西室社長記者会見要旨 日 場 会 時:平成18年12月19日(火) 午後2時00分∼午後2時45分 所:東証 ARROWS プレゼンテーション・ステージ 見 者:代表取締役社長 西 室 泰 三 西 室 皆さん、こんにちは。 本日、お話しする件につきましては、テーマが1点だけ。その他この 週末以来いろいろとございましたので、それはご質問に答えられる範囲 でお答えすることにしたいと思います。 さて、この9月にも中間的な報告をさせていただきましたけれども、本 日、次世代売買システムの開発をお願いするベンダーさんを最終的に決 定いたしましたので、ご報告したいと思います。 次世代システムの開発ベンダーの選定に当たりましては、このシステム そのものが証券市場という極めて公共財の高いインフラの、その根幹を なすシステムであるということから、その重要性に鑑みて、コンペティ ションを国の内外を問わず、広くオープンに実施することにしました。 選定作業につきましては、8月以降、段階的に進めてまいりましたけれ ども、今般、最終的に富士通株式会社に開発をお願いすることに決定い たしました。 9月にお話しましたときは、 「書類審査」の段階で、5つのグループに 絞り込んだというところまでだったかと思います。その後は、5つのグ ループのそれぞれから提案書を受領しまして、まず、ご提出いただいて いる提案書の記載内容そのものが、私どもの依頼事項を網羅しているか どうかを確認した上で、このプロジェクトについて充たすべき機能の優 先付けに従って各項目に点数をつけて、総合的な評価を行いました。そ こで一旦、5つのグループから2つのグループに絞り込みを行ったわけ であります。その上で、より細かな部分の調整を行い、プロジェクトの 責任者となられる予定の方々、これは非常に重要な部分でございますの で、具体的なプロジェクト責任者との面談も行い、さらに審査をブラッ シュ・アップして、最終的な決定に至りました。 とりわけ、高速性の実現、あるいは高速性と信頼性の両立といった、特 に先進的な高度な技術力が求められる項目につきましては、私どもだけ ではなくて、外部の有識者にも評価にご参加いただいたわけであります。 そういうことによって、我々としては、慎重な上にも慎重な判断を行う 1 ことに努めてまいりました。 この次世代システムに関しましては、本年3月に欧米の取引所を視察す ることから始まって、その前に遡れば、2月1日付で鈴木さんというC IOを我々の経営陣に参加していただくということがございました。そ の後、今申し上げた欧米の取引所の視察その他、着実に準備を進めてま いりました。本日、いよいよ開発ベンダーも決定いたしまして、私ども としましても、目標として定めております2009年後半の稼働に向け て、今まさに決意を新たにいたしているところであります。 今後は、速やかに設計工程に着手することになりますけれども、費用面 に関しましても、来年6月には開発に要する総費用を確定させたいと思 っております。現在の見通しでは、私どもの予定しております金額の範 囲内におさまるようなプロジェクトに仕上がると期待をいたしておりま す。 ベンダーに決定いたします富士通株式会社さんからは、このプロジェク トそのものを「社長直轄のプロジェクトとして、全社を挙げて次世代シ ステムの開発に取り組みます」という決意表明をいただいておりますと 同時に、社内的には、正式な名称はわかりませんけれども、事業部レベ ルの新組織をあえてお作りになられて、このプロジェクトを進めていく と伺っております。 私どもとしましても、取引参加者の皆様の暖かいご支援、ご協力をいた だきながら、富士通株式会社さんともども一丸となって、この重要なプ ロジェクトを推進してまいりたいと思っております。 今日、こちらから準備をいたしました説明はそれだけでございます。 あとは質問をお受けしたいと思います。 記 者 まず最初に、日興コーディアルグループの虚偽記載の問題なのですけ れども、証券市場の重要な担い手である証券会社が起こした事件につい て、どう思われているのか。それと、今後の東証の対応は具体的にどう いうふうに動いていくのか。ここを教えてください。 西 室 土曜日の朝の朝刊のスクープ以来、大騒ぎでございまして、私どもと いたしましても、事態の把握に一生懸命努めているところでございます。 昨日、日興コーディアルさんからも記者会見があり、そしてまた、証券 取引等監視委員会からは、金融庁に対しての勧告が出されたということ。 それと同時に、私どもは日興コーディアルさんを監理ポストに割り当て るという処置をとらせていただきました。 2 監理ポストへの割当というのは、皆様方、既にご承知のとおりでござ いますけれども、今回の発表になった子会社と親会社のEB債の取引に 関して、その評価益が不適正に計上されていたことなどによって、17 年3月期及び18年3月期の有価証券報告書等、それらの訂正を行うと いうことを開示したわけでございます。 この開示内容から、当取引所としては、有価証券報告書等の訂正内容 が重要と認められる相当の事由があると判断をいたしまして、監理ポス トに割り当てた上で、株券上場廃止基準に該当するかどうかというのを 審査を始めたところでございます。日興コーディアルグループさんにも 情報の提供をお願いして、一部の情報は入手をいたしておりますけれど も、さらに金融庁、あるいは証券取引等監視委員会が今後どういう対応 をするかということなどもあわせて、対応を決めていきたいと思ってお ります。 記 者 次に、先般、みずほ証券との訴訟での1回目の口頭弁論が開かれたわ けですけれども、その感想というか、今後の焦点、言えること、言えな いことあると思いますが、改めてお願いします。 西 室 言えないことの方が多うございまして、新しく私どもから開示をする 部分は現状ではないと申し上げざるを得ない状態です。本件は、私ども が被告として、裁判の手続に入っている状況でございますので、その手 続を粛々と進めるというのが基本的な態度であるべきだろうと思ってお ります。 記 者 もう一つ、今年は証券取引所の再編というのが世界レベルで一番活発 だった年だと思うのですけれども、そこの現状評価と東証の今後の対応 を改めてお話しいただければと思います。 西 室 合従連衡の動きというのは、アメリカとヨーロッパで非常に盛大に行 われました。その中で、実際に大きなもので決まったものというのは、 CMEとCBOTの合併については、両者の合意がなされたということ でございますから、これは来年に向けて、諸手続を行っていくという段 階にあると理解しております。 大西洋を越えての話でございますけれども、まず、ニューヨーク証券 取引所とユーロネクストの合併案件につきましては、本日、アムステル ダムにおいて、ユーロネクストの株主総会が行われます。そこで最終的 3 な議決がなされると理解をしております。そこで株主の賛同を得られれ ば、これから先は実質的な合併手続に入るということでございます。 それから、もう一つ、まだペンディングであるのは、ナスダックによ るロンドン証券取引所の買収の申し入れが最終的には先週の状況でTO Bを行うということになって、それがこれから進行するということであ ります。TOB価格が予想よりも低いということ。それと同時に、TO Bの目標とするパーセンテージが 51%と比較的低い。逆に言えば、既に 28.7%を所有しているナスダックが、もうあと 23%とれば、それでTO B及び会社の支配権が確立されることになるという意味では、これから 先のTOBの期間において、どういうことが起こるかをウオッチしてい かなければいけないと思っております。 それ以外に小規模な合従連衡の話はございますけれども、私どもとし は、この欧州、アメリカの動きが決してよその世界で起こっていること という認識をしているわけではなくて、これから先の世界の証券業界、 あるいは金融業界を考えるときに、大きな変動が生まれてくると思って おります。 もう一つ、言い忘れましたけれども、これはまだ発表だけの段階であ りますが、欧州において、アメリカとヨーロッパの大手の金融会社7社 が一緒に、証券取引所でない形の証券取引を可能にするような仕組みを 作るということを発表いたしておりまして、これが実現するのが、来年 の末までと言われております。内容については、まだ詳細はよくわかり ません。 この背景は、やはり国際間の熾烈な競争ということの前に、グローバ ル化という大きな世界のトレンドと、それからIT技術の飛躍的な進化、 この2つが根本的な原因で、そして、その中で将来、証券取引所、ある いは国際的な証券取引なるものが、いかにあるべきかが問い直されてい るということであります。 この状況につきましては、私どもとしては、現在持っております今年 の中期経営計画にもはっきりと書いておりますように、我々は2009 年を目指して、あらゆる必要な手を打っていくのだということ、これは 何度かこの席でも申し上げたとおりでありますけれども、それを忠実に 実行していくことが極めて大事だろうと思います。 私どもが今見ている範囲で、国別の規制というのは、それぞれの証券、 金融市場にはいまだに存在しておりまして、そして、国と国との間、あ るいはEUとアメリカとの間、その規制のハーモニゼーションというの は、まだ話が始まったばかりということであります。これは全世界的に 4 それぞれの市場が、それぞれの国の規制当局によって、規制をされてい るのと同時に守られているという状況であると見られるわけであります から、このハーモニゼーションが本格的に起きた後が本当の意味での国 際競争になる。そして、東証として最も必要なことは、そういう事態が 起こる前に、東証の地位を確立し、本当の自由な国際競争の中で戦って いく、勝っていくことができるような仕組みをつくり上げるということ だろうと思っております。それに向かって、私どもとしては現在努力し ているということであります。 それから、アジア地域において、まさに東証は、その地理的条件から 言えば、アジアの中の中心に位置する取引所であり続けたいと思ってお りますし、そのためには、我々が中心だということではなくて、むしろ アジアの諸国の取引所と親密な連携関係を持つことによって、お互いに 刺激することができるような関係を作り上げたいという努力を始めたわ けであります。 ご承知のように、先週はシンガポールの取引所といろいろ話をしまし て、ETFその他についてと日本国債の先物についての協定を結ぶとい う方向で話が進みつつあります。 また、今年の7月に韓国の証券取引所とMOUを交わしましたけれど も、その相互援助の協定に基づいて、先週はこの東証の場所において、 韓国取引所のプロモーションのための会を催すことになりました。 そういう相互の協力関係というものを重層的につくり上げていくとい うことが、我々だけではなくて、アジアの各地域の取引所に役に立つも のであるという認識をぜひとも持ってもらいたいと思っております。 記 者 ちょっとダブってしまうのですけれども、日興コーディアルの話です。 大手証券会社が監理ポストに入るのは、自主廃業した山一證券以来とお 伺いしておりますけれども、大手証券の一角を占める日興が監理ポスト に入る事態をどのように受けとめているのか。証券市場に対する信頼感 もかなり失われると思うのですけれども、それについて、改めて社長の ご認識をお伺いしたいのですが。 西 室 極めて残念な事態だと思っております。ご承知のように昨日まで株式 市場そのものは、上昇気流にいよいよ乗ったかというときに、この事件 の発表によりまして、本日、少し下げ勾配に戻ったというのが実際に起 こっていることであるように、やはりこの件が、市場そのものにネガテ ィブなインパクトを与えたというのは紛れもない事実だと思わざるを得 5 ません。 実際に起こったことそのものについては、いろいろな解釈があると考 えておりますけれども、ただ、大手証券さんだから、ほかの会社と違う のだというお取り扱いをするわけにはまいらないのではないかと私ども は思っております。公正な判断をして、そして公正な手続をとってまい ります。 ただし、監理ポストに入れたということが上場廃止に直結するわけで は全くございませんので、問題がありますよということを投資家の皆様 方に知っていただくための監理ポスト入りでございますから、その点に ついては、私どもは近い将来の最終決定について予見を持っているわけ では全くないということであります。 記 者 昨日、日興コーディアルの会見と同時に、ミサワホームホールディン グスが不適切な決算の処理で会見しておりました。過去、最近でも西武 鉄道、カネボウ、ライブドア、いろいろ企業の情報開示、決算処理とい う観点で、かなり信頼性を失われている事態が多いと思うのですけれど も、東証のトップとして、このような事態をどのようにとらえているの か。包括的な質問で申しわけないのですが、お願いします。 西 室 極めて残念な事態が続発していると申し上げざるを得ない状態であり ます。やはり一番大事なのは、情報の開示、そして開示する情報そのも のが、本当に信頼のおける正しいものでなければいけないということを 改めて私ども痛感しましたし、市場参加者の皆様に、それをもう一度思 い起こしていただきたいと思っております。 今、カネボウさん、西武さん、あるいはライブドアさんとお名前が出 ましたけれども、それと今回の2つとは、ちょっと性格が違うような気 がいたします。ですから、それぞれ個々にしっかりと情報開示をお願い し、その上で公正な判断をしていくということが必要だと思います。 ミサワ九州さんについては、既に福証の方で監理ポスト入りとなって おります。そして、ミサワホームホールディングスさんについては、今 回の訂正そのものは、大幅な訂正とは言えない程度の軽微なものである と認識いたしておりますので、私どもとしてはミサワホームホールディ ングスさんについては、監理ポスト入りなどの処置はとらないでいいな と思っているところであります。新しく何か起こった場合には、またそ のときはそれで処置をすることとなります。 繰り返して申し上げますけれども、情報の開示、そして、適正な公正 6 な情報そのものを株主さんのために準備するということは、上場会社と して最低の義務だということを改めて銘記したいと思います。よろしく お願いします。これはもうマスコミさんのお力も借りないといけないお 話だと思います。 記 者 次世代システムの話なのですけれども、開発会社さんが富士通さんに 決まったということで、これは例えばハードウェアの会社はどちらにな るのかとか、あるいはOSは、例えば Windows みたいなのを使うのかと か、そのあたりを教えていただきたいのですけれども。 西 室 ハードウェアで申し上げれば、富士通さんのサーバ、ノード、そうい うものを使うつもりで計画をお立てになっていると私どもは理解してお ります。全体の見積もりそのものは、ハードウェア込みの見積もりでご ざいますので、そういう意味では、富士通さんが自主開発をされたもの です。といっても、ご承知のとおりCPUはアイタニウムでありますし、 OSはリナックスです。 記 者 それと、開発会社さんは、結果的になのですけれども、現行のシステ ムを作っていらっしゃる富士通さんと同じということになりました。こ れは当然、先ほどご説明いただいた経緯を踏んでということだと思うの ですが、最終的に落ちた会社さんとか、社会から見れば、結局そうなの かみたいな見方もできなくはないので、決め手になったところというか、 そのあたりを教えていただけますか。 西 室 実は、RFP(提案要求書)としては、非常に充実しており、全部で 1500ページありますけれども、内容的に私どもとしては十分考えた ものをお出しして、お答えをいただいたということであります。それを 公平に採点した結果、富士通さんの提案が我々にとってはベストである ということです。ベストである点は、要求される高速性と信頼性を実現 できるだけの技術力を有していることと、これから先、約10年くらい を考えて、先進性も必要であるというのは、私どもが最初からうたって いるところでありますけれども、それについての配慮もしっかりやって おられるということがございました。 それから、もちろん最終的にはコストの問題もございます。富士通さ んは、新しいソフト開発も当然大規模におやりになる。そして、それが 日本の、あるいは富士通さんがこれからしっかりとやっていこうという 7 将来に向かっての1つの基盤づくりになるようなもの、そういうものを 目指しておられるというのが読み取れる提案であったということであり ます。 記 者 最後に1個だけ。お金の話なのですが、予定内におさめたい、6月く らいに総費用が決まるというお話だったと思うのですが、確認ですけれ ども、予定の金額は幾らくらいでしょうか。 西 室 中期経営計画の中で、次世代システムの開発費用は約300億円と見 込んでおります。 記 者 では、そこでおさまるか、それ以上になるかが来年の6月に最終的に 決まるというご判断ですか。 西 室 いえ、来年の6月にはその範囲でおさまると私どもは確信いたしてお ります。それより、はみ出すことはないという理解で考えております。 記 者 わかりました。ただ、あの中期経営計画のお金は2008年度までの 予算ということで、2009年以降の分も含めると、また話は変わって くるという理解でよろしいのでしょうか。 西 室 300億円という金額そのものは、確かに2008年までと書いてあ りますけれども、まず、次世代システムの開発、そのトータル・プロジ ェクトについてということでございますから、それ以外の部分はこれか らまた将来にわたって追加投資その他必要だとは思いますけれども、差 し当たって300億円という設定した枠内でプロジェクト全体がおさま ると思っています。 私どものために開発していただく部分が非常に多いわけです。ハード ウェアもそうですし、ソフトウェアもそうです。ただ、それについては、 これから先の汎用的なオファーの仕方ができるという見込みに基づいた 見積もりであったと理解しています。 記 者 先ほどの質問とまたかぶってしまうかもしれないのですが、日興コー ディアルの件で、証券会社、しかも大手証券会社という、資本市場のプ ロと言える方々、本来、上場企業の模範たる行動をとるべきはずの証券 会社が、今回こういう会計ルールで誤りを冒した。さらに結果として、 8 投資家を欺くことになってしまったということについて、資本市場を預 かる東証社長としてはどのように受けとめていらっしゃいますか。 記 者 先ほども申し上げましたとおり、極めて遺憾であると申し上げる以外 にないと思います。本来でしたら、証券会社さんは上場しようという会 社をお手伝いして、場合によると指導して、透明性あるいは情報開示を 確保するということをやり、しかもその内容が公正であることを期待し ながらやっている会社ですから、そういう意味では、極めて遺憾である ということであります。 ただ、これについては、ご承知のように会計監査法人の意見書がどう いう形でついているかとか、いろんな問題が同時にあるような気がいた します。まだ詳細につきまして全体を把握している状態になっておりま せんものですから、個別の具体的なことについては申し上げにくいとい うことであります。 記 者 東証さんの防衛策について伺いたいのですけれども、内閣府大臣政務 官の田村耕太郎さんの発言で、東証さんの2009年のIPOの前に買 収防衛策をお考えだということは、ちょっと論外ではないか、東証さん は、上場企業に関して買収防衛策をとらせないということを忘れている のではないかという発言をどう思われますか。 西 室 まず、東証は買収防衛策をとらせないように指導しているということ は、ちょっと考え方が違っておられる。これは株主の皆さんがご理解に なられ、承認するような形の買収防衛策でなければならない。ですから、 買収防衛策を導入するに当たっては、導入の手続、その実施において、 必ず株主のしっかりとした承認があるような形にすべきであると申し上 げております。 買収防衛策の導入そのものは、法で禁じられているわけではありませ んから、それをお入れになるかどうかは、それぞれの経営のご判断だと 思います。 東証自身について言えば、総論から言うと、今おっしゃったとおり、 わざわざ買収防衛策を入れないで、もっとフェアに、フリーにやるべき だというのは、一つの態度としては原則論はございます。したがって、 私どもも上場するということを再度考えましたときに、買収防衛策につ いては考えないというつもりでおりましたけれども、買収防衛策を入れ ないと心配だという声が余りに強過ぎますので、私どもとしてはそうい 9 う声も踏まえて検討するということであります。 海外の取引所を見ましても、買収防衛策なるものがないところと、し っかりとあるところと、それぞれ国により、あるいは取引所により違い ますので、それらを比較対照しながら、どういう形を導入するかという ことを決めていきたいと思います。 記 者 2点だけ伺いたいと思います。 第1は、日興コーディアルの問題で、監理ポストから出るために何を しなければいけないのですか。 西 室 記 者 西 室 非常に難しい問題だと思います。指標については、速報と確報と称す るものが時間差をもって発表されるというのは、ほとんどの国で実際に やっているところであります。確かにこの間のGDPの訂正は幅が大き かったです。ただ、アメリカでもほとんど同じくらいの規模のGDP訂 正を行ったケースもございますし、日本だけが違っているというわけで は全くないように思っております。 ただ、あえて言えば、もっと情報収集、あるいはデータ収集のスピー ドを上げて、確報をできる限り早く出すという努力をすべきです。いつ までも速報と確報があるよという状態よりは、これだけ IT テクノロジー が発達進歩しているのですから、確報をできる限り早く出すという形が 最も望ましいと思っております。これは世界中どこもそういうことがで きていないという状況なので、あえて私どもとしては申し上げておきた これは、まずは徹底的な情報開示をお願いしているところであります。 それと同時に、証券取引等監視委員会及び金融庁がどういう判断を下す かということも、一つのファクターとして考えられます。そうしたこと などを総合して、それが結果的に極めて甚大な影響を与えるようなこと であるということでございますと、廃止もあり得るとは思いますけれど も、まだ現状ではそこまでの決断をするような材料は整っていないと思 っております。 ちょっと話が変わりますけれども、正確な情報開示の観点から、最近、 政府の指標、統計は、かなりいろいろ問題がありますね。2週間前に余 り聞いたことがないようなGDPの1%近くの下方修正がありました。 ほかもいろいろ問題があります。経済、場合によっては市場にも影響し ますけれども、市場から見ると、指標の問題はどうご覧になりますか。 10 いと思います。 記 者 東証の業務範囲からは外れるのかもしれないのですが、今回の日興さ んの問題と関連して、SPCの会計上の取り扱いなのですけれども、要 は米国会計基準で言えば、きっちり連結をして含んでいかなければいけ ない。ただ、日本で言うと、個別に企業が判断して例外条項によって外 すケースもあると。要はM&Aが活発化して、いろんな投資活動が非常 に増えている中で、SPCの会計上の取り扱いというのは、果たしてど うあるべきなのか。企業会計等でも検討課題で議論がされているわけで すけれども、東証として、そういう会計上の取り扱いについて、何らか の目安なのか、ガイドラインなのか、そういうものを企業に対して示し ていくような考えはあるのでしょうか。 西 室 まさに核心を突いているご質問だと思います。SPCの会計上の取り 扱いについて、クリアでない点、あるいは曖昧な点があったのが、今回 の日興さんの問題の原因の一つであろうと思っております。そして、こ れについてどうしていけばいいのかということについては、東証として は、まだ態度を決めておりません。ただ、これだけの問題が起きたとい うこともあり、これから先、SPCをどう扱うべきかということは、な るべく早くルールを設定し直す必要があるだろうと思います。 実は、ルールの設定についての議論がなされているのは、今ご指摘の とおり、企業会計の関係でやられております。私どもとして、現在、内 部でそれについての方向づけをしているわけでは全くございませんし、 将来、状況を見ながら、どうしても必要だということになったら、東証 として決めざるを得ない状態になるかもしれませんけれども、本来はこ れは法で、あるいは政府の規則、規定、府令、省令、そういったような もので決めておく方が一般性があると思っております。 これを余り厳格に決めると投資家の投資意欲をそぐとか、そういう議 論も一方に非常に根強くございますので、なかなか難しい問題だとは思 いますが、何らかの形で、もっと明確な定めが必要だと思っています。 以 11 上
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