し、生態修復を重点に実施する。
上述の通り、本意見公布により、上海市においてはますます製造型企業にとって土地使用が
難しくなってきているのが見て取れます。また、上海市に続き、北京、杭州、深圳、珠海等で
も同様の意見・規定を公布しており、中国国内の他の地域の動向も今後注目したいところです。
4.土地にかかわるケーススタディ
【ケース 1】土地使用権証または建物の産権証が無い場合
土地使用に際して、土地使用権証を必ず取得しなければならないということはよく知られて
いるのですが、その土地に建つ建物の産権証も取得しているかについて確認が必要です。
最近では少なくなってきていますが、1980 年代・1990 年代に中国に進出してきた日系製造企
業の場合、工場設立の際に建物の産権証を取得していないケースが見られます。当時の中国国
内の工業区の実務では、政府から産権証取得の要望・指導がなかったことが原因のようです。
この場合、今後考えられる可能性として、現土地建物の売却や会社の清算時に問題が発生す
ることがあります。産権証のない建物を譲渡しても、譲受者の名義に変更できない可能性があ
るからです。では、建物を取り壊して土地使用権のみ譲渡するということも考えられますが、
中国の規定上はそれも難しいかもしれません。
『都市不動産管理法』(2007.8.30公布 国家主席令第72号)
第38条
次の各項に挙げる不動産は、これを譲渡してはならない。
(1) 払下方式で土地使用権を取得した場合において、この法律第39条所定の条件に適合しないもの
(2) 以下省略
第39条
払下方式で土地使用権を取得した場合で不動産を譲渡する時は、次の各項に挙げる条件に適合しなければ
ならない。
(1) 払下契約の約定に従って土地使用権払下金の全額を支払い、かつ土地使用権証を取得している。
(2) 払下契約の約定に従って投資開発し、建物建設工事に属する場合は開発投資総額の100分の25以上を
完成し、(以下省略)
不動産を譲渡する際に建物が既に建設されている場合には建物所有権証を保有しなければならない。
つまり土地使用権払下契約で建物建設の約定がされている場合、建築物がある状態で譲渡し
なければならず、かつ建物所有権証(産権証)を保有していなければならないことになります。
本ケースにおいて土地建物の譲渡を検討する場合、当局の関連部門に相談し、譲渡方法を検
討しなければならない可能性があります。
【ケース 2】割当土地で事業を行っている場合
現在の土地を割当土地使用権により使用している場合、政府からの急な要請や収用のリスク
が考えられます。
中国国内の各工業区においても都市化・サービス産業化が進み、政府より急に割当土地から
払下土地への変更、または工業用地から商業用地への土地用途変更の通知を受けるケースが出
てきています。
割当土地から払下土地への変更の際には払下金の支払いが必要になり、かつ既に都市化が進
12
MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
中国アドバイザリーの現場から
んでいる地域であれば地価も上昇しており、払下金が想像以上に多額になる可能性もあります。
いつこのような要請が来るかは想定が困難ですが、自社の所在する工業区の動向については
確認しておくのが望ましいでしょう。
【ケース 3】割当土地の土地使用権者から土地・建物を賃借する場合
日中合弁等、中方企業とのアライアンスで中国進出するにあたり、土地建物は中方企業が用
意すると提案されるケースがよくあります。この場合は、事前に当該土地の使用権者や土地用
途を確認する必要があります。
中方企業が国有企業の場合、その国有企業が所有する土地使用権は割当土地使用権である可
能性があります。この土地を中方企業から賃借するスキームで事業を運営する場合、以下の問
題が考えられます。
割当土地とその地上の建物は、土地使用権払下契約を締結し、関連部門の認可を得た上ではじめて譲渡・
賃貸・抵当権の設定が出来る。
⇒この為、割当土地使用権及び割当土地上の建物を賃借する場合は、土地使用権者が土地使用権払下を
する必要がある。
『都市・鎮における国有土地使用権払下及び譲渡暫定施行条例』(1990.5.19公布 国務院令第55号)
第44条
割当土地使用権は、第45条に定める事由を除き、譲渡・賃貸・抵当権の設定をしてはならない。
第45条
次の各項に挙げる条件に適合するものは、市・県人民政府の土地管理部門及び家屋財産管理部門の認可を
得て、当該割当土地使用権及び地上建築物その他の定着物の所有権を譲渡・賃貸・抵当権設定が出来る。
(1)土地使用者が会社、企業その他の経済組織及び個人である
(2)国有土地使用権証を受領している
(3)地上建築物、その他の定着物につき適法な財産権証を有する
(4)土地使用権払下契約を締結し、当該地の市・県人民政府に対し土地使用権払下金を補足納付し、または
譲渡・賃貸・抵当により得た収益により土地使用権払下金に充当し納付したとき。
以上のことから、本ケースの場合、土地・建物を使用する際の合法性に問題があり、事業開
始後、土地の使用停止や営業停止等を命じられるリスクがあります。
5.おわりに
最近では、日系医療・介護事業者等、新たに中方企業とのアライアンスにより中国進出を検
討しているケースが増えてきています。事業性の検証、中方企業の検証を行うと同時に、土地
の問題にも目を向けていただきたいと思います。
以
13
上
MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
中国戦略
中国の多国籍企業:
模倣ではない中国独自のビジネスモデルの重要性
―グローバル企業事例
イーベイ、DHL エクスプレス―
KPMG Advisory (China)
厚谷
禎一
編
監訳
www.kpmg.com.cn
www.kpmg.or.jp/jp/chi
中国の消費者支出が増大する中、デジタルメディア、ビッグデータ、E コマースの出現に、こ
れまでの既存のビジネスモデルが揺らいでいます。中国現地のライバル企業は、これに素早い
反応を示しています。
技術革新のスピードが中国のビジネスのルールを一変させたと、グローバル企業のトップは
一様に指摘しています。中国企業は、しばしば欧州や米国の先を行くやり方でデジタルメディ
ア、ビッグデータ、E コマースを活用しています。彼らは、これまでに定着していたビジネスモ
デルを根本から変革し、グローバル企業との競争に挑んでいます。これは発展途上国の市場が
常に先進国より遅れていると考える人たちにとっては理解しがたい発想です。
グローバル企業が成長するためには、世界のどの国よりも、中国でのイノベーションのスピ
ードアップに対応できる態勢を整えなければなりません。さもなければ、中国の現地ライバル
企業や要求の多い顧客との間で苦戦することになるでしょう。実際のところ、グローバル企業
のトップは、俊敏な中国のライバル企業が新しいテクノロジーに順応する速さに驚きを隠しき
れません。対照的に、グローバル企業は、先進国市場での 30 年以上にわたる経験が邪魔をする
ケースが多いように見えます。
一般に見られるグローバル企業と中国企業の相違点は、デジタルメディアの活用です。グロ
ーバル企業はかつて、その企業規模を武器に昔からある従来型メディアに高額な広告費を投入
してきました。一方、中国企業は消費者行動の変化とモバイル技術の急速な普及に素早く目を
つけました。多くの中国企業が、従来型メディアを飛び越えて、デジタルメディア、特に微博
(ウェイボー)や微信(ウィーチャット)のようなモバイルプラットフォームへと、ダイレク
トに移行しました。こうして、中国のとてつもない国土の広さを克服し、新市場へと進出した
のです。
KPMG が最近実施したオンライン調査の結果では、中国の消費者はユニークな商品をオンライ
ンで求めるケースが増えていることが分かりました。実際の店舗ではなかなか入手できないよ
うな商品です。さらに、中国の消費者はブランドをリサーチし、実店舗とオンライン店舗の価
格を比較することが多いようです。中国の小売業界では、消費者のこの傾向を利用することが
できます。具体的には、オンライン側の製品在庫や最少在庫管理単位(SKU)を増やして品数と
種類を豊富にしたり、中国国内のソーシャルメディアやマーケットプレイスプラットフォーム
を利用する方法などがあります。
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
中国戦略
しかし、小売業界は問題点にも注
知っていますか?
意しなければなりません。KPMG 中
国のコンシューマーマーケット担
当パートナー、ジェシー・チェンは
2015 年、中国の E コマース取引は
次のように話します。「ラグジュア
5,400 億米ドルに達する見通しで
リーブランドは、旅行中の中国人消
す。これは小売取引全体の 7.5%に
費者も対象に含めた海外向けマー
あたります。
ケティングを目的として、E コマー
2020 年、中国の E コマース市場は
スを多用している。しかし、アフタ
米国、英国、日本、ドイツ、フラ
ーサービスやカスタマーサービス
ンスの合計より大きくなると予想
の維持、製品の正規品証明は常に課
されています 1。
題になっている。高級品のオンライ
ンショッピングでは、製品保証の問
題もある」
中国政府目標
大きくなると予想されています 1 (普及率 85%)」2
2020 年までに 3G/4G モバイ
ビッグデータの活用も、中国企業
ルユーザーを、2012 年末の
が先進国に先んじているもう一つ
2.33 億人、2013 年 6 月の
の分野です。イーベイの中華圏担当
3.25 億人から、12 億人に引
CEO、ジョン・リン氏は指摘します。
き上げる(普及率 85%)2
「海外向け自社サイトを持つ中国
の貿易商社は、海外の顧客をよりよ
く理解するために、ビッグデータに
投資することが多く見られる」
イーベイ自身も、ビッグデータを
解析予測するグローバルアナリティクス事業のために、中国で約 2,000 人を雇用していますが、
その結果、中国の IT 業界だけでなく金融業界との間でも人材の争奪戦が起きています。
さらに、大手インターネット会社は自社のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)
を利用して顧客情報を収集するだけでなく、消費者の消費パターンを理解するためのシステム
をも構築しています。こうした企業は、この 2 つの情報リソースを融合させ、顧客に合わせた
製品情報を提供しているのです。
端的に言うと、IT 革命は新たな商戦の場を生み出しました。今日のグローバル企業のトップ
は、安価な模倣品にはあまり関心がありません。彼らは、自らが持つ潤沢な資金や流通ネット
ワークが中国での成功をもたらすとは考えてはいません。むしろ、中国消費者の台頭(個人主
義の広がりと他者との差別化への欲求)に適切に対応するために、どうすれば技術革新を上手
に活用できるかという点に関心を集中させています。
1
Amanda.「中国の E-コマース市場、2020 年には 30 兆元規模に(China E-Commerce Market to Reach 30 Trillion Yuan in 2020)」
China Internet Watch. 2013 年 3 月 13 日
http://www.chinainternetwatch.com/2007/china-e-commerce-market-2020/
2
CLSA レポート「E-Normous」2013 年
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
中国戦略
レノボのアジア太平洋地域担当 CFO、ヘルムート・ゾル氏は、これを「消費者主導の」イノベ
ーションと表現します。「中国では、消費者の行動が企業の製品とビジネスモデルに影響を与
える、いわゆる『コンシューマライゼーション』が、どの国よりも急速に進んでいる。中国の
消費者の意思決定は主体性が強く、それが製品やサービスの販売方法に大きな影響を及ぼして
いるのだ。すなわち、企業は次第に、製品のイノベーションと迅速な商品化が必要とされる土
俵で勝負しなければならなくなって来ているということだ」ゾル氏はこのように説明していま
す。
「企業は、情報がいかに重要であるかを認識している。また、適切な情報分析が行われる場合、
本当の意味での差別化要因になりうることも知っている。これまでは一般的に過去のパターン
を分析してきたが、消費者の消費行動を判断するために予測解析を行う例も増えてきているよ
うだ」-KPMG China、クライアント&イノベーション担当パートナー、エギディオ・ザレラ
主要なグローバル企業は、果敢にこの問題に対処しています。例えば、ペプシコは最近、デ
ジタルメディアを利用したポテトチップ製品のマーケティング・キャンペーン「新フレーバー
大募集」を展開しました。中華圏担当 CFO のジュン・ツー氏は、次のように話します。「各地
の有名人に好きな風味を推薦させ、消費者が自分の好きな味に投票した。このマーケティング・
キャンペーンは大成功を収めた。大好きな郷土の食べ物に対する消費者の情熱に火をつけたの
だ」
中国消費者の台頭をかねてから予期していたグローバル企業は、ビジネスのやり方が根本的
に変えられたことに気付きました。中国のビジネス機会は今も大きく開かれていますが、それ
はしかし非常に捉えにくいのです。ビジネスモデルの改革がビジネス機会の公平化や中国現地
ライバル企業の台頭を促し、その結果として大手の小売グローバル企業がリストラや中国市場
からの撤退を決定するケースも見受けられます。もはや、ただ中国で生き残るだけでは不十分
なのです。中国の消費者が起こす次なるトレンドに乗るためには、適切なビジネスモデルを持
つことが極めて重要です。
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2014 年12 月号
中国戦略
主に利用する情報チャネル
ソーシャルメディアのユーザーレビュー
友人の評価や口コミ
淘宝(タオバオ)等の E コマースサイト
ブランドのオフィシャルサイト
メディアのオンラインプラットフォーム
ブランドの公開ニュース
オンライン上のディスプレイ広告
従来型メディア
有名人のコメント
有名なオピニオンリーダー
出典:調査分析「China's Connected Consumers」2014 年 2 月
10 億米ドル
米中の E コマース取引高(2009~2015 年)
中国
米国
出典:Statista、Bain & Company の米中 E コマースデータを KPMG が分析
オンラインショッピングにモバイル端末を利用する中国の消費者が増加
タブレット
スマートフォン
パソコン
出典:調査分析「China's Connected Consumers」2014 年 2 月
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
中国戦略
オンライン戦略
イーベイ
中華圏担当最高経営責任者(CEO)
ジョン・リン
ジョン・リン氏は、米国に本社を置き、中国に約 2,000 人、全世界に約 3 万 5,000 人の社員
を擁するインターネットグローバル企業、イーベイの中華圏担当 CEO です。
イーベイと中国加盟店の協力体制は、グローバルビジネスの成長のために、グローバル企業
が中国といかに関わるべきかという点について、これまでと違う視点を示していますね?
リン氏-当社には 2 つのメイン事業があります。1 つは、中国加盟店に海外のイーベイサイトで
より多く商品を販売させること。2 つめは、中国加盟店がペイパルの利用を好む欧米の消費者向
けの彼ら自身のサイトを、立ち上げるための手伝いをすることです。
結果として、顧客である中国加盟店の海外における商品販売をサポートするために、包括的
なエコシステムを考案しました。例えば、販売量が多くなると、販売効率を上げる必要が出て
きます。50,000 個を売るのは 5,000 個を売るよりずっと大変です。そこで当社は、業務の自動
化や中間管理職導入の方法を教えたりしています。それ以外にも、意匠権や知的財産権に関す
る学習などの一般的なトレーニングも提供しています。これらはどれも、急激な成長を遂げ対
応が難しい市場(特にブラジルやロシアなど)に参入する際、ビジネスの拡大を可能にするた
めに不可欠な事項です。
中国加盟店が海外向けサイトで販売する商品にはどのような変化が生じていますか?
リン氏-当初彼らは、ただ中国製の製品を仕入れ、自分たちの感覚でこれは良いとか、かっこ
いいとか思ったものを売っていたのですが、それではうまくいきませんでした。しかし、消費
者のセンスが洗練されてくると中国の流行は急速に進化し、次第に欧米諸国に近づいてきまし
た。例えば、中国の消費者はスケートボードやキャンプ用品を購入します。この動きは、中国
から中国国外に向けて、ターゲット顧客の需要を直接掘り起こす機会が増えることを意味しま
す。そして、我々の中国加盟店はそれに素早く反応しています。
驚くべきは中国加盟店が欧米の消費者を理解するためにじつに大量なデータ分析を行ってい
ることです。彼らは、消費者がなぜその商品を買うのか(特徴、サイズ、スタイルなど)を理
解するためのデータ分析に投資します。これこそが E コマースの DNA だと思います。そしてそ
れは、日本、韓国、台湾、東南アジアの加盟店の動き方とは全く異なります。これらの国の加
盟店は一般に保守的で、ビッグデータを使用するためにかかった費用が回収できないこと(い
わゆるサンクコスト)を心配します。恐らく、この中国独特の思考方法は、中国の国土の広さ
に関係していると思います。中国市場は他の国の市場より大きいので、ビッグデータが加盟店
の発展に更に有効なのです。
中国のライバル企業が海外でビジネスチャンスをうかがっていることが気になりませんか?
リン氏-気になりません。結局のところ、E コマースで小売販売の占める割合はまだ非常に小さ
いので、ビジネスチャンスはまだいくらでもあるのです。
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
中国戦略
イーベイが中国国内市場の主要プレーヤーではないとしても、イーベイのグローバル戦略に
おいて中国は重要な役割を果たしていますね?
リン氏-当社は中国に約 2,000 人の社員がいます。一部は国際的なプロジェクトで研究開発に
携わっています。また、グローバルビジネスを支える大勢のデータ分析員も中国にいます。中
国の人材プールは素晴らしいものがあります。今や、中国のアナリティクス(予測解析)、リ
スクモデリング、ロジスティクス(物流効率化)技術は当社の中核技術です。さらに、中国に
はカスタマーサポートも設置しています。中国は他のどの国よりも、マルチリンガルの人材を
見つけやすいからです。
それでも、技術者の補充と定着は常に課題なのではないですか?
リン氏-ビッグデータの分析員を十分雇用しておくことは非常に難しいことです。銀行をはじ
めとして、どの企業もリスクモデリング・オペレーションを強化しています。中国企業もすで
に当社と同レベルの給与・待遇を提示するようになり、これまでよりずっと快適な職場環境も
設置しているようです。
イーベイはどのようにして最高の人材を呼び込んでいるのですか?
リン氏-当社は企業文化を重視します。当社はインターネット業界の先駆者であり、シリコン
バレーの企業です。私たちは技術者達にこうたずねます。「どこで働きたいか?銀行か?それ
ともインターネット企業か?」また、ワークライフ・バランスをよく考えています。10 年前は
1 日 20 時間でも働くという人材がやってきたものですが、今はより豊かになって、生活に重き
を置く社員や、旅行をしたいという社員が増えました。グローバル企業はその要望に応えるこ
とができます。
中国は変革を遂げつつありますが、それは主に規模の面でのことです。中国加盟店は他国の
加盟店と同じように優秀ですが、彼らは成功が保証されたイノベーションを求めます。一方、
シリコンバレーの起業家は、今もますますイノベーションへの意欲が旺盛です。恐らくは、こ
れもまた中国市場の大きさに関係しているのでしょう。中国加盟店は、ライバル企業を見回し
てよく研究し、その相手を真似ようとします。そして相手の一枚上手を行くのです。中国市場
の大きさを考えれば、これは非常に有効な戦略になります。
激化する競争の中で
DHL エクスプレス
アジア太平洋地域担当最高経営責任者(CEO)
ジェリー・シュー
ジェリー・シュー氏は、中国に約 6,500 人、全世界で約 10 万人の社員を抱えるドイツの国際
的物流企業、DHL エクスプレスのアジア太平洋地域担当 CEO です。
今後数年の間に DHL が直面する最大の課題は何でしょうか?
シュー氏-かつて当社の事業は、輸出を対象にした企業間取引(B2B)が主要業務でしたが、次
第に国内消費向けの企業対個人の取引(B2C)が中心になりつつあります。しかし B2C は、特に
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
中国戦略
「ラストワンマイル(事業者と受取人を結ぶ最後の区間)」が非常に大変です。最終的に各家
庭に届けるまでに、荷物を 3 回配達しなければならないこともあるからです。その点、B2B はず
っと簡単です。オフィスの多くは、営業時間中は業務を行っていますし、都市の特定エリアに
集中しているからです。
物流業界のあらゆる企業は、スピードと信頼性を両立させながら、いかにして消費者に荷物
を届けるかを研究しています。当社では、まず第一に、全国に大型の配送センターを置くこと
が現実的に必要だと考えています。また、B2C の輸送、特にラストワンマイルの複雑性に対応す
るためには、IT システムを一新する必要があります。これまでのところ、物流モデルに本当の
意味での飛躍的進歩は起きていません
中国における課題は西欧諸国と全く変わりません。実際には、米国、英国、オーストラリア
では、もっと先進的で統制の取れた方法が採られています。しかし、中国では荷物 1 個当たり
のコストが全く違います。購入する商品の平均単価が西欧よりはるかに安いからです。低額商
品を大量に輸送することが多いという、中国の物流企業が抱える特有の課題が、他国と最も異
なる点です。
中国の辺境地での物流と都市部での物流についてはどんな課題がありますか?
シュー氏-概して、沿岸部の省では当社のサービスは非常に浸透していますが、西部の省では
それほど進んでいません。単純にタイミングが原因です。また、インフラの未整備やサービス
対象地域が不十分といった、いくつかの問題がまだ残っています。マルチリンガルな技能労働
者を探すのも至難の業です。しかし、地域の開発がさらに進めば状況は変化するでしょう。
一方、特定の当局や地方政府による規制の実施が、DHL のもう一つの深刻な問題になっていま
すね?
シュー氏-中国のトラック輸送業界は常に分断されてきました。各省ごとに、省境の通過手続
き、トラックの車種、高速道路の料金などに関する独自の規制があります。これらの問題を打
破するには大変な労力を要します。現在のところ、中国国内で当社の要望と合致するトラック
輸送会社はまだ見つかっていません。
ただ、中央政府の新指導部は、このような状況の変化を促進しています。一番影響が大きか
ったのは汚職一掃キャンペーンです。中央政府は手続きを効率化するための政策を実施し、よ
り厳しい統制を導入しました。これは実際に、物流部門と経済の長期的成長にとってプラスの
効果を上げ始めています。
また、税関による規制の実施は、物流業界のもう一つの重大な問題です。中国は世界水準の
税関システムに到達するために懸命に努力していますが、そのため規制環境は目まぐるしく変
わります。E コマースなど、市場そのものが変化してしまうことも一因です。税関職員は、突如
として全く新しい産業や物品を扱うことになるのです。
シュー氏は、クライスラーの中国合弁企業、北京ジープに勤務し、中国で 15 年の経験を積ん
だ後、2002 年に DHL 中国に入社しました。この間、それぞれの労働市場では急速な変化があり
ましたが、特にこの 10 年間の変化は目まぐるしいものがありましたね?
シュー氏-中国で人材を募り、会社につなぎとめることはますます難しくなっていますが、DHL
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
中国戦略
エクスプレスのスタッフは全員中国人です。約 6,500 人の中国出身の社員の中で、海外からの
駐在員は 1 人だけです。その駐在員は、実際には中国事業と海外事業の連絡役です。1990 年代
初頭に海外で学び働いていた中国人帰国者が増えているので、中国現地での採用は現在ではは
るかに容易になりました。
また DHL は、1986 年からシノトランスと合弁パートナーを組んでいます。この関係が当社の
成功に不可欠であったことも重要視しています。DHL の合弁パートナーは、政府との関係を通じ
て当社をサポートしてくれます。しかし、日々の業務を主に指揮するのは DHL です。これ以外
に選択肢はありません。当社のビジネスは国際的です。従って、どの国でも同じプロセスで業
務を行う必要があります。こうした合弁関係は、恐らくこの業界では他に見られないでしょう。
この明確な役割分担はすなわち、合弁企業でよく発生するパートナーとの衝突が当社にはない
ことを意味します。
厚谷 禎一
KPMG Advisory (China) Limited
ディレクター
東京工業大学理学部卒業・同大学理工学部修士課程修了(情報科学専攻)
米国ペンシルバニア大学ウォートン校経営学修士(財務専攻)
これまで 20 年以上にわたり、日本、米国、カナダ、英国、韓国にて経営コンサル
ティング会社及び会計事務所に勤務、各国企業顧客に戦略・M&A・オペレーション
等の分野でのアドバイザリー・サービスを提供。
2003 年より KPMG LLP(米国)ニューヨーク事務所に勤務、主に日本企業顧客に対
して事業デュー・ディリジェンスを中心とした M&A 支援サービスを提供。
2008 年より現職、KPMG 中国の上海事務所にて同じく日本企業顧客に対して M&A 支
援サービスを提供。
専門は市場評価、事業計画の精査、M&A 実施後の統合支援等を含む事業デュー・
ディリジェンスだが、日本企業顧客に対しては広く、財務・税務デュー・ディリジ
ェンス、企業価値評価、不正調査、リストラクチャリング支援等を含む、M&A 支援
サービス全般のプロジェクト・マネジメント・サービスを提供する。
+86 10 8508 7111
[email protected]
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
法務
2014 年の重要立法を振り返る(上)
西村あさひ法律事務所
弁護士
野村
高志
弁護士
中島
あずさ
弁護士
六川
美里
1. 2014 年を振り返って
2014 年は、行政の簡易化、地方・下部組織への権限委譲を方針とする法令の公布が相次ぎま
した。特に 2013 年末の「会社法」改正の影響で、2014 年は各種の関連法律・法規が廃止・修正さ
れている点には注意が必要です。また、2013 年に成立した中国(上海)自由貿易試験区につい
ては続々と細則が公布・施行されており、同区で行われた規制緩和が全国に拡大する動きも 2014
年は多くみられました。本稿では、2014 年に中国で公布又は施行された主な法令からいくつか
を分野毎にピックアップし、2014 年の立法を振り返りつつ 2015 年以降の中国の関係各所の方向
を探ってみたいと思います。
2. 工商登記制度改革
2013 年 3 月 14 日、全国人民代表大会(「全人代」)は企業への過干渉の排除や行政の簡素化を
主軸とする「国務院機構改革及び職能転換方案の決定」を公布し、その職能転換方案の一つとし
て工商登記制度の改革を打ち出していました。同決定の中で宣言された払込実額登記制度から
払込引受額登記制度への転換に応ずる形で、同年 12 月 28 日に改正「会社法」が公布されたこと
は記憶に新しいところです。2014 年は、2013 年に全人代が宣言したこの工商登記制度改革を実
施するための法令が続々と公布・施行され、政府による後見的な干渉を減らし、企業の自主管
理と情報開示による公衆からの監視を中心とする一連の新たな制度が形成されました。以下、
企業の利便性と効率の向上のための(1)工商登記条件の簡素化と、
(2)企業情報開示制度の導
入について、工商登記制度改革に関連する一連の新法規をみていきたいと思います。
(1)工商登記条件の簡素化
①
「登録資本登記制度改革方案の印刷・発行に関する国務院の通知」(国発[2014]7 号、2014
年 2 月 7 日公布、同日施行)
②
「一部の行政法規の廃止及び修正に関する国務院の決定(2014)」(国務院令第 648 号、2014
年 2 月 19 日公布、同年 3 月 1 日施行)
③
「外資審査管理業務の改善に関する商務部の通知」(2014 年 6 月 17 日公布、施行)
22
MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
法務
企業の利便性と効率性を図るために制定された①「登録資本登記制度改革方案の印刷・発行
に関する国務院の通知」は、(ⅰ)払込引受額登記制度を導入し、(ⅱ)最低登録資本条件を廃
止し、(ⅲ)会社登記時の出資払込検査を廃止する等の改正「会社法」に従った規定を設け(第 2
条第 1 項)1、①の公布直後に公布された②「一部の行政法規の廃止及び修正に関する国務院の決
定(2014)」も、同様の趣旨で関連法規の廃止及び一部修正を図っています。これにより外商投
資企業についても上記(ⅰ)~(ⅲ)が実施されることが明らかになりました。このことは、
③「外資審査管理業務の改善に関する商務部の通知」でも明らかにされていますが、③では出資
払込検査は原則不要とする一方(第 1 条第 3 項)、外商投資統計制度に基づく統計の必要上、こ
れまで出資者に対して発行すれば足りていた出資証明書(払込資本金額等を記載)を、商務部
門に対してもその副本の提出を要するとしている点(第 2 条第 9 項)には留意を要します。ま
た、改正「会社法」及び上記①~③の規定においては出資払込検査が原則不要とされているもの
の、外貨管理局の出資確認登記の手続には特段の改正等は現在のところ行われていないことか
ら、外商投資企業の外貨資本金には依然として外貨管理局での出資確認登記を要すると考えら
れます 2。
④
「一連の行政審査認可項目等の事項の取消及び調整に関する国務院の決定」(国発[2014]27
号、2014 年 7 月 22 日公布、同日施行)
上記①~③と同様に企業の利便性と効率性を図るため、国務院は④「一連の行政審査認可項目
等の事項の取消及び調整に関する国務院の決定」を公布・施行し、従来登記の前置審査認可事項
であった合計 31 項目を後置審査認可事項に変更しました。外商投資企業に関しては、中外合資
企業又は合作経営企業が経営する文化、旅行関連産業の設立や、外商投資広告企業の支店等設
立の審査認可がその対象となります(同決定付属文書 3、第 12 項、第 13 項、第 19 項、第 24 項、
第 30 項)。
⑤
「会社登録資本登記管理規定(2014)」(国家工商行政管理総局令第 64 号、2014 年 2 月 20 日
公布、同年 3 月 1 日施行)
⑥
「『中華人民共和国企業法人登記管理条例施行細則』3、『外商投資パートナーシップ登記管
理規定』、『個人独資企業登記管理弁法』、『個人商事登記管理弁法』等の規定を改正するこ
とに関する国家工商行政管理総局の決定」(国家工商行政管理総局令第 63 号、2014 年 2 月
20 日公布、同年 3 月 1 日施行)
改正「会社法」が登録資本に関する登記事項を変更したことを受け、登記機関である工商行政
管理総局も⑤「会社登録資本登記管理規定(2014)」により、改正「会社法」の修正内容を登記制
度に反映しました。具体的には、
(ⅰ)改正「会社法」の払込引受額登記制度の具体化や、初回出
1
2
3
このほか、本通知は、登記条件の簡素化の一環として、住所(経営場所)の登記手続については、各地方政府が認める適法使
用証明書の提出をもって登記が可能とする一方で、登録住所と実際の経営場所が不一致の場合の管理を強化することなど
も定めています(第 2 条第 3 項、第 3 条第 7 項)。
「資本項目直接投資外貨業務操作規程」第 1.5、「資本項目外貨業務操作ガイドライン(2013 年版)」第 2.7、第 2.8、第 8.2 等
「『中華人民共和国企業法人登記管理条例施行細則』、
『外商投資パートナーシップ登記管理規定』
、
『個人独資企業登記管理
弁法』、
『個人商事登記管理弁法』等の規定を改正することに関する国家工商行政管理総局の決定」を受けた「中華人民共和
国企業法人登記管理条例施行細則(2014 年修正)」も同日に公布・施行されています。
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
法務
資割合、出資払込期限、非貨幣財産による出資割合制限及び出資払込検査等の廃止に加え(第 2
条~第 5 条)、(ⅱ)出資持分による出資及びデッドエクイティスワップについては、既存の法
令(「持分出資登記管理弁法」及び「会社債権持分転換登記管理弁法」)を廃止したうえ、改正「会
社法」に合わせて調整した内容を本管理規定に組み込んでいます(第 6 条、第7条)。
また、⑥「『中華人民共和国企業法人登記管理条例施行細則』、
『外商投資合弁パートナー登記
管理規定』、『個人独資企業登記管理弁法』、『個人工商事業者登記管理弁法』等の規定を改正す
ることに関する国家工商行政管理総局の決定」も、各類型の会社の最低登録資本金の制限の取消、
経営場所登記手続の簡易化等を盛り込んだほか、後述の出資払込検査に代わる企業信用情報開
示制度の新設や営業許可証の電子化に係る規定の調整をしています(第 1 条)。
(2)企業情報開示制度の導入
①
「企業情報公示暫定条例」(国務院令第 648 号、2014 年 8 月 7 日公布、同年 10 月 1 日施行)
②
「企業経営異常名簿管理暫定弁法」(国家工商行政管理総局令第 68 号、2014 年 8 月 19 日公
布、同年 10 月 1 日施行)
③
「工商行政管理行政処罰情報公示暫定規定」(国家工商行政管理総局令第 71 号、2014 年 8 月
19 日公布、同年 10 月 1 日施行)
④
「企業公示情報抜取検査暫定弁法」(国家工商行政管理総局令第 67 号、2014 年 8 月 19 日公
布、同年 10 月 1 日施行)
⑤
「『企業情報公示暫定条例』を徹底的に実施することに関する問題に係る国家工商行政管理
総局の通知」(工商外企字[2014]166 号、2014 年 9 月 2 日公布、同日施行)
前記(1)①「登録資本登記制度改革方案の印刷・発行に関する国務院の通知」は、企業年度検査
を廃止した一方、新たに企業信用情報公示システムを用いた年度報告の規定を設けています。
この制度は、各企業に対して、毎年定められた期間内に出資者の出資引受状況などの情報を企
業信用情報公示システムを通じて工商行政管理機関に報告させ(年度報告)、かつ、その内容を
個人や団体を問わずいかなる者も照会可能とするもので、虚偽情報を公示する等その経営状態
に異常が見られる会社については、その名称を「経営異常名簿」に記載し、3 年以内に是正されな
い場合には、さらに「厳重違法企業名簿」(いわゆるブラックリスト)に記載して公表するとさ
れ(第 2 条第 2 項、第 3 条)、企業の自主報告と情報の透明化、公衆による監視を中心とする管
理方式に転換されています。加えて、本通知は今まで紙ベースで発行していた営業許可証の電
子化、及び登記の申請から発行までの全プロセスの電子化を推進しており、その手続及び管理
の利便化を図っています(第 2 条第 4 項)。
上記通知による決定を受け、①「企業情報公示暫定条例」(以下「暫定条例」)は、企業情報公
示システムを通じた情報開示の範囲、方法や「経営異常名簿」、「厳重違法企業名簿」の対象範囲
や取扱等を具体化しています。なお、経営異常名簿への登録に関しては②「企業経営異常名簿管
理暫定弁法」、工商行政管理局による行政処罰の公示(「暫定条例」第 6 条)に関しては③「工商
行政管理行政処罰情報公示暫定規定」も、公布・施行されています。
また、前記①の国務院の暫定条例は、企業信用情報公示システム上に企業の年度報告内容を
開示するだけでなく、任意に抽出した一部の企業に対して書面審査、現場検査等を行うとして
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2014 年12 月号
法務
いるところ、これを実施するための④「企業公示情報抜取検査暫定弁法」や、②~④を含めた情
報開示制度のスムーズな実施を目的とした手続規範である⑤「『企業情報公示暫定条例』を徹底
的に実施することに関する問題に係る国家工商行政管理総局の通知」も公布・施行されています。
3.外商投資関連
「外商投資プロジェクト審査認可届出管理弁法」(国家発展改革委員会令第 12 号、2014 年 5
月 17 日公布、同年 6 月 17 日施行)
国家発展改革委員会による外商投資プロジェクト審査については、2013 年 12 月 2 日に国務院
が公布した「政府審査認可投資プロジェクト目録(2013 年版)」4 が外商投資プロジェクトについ
ても認可制と届出制を併用したこと等を受け、国家発展改革委員会もこれに応じて「外商投資プ
ロジェクト審査認可届出管理弁法」を制定し、外商投資プロジェクト審査に対する手続上の制約
を大幅に緩和しました。
本弁法の公布による最大の変化は、外商投資プロジェクトの管理方法に対する改革で、(ⅰ)
従前は全面的に認可を必要としていた管理方式を、認可制と届出制を併用する方式に変更し、
「外商投資産業指導目録(2011 年改定)」に中国側による支配(相対的支配も含む。
)の要求があ
る奨励類及び制限類のプロジェクト
5
及び「政府審査認可投資プロジェクト目録(2014 年版)」
が特別な認可を要求する一部のプロジェクトを除いては、届出で足りることとなりました(第 3
条~第 5 条)
。また、(ⅱ)その管理機関については、外商投資プロジェクトの届出は全て地方政
府投資主管部門(地方発展改革委員会)が担当することになり、多くの外商投資プロジェクト
について、実施地毎の管理が実現しました(第 5 条、第 18 条~第 20 条)。さらに、(ⅲ)プロジ
ェクトの審査においても、プロジェクト申請報告書の内容が簡易化され、銀行の融資意向書の
提出も不要となり、市場の見通し、経済効果及び製品技術等の事項については企業のビジネス
判断を尊重し、外商投資の利便性を高めようとしていることが窺えます(第 8 条)。一方、従
来は要求されなかった「エネルギー審査機関が発行した省エネ審査意見書」をプロジェクト申請
報告書に添付するよう求めるなど(第 10 条第 6 号)、環境、資源の利用、経済や社会に与える
影響への審査は重視していることが窺えます。
なお、本弁法における注意点は特に以下の 2 点です。まず、(ⅰ)本弁法が定めるのは原則的
一般的な規定であり、実際の届出手続については管轄の地方政府主管部門が特別な規定を設け
ている場合がありますので、それに従う必要があります。また、(ⅱ)本弁法は外商投資につい
て大幅な規制緩和を実施する一方で、各級の発展改革部門に対して、同級の業界管理、都市農
村計画、国土資源、環境保護等の部門と協同して、外商投資プロジェクトに対する監督管理を
強化することを要求しています。手続が簡易化されたとはいえ、必要な手続は確実に履践する
必要があります。
4
5
2014 年 10 月 31 日からは「政府審査認可投資プロジェクト目録(2014 年版)」が適用されています。
具体的には、①奨励類で投資総額 3 億米ドル以上の場合には国家発展改革委員会、3 億米ドル未満の場合には地方政府が
審査認可の主体となり、②制限類(不動産プロジェクトを除く)で投資総額が 5 千万米ドル以上の場合には国家発展改革
委員会、不動産プロジェクト及び 5 千万米ドル未満の場合には地方政府が審査認可の主体となります(第 4 条)
。
25
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2014 年12 月号
法務
4.外貨管理関連
(1) 外貨資本金の元転に係る規制緩和
「一部の地域で外商投資企業の外貨資本金元転管理方式の改革試行を展開することに係る
問題に関する国家外貨管理局の通知」(匯発[2014]36 号、2014 年 7 月 14 日公布、同年 8 月
4 日施行)
外商投資企業の外貨資本金の元転については従来から、実需ベースでの個別の払い出し毎の
元転や投資資金への利用制限等の制限が行われてきましたが、2014 年は、外商投資企業の外貨
資本金利用の利便性を高めるべく、2 月に中国(上海)自由貿易試験区で外貨資本金の元転に一
定の規制緩和が図られたのに続き 6、「一部の地域で外商投資企業の外貨資本金元転管理方式の
改革試行を展開することに係る問題に関する国家外貨管理局の通知」が公布・施行され、天津濱
海地区等の 16 の試行地域においても規制緩和が実行されました。
具体的には、本通知の施行により、(ⅰ)試行地域内の外商投資企業は、外貨資本金口座の開
設銀行で「人民元転支払待ち口座」を開設したうえで、外貨資本金を、資金用途の証明資料の提
出や元転金額の制限なくいったん元転して同口座に入れておき、以後支払が必要な際に同口座
から人民元を払い出していく方法(「意愿結匯」)を採用することができるようになりました。
もっとも、本通知のもとでも「人民元転支払待ち口座」から支払のために払い出す際には従来ど
おり前回の支払証明等の審査を受けるほか(第 5 条第 2 項)、元転後の人民元の用途にも経営範
囲外の支出に用いてはならないといった制限が依然として存在するため、本通知による規制緩
和の試みも抜本的なものというわけではありません。しかし、(a)投資を主要業務としない一般
の外商投資企業について、外貨資本金口座内の資金を元転して国内再投資をすることが解禁さ
れている点は注目されます。(b)一方、投資を主要業務とする外商投資性企業については、投
資のための払い出しでない限り「意愿結匯」の方法を採用することができませんが(第 4 条)、投
資先企業による外貨管理局 7 での基本情報の登記や、再投資専用口座を開設せずとも、元転した
人民元を投資先企業の口座に直接入金することができるとされています(第 1 条、第 4 条)
。
(2)迂回投資制度の改正
「国内居住者による特殊目的会社を通じた国外投融資及び迂回投資に係る外貨管理に関す
る問題についての国家外貨管理局の通知」(匯発[2014]37 号、2014 年 7 月 4 日公布、同日
施行)
中国企業・個人が海外に設立した特殊目的会社(以下「SPC」)を通じて中国国内に投資を行う、
いわゆる「迂回投資」については、これまで 2005 年 11 月 1 日施行の「国内居住者による特殊目的
会社を通じた融資及び迂回投資に係る外貨管理に関する問題についての国家外貨管理局の通
6
7
「中国(上海)自由貿易試験区の建設を支持する外貨管理実施細則の印刷・公布に関する通達」(上海匯発[2014]26 号)
外貨資本金を元転することができる割合は「暫定的に」100%とされているため(第 1 条)
、今後より低く調整される余地は
残されています。
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2014 年12 月号
法務
知」(匯発[2005]75 号)
(以下「75 号通知」)が、これに必要な国外投資外貨登記等について定め
てきました。「国内居住者による特殊目的会社を通じた国外投融資及び迂回投資に係る外貨管理
に関する問題についての国家外貨管理局の通知」は、この 75 号通知を廃止し、国内市場と海外
市場における資本の利用、投融資活動の効率を高めるべく、迂回投資に対する外貨管理局の管
理範囲を合理化する方向で制度変更を図っています。
本通知は、
(ⅰ)SPC の定義について、設立目的を資金調達目的に限らず投資目的を含むとし、
設立等に用いる資産・権益を中国国内企業の資産・権益をもって設立する場合に限らず、国外
資産・権益をもって設立する場合を含むとすることで拡大し、もって外貨管理局において国外
投資外貨登記を要する SPC の範囲を拡大する一方、
(ⅱ)従来は中国居住者が「直接」に設立又は
支配する SPC(いわば「第一層目」の SPC)のみならず、SPC が国外に直接又は間接に投資する二
層目以降の全ての会社についても必要とされていた登記範囲を、第一層目の SPC に限定し、か
つ、従来は、SPC の純資産等に変更が生じた場合も含めて必要とされていた変更登記事由を、出
資者、名称若しくは経営期間等の基本情報に変更があった場合又は国内居住者自身の増減資、
出資持分譲渡、株式交換、合併若しくは分割等の重要な事項に変更があった場合に限定するな
ど登記範囲が合理化されたほか、(ⅲ)国外投資の外貨登記にあたり従来必要であった SPC を通
じて取得した資金の使途等を記す「国外融資商業計画書」の提出も不要(第 3 条参照)となった
ことなどにより、迂回投資に係る登記上の利便性は格段に向上しました。また、
(ⅳ)従来の「国
内居住者が SPC を通じて取得した利潤、配当及び資本変動外貨収入は取得した日から 180 日以
内に国内に戻さなければならない」という制限が廃止され、これらの資金を国外に留保して使用
することができるようになっているほか(第 8 条)、SPC が迂回投資により直接・間接に支配す
る国内企業が SPC に融資等を行うことができること(第 10 条)など、国内・海外の資金が従来
よりも効率的に利用できるようになっています。また、従来は海外の上場企業についてしか登
記手段がなかった国内従業員へのストックオプションプランについて、非上場会社たる SPC に
よるそれにも外貨登記の途を開いた点(第 6 条)も注目されています。
(3)クロスボーダー担保管理の規制緩和
「『クロスボーダー担保外貨管理規定』を公布することに関する国家外貨管理局の通知」(匯
発[2014]29 号、2014 年 5 月 19 日公布、同年 6 月 1 日施行)
従前から、中国でも「対外担保」や「国外保証付人民元国内借入」といった形でクロスボーダー
担保は存在していましたが、担保提供者となり得る者に資格条件が設けられたり、手続に外貨
管理局の審査認可を要したりといった制約が存在したため企業にとって必ずしも利用しやすい
制度とはいえず、また政府にとっても、管理コストの重い手続となっていました。中国企業の
海外進出に伴い、中国国内企業が中国国外の関連会社のために保証提供するというニーズにも
充分応えられないという問題が指摘されていました。
「『クロスボーダー担保外貨管理規定』を公布することに関する国家外貨管理局の通知」、「ク
ロスボーダー担保外貨管理規定」(以下「本規定」)及び「クロスボーダー担保外貨管理操作マニ
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法務
ュアル」(以下「マニュアル」)は、クロスボーダー担保における①内保外貸 8、②外保内貸 9、及
び③これら以外のスキームに分類したうえで①及び②について明確に規律する一方で、担保の
履行後に中国国内の主体が中国国外の主体に対して負債又は債権を負うケースを管理対象とす
る方式に切り替えることで、クロスボーダー担保の管理対象を大幅に削減しています。また、
外貨管理局による銀行への残高管理や担保提供時の事前審査も廃止する
10
等規制緩和を実施し
ています。
本規定の施行により、①内保外貸については、保証人と被保証人資格要件や、対外担保の差
し入れ毎に必要であった事前審査・認可等が廃止されました。特に資格要件の廃止により、今
後は潤沢な資金を有する中国現地法人が自ら担保を提供して海外他企業のビジネスを支援する
といったスキームを採ることも可能となります。ただし、担保契約締結時(締結後 15 営業日以
内)、契約の主要条項に変更が生じた場合及び担保提供者についてその責任期限が到来し、又は
担保を履行した場合には、それぞれ登記が必要となる点には留意を要します。また、②外保内
貸については、(ⅰ)外保内貸により形成した対外負債は、その前年度末の監査を経た純資産額
を超過してはならない 11(もっとも、外資企業については、純資産額を超過した場合でも、超過
部分の金額は当該企業が負担可能な外債枠(いわゆる「投注差」)からの消化により対応可能)
とされています(マニュアル第 2 部分第 3 条)
。加えて、(ⅱ)債務者は保証履行で発生した債務
について対外債権登記の義務を行うところ(「本規定」第 15 条)、その債務の返済前に新たに「外
保内貸」契約を締結できず、担保契約にかかる資金を引き出すことが制限されますので(「本規
定」第 19 条)、その利用には計画性が不可欠となります。
(4) 外貨資金集中運営管理業務の全国展開
「『多国籍企業外貨資金集中運営管理規定(試行)』を印刷発行することに関する国家外貨
管理局の通知」(匯発[2014]23 号、2014 年 4 月 18 日公布、同年 6 月 1 日施行)
外貨管理局は 2012 年末に一部の多国籍企業について外貨資金集中運営管理の試行を開始し、
2014 年 2 月には中国(上海)自由貿易試験区においても同様の試みを実施していましたが 12、
企業、銀行、政府各方面からの反響が大きかったため、「『多国籍企業外貨資金集中運営管理規
定(試行)』を印刷発行することに関する国家外貨管理局の通知」を公布し、全国的な実施を開
始しました。これにより、直近 3 年間で重大な外貨関連法規違反のないこと、貿易外貨受取・
支払企業リスト内の企業であれば貨物貿易分類結果が A 類であること、前年度の外貨受取・支
払規模が外貨資金集中運営管理に参加する国内メンバー企業の合計が 1 億米ドルを超えること
等の条件(第 7 条)を充足する多国籍企業(又は単一企業集団)にその対象範囲が拡大されまし
た。
8
9
10
11
12
担保提供者の登記住所は国内、債権者と債務者の登記住所は国外のスキーム
担保提供者の登記住所は国外、債権者と債務者の登記住所は国内のスキーム
ただし、内保外貸について、非担保債務が賠償金額の上限が不明確なプロジェクトの竣工責任義務のように担保責任の上
限が合理的に予測できない場合には、担保契約締結後に外債登記を行わないことも可能ですが、その担保の履行時には外
貨管理局の審査を要します(マニュアル第 1 部第 8 条第 4 項)。
超過部分が外債枠をもっても不足する部分については無断対外借入れとして、外貨管理条例第 43 条に従い、警告、違法金
額の 30%以下の過料に処せられるおそれがあります。
「中国(上海)自由貿易試験区の建設を支持する外貨管理実施細則」、「試験区における多国籍会社本部による外貨資金集中
運営管理試行運営規程」
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法務
上記条件を満たした多国籍企業は、(ⅰ)国内外貨資金主口座、国際外貨資金主口座のいず
れか一つを選択して、又はこれらを同時に開設して、国内外のメンバー企業の外貨資金を集中
管理することや、経常項目の外貨資金の集中受取・支払、ネッティング決済等の業務を行うこ
とができるようになります(第 2 条、第 3 条、第 5 条)。また、(ⅱ)国際外貨資金主口座と
国外の口座間及び国内外貨資金主口座と国際外貨資金主口座間では相互の自由な振替が可能と
なるため、多国籍企業グループ内部の資金の剰余部分と不足部分を調整することが可能となり
ます(第 3 条第 2 項、第 16 条第 1 号第 3、同条第 2 号第 3)。ただし、国際外貨資金主口座と
国外の口座間の外債資金の振替については、限度額はないものの、外債契約締結後 15 営業日以
内、かつ、初回の外債資金の入金前に外債登記手続を行わなければなりません(第 19 条)。ま
た、国内・国外外貨資金主口座間の振替には限度額があり、(a)純流入額は、国内各メンバー
企業が有する使用可能外債額の合計 13 を超えてはならず 14、(b)純流出額は、国内メンバー企業
が集中した対外貸付限度額を超えてはならず、かつ、対外貸付限度額は原則として国内メンバ
ー企業の所有者権益の 50%を超えてはならないとされている点には留意が必要です(第 4 条、
第 20 条)15。さらに、(ⅲ)国内外貨資金主口座の直接投資項目下の外貨資金、外債は「意愿結匯」
方式(本稿 4(1)参照)により元転することができ、元転した人民元資金は主宰企業が対応して
開設した資本項目-元転後決済待ち口座に振り替えられ、真実性の審査を経た後で各メンバー
企業の経営範囲内において必要な支払に直接用いることができるものとされています(第 22 条)。
他方で、(ⅳ)経常項目取引の審査の面においては、税務届出表の提出が必要となるサービス貿
易等の項目に係る対外支払及び資金の性質が不明確で関連書類の提出が必要となる場合を除き、
経常項目の受取・支払、元転・外貨転手続等に係る銀行によるエビデンス審査は、「顧客を理解
する」、「業務を理解する」、「審査の職責を尽くす」等の原則に照らした手続で足りるようになり
ました(第 21 条)。ただし、リスク管理のための外貨管理局による多国籍企業の外貨収支情報、
集中受取・支払又はネッティング金額等の申告データ等に対する監督・管理はなお厳しいため、
本通知の規定する業務を行う企業は、申請時での提出は不要となったものの、当該業務の関連
証憑等について 5 年間は保存・管理し、検査に備える必要があります(第 21 条第 2 項、第 22
条第 2 項、第 24 条、第 25 条)。
次回は、「独占禁止法」、「労務」、「環境法」、「中国(上海)自由貿易試験区」関連の
2014 年の重要立法をご紹介いたします。
13
14
15
具体的には、国内各メンバー企業の集中可能な外債枠の合計=国内各メンバー企業の集中可能な外債枠の合計-中長期外
債発生額-短期外債残高-一部集中に参加する国内メンバー企業が留保している外債限度額となります(第 17 条)。
そのため、各メンバー企業は外債限度額の集中を申請した日から、自社の外債枠のうち集中させた部分に関しては使用が
禁止されるので注意が必要です(第 17 条、第 18 条)。
50%を超過する場合は、外貨管理局に対して申請し、その決定に従って手続をすることができます。
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法務
野村
高志
弁護士
西村あさひ法律事務所
カウンセル
上海事務所代表
早稲田大学法学部卒業。1998 年弁護士登録。2001 年より西村総合法律事務所に勤務。2004
年より北京の対外経済貿易大学に留学。2005 年よりフレッシュフィールズ法律事務所(上
海)に勤務。4 年半の中国滞在を経て 2010 年に現事務所復帰、2014 年より現職。
専門は中国内外の M&A、契約交渉、知的財産権、訴訟・紛争、独占禁止法等。ネイティブ
レベルの中国語で、多国籍クロスボーダー型案件を多数手掛ける。
2012 年~2014 年 東京理科大学大学院客員教授(中国知財戦略担当)。
主要著作に「中国での M&A をいかに成功させるか」(M&A Review 2011 年 1 月)、「模倣対策
マニュアル(中国編)」(JETRO 2012 年 3 月)、等多数。
Tel:86-21-6178-3748
Email:[email protected]
中島 あずさ
弁護士
西村あさひ法律事務所
北京事務所首席代表
早稲田大学商学部卒業。2002 年弁護士登録、2002 年~2010 年まで中国専門の日系法律事
務所に勤務、2010 年 6 月より西村あさひ法律事務所に勤務。2013 年 7 月より現職。
専門は中国における M&A、外商投資、中国会社法務、労務等。主要著作に「中国『外国投
資家投資商業分野管理弁法』の制定」(国際商事法務 2004 年 6 月)
、「工業用地の払下に関
する制度変更と外商投資企業設立への影響について」(国際商事法務 2007 年 8 月)
、「ネッ
ト販売に関する商務部の新通知とその解釈,運用について」(国際商事法務 2010 年 11 月)、
「中国における PE 課税(上)(下)」(Science Portal China 2013 年)など多数。
Tel:86-10-8588-8600
E-mail:[email protected]
六川
美里
弁護士
西村あさひ法律事務所
アソシエイト
2007 年中央大学法学部卒業。2008 年第一東京弁護士会登録、西村あさひ法律事務所に勤
務。2013 年 10 月から 2014 年 9 月までパナソニックチャイナ(上海)に出向。2014 年 10
月から 2015 年 3 月まで西村あさひ法律事務所北京オフィスにて研修予定。
専門は日本国内の M&A 及び会社法務全般等、並びに中国内外の M&A、中国現地法人の会社
法務等。
Tel:81-3-5562-8500
Email:[email protected]
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
税務会計
近藤公認会計士事務所
中国の移転価格実務
公認会計士
近藤 義雄
[email protected]
-マーケティング無形資産-
http://homepage2.nifty.com/kondo-cpa/
1. マーケティング無形資産と地域固有の優位性
2012 年 10 月に国連が発表した「発展途上国のための移転価格実務マニュアル」第 10 章(中
国実務)では、無形資産について次のように記載しています。
「無形資産は先進国と同様に発展途上国においても主要な問題となっている。先進国におけ
る多国籍企業は、卓越した技術の無形資産を有することが多いので、このような無形資産の価
値を現金化する目的で、早い速度で発展している発展途上国の市場と、これらの市場を発展さ
せるために発展途上国において子会社が貢献することを必要としている。発展途上国にとって
は、マーケティング無形資産と LSAs(地域固有の優位性)は密接に一体化されていることが多
く、発展途上国における子会社の貢献度に適切に報いる正当なリターン(報酬)が必要である。
」
中国では、マーケティング無形資産と地域固有の優位性は密接な関係にあり、これらによっ
て発生している多国籍企業の中国子会社の貢献度合に応じて正当なリターンが評価されていな
いのではないかと疑問を提起しています。
さらに、多国籍企業が提供する無形資産だけではなく、中国国内において形成される子会社
の無形資産を評価してその追加利益を算定すべきではないかと議論を展開しています。
「多国籍企業は中国で事業を設立するのに役立つように現地運営の初期段階で彼らの中国関
連会社に無形資産を提供することが多い。これらの無形資産は、世界的なブランド名、技術的
なノウハウまたはビジネス・プロセスのように様々な形を取っている。時間が経つにつれて、
現地中国関連会社は中国における運営から技術と経験を習得し、多国籍企業の当初の無形資産
の改善にまで貢献することもある。このようなシナリオでの問題は、現地中国関連会社は追加
の利益を得る資格があるべきではないかということであり、もしそうであるならば、追加利益
を算定する適切な方法は何かということである。」
ここで議論されていることは、多国籍企業が中国で事業を開始する初期の段階では、多国籍
企業の無形資産、例えばブランド、ノウハウ、ビジネス・プロセスのような無形資産が中国国
内の関連会社に提供されて中国国外の多国籍企業に商標権使用料、ロイヤルティ等の支払が行
われる。しかし、事業開始後の相当時間が経過した段階では、中国国内の関連会社が逆に新た
な無形資産を形成している可能性があり、その無形資産を評価してその追加的な利益は関連会
社の利益として計上すべきではないかということです。
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
税務会計
中国国内の関連会社が新たに形成する無形資産には、1 つにはマーケティング無形資産があり
ます。例えば、自動車産業の例示を紹介した文章の中には次のような内容が記載されています。
「中国の自動車産業において衝突する利害関係を有するパートナーによる 50:50 の合弁企業
にとって、中国の合弁パートナーは、一般的にその現地物流ネットワーク、現地市場について
の密接な知識と適切な市場アクセスで貢献している。」
ここでは、中国合弁企業の中国側パートナーが提供している現地物流ネットワーク、現地市
場への密接な知識、適切な市場アクセスが合弁企業の利益に貢献していると指摘しています。
なお、マーケティング無形資産については、インドの税務当局が重要な税務課題として特に
重視していますので、国連マニュアル第 10 章(インド)で記述されているマーケティング無形
資産の例示も紹介します。
1) 極めて大規模な広告、マーケティング、販売促進の支出を生じさせて、市場で知られてい
ない外国の商標やブランドの価値を高めること
2)
顧客の心の中にブランドと商品に対するロイヤルティを創造すること
3)
効果的なサプライチェーンを構築させること
4)
当該国における物流ネットワークを確立すること
5)
当該国におけるアフターセールスサービスとサポートネットワークを確立すること
6)
顧客と市場の調査を行うこと
7)
顧客データの収集と顧客リストの作成等
国連マニュアル第 10 章(中国実務)では、中国の販売業の例示を紹介した中で、次のように
マーケティング無形資産と地域固有の優位性に言及しています。
「販売、マーケティング、物流は、多国籍企業が発展途上国の貢献を過少評価することの多
いその他の機能である。中国の経験が示しているのは、多くの多国籍企業は中国の販売業者を
リスクが限定されている配送業者として取り扱っており、日本のような成熟した市場において
限定された機能を単純に行う配送業者を比較対象として使用していることである。
このようなアプローチには明らかに 2 つの欠陥があると言えよう。第 1 に、中国の事業体は
いわゆる比較対象より重要な多くの機能を遂行しているので、機能のプロフィールを表す用語
にミス・マッチが多いことであり、これは中国事業が販売に関連してより多くの重要な運営費
用が生じていることがその証拠である。
次に、市場の相違における差異を取り扱っていないことであり、中国は成長の速い経済で販
売努力が相対的により少なく求められるほどの強力な需要があり、したがって、高い効率性と
収益性を達成することができる。カントリー・プレミアムのようなその他の地域固有の優位性
と中国事業体によって創造されるマーケティング無形資産も無視されるのが一般的である。
」
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
税務会計
ここでは、中国の販売業者は重要な多くの機能を遂行しているので販売に関連する営業費用
の金額が多くなっており、マーケティング無形資産が形成されていること、さらには中国の市
場には急速な成長による強力な需要が存在しているので企業は高い効率性と収益性を達成して
おり、地域固有の優位性が存在していることが強調されています。
以上のように、中国においては、重要なマーケティング無形資産と地域固有の優位性が存在
するので、移転価格実務の中でこれらを識別して中国関連会社の利益に計上すべきであるとし
ています。その具体的な方法については次のように述べています。
「実務的には、中国税務当局は重要な現地マーケティング無形資産または地域固有の優位性
を認識する場合には、利益分割法(PSM)のような、より適切な移転価格算定方法を使用してこ
のような差異を調整するよう試みてきた。中国税務当局は、代替的に取引単位営業利益法(TNMM)
が使用される時には比較可能性の調整を行っている。例えば、比較対象企業の売上に対する運
営費用の比率の中央値が 7%に過ぎない場合で、納税者の同じ比率が 40%である場合には、初
めにロケーション・セービングが存在する範囲内でコスト・ベースを調整する。中国税務当局
は、次に、中国納税者の全体のリターンを導き出す中国納税者によって行われた特別な努力が
要求された追加利益を計算する。」
ここで議論されていることは、マーケティング無形資産または地域固有の優位性による追加
利益を算定する場合には、利益分割法(PSM)を使用するよう試みてきたが、その代替的方法と
して取引単位営業利益法(TNMM)を使用する場合には、比較可能性の調整として、ロケーショ
ン・セービングが存在する範囲内でコスト・ベースを調整するということです。
例えば、先進国の多国籍企業の平均コストが 150 で、中国の関連会社のコストが 150×40%=
60 である場合にはコスト節約は 150-60=90 であり、そのコスト節約による追加利益は、先進
国の比較可能な外国会社のフルコスト・マークアップ(フルコストに対する利益率)7%を適用
して、コスト節約 90×フルコスト・マークアップ 7%=6.3 となります。中国の関連会社の利益
に 6.3 が追加計上されます(『みずほチャイナマンスリー』2014 年 10 月号「中国の移転価格実
務-ロケーション・セービング-」の例示を参照)。
2. OECD の無形資産ガイダンス
①
無形資産の定義と範囲
OECD の「無形資産の移転価格的局面のガイダンス」
(無形資産ガイダンス、2014 年 9 月 16 日
発表)はまだ討論稿の段階であり、正式な内容が承認されるのは 2015 年 9 月までとされていま
すが、OECD の現時点での見解が述べられていますのでここで紹介します。
無形資産ガイダンスでは、現行の OECD 移転価格ガイドラインの無形資産の定義が大幅に拡大
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
税務会計
されています。無形資産の定義は会計目的上の定義でもなく、これまでの一般税務目的上の定
義でもなく、法律上の定義でもなく、移転価格目的に適合した定義に変更されています。
移転価格目的上の無形資産という用語は、有形財産または金融資産ではないものを指してお
り、商業的活動において所有するかまたは使用のために支配(コントロール)することができ
るものであり、かつ比較可能な状況において独立した当事者間取引で行われる使用または移転
で補償(対価)を受けるものをいいます。
移転価格目的上の無形資産は、会計目的上で定義された無形資産とは異なります。例えば、
会計上の無形資産は資産計上されるより費用化されることが多いのですが、移転価格目的上の
無形資産は会計上で費用化されていたとしても、重要な経済的価値を生み出していれば無形資
産として考慮する必要があります。
また、移転価格目的上の無形資産は一般の税務目的上の無形資産とも異なっており、一般税
務目的上の無形資産のように損金算入(費用計上)または資産の償却処理の如何によってのみ
判断されるものではありません。さらに、法律上、契約上で保護されるかどうか、または個別
に認識して移転できるかどうかという観点のみによって、移転価格目的上の無形資産として性
格づけられるものではありません。
移転価格目的上の無形資産は、ユニークかつ価値ある無形資産とされています。ここでユニ
ークな無形資産とは、移転価格目的上で比較可能な取引を探し出す時に、比較可能な取引の当
事者が使用するまたは利用可能な無形資産が比較可能ではないことをいいます。比較可能な取
引が存在していても、比較可能な無形資産が存在しないことがユニークな無形資産ということ
になります。
価値ある無形資産とは、製造、役務提供、マーケティング、販売、管理等の機能を遂行する
事業運営者が、無形資産がなかった場合に期待される利益に比べて、より大きな将来の経済的
利益を生み出すことが期待される無形資産をいいます。
すなわち、ユニークかつ価値ある無形資産とは、一般的に存在する無形資産ではなく、その
無形資産を使用することにより、より大きな将来の経済的価値が期待される無形資産をいいま
す。
無形資産ガイダンスでは、無形資産の例示として次のものを掲げています。
1)
特許権
2)
ノウハウと商業秘密(製造、マーケティング、研究開発等)
3)
商標(ユニークな名称、シンボル、ロゴ、絵)、商号、ブランド
4)
契約上の権利、政府の免許と許可(単なる登記は除く)
5)
ライセンスと類似の権利が制限された無形資産
6)
のれんと継続企業価値(ただし、補償の対価があるもの)
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2014 年12 月号
税務会計
無形資産ではないものの例示には次のものがあります。
A
グループ・シナジー(多国籍企業グループのシナジー効果)
B
市場固有の特徴
上記の市場固有の特徴については、次のように述べています。
「一定の市場の特定の特徴は、その市場における取引の独立企業間価格の条件に影響を与え
る場合がある。例えば、特定市場の家計の高い購買力は一定の贅沢な消費財のために支払われ
る価格に影響を与える場合がある。同様に、普遍的に低い労働コスト、市場への近接性、恵ま
れた気候条件、これらに類するものは、特定の市場における一定の商品とサービスのために支
払われる価格に影響を与える場合がある。しかしながら、このような市場固有の特徴は、所有
されまたは支配される能力はなく、したがって無形資産ではなく、要求される比較可能性分析
を通して移転価格分析において考慮されるべきものである。」
すなわち、市場固有の特徴は、無形資産の定義にある商業的活動において所有または使用す
るために支配(コントロール)する能力がないため、移転価格目的上の無形資産に該当しませ
ん。市場固有の特徴は、移転価格目的上では無形資産として取り扱わないで、比較可能性の調
整として考慮することになります。
国連マニュアルでいうロケーション・セービングと地域固有の優位性は、OECD 移転価格ガイ
ダンスでいうその他の現地市場の特徴と上記の市場固有の特徴に相当します。ロケーション・
セービングと地域固有の優位性は企業が所有または支配することができないものであり、これ
らの優位性が特定の取引について独立企業間価格の算定に影響を与える場合には、比較可能性
の調整として検討することになります。
②
マーケティング無形資産
無形資産ガイダンスでは、マーケティング無形資産は次のように定義されています。
「マーケティング活動と関連する無形資産で、製品またはサービスの商業化開発を目的とし、
および/または関連する製品にとって重要な促進的価値を有するものである。この文脈に従って、
マーケティング無形資産には、例えば、商標、商号、顧客リスト、顧客関係、ならびに顧客に
対するマーケティングおよび商品とサービスの販売に使用するかこれを目的とする所有財産と
してのマーケットデータと顧客データがある。
」
マーケティング無形資産については、次のように販売業者が単なる代理人である場合にはそ
の販売業者はマーケティング無形資産を有することなく、その追加報酬を受ける権利がないと
しています。
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2014 年12 月号
税務会計
「1 つの比較的に明確な事例は、販売業者が単に代理人として行動する場合であり、商標とそ
の他のマーケティング無形資産の所有者がその販売促進支出を支払い、かつその活動を指示し
かつコントロールしている場合である。この場合には、販売業者はその代理人の活動について
のみ適合する補償を受ける権利を有するのが通常である。販売業者は商標とその他のマーケテ
ィング無形資産の更なる開発と関連するリスクを負担していないしコントロールしていない。
したがってこれについての追加報酬を受ける権利はない。
」
これに対して、販売業者が商品の専属販売権を有し、かつマーケティング活動のコストを実
際に負担している場合には、遂行した機能、引き受けたリスク、使用した資産に基づいて、マ
ーケティング無形資産の価値増加に貢献した追加報酬を受け取る権利があるとしています。
「例えば、販売業者が商標の付いた商品の専属販売権を提供する長期契約を有する時には、
その売上とマーケットシェアによる商標とその他のマーケティング無形資産の価値を開発する
場合の遂行された機能、使用された資産、引き受けたリスクによる利益を獲得する能力を有す
る場合がある。このような場合には、販売業者の利益の割合は、独立した販売業者が比較可能
な状況において受け取るものに基づいて決定されなければならない。場合によっては、販売業
者は、類似の権利を有する独立した販売業者がその自身の物流活動の利益のために生じたまた
は行ったものを超える機能を遂行し、資産を使用し、リスクを引受ける場合があり、類似の状
況におかれているその他の流通業者/販売業者によって創造された価値を超える価値を創造し
ている場合もある。このような事例における独立した販売業者は、商標またはその他の無形資
産の所有者からの追加報酬を要求するのが典型である。このような報酬は、販売業者にその機
能、資産、リスクと予測された価値創造について補償するために、より高額の物流利益(商品
の購入価額の減額をもたらす)、ロイヤルティ料率の減額、または商標またはその他のマーケテ
ィング無形資産の価値を増加することに関連する利益の割合という形を取る可能性がある。
」
近藤
義雄
近藤公認会計士事務所
所長 公認会計士
早稲田大学大学院商学研究科の修士課程を卒業後、監査法人に勤務して公認会計士として登録、
上場会社等の監査業務に 23 年ほど従事した。1986 年から 2 年ほど北京の国際会計事務所に日本
人初の駐在員として勤務し、日系企業に幅広いコンサルティング業務を提供。帰国後に「中国
投資の実務」(東洋経済新報社 1990 年)を出版し、現在まで中国の投資、会計、税務分野の専門
書を 25 冊ほど出版。2001 年に近藤公認会計士事務所を開設して中国専門のコンサルティング業
務を提供している。
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
税務会計
中国における M&A 手法
MAZARS Mochizuki
-株式移転が存在しない背景と
パートナー
現物出資についての考察-
公認会計士
望月一央
http://www.mazars.com
中国と日本における M&A 手法の実務的比較については、根拠となる法制度の属する国の違い
もあり、あまりなされることがない。しかしながら、複数国・地域にまたがる企業再編が活発
に行われる環境を前提とした場合、比較を行うことで有機的に理解することは実務的に有用で
あると考えられる。
以上の観点から、中国における M&A 手法の基本的概念について、日本の制度との相違及びそ
の背景並びに実務的なポイントについてまとめてみたいと思う。
また、これらの内容は、その性質により、外延的内容が多く含まれることとなり、説明の中
には多分に私見が含まれる場合があることにつき、あらかじめご了承いただきたい。
中国における M&A 手法
中国における M&A 手法については、日本の制度と比較して、株式移転、株式交換等の様々な
手法を必要とする素地ができておらず、持分譲渡、資産譲渡等の伝統的な手法、またはその組
合せに基づき(ある種力技で)再編を行わざるを得ないものとなっている。これらについては、
現状、中国においては政府部門の批准が受けられることを前提として、再編行為に反対するス
テークホルダーからの意見表明、無効取消請求等の事例もほとんどないという状況がその素地
にあるものといえ、今後も当面はこのような傾向が続き、変化が起こることはないものと思わ
れる。
具体的に、中国の公司法では、合併、分割、増資、減資にかかわる規定を有するのみで、日
本の会社法に M&A 手法として、合併、分割、株式移転、株式交換、三角合併等の規定が設けら
れているのとは対照的であるといえる。
株式移転と現物出資
今回は、中国には存在しない株式移転という行為を通して、中国の M&A 手法について具体的
に見ていきたいと考える。
日本における株式移転
株式移転とは、一又は二以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社
に取得させることをいう。
この意義から分かるように、株式移転行為は株主ではなく会社が主体となる行為である点に
大きな特徴がある。日本では、それまで持株会社(株式(持分)を所有することにより他の活
動の事業活動を支配することを主たる事業とする会社)の設立を禁止してきた独占禁止法第 9
条の改正に伴い、持株会社の設立を容易にするために制定された制度といわれている。現物出
資との比較においては、「検査役」の検査が不要とされることがそのメリットとして説明され
ることが多い。
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
税務会計
中国における現物出資
金銭以外の財産をもってする出資をいい、対象となる財産には、現物、知的財産権、ノウハ
ウ、土地使用権等、金銭によって評価でき、かつ法に従い譲渡することができる金銭以外の財
産が含まれるとされている。また、労働役務、信用、自然人氏名、のれん等については、現物
出資財産には含まれないものとされている。
日本の制度においてもほぼ同様の意義とされ、対象となるものとしては、譲渡可能で、貸借
対照表上に資産として計上できる金銭以外の財産、と表現される。
まず、最初に疑問となるのは、持株会社(中国においては「控股公司」または「投資性公司」
と呼ばれる)制度の認められる中国において、その設立を容易にするといわれる株式移転の必
要性がない(または薄い)ことである。
これは、株主が高度に分散した日本の株式会社制度において、株主全員が自らの持分を現物
出資または会社新設及び事業譲渡等により持株会社を作ることが実務上不可能であるのに対し、
中国では国有企業等の集団所有企業はもとより民間経営企業においても、その出資者は企業オ
ーナーやその関係者等少数の人数に限られる有限公司形態が経済体制の大部分を占め、株式移
転という会社主体の制度をとる必要性が低いことが考えられる。同時に、仮にそのような要請
があったとしても、証券監督管理委員会、商務部門等の政府部門の批准が受けられることを前
提に、反対するステークホルダーからの意見表明、無効取消請求等の事例がほとんどないもの
として、現物出資または資産譲渡等の形態を組み合わせることにより、その目的を達成できる
ケースがほとんどであることがその背景としてあげられる。
現物出資割合
従前の中国公司法では、「全出資者の金銭出資金額は、有限責任会社の登録資本の 30%を下
回ってはならない。」と規定され、最低でも 30%以上の出資については金銭で行うことが義務
付けられていたが、2014 年 3 月施行の改正公司法により撤廃され、日本会社法と同様に、基本
的に現物出資割合にかかわる制限はないものとなっている。
ただし、のれん等の特定の財産については、現物出資財産には含まれないものとされている
ことから、一旦金銭出資を行い、当該金銭により現物を買い戻す(日本における事後設立)行
為により、当該規制を迂回する行為も比較的多く行われるものとなっている。
また、中国においては事後設立にかかわる規制は設けられておらず、現物出資割合にかかわ
る規制を迂回するだけでなく、後述する現物出資時に必要な評価手続も必要とされないため、
極めて柔軟な対応方法とされていた。
評価手続
中国における現物出資では、出資される金銭以外の財産について、価値評価を行い、財産を
事実調査しなければならず、高くまたは低く価値評価してはならないとされている。
一方で日本においては、出資される金銭以外の財産については、設立時に、現物出資をする
者の氏名又は名称、当該財産、価額、設立時発行株式の数といった内容を定款に記載しなけれ
ばならず、さらに、設立時増資時にかかわらず、その後、財産価額の相当性について調査報告
書を作成しなければならないとしている。
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2014 年12 月号
税務会計
持分による現物出資
また、持分による現物出資については、現物出資の対象となる持分について権利関係が明確
であり、権利能力が完全であり、法により譲渡可能でなければならないものとされている。
また、外商投資企業に対する持分出資では、以下の状況における持分は出資に用いることが
できないものとされている。
(一)持分会社の登録資本が全額払い込まれていない場合
(二)すでに質権が設定されている場合
(三)すでに法により凍結されている場合
(四)持分会社の定款で譲渡してはならないと約定している場合
(五)前期の外商投資企業聯合年検に規定によらず参加していないまたは合格していない外商
投資企業の持分
(六)不動産企業、外商投資性公司、外商投資創業(持分)投資企業の持分
(七)法律、行政法規又は国務院の決定には、持分会社の株主が持分を譲渡する場合に申請し
認可を受けなければならないと規定されているが、認可されていない場合
(八)法律、行政法規又は国務院の決定に、譲渡してはならないと規定されているその他の状
況
現物出資にかかわる課税関係
税務上の観点から現物出資を捉える場合、会社への金銭以外の財産の譲渡、及びこれに伴う
対価の当該会社持分の受領と捉えられることになる。従って、原則として、企業所得税(法人
税)及び増値税(付加価値税)上、現物出資は財産の譲渡取引として捉えられる。
中国の税制上、現物出資としてとりわけての概念は設けられておらず、原則として貨幣以外
の対価を受領する非貨幣性収入取引に区分されることになり、受領する財産の公正価値により
収入を計上することになるといえる。
また、再編における課税の繰延として認められる特殊性処理においても、同様に現物出資と
いう概念を設けておらず、現物出資は持分交付による資産買収または持分買収として捉えられ
る。
ここでは、以下の条件を満たすことにより、特殊性処理の申請が可能となる。
(一)合理的な商業目的を有し、納付税額の減少や免除、支払遅延を主要な目的としない
(二)被買収や合併、分割される部分の資産や持分比率が、規定する比率(75%以上)に合致
する
(三)企業再編後の連続する 12 ヵ月において、再編資産の元の実質性経営活動を変更しない
(四)再編取引対価における持分による支払金額が、規定する比率(85%以上)に合致する
(五)企業再編において持分による支払を取得した元の主要株主が、再編後の連続する 12 ヵ月
以内に、取得した持分を譲渡しない
これらの課税繰延は、租税回避目的を有しないことを前提として、安定的に実質的経営が継
続される再編取引について、持分交付によりなされる場合に認められるものと表現することが
できる。これは、日本の組織再編税制では会社法の概念を前提として税制適格要件が構築され
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MIZUHO CHINA MONTHLY
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税務会計
ているのに対して、中国税制においては租税法独自の観点から、取引・行為の類型ごとに課税
繰延要件が構築されているものといえる。また、日本の適格組織再編においては、原則として
移転資産に対する同一の法人支配の継続を基礎として、対価としての持分以外の交付禁止によ
り税制適格要件を構築している。これに対し中国においては、同一の法人支配の継続は要件と
されておらず、買収等組織再編の対象となる企業または事業の継続を基礎として、それに持分
交付を要件として認めているものと捉えることができる。従って、同一企業グループとはいえ
ない企業にも租税属性が引き継がれることとなり、これにより課税繰延が終了する段階での課
税が、売手から実質的支配が異なる買手に移転する可能性があるといえる。
従って、中国における特殊性処理の概念とは、ある意味で、自社株対価取引(中国では親会
社株式を対価とする取引は認めていない)にかかわる課税の繰延と捉えられることになる。
また、現物出資については、日本においても消費税課税が行われるのと同様に、中国増値税
法上みなし販売取引とされることにより、出資額に対して増値税領収書の発行を要し、増値税
の課税が行われる。
海外子会社を統括する中間持株会社の設立について
最後に、中国現地法人の持分を現物出資することにより、第三国に中間持株会社を設立する
場合を例に挙げてみてみる。
前述の通り、中間持株会社への持分交付による、中国現地法人持分の譲渡取引となるといえ
るが、まず、日本において同一法人支配の継続等を要件として、適格現物出資に該当するか否
かが問題となる。一般的には上述の通り、租税属性が移転することから、日本における課税機
会が失われる可能性があり、外国法人に対して日本国内にある資産等の移転は適格現物出資が
認められないとされている。しかし例外的に、外国法人の発行済み株式等の総数の 25%以上の
株式を移転する場合は、適格組織再編成の該当性は否定されないものとされ、課税の繰延が認
められることになっている。
次に、譲渡対象となる現地法人が所在する中国において、この現物出資は持分交付による中
国法人持分の譲渡行為となることから、原則として課税が行われることになり、特殊性処理の
要件に該当するか否かが問題となる。一般的には、譲渡対象現地法人の継続性及び持分交付の
要件が満たされることから、特殊性処理の要件を満たすことが多いものといえる。しかしなが
ら、合理的な商業目的を有し、納付税額の減少や免除、延払いを主要な目的としない等の主観
的要因を有する要件の証明が難しいこと等もあり、現時点における実務上は特殊性処理が認め
られず、公正価値によって課税されることが多くなっている。
以上のように、複数国・地域をまたぐ企業再編においては、各国の制度の相違とその本質的
要件の相違を踏まえて理解しておくことが、実務処理においても有効であるものといえる。
以上
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
税務会計
望月一央
MAZARS Mochizuki
玛泽諮詢(中国)有限公司/上海玛泽会計師事務所
パートナー
日本公認会計士
望月コンサルティングは 2014 年にフランス系国際会計事務所である MAZARS と統合
いたしました。
MAZARS は世界 71 ヵ国に 13,500 名のスタッフを有するワンファーム型国際会計事務
所であり、MAZARS 中国は上海、北京、広州、香港に総勢 700 名を擁し、今後も内陸
部へ事務所の開設を予定しております。また、アジア地域においては、インド、シ
ンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム、ミャンマー等に拠点を
有し、ワンファームならではの緊密な連携により複合的なサービスを提供しており
ます。
MAZARS – Homepage
http://www.mazars.com
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号
みずほ銀行の中国ビジネスネットワーク
みずほ銀行(中国)有限公司
◎ 上海本店
● 大連支店
● 青島支店
上海市浦東新区世紀大道100号
上海環球金融中心
21階(業務窓口)、23階(来賓受付)
遼寧省大連市西崗区中山路147号
森茂大厦23階、24階-A
Tel:(86-411)83602543
山東省青島市市南区香港中路59号
青島国際金融中心44階
Tel:(86-532)80970001
中国営業第一部・第二部
● 大連経済技術開発区出張所
遼寧省大連市大連経済技術開発区
紅梅小区81号ビル古耕国際商務大厦22階
Tel:(86-411)87935670
● 広州支店
● 無錫支店
● 武漢支店
江蘇省無錫市新区長江路16号
無錫科技創業園B区8階
Tel:(86-510)85223939
湖北省武漢市漢口解放大道634号
新世界中心A座5階
Tel:(86-27)83425000
Tel:(86-21)38558888(ex.2460)
中国営業第三部
Tel:(86-21)38558888(ex.1857)
中国アドバイザリー部
Tel:(86-21)38558888
中国営業開発部
Tel:(86-21)38558888
人民元国際化関連(ex.1219)
トレードファイナンス関連(ex.1220)
CMS関連(ex.1230)
シンジケーション関連(ex.1250)
外為関連(ex.1271)
その他商品(含債券)関連(ex.1203)
● 上海自貿試験区出張所
上海市浦東新区基隆路55号 上海国際信貿ビル7階
Tel:(86-21)38558888
● 北京支店
北京市朝陽区東三環中路1号
環球金融中心 西楼8階
Tel:(86-10)65251888
広東省広州市天河区珠江新城
華夏路8号合景国際金融広場25階
Tel:(86-20)38150888
● 深 圳 支店
● 蘇州支店
広東省深圳市福田区金田路
皇崗商務中心1号楼30楼
Tel:(86-755)82829000
江蘇省蘇州市蘇州工業園区
旺墩路188号建屋大厦17階
Tel:(86-512)67336888
● 天津支店
● 昆山出張所
江蘇省昆山市昆山開発区春旭路258号
東安大厦18階D、E室
Tel:(86-512)67336888
天津市天津経済技術開発区
新成東路20号濱海新区金融街
(東区)写字楼E2座ABC楼5階
Tel:(86-22)66225588
● 天津和平出張所
天津市和平区南京路75号
天津国際大厦1902室
Tel:(86-22)66225588
● 常熟出張所
江蘇省常熟高新技術産業開発区
東南大道333号科創大廈7階
Tel:(86-512)67336888
● 合肥支店
安徽省合肥市包河区馬鞍山路130号
万達広場7号写字楼19階
Tel:(86-551)63800690
みずほ銀行
○ 東京本店 中国営業推進部
○ 香港オフィス
○ 台中支店
東京都千代田区大手町1-5-5
Tel:(03)5220-8734
Fax:(03)3215-7025
金鐘道88號太古廣場2座17階
Tel:(852)21033000
台中市府会園道169号敬業楽群大楼
8階
Tel:(886-4)23746300
■ 南京駐在員事務所
江蘇省南京市広州路188号
蘇寧環球套房飯店2220室
Tel:(86-25)83329379
■ 厦門駐在員事務所
○ 九龍オフィス
九龍海港城永明金融大樓16階
Tel:(852)21025399
○ 高雄支店
高雄市中正三路2号国泰中正大楼12楼
Tel:(886-7)2368768
○ 台北支店
台北市敦化北路167号宏国大楼2楼
Tel:(886-2)27153911
福建省厦門市思明区厦禾路189号
銀行中心2102室
Tel:(86-592)2395571
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MIZUHO CHINA MONTHLY
2014 年12 月号