2013 年 10 月 こ の 号 の 内 容 超低静止電流(1.3µA)の 15V 昇降圧コンバータ 15 1 つのインダクタで正の入力電圧 を負の出力電圧に変換する反転 型 DC/DC コントローラ 20 第 23 期第 3 号 実装が容易で性能が保証される、 240MHz での OIP3 が 47dBm/50dBm の RF/IF アンプ Greg Fung 低照度での太陽電池チャージャ 効率の向上 24 AC24V および AC12V の 照明装置でハロゲン球を LED に置き換え 28 スマートフォン、テレビ、 GPS、Wi-Fi を介して伝送されるデータ量に対する需 要は増大する一方なので、通信インフラの限られた帯域幅はほぼ容量いっぱい になっています。この需要の増加に応えるため、通信機器の設計者は、増える 一方のデータを限られた帯域幅に押し込むシステムを開発しますが、データレー トの改善には代償が伴います。送信と受信のためのシグナル・チェーンにこれ までよりも高い忠実度が必要になってくるのです。 アンプに関して言えば、元の信号を劣化させずに信号を忠実 に再生するには低いノイズと高い直線性が必要です。信号の 電力が小さいときは、不要なノイズのレベルを十分に低くして、 目的の信号をノイズフロアより高くする必要があります。信号レ ベルが高いときは、アンプは不要な高調波と相互変調積によっ て目的の信号がマスキングされないようにする必要がありま す。LTC®6431-15 および LTC6430-15 は、これらの二つの 目標をともに達成しています。 LTC6431-15 および LTC6430-15 は、非常に高い OIP3(直 線性)と非常に低いノイズ特性を備えた 2 つの固定利得アンプ です。LTC6431-15 が 50W 負荷を直接駆動できるシングルエ ンドの無線周波数(RF)/ 中間周波数(IF)利得ブロックである のに対して、LTC6430-15 はより大電力で線形帯域幅がさらに 広い RF/IF 差動利得ブロックです。これらの利得ブロックは最 高水準の性能と使いやすさを兼ね備えています。バイアス、イ ンピーダンス整合、温度補償、および安定性をデバイス内部で 処理することで、実装の難しさを解消しています。 LT®3795 LEDドライバは LED のちらつきを発生させずに EMI のピーク値を低減します。12 ページを参照。 www.linear-tech.co.jp (4 ページへ続く) LTC6431-15 は 240MHz で標準 47dBm の OIP3 特性を誇ります。相 互変調積(IM3)が目的の信号を妨害しないように、実質的には IM3 を ノイズフロアより低いレベルに抑えています。 (LTC6430/1-15、1 ページからの続き) 通信システムの感度が制限されます。通信シス OUTPUT 単一トーンを入力する と、出力に高調波が発 生します。 テム内のノイズ特性はノイズフィギュア(NF)で 評価しますが、これは出力での信号対ノイズの NONLINEAR AMP FUNDAMENTAL SOURCE LOAD x2 y = a1x + a2 FREQUENCY AMPLITUDE 入力信号レベルが低いときは、ノイズによって INPUT 図 1.非線形デバイスに AMPLITUDE 低入力信号対応の低ノイズフィギュア x3 + a3 FUNDAMENTAL 2ND ORDER 3RD ORDER FREQUENCY 電力比を入力での信号対ノイズの電力比で割っ た値をデシベルで表したものです。アンプの入 OUTPUT 2 つのトーンを入力する どの程度信号に加えるかを示す指標です。アン と、出力に相互変調積が プの NF は 0dB であるのが理想ですが、実際の 発生します。 NONLINEAR AMP MULTIPLE TONES SOURCE アンプでは必ずノイズが加わるので、ノイズに y = a1x + a2x2 + a3x3 FREQUENCY よる性能低下を最小限に抑えることが目標にな LOAD AMPLITUDE 幅されます。NF はアンプ自体が不要なノイズを INPUT 図 2.非線形デバイスに AMPLITUDE 力には常にノイズがあり、目的の信号とともに増 UNDESIRABLE IM3 PRODUCTS 2ND ORDER FREQUENCY ります。標準的な IF アンプのノイズフィギュアは 3dB∼12dB で す。LTC6431-15 と LTC643015が示すNFはどちらも240MHzで3.3dBです。 たとえば、非線形アンプに単一のトーン(単音) 注入すると、結果は目的の 2 つのトーンと数多く を注入すると、得られる結果は目的のトーンとそ の不要なトーンのはるかに複雑な混合信号とな の高調波となります。通常、これらの高調波は目 り、これには 2 つのトーンの高調波、2 つの入力 直線性は、特定の周波数領域で目的の信号を 的のトーンと周波数が大きく異なるのでフィルタ トーンの和と差、およびその他の相互変調積が 不要な信号から切り離す能力を制限します。入 で除去できます。非線形アンプに 2 つのトーンを 含まれます。 優れた OIP3 による IM 積の抑制 力信号レベルが高いと、目的の信号はノイズフ ロアよりはるかに高いレベルまで上昇するので、 ノイズはそれほど問題ではありませんが、アンプ 80 の直線性は次第に重要になります。 60 10 OIP3 IN dBm 0 20 –10 DESIRED TONE 0 –20 –40 –60 –80 IM3 PRODUCT –40 –50 –60 –80 –120 図 3.出力 3 次インターセプト・ポイント (OIP3) –30 –70 –100 –140 10 20 30 –30 –20 –10 0 INPUT POWER (dBm) DESIRED SIGNAL –20 AMPLITUDE (dB) OUTPUT POWER (dBm) 40 –90 40 50 –100 200 210 220 230 240 250 260 270 280 FREQUENCY (MHz) 図 4.LTC6431-15 は 240MHz で 47dBm の OIP3 特性を誇 ります。2トーン信号の IM3 積が目的の信号を妨害しないよう に、実質的には IM3 積をノイズフロアより低いレベルに抑えて います。 4 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation 設計特集 シングルエンドの LTC6431-15 は、フィルタの損失を補う IF アンプとして優れており、 バラン・トランスと組み合わせて使用した場合は A/D コンバータ・ドライバとして優れ ています。LTC6431-15 は帯域幅が広いので、CATV 帯域全体をカバーできます。 Z1 Z2 Z1 INPUT MATCH 図 5.入力および出力への整合回路網の追加 で、 OIP3 は非常に良好です。妨害信号または Z2 隣接チャネルが近い周波数にある場合、IM3 積 OUTPUT MATCH INPUT Z = 50Ω OUTPUT Z = 50Ω TRADITIONAL RF AMPLIFIER f = 240MHz の最小化は特に重要です。図 3 は、 IM3 積が目 的のトーンの 3 倍速く増加することを示していま す。このため、アンプが目的の信号を歪ませず に処理できる許容出力電力、したがって入力電 力は制限されます。 相互変調(IM3)積(2f1 – f2 および 2f2 – f1)は、 アンプの直線性は、ほとんどの場合、 3 次出力 これらの不要トーンの一部であり、特に厄介で インターセプト・ポイント(OIP3)によって特 す。IM3 積は目的の信号の周波数の非常に近く 性 が 評 価されます。OIP3 は IM3 積 の 電 力 が に存在することがあるので、フィルタで除去する 基本波の電力と交差する仮定の点(図 3)です。 ことはほとんど不可能です。 LTC6431-15 が示す IM3 積は非常に小さいの ノイズ(NF で評価)は入力信号の振幅が小さい ときのアンプの感度を制限するのに対して、直 線性(OIP3 で評価)は入力信号の振幅が大きい ときの感度を制限します。これら 2 つの測定項目 (NF および OIP3)を総合して、特定の信号に 対するアンプの有益なダイナミックレンジを定義 します。 図 6.シングルエンドの IF アンプ 5V VCC = 5V 1000pF RF CHOKE, 560nH 1000pF LTC6431-15 RSOURCE 50Ω RLOAD 50Ω 20 54 15 50 10 MAGNITUDE (dB) OIP3 (dBm) 46 42 38 34 0 –5 –10 –15 –20 30 26 S PARAMETER S11 S21 S12 S22 5 –25 200 0 400 600 FREQUENCY (MHz) 800 LTC6431-15 の OIP3 と周波数 1000 –30 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 FREQUENCY (GHz) 2 LTC6431-15 の S パラメータと周波数 図 7.LTC6431-15 の 100MHz∼1700MHzシングルエンド評価回路と性能 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 5 LTC6430-15 は、高速、高分解能 A/D コンバータの A/D コンバータ・ドライバとして 優れています。これらのアプリケーションでの課題は、バッファのない A/D コンバータ の入力を要求された入力電圧レベルまで駆動する一方で、 A/D コンバータの信号対 ノイズ比(SNR) とスプリアス・フリー・ダイナミックレンジ(SFDR)を維持することです。 図 8.広帯域差動 14 ビット A/D コンバータ・ 高い直線性により最も困難な通信上の問題を VCM 5V ドライバの簡略回路図 560nH 0402AF 60pF GUANELLA BALUN 1:1 1nF VCC = 5V 150Ω 解決 49.9Ω LTC6431-15 は 240MHz で 標 準 47dBm の OIP3 特性を誇ります。IM3 積が目的の信号を 1nF 妨害しないように、実質的には IM3 積をノイズ • • フロアより低いレベルに抑えています(図 4)。さ 350Ω 100nH 0402CS LTC6430-15 LTC2158 ら に は、LTC6430-15 は 240MHz で 50dBm というOIP3 特性を備えています。これら 2 つの アンプは、 3.3dB の NFと組み合わされることに よって、どちらも非常に広いダイナミックレンジ 200ps を示します。大小いずれの信号レベルでも高い 忠実度を維持することにより、高データレートと いう課題に対応しているのです。 実装が容易 RF/IF 利得段を実装するのは、これまで必ずし も容易ではありませんでした。昔から、設計者は まず回路のバイアスを検討する必要がありまし た。LTC6431-15 の内部バイアス回路で必要 な電流は 5V 単電源でわずか 90mA であるのに 対して、LTC6430-15 に流れる電流は 5V 単電 源で 160mA です。 内部バイアス回路は、直線性の最大値に合わせ 図 9.LTC6430-15ドライバと てデバイスの動作点を最適化します。温度補償 LTC2158-14、デュアル 14 ビット A/D コンバータの複合評価回路 回路は、環境の変化に関わらず性能を維持し、 高温での電流の暴走を防ぎます。これらのデバ イスには電圧レギュレータが内蔵されており、電 源電圧の変動による性能の変化が最小限に抑え 1000pF 60pF 0.1µF 1000pF 1:1 BALUN GND DNC T_DIODE LTC6430-15 DNC を最小限に抑えるため、入力と出力でインピー –OUT 1000pF 560nH 348Ω BALUN = MaCom 1:1 TRANSFORMER MABA-007159 6 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation 1000pF 0.1µF VCC = 5V VCM ダンスも整合している必要があります。これは LTC2158-14 従来から時間のかかる繰り返し作業です。通 AIN+ AIN– DNC DNC –IN GND DNC 60pF 1000pF RF/IF アンプは、電力の伝送を最大にして反射 1000pF 120nH 0402CS DNC DNC DNC –IN 0.1µF 49.9Ω +OUT DNC VCC 100Ω DIFFERENTIAL 560nH DNC DNC VCC DNC DNC GND +IN +IN 348Ω GND 49.9Ω られます。 GND 常、設計者は入力と出力に回路網を追加して、 アンプのインピーダンスをシステムのインピー ダンス(通常 50Ω)に整合させる必要があります 設計特集 図 10.LTC6430-15 と LTC2158 のドライバ /A/D コンバータ複合ボードの 500MHz 単一トーン SFDR および SNR(SNR = 61.5dB、 SFDR = 75.7dB) (図 5)。これらの整合回路網を追加した結果、 今度はアンプの NFと OIP3 が変化します。妥当 なインピーダンス整合を実現するため、多くの 場合は NFと OIP3 が悪化することになります。 LTC6431-15 と LTC6430-15 の 2 つのアンプ は、入力と出力のインピーダンスを 20MHz∼ 1700MHz の帯域で内部整合されているので、 設計が簡単になると同時に NF および OIP3 が 維持されます。シングルエンドの LTC6431-15 は入力と出力が50Wに整合しているのに対して、 図 11.LTC6430-15 と LTC2158 のドライバ /A/D コンバータ複合ボードの IM3 積の 500MHz 2トーン測定 LTC6430-15 は入力と出力で 100Wの差動イン (低い方の IM3 = –101dBfs、 ピーダンスに内部整合しています。これにより、 高い方の IM3 = –102dBfs) これらのデバイスは整合素子を追加することな く、さまざまなアプリケーションに容易に実装で きます。 保証された安定性と性能 LTC6431-15 および LTC6430-15 は、当社の アプリケーション回路に実装した場合には、無 条件で安定しています。LTC6431-15のAグレー ド・バージョンは、240MHz での OIP3 特性を 個別に測定して、最小で 44dBm の OIP3 を保証 しています。同様に、LTC6430-15 の A グレー ド・バージョンは、240MHz での OIP3 特性を 個別に測定して、最小で 47dBm の OIP3 を保証 表 1.A/D コンバータ・ドライバ評価回路の全周波数での結果の要約 しています。 LTC6430/LT2158 複合回路 LT2158A/D コンバータ単独 新しい種類の RF アンプ 周波数(MHz) 1M SFDR SNR 1M SFDR SNR リニアテクノロジーには、ノイズと歪みを最小限 250 -87 73.8 63.1 -95 78 66.5 に抑えて低周波信号を処理する優れたオペアン 300 -86 77.5 62.8 -94 78 65.5 400 -87 75.0 62.3 -92 78 64.5 500 -101 75.7 61.5 -84 70 63.0 きませんが、最大 2GHz までの信号を増幅する 600 -88 72.0 60.7 -88 62.5 62.5 ことができます。オペアンプは、通常、200MHz 700 -92 67.5 60.0 -86 62.0 61.0 800 -94 84.0 59.5 -85 61.5 60.0 900 -82 73.0 58.6 -80 61.0 59.0 1000 -85 61.4 58.1 -83 60.5 58.0 プ方式のアンプを生み出してきた長い歴史があ ります。LTC6431-15 および LTC6430-15 は、 オペアンプのように DC 信号を増幅することはで を超える周波数で動作することは出来ません。 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 7 LTC6430-15 は、適切な 2:1 バラン・トランス対を使用して、低ノイズ、低歪みで広帯域の 増幅を実現します。この平衡構成では、アンプは入力と出力で 50Ω に整合しています。平衡 構成には、マルチオクターブの広帯域アプリケーションでは非常に重要な 2 次の歪みを抑圧 できるという利点もあります。 BALUN_A = ADT2-1T FOR 50MHz TO 300MHz BALUN_A = ADT2-1P FOR 300MHz TO 400MHz BALUN_A = ADTL2-18 FOR 400MHz TO 1300MHz ALL ARE MINI-CIRCUITS CD542 FOOTPRINT R2 350Ω DNC DNC –OUT DNC GND DNC –IN C2 1000pF C5 1000pF ます。したがって、RF アンプ・ソリューションで 設定する必要があります。電圧帰還オペアンプ は全体的なノイズおよび直線性が良好になりま の利得を高くすると、その動作帯域幅はますま す。LTC6430-15 および LTC6431-15 の 2 つ す狭くなります。これに対して、当社の RF 方式 のアンプは、DC 結合性能を必要としない AC アンプの利得は 15dB の固定電力利得を持って 信号アプリケーションの優れた解決策です。 PORT OUTPUT RFOUT 50Ω, SMA L2 560nH C6 0.1µF VCC = 5V OPTIONAL STABILITY NETWORK オペアンプでは、通常は負帰還をかけて利得を います。RF ソリューションには利得調整を行う • • 100Ω DIFFERENTIAL C4 1000pF BALUN_A DNC DNC C3 1000pF T2 2:1 T_DIODE LTC6430-15 DNC C8 60pF DNC GND DNC BALUN_A VCC +OUT DNC DNC 100Ω DIFFERENTIAL RFIN 50Ω, SMA L1 560nH DNC VCC T1 1:2 DNC R1 350Ω +IN PORT INPUT C7 60pF GND C1 1000pF GND 図 12.入力 / 出力が 50Ω の平衡アンプ LTC6430-15 の差動アプリケーション LTC6430-15 の入力および出力を差動で構成 した回路は、さまざまなシステム・アプリケーショ ンに応用することができます。以下の例では、 LTC6430-15 の直線性、低ノイズで広帯域の 性能が実証されています。 機能はありませんが、使用できる帯域幅はオペ LTC6431-15 によるシングルエンド 50Ωアンプ アンプが使用可能な帯域幅を大幅に超えてい シングルエンドの LTC6431-15 は、多くのアプ 最初の例では、その差動出力が A/D コンバー ます。 リケーションにとって理想的な解決策です。フィ タの差動入力にぴったりとつながっています。 ルタの損失を補うIF アンプとして優れており、バ LTC6430-15 は、内部で入力 / 出力が 100W の オペアンプ は 高 インピ ーダンス の 負 荷 を 駆 動 する 目 的 で 設 計 され て い る の に 対して、 LTC6430/31 アンプは 50Ω 負荷を駆動可能で あり、広い周波数範囲(20MHz∼1700MHz) にわたって実際の電力を供給できます。オペア ラン・トランスと組み合わせて使用した場合は 差動インピーダンスに整合しています。100W A/D コンバータ・ドライバとして優れています。 は、高速 A/D コンバータを駆動するのに都合の LTC6431-15 は帯域幅が広いので、 CATV 帯 良いインピーダンスです。次に、平衡構成で 2:1 域全体をカバーできます。 のバラン・トランスを使用した場合、LTC6430- ンプとは異なり、この RF 重視の設計ではイン 図 6 にシングルエンド IF アンプを示し、図 7 に ピーダンス整合を内部で行うので、入力にも出 LTC6431-15 の 100MHz∼1700MHz 用の評 力にも終端抵抗が不要です。入力に終端抵抗を 価ボードと性能を示します。 取り付けるとノイズが増加し、出力に終端抵抗 を取り付けると負荷に供給される電力が減衰し 8 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation 15 は 50W に対して低歪みで広帯域の増幅を実 現します。最後に、1.33:1 のバラン・トランスを 使用した場合、 LTC6430-15 は 75W のシステ ムに整合して、CATV の全帯域で広帯域増幅を 実現できます。 設計特集 ひとつのバラン・トランスで LTC6430-15 の全動作帯域をカバーできるものは存在しません。リニアテクノ ロジーは、このアンプが目指す帯域幅をカバーする評価回路をいくつか用意しています。これらの評価回路 では、ベンチ特性評価を簡単にするため、入力と出力を 50Ω に変換しているので、LTC6430-15 をバラン・ トランスなしの純粋な差動アプリケーションで使用した場合の性能を示しています。 図 13.図 12 に示す平衡アンプの評価回路:50MHz∼300MHz(ADT2-1T バラン) 54 15 10 50 MAGNITUDE (dB) OIP3 (dBm) 46 42 38 34 0 –5 –10 –15 –20 30 26 S PARAMETER S11 S21 S12 S22 5 –25 0 100 200 300 FREQUENCY (MHz) 400 –30 500 0 100 200 300 400 500 FREQUENCY (MHz) 600 700 図 14.図 12 に示す平衡アンプの評価回路:300MHz∼1100MHz(ADTL2 バラン) 20 50 15 46 10 MAGNITUDE (dB) OIP3 (dBm) 42 38 34 0 –5 –10 –15 –20 30 26 S PARAMETER S11 S21 S12 S22 5 –25 0 200 400 600 FREQUENCY (MHz) 800 –30 1000 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 FREQUENCY (GHz) 2 図 15.図 12 に示す平衡アンプの評価回路:200MHz∼1500MHz(TCM2-43X バラン) 50 15 10 46 5 MAGNITUDE (dB) OIP3 (dBm) 42 38 34 –5 –10 –15 –20 30 26 S PARAMETER S11 S21 S12 S22 0 –25 0 0.25 1 0.5 0.75 FREQUENCY (GHz) 1.25 1.5 –30 0 100 200 300 400 500 FREQUENCY (MHz) 600 700 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 9 ケーブルテレビはアンプに対して特有の課題を与えます。チャネル数が多いので 3 次の直線性に 優れていることが要求され、多オクターブ環境であるため、2 次成分も抑圧する必要があります。 LTC6430-15 は、1 対の 1.33:1 バラン・トランスを使用してデバイス固有の 100Ω 差動インピー ダンスを 75Ω に変換することで、これらの課題を克服しています。 A/D コンバータ・ドライバ C1 0.047µF DNC ことです。図 9 に示す評価回路での性能結果で ト、 310Msps のデュアル A/D コンバータ)をそ の全入力帯域幅にわたって駆動し、SFDR およ MINI-CIRCUITS 1:1.33 • 100Ω DIFFERENTIAL DNC VCC DNC DNC DNC GND DNC –OUT 示すように、LTC6430-15 は LTC2158(14 ビッ BALUN_A = TC1.33-282+ FOR 50MHz TO 1000MHz T2 1.33:1 C4 0.047µF C5 1000pF • BALUN_A DNC C2 0.047µF C3 0.047µF T_DIODE LTC6430-15 DNC BALUN_A DNC +IN GND DNC バータの信号対ノイズ比(SNR)とスプリアス・ フリー・ダイナミックレンジ(SFDR)を維持する 100Ω DIFFERENTIAL RFIN 75Ω, CONNECTOR +OUT DNC DNC 力電圧レベルまで駆動すると同時に、A/D コン L1 560nH DNC VCC のない A/D コンバータの入力を要求された入 T1 1:1.33 GND これらのアプリケーションでの課題は、バッファ PORT INPUT –IN タの ADCドライバとして優れています(図 8)。 GND LTC6430-15 は、高速、高分解能 A/D コンバー PORT OUTPUT RFOUT 75Ω, CONNECTOR L2 560nH C6 0.1µF VCC = 5V び SNR の低下を非常に小さく抑えることができ ます(図 10)。 図 16.75Ω 入力および 75Ω 出力の 50MHz∼1000MHz CATV プッシュプル・アンプ 表 1 は、この高速、 高分解能 A/D コンバータ の SNR および SFDR の低下が最小限であるこ とを示しています。LTC6430-15 の高い直線性 のは存在しません。リニアテクノロジーは、この (図 10 および 11)と低ノイズにより、設計者は アンプが目指す帯域幅をカバーする評価回路 A/D コンバータ入力でのフィルタリングを最小 をいくつか用意しています(図 13∼15)。これら 限に抑えて A/D コンバータを駆動することがで の評価回路では、ベンチ特性評価を簡単にする きます。すべての測定は整合回路網の調整をす ため、入力と出力を 50Ω に変換しているので、 ることなく、 1 つのアプリケーション回路で行わ LTC6430-15 をバラン・トランスなしの純粋な れています。このことは、 LTC6430-15 の広い 差動アプリケーションで使用した場合の性能を 帯域幅と直線性性能を実証しています。 示しています。 50Ω 負荷を駆動する平衡増幅器 その結果により、目的の周波数における正しい LTC6430-15 は、適切な 2:1 バラン・トランス 対を使用して、低ノイズ、低歪みで広帯域の増 幅を実現します(図 12)。この平衡構成では、ア ンプは入力と出力で 50Ω に整合しています。平 衡構成には、マルチオクターブの広帯域アプリ ケーションでは非常に重要な 2 次の歪みを抑圧 バラン・トランスを選ぶことの重要性が分かりま す。バラン・トランスは帯域幅が限られているの で、 LTC6430-15 の性能を制限します。まとめ ますと、これら 3 つの平衡回路は LTC6430-15 で得ることのできる直線性および広い帯域幅を 示しています。 CATV アプリケーション CATV アプリケーションは、LTC6430-15 の汎 用性を示す最後の例です(図 16)。ケーブルテ レビはアンプに対して特有の課題を与えます。 多くの場合、取り扱う周波数帯域は 4 オクター ブを超えるので、アンプは 75Ω の環境に対して 平坦な利得とインピーダンス整合が必要です。 チャネル数が多いので 3 次の直線性に優れて いることが要求され、多オクターブ環境である ため、 2 次高調波成分も抑圧する必要がありま す。LTC6430-15 は、1 対の 1.33:1 バラン・ト ランスを使用してデバイス固有の 100Ω 差動イ ンピーダンスを 75Ω に変換することで、これらの 課題を克服しています(図 17)。 2 次および 3 次の歪みが小さく低ノイズで利得 できるという利点もあります。 が平坦であることから、この回路は CATV の要 残 念 な がら、 ひとつ の バ ラン・トラン スで わずか 800mW で済みます。 LTC6430-15 の全動作帯域をカバーできるも 10 | 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation 求に対応できる上に、 5V 電源での消費電力は 設計特集 他 の RF 利 得 ブ ロックが GaAs トラン ジスタを 使 用して 製 造 さ れ て いる のと比 較して、 LTC6431-15 および LTC6430-15 は高性能 SiGe BiCMOS プロセスを使用して製造されてい ます。シリコンベースのプロセスを使用すると、同程度の GaAs プロセスよりも再現性が向上 します。BiCMOS プロセスを採用することにより、リニアテクノロジーでは歪み消去、バイアス 制御、および電圧レギュレータの各機能をデバイスに組み込むことができます。 シリコンベースのプロセスによる再現性の向上 他の RF 利得ブロックが GaAsトランジスタを使 用して製造されているのと比較して、LTC6431- 15 お よ び LTC6430-15 は 高 性 能 SiGe BiCMOS プロセスを使用して製造されていま す。シリコンベースのプロセスを使用すると、同 程度の GaAs プロセスよりも再現性が向上しま す。BiCMOS プロセスを採用することにより、リ ニアテクノロジーでは歪み消去、バイアス制御、 および電圧レギュレータの各機能をデバイスに 組み込むことができます。 図 17.LTC6430-15 50MHz∼ まとめ 1000MHz CATV 評価回路および 性能結果 最 新 の 通 信 標 準 の 要 求 を 満 たし、 RF/IF 設 計 を 簡 略 化 するた め、 LTC6431-15 お よ び 50 MAGNITUDE (dB) OIP3 (dBm) 38 34 0 –5 い条件で性能を保証されています。n –10 –15 –20 30 –25 0 0 200 400 600 FREQUENCY (MHz) 800 –30 1000 –20 NOISE FIGURE (dB) –40 –50 –60 –70 –80 –90 HD2 AVG HD3 AVG 0 200 400 600 FREQUENCY (MHz) 0.25 1 0.5 0.75 FREQUENCY (GHz) 1.25 1.5 5 –30 –100 0 6 VCC = 5V T = 25°C POUT = 8dBm/TONE –10 HD2 & HD3 (dBc) います。これらは使いやすく汎用性があり、幅広 S PARAMETER S11 S21 S12 S22 5 42 –110 最高のノイズ性能および直線性性能を達成して 10 46 26 LTC6430-15 は、最小の DC 電力損失でクラス 15 800 1000 4 3 2 VCC = 5V T = 25°C INCLUDES BALUN LOSS 1 0 0 200 400 600 FREQUENCY (MHz) 800 1000 2013年10月: LT Journal of Analog Innovation | 11
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