次世代落雷位置標定システムの実用化 背景と目的 今後の予定 落雷位置標定システム(LLS: Lightning Location 次世代 LLS は、平成 23 年 11 月から本運用され、標 System)は、落雷位置をリアルタイムで標定できるこ 定データはホームページ等を通じて社内外に提供され とから、送電線雷故障の原因と位置の特定や系統運用 ています。しかし、上向き雷の電流は総て約 80kA 以上 の参考等に活用されてきました(図 1) 。 の大電流と推定されておりますが、放電機構が下向き しかし、冬季雷(上向き雷)の捕捉率が低いことか ら、標定精度とともに改善が求められていました。 このため、冬季雷に伴う電波の特徴を把握し、冬季雷の 捕捉が可能な次世代 LLS を開発・実用化したものです。 雷と異なるため、新たな電流推定モデルや電流観測手 法が必要です。このため、上向き雷の研究をさらに進 め、冬季の大エネルギー雷の様相を解明し対策の向上 を目指します。 開発の概要 冬季に送電線故障を引き起した落雷に伴う電波を調 べると、 「上向き雷」の電波の波形は「下向き雷」と異 なり(図 2) 、落雷を雲放電やノイズから判別するため の従来基準に適合せず、アナログ方式のセンサでは複 雑な波形を解析できないことがわかりました。 この知見をもとに、冬季雷の捕捉可能なデジタル方 式のセンサを開発して最適配置し、従来の 9 台より少 ない 6 台のセンサで広域の落雷を高精度標定可能な次 世代 LLS を実用化しました。 これにより、 冬季雷捕捉率は従来の約 40%から 90% 以上に、標定誤差は約 1km から約 300mに改善され、 的確な系統運用、雷故障に伴う巡視コストならびにシ ステム導入コストの削減に大きく貢献しています。 受 賞 平成 24 年電気学術振興賞 進歩賞 <電気学会> 電気科学技術奨励賞(オーム賞)<電気科学 技術奨励会> 上段左:負極性下向き 下段左:負極性上向き 図 2 落雷の写真と電波の波形の例 ① 落雷により電波が放射 ② 3台以上のセンサで電波をキャッチ ③ 電波の波形を基準波形と照合して落雷を判別 ④ 電波の受信時刻等を解析装置に伝送 ⑤ 落雷から遠いセンサほど電波が遅れて届くことを利用して落雷位置を算出 ⑥ 落雷位置を表示し,送電線の巡視点検などの保守業務で利用 一般向けに落雷位置を地図上に表示し当社HPに公開 図1 LLS の概要 上段右:正極性下向き 下段右:正極性上向き (極性と放電の向きにより特徴が異なる) 担当 : 電力システム部 研究開発センター
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