系外惑星理論 微惑星形成研究の進展と将来 (c) Koji Wada 奥住 聡 東工大地惑 目次 ● 微惑星形成とその古典的困難 ● 微惑星形成研究の進展 (ダスト衝突素過程を中心に) ● 微惑星形成研究の展望 謝辞 (敬称略) 田中秀和 (北海道大学), 和田浩二 (千葉工大), 陶山徹 (長野市立博物館), 片岡章雅 (総研大), 武藤恭之(工学院大) !2 系外惑星観測の進展 As of 2013 Dec 19: ✓ 976 Planets around 740 Stars ✓ 162 Systems with Multiple Planets ✓ 3,603 Kepler Planets & Candidates !3 (固体)系外惑星の遍在性・多様性 ● 太陽型星の半数以上は“固体惑星”(地球~海王星サイズ)をもつ ● 太陽系地球型惑星より短周期のもの多数 (close-in super Earths) Planet radius [Earth radii] ● 必ずしもEarth(岩石)ではない(内部組成/大気構造の縮退) 金地 火 水 Batalha et al. (2013) !4 惑星形成と微惑星形成 原始惑星 系円盤 ダスト (≲µm) 惑星 rock 3 (≳10 km) ice+rock 微惑星 (≳km) rock 分子間力集積 + ダスト層の自己 重力不安定? Itokawa (~0.5km) ン イ ラ ー スノ -3AU?) ice +rock (~1 重力集積 !5 惑星形成と微惑星形成 系円盤 微惑星形成理論 原始惑星 ダスト (≲µm) ダストは「いつ」「どこで」「どのように」 3 惑星 (≳10 km) rock 「どのくらいの量が」微惑星になるか? (後期)惑星形成の初期条件ice+rock 原始惑星系円盤の観測の解釈 微惑星 (≳km) rock 分子間力集積 + ダスト層の自己 重力不安定? Itokawa (~0.5km) ン イ ラ ー スノ -3AU?) ice +rock (~1 重力集積 !6 微惑星形成の困難 !7 微惑星形成シナリオと困難 3. 乱流による重力不安定の阻害 ? ?? ダスト自己重力不安定 ? ? μm mm 直接合体成長 m 1. 中心星落下障壁 2. 衝突破壊障壁 km 跳ね返り障壁 (bouncing barrier) Zsom+10,11;Windmark+12a,b; Wada+11 静電反発障壁 (charge barrier) SO09; SO+11a,b; Matthews+12 !8 困難1:中心星落下の壁 ● ガスの公転はケプラー速度よりわずかに遅い(−dP/dr>0 の効果) ● 固体はガスの向かい風を受けて角運動量を失う ● 中間的サイズ (~1 m)で最速: 1 AU を ~100年で落下 ➡ mサイズ天体は100年より十分短い時間スケールで成長する必要 @1AU 1m 中心星 落下 向かい風 固体の公転 100yr ガスの公転 Adachi, Hayashi, & Nakazawa (1976) !9 困難2:衝突破壊の壁 ● 最大落下速度 = 1AU/100yr = 50 m/s ( = 時速180km) ● 最大衝突速度もこれと同程度 (円盤乱流が弱ければ) ● このような高速度の衝突では、シリケイト粒子の塊は大規模に 壊れてしまう(e.g., Blum & Munch 1993; Blum & Wurm 2000) vcol=3.8m/s 1mm 構成粒子: ZrSiO4 (サイズ 0.2–1.0μm) Blum & Munch (1993) !10 困難3:自己重力不安定の妨害 ● 古典的微惑星形成モデル (Safronov '69, Hayashi '72, Goldreich & Ward '73) ダストの沈殿(赤道面濃集)➡ ダスト層の自己重力分裂・収縮 ● 乱流円盤中ではダスト層は簡単に拡散する (特に微小ダスト) ● ダスト-ガス公転速度差も乱流を誘発する (see 長谷川幸彦さん講演) MRI乱流中のダスト層拡散 Johansen & Klahr (2007) ダスト層によるKH不安定の自己励起 Johansen, Henning, & Klahr (2006) !11 微惑星形成研究の進展 - 微粒子集合体の衝突素過程研究 - !12 観測によるダスト局所構造の発見 ● ミリ波、赤外観測で、環状/非軸対称のダスト構造 ● 中心星から数10AUの距離 (数AUでも同じ構造? ➡ 2020年) Subaru HiCIAO H-band (ダスト散乱光) Mayama et al. (2012) ALMA (sub)mm continuum (ダスト熱放射) van der Marel et al. (2013) Fukagawa et al. (2013) !13 円盤内でのダスト局所濃集機構 ● ガス圧極大(ダスト落下速度ゼロ)の場所は局所的には作れる - 帯状流(高気圧性の帯) e.g., Johansen,Youdin, & Klahr (2009) - ガス円盤の内縁、惑星ギャップの外縁 e.g., Pinilla et al. (2012a) - 高気圧性の渦 e.g., Barge & Sommeria (1995); Inaba & Barge (2006) ● そのような場所では微惑星形成の困難1~3がすべて緩和される ● 理論不定性: 渦の安定性 (Lesur & Papaloizou 2009)、帯状流の寿命 ● 観測は本当に渦? 惑星ギャップ? (see 高橋Z実道さん講演) 9MJup planet @ 20 AU ダスト移動 高 Inaba & Barge (2006) dust ring @ 50 AU Pinilla et al. (2012a) !14 ダスト衝突成長の微視的描像の重要性 「微粒子は分子間力でどこまで付着成長できるか?」 ● どの微惑星形成モデルにせよ、ダストがある程度成長する ことが大前提 ● ダストの組成によってどう結果は変わるか? 「付着成長した物体はどんな構造を持つか?」 ● ダスト付着成長物の構造に応じて空気抵抗は変わる(空 気力学的断面積) ● 衝突合体の頻度も変わる(幾何/射影断面積) ダスト粒子の衝突を実際に調べてみないとわからない !15 微粒子集合体の衝突/構造強度研究 実験室実験 For review, see Blum & Wurm (2008); Guettler et al. (2010) 理論、数値実験 Dominik & Tielens (1997); Paszun & Dominik (2006, 08, 09); Wada et al. (2007,08,09,11,13); Suyama et al. (2008,12); Seizinger et al. (2012, 13); Kataoka et al.(2013a) !16 ダスト粒子集合体の数値モデル化 Dominik & Tielens (1997); Paszun & Dominik (2006, 08, 09); Wada et al. (2007,08,09,11,13); Suyama et al. (2008,12); Seizinger et al. (2012, 13); ● 固体微粒子の付着 確立した弾性体理論がある (Johnson et al. 1971) ● ダストの付着成長物をN体で表し、衝突を直接シミュレートする 弾性応力 表面張力 !17 衝突破壊問題の再検討 Wada, Suyama,Tanaka (2008,09); Wada, Suyama,Tanaka, & SO (2013) ● 衝突でネットに成長できる条件 付着効率 成 長 限 界 γ: 表面エネルギー 𝓔: ヤング率 a0 m0: 構成粒子半径,質量 構成粒子: 氷, 0.1μm ● 限界衝突速度 (構成粒子半径=0.1µm) シリケイト 衝突速度 [m/s] Wada et al. (2013) H2O氷 6–9 m/s 60–90 m/s 表面エネルギー大、ヤング率小 衝突破壊問題は物質依存:氷微惑星形成では大幅に緩和 有機物ダストにも氷と類似の傾向 (Ueda, SO, et al., in prep.) !18 低速衝突を通じたダスト高空隙率化 Suyama, Wada, & Tanaka (2008); SO+(2009); Suyama,Wada,Tanaka, & SO (2012) 充填率 Φ 1 衝突圧 低 10-1 突 衝 縮 ル ネ エ 極 ー ギ 限 10-2 1 10 102 103 104 構成粒子数 N ● 低速度衝突 ➡ “hit and stick” ➡ 低密度に ● いったん低密度化すると、衝突で圧縮変形しにくくなる 105 Fig. 5.— Density evolution of growing aggregates in the simulations for various impact velocities and critical rolling displacements. We set vimp ¼ 0:27, 0.54, 1 and 4.4 m sÀ1 and crit ¼ 2, 8, 16 8. The solid lines show the densities of the resultant aggregates in our simulations, and the dashed lines indicate the densities of clusters. Filled circles indicate the critical number of particles Ncrit to start compression, as estimated from eq. (17) with b ¼ 0:5. !19 ダスト内部密度進化曲線 従来の理論(密度一定) 度化 低密 ダスト塊内部密度 [g/cc] 衝突密度進化公式: SO+(2009); Suyama,Wada,Tanaka, & SO (2012) 静的密度進化公式: Kataoka,Tanaka, SO, & Wada (2013a) 圧縮 る よ に 自己重力に よる圧縮 抗 抵 ス ガ 最小質量円盤/5AU/氷ダスト Kataoka et al. (2013b) ダスト塊質量 [g] 初期の低速衝突 + 弱いガス圧 ➡ 極低密度ダストの形成 !20 低内部密度ダストの急速成長 内部密度進化を考慮した大局的ダスト成長シミュレーション (Okuzumi et al. 2012) 密度進化OFF (コンパクト) 密度進化ON 成 長 落下 成 長 約10AUより内側で、中心星落下するよりも速く成長 !21 低内部密度ダストの急速成長 ● 最大落下速度は内部密度に依らない(ガス円盤の性質で決まる) 落下 障壁 自己重力 低密 度化 ダスト塊内部密度 [g/cc] ● 最速落下するときの成長時間が減る(より大きな衝突断面積/質量) 縮 圧 抗 圧縮 抵 ス ガ 最小質量円盤/5AU/氷ダスト ダスト塊質量 [g] Kataoka et al. (2013b) 落下問題はダスト内部構造依存:低密度ダストでは緩和 !22 ダスト衝突素過程の数値モデル化:まとめ ● ダスト構成物質の重要性 氷(少なくとも表面)のダストは衝突破壊を回避する ● ダスト内部構造の重要性 低内部密度(高空 率)のダストは中心星落下を回避する 氷微惑星形成: 直接合体成長モデルの2大問題は回避される 岩石微惑星形成: シリケイトダストの付着力強度が不足 (実験と整合的) !23 2020年代を見据えた(微)惑星形成論 (微)惑星形成モデルの制約 ✓ 惑星自体の観測 ✓ 原始惑星系円盤の観測 ● ダスト熱放射/散乱 ➡ ダストのサイズ/空間分布/組成/内部構造 ● ガスの輝線 ➡ ガスの分布、運動(乱流)状態 ミリ波 CARMA, SMA, early ALMA 光赤外 Subaru TMT (2022?) 角度分解能 ~ 0.1” ~ 10 AU ~ 0.01” ~ AU Full ALMA (数年後?) 惑星形成スケール( AU)が見えてくる !24 2020年代を見据えた(微)惑星形成論 1つの重要課題 - 組成に応じたダスト成長/微惑星形成経路の解明 ● 「岩石(微)惑星と氷(微)惑星で形成効率は異なるのか?」 系外岩石/氷惑星の観測的縮退に理論的立場から制約 ●「スノーライン(氷昇華線)はどう見えるのか?」 氷の光学特性と成長特性の両方を考慮する必要 ! ! ! ! ! ! ! (c) 武藤恭之 (工学院大) (c) 片岡章雅 (総研大/NAOJ) ●「他の物質の役割は?」 … CO, 金属, 有機物 !25 まとめ ● 微惑星形成の3大障壁 - 直接合体成長 中心星落下、衝突破壊 - ダスト層重力不安定 乱流による阻害 ● 微粒子集合体の衝突素過程研究の進展 - ダストの組成:衝突破壊問題の を握る - ダスト集合体の内部密度:中心星落下問題の ● 2020年を見据えたダスト成長・微惑星形成理論 - 惑星形成領域の円盤観測が現実になる - 固体の組成依存性を考慮した理論モデルの確立が必要 !26
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