第 2 号 - 東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構

フィールド農学二ュース
第 2 号 (2004年 10 月 30 日)
東京大学大学院農学生命科学研究科附属農場・同緑地植物実験所
東京大学大学院農学生命科学研究科附属農場と同緑地植物実験所は、耕地生圏
生態学研究室・生産生態学研究室を構成しています。このニュースレターは両附
属施設において、どのような研究、教育および社会貢献が行われているかを大学
内外に広く知って頂くために、共同で発行しています。両附属施設は今後もさら
に連携を深めながら、新しいフィールド農学を展開していきたいと考えています。
緑地植物実験所 50 周年記念講演会・祝賀会の開催
現在の緑地植物実験所の前身である園芸実験所が 1954(昭和 29)年に開設さ
れて、今年でちょうど 50 年となります。これを記念した講演会と祝賀会が、
緑地植物実験所に隣接する東京大学検見川セミナーハウスにおいて7月 30 日
に開催されました。当日は大学関係者や地元の方々、花ハス研究者など 50 人
あまりの参加があり、會田勝美・農学生命科学研究科長の祝辞の後、
「園芸実験
所・緑地植物実験所における花ハス−過去・現在・未来−」をテーマに、以下の
3題の講演が行われました。引き続き、祝賀会が開催され、林良博・東京大学
理事より祝辞を頂いた後、秋田重誠元所長の音頭で乾杯し、参加者の間での和
やかな歓談となりました。地元の方々から貴重なお話をいろいろとお伺いする
ことができ、有意義なひとときでした。(加藤和弘・緑実)
<記念講演>
「神秘の花 ハス」
北村文雄 (元緑地植物実験所長)
「緑地植物実験所の花ハス収集と新品種」
南 定雄 (緑地植物実験所技術専門員)
「小学生向けの花ハス講習会を開催して」
榎本百利子 (緑地植物実験所技術職員)
祝辞を述べられる會田研究科長
講演会会場の様子
1
「ハスの世界をのぞいてみよう!」
8月2、4、7日の3日間、緑地植
物実験所において、小学生向けの花ハ
ス観察会「ハスの世界をのぞいてみよ
う!」を開催しました。初日は花ハス
の多彩な品種の観察と花の分解、2日
目はハスの葉を利用したお茶づくり
やハスの果実の収穫と試食を、それぞ
れ行いました。3日目は早朝から、ハ
スの開花の観察会でした。夏の暑さや
虫さされに悩まされつつも、子供たち
ハス見本園の前で職員から説明を聞く子供たち
はハスの花が開いていく様子を見届
けることができました。アンケートからは、参加した子供たちのハスに対する
興味や知識が深まった様子がうかがえましたし、また、同じ時期に実験所に見
学に来られた方々からは、他の年代向けの企画を希望するご意見も寄せられま
した。これからも、いろいろな方に楽しんでいただける企画を実施していきた
いと考えております。(榎本百利子・緑実)
二宮果樹園で収穫体験会の開催
二宮果樹園では、二宮町教育委員会に協力して頂き、町内の学校の生徒を対象
とした果樹の収穫体験会を開催しています。10 月下旬から 11 月上旬にかけて
行われるカキとキウイフルーツの収穫体験会には、二宮町内の小学校や中学校、
高等学校の生徒たちが参加する予定です。今年度はさらに新たな試みとして、
夏休み中に8回、ナシの収穫体験会を開催しました。町内の小学生、中学生、
高校生を中心に保護者や引率教師、未就学児童を含めて合計 13 組 95 名が参
加してくれました。
当日は、まずナシにはどんな品種があるのか、なぜ棚で栽培されるのかなどに
ついて簡単な講義を聞いた後、ナシの
糖度を機械で測定するとともに、自分
の舌でも甘さを確認しました。その後、
圃場に出て収穫から選果、パック詰め
に至る一連の作業を体験しました。
参加した方は、果実の部位によって
糖度が異なるという実験結果や、ナシ
の果実はハサミを使わなくても簡単
に採れることに驚きながら、夢中にな
って楽しんでいました。(矢津田啓
介・二宮園芸)
カキの収穫を体験する小学生
2
「オープンキャンパス」への協力
東京大学のオープンキャンパスが8月2日と3日の2日間、開催されました。
3日には学生の企画による7つのオプショナルコースが準備されましたが、そ
の中の一つが「土と触れ合う農業・林業コース」で、全国各地から集まった約
40名の高校生を多摩農場で受け入れました。大杉農場長が附属農場の概要を
説明した後、農場で学ぶ現役の大学院生によるポスター発表を行い、研究の最
前線を紹介しました。引き続き、農場内の水田・畑やビニルハウスなどの施設
を見学してもらい、どこで、どのように研究が進められているかを具体的に説
明しました。最後は、農場産のスイカを楽しんでもらいながらの質疑応答とな
りました。(森田茂紀)
大学院生によるポスター発表
畑で研究の解説を聞く高校生
「オープンファーム」の開催
今年度のオープンファームは、
「コンニャク−植物から食物へ−」というテーマ
で、8月1日に開催されました。予め申し込みをしていた小学生とその保護者
を中心に約20名の参加がありました。参加者はコンニャクについて簡単な説
明を聞いた後、実際に畑に行ってコンニャクを掘り、どの部分を利用してコン
ニャクを作るのか自分の目で確認しました。引き続き、すでに収穫してあった
コンニャクイモを加工してコンニャクを作り、試食をしました。自分で作った
添加物まったくなしのコンニャクは、格別の味だったようです。
(峯 洋子・多
摩園芸)
コンニャクの掘り取り風景
コンニャクを練る参加者と大杉農場長
3
収穫の秋
多摩農場では様々な農作物が収穫時期を迎えています。その中から、今回は
稲の収穫実習について紹介します。
農場実習では、古くから行われてきた手狩り作業をはじめとして、バインダ
ーによる収穫作業、そして現在の主流となっているコンバインによる収穫作業
へと、技術体系の発展の流れに沿って体験をしてもらいました。学生たちは慣
れない手つきながらも、種まきから収穫までの一連の作業を実習してきたこと
によって、稲作に対する関心を一層深めたのではないでしょうか。
また多摩農場では、系統保存を行っている様々な稲も実り、収穫期を迎えて
います。今回は、赤米と緑米を写真でご紹介します。(木村 宏・多摩水田)
バインダーによる稲の収穫実習
赤米(左)と緑米(右)の穂と米粒(囲みの中)
ルックス教授が根研究賞を受賞
10 月 16 日と 17 日の 2 日間、多摩農場において根研究集会主催の第 21 回根
研究集会が開催されました。合計21題の研究発表のうち3題は、附属農場の
教員や大学院生によるものでした。この研究集会では、農学生命科学研究科の
外国人客員教授として多摩農場に滞
在しているルックス教授(スロバキ
アのコメニウス大学理学部教授)が
奥様のルクソバ博士(科学アカデミ
ー植物学研究所主任研究員)ととも
に、今年度の根研究会学術功労賞を
受賞しました。ルックス教授は今年
3月から 7 ヶ月間、附属農場に滞在
して、受け入れ研究者の森田教授と
ともに作物の根に関する共同研究を
進め、10月末に帰国されました。
谷本会長から表彰されるルックス教授
(森田茂紀)
4
鷲頭技術専門職員が「技術賞」を受賞
9月28−29日の2日間、北里大学が当番校となって、全国大学農場協議会
の秋季大会が函館で開催され、附属農場から森田・鷲頭・伊藤の3名が参加し
ました。
1 日目は午前中の全体会議のあと、午後は一般公開となり、北里大学教授の
養老猛司さんの特別講演があり、含蓄が深いながらもユーモアにあふれるお話
に会場全体が沸きました。この大会では、今年度の技術賞と教育賞の表彰も行
なわれましたが、多摩農場の鷲頭技術専門職員が全国大学附属農場技術賞を受
賞しました。2日目は北里大学の八雲農場の見学で、完全自給した飼料で育て
られた紛れもない国産和牛の「八雲牛」を見学しました。(森田茂紀)
坂井会長から表彰される鷲頭技術専門職員
完全自給による国産和牛「八雲牛」
「森田教授が中国作物学会で招待講演」
10月29−30日の2日間、中国の華中農業大学(武漢)において中国作
物学会学術年会が開催されました。附属
農場の森田教授は日本作物学会の会長
として初めて招待され、初日の午前中に
「水稲根系の形成と生理的活性」と題す
る基調講演を行いました。初日の午後と
2日目の午前は、作物資源・遺伝育種・
生物技術、作物栽培・耕作・生理生態、
農業技術応用・農業産業化発展、の3つ
の分科会に分かれて講演発表があり、2
日目の午後に全体のとりまとめと閉会
式がありました。(森田茂紀)
基調講演を行なう森田教授
5
カレンダー
11月 5日(金)
11月16日(火)
農場見学会 B
農場・演習林観察会(主に植物)A
11月16日(火)
農場公開セミナー
「世界の土、日本の土、附属農場の土」
宮崎 毅(東京大学大学院農学生命科学研究科・教授)
「都市のみどりと鳥」
加藤和弘(東京大学大学院農学生命科学研究科・緑地植物実験所・助教授)
11月22日(月) 附属農場収穫祭
11月25日(木)
農場・演習林観察会(主に動物)A
12月 3日(金)
農場見学会 B
12月16日(木)
農場・演習林観察会(主に植物)A
12月21日(火)
農場・演習林観察会(主に動物)A
1月 7日(金)
農場見学会 B
1月16日(日)
−21日(金) 一類宿泊実習(二宮果樹園)
1月18日(火)
農場・演習林観察会(主に植物)A
1月27日(木)
農場・演習林観察会(主に動物)A
A:東大農場・演習林の存続を願う会 B:東大農場のみどりを残す市民の会
問い合わせ先:A と B は宮崎啓子(0424−64−0657)、その他は多摩農場
フィールド農学ニュース 第2号(2004 年 10 月 30 日)
・ 東京大学大学院農学生命科学研究科附属農場
多摩農場
〒188−0002 東京都西東京市緑町1−1−1
電 話 0424−63−1611 ファックス 0424−64−4391
ホームページ http://www.fm.a.u-tokyo.ac.jp
二宮果樹園 〒259−0131 神奈川県中郡二宮町中里 518
電 話 0463−71−0173 ファックス 0463−73−2788
ホームページ http://www.fm.a.u-tokyo.ac.jp
・東京大学農学生命科学研究科附属緑地植物実験所
〒262-0018 千葉県千葉市花見川区畑町 1051
電 話 043-273-8326 ファックス 043-276-6330
ホームページ http://www.ab.a.u-tokyo.ac.jp/eslp/home97/index.htm
・発行:大杉 立・杉山信男
・編集:森田茂紀・加藤和弘・坂本知昭・木村
・ 編集協力:加藤直樹・田島亮介・「東大農場のみどりを残す市民の会」
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