第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 塗 膜 耐 候 性 の 早 期 評 価 方 法 旭化成㈱ 研究開発本部 基盤技術研究所 河野房夫、今井秀秋 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 目的 1)実暴と相関性のある早期評価方法の確立 2)塗料の耐候性の定量的評価技術の確立 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 各種促進試験機の特徴 実曝との相関性 促進性(300-400nmの照射強度) メタルハライド ◎ 最大800W/m2 MH キセノン 60∼180 操作性 使用実績 最近の機器は300∼ ○∼× 780nmの波長分布 を持つ。 ◎ 使用実績が少な い。屋外暴露と △ の相関を調べた データはない。 ○ W/m2 ○ 太陽光に極めて近い波 長分布を持つ。 ○ ◎ の蓄積あり。 世界的にデータ ○ 60W/m2∼ ○ 太陽光に近い波長分布 を持つ。 × ◎ の蓄積あり。 XON サンシャイン SWOM 日本でのデータ 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 塗膜の劣化原因と促進評価手法 主な化学変化 高感度検出手法 従来検出手法 ラジカル反応 化学発光強度 光沢 酸化反応 X線電子分光 色差 架橋反応 表層硬度 分解反応 接触角(水) 表面ミクロ観察 光 ↓ 熱 ↓ 水 ↓ 塗膜 酸 素 ↓ 異 物 ↓ 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 実験/試料 1)塗布塗料 水系アクリルシリコン塗料 A 安定化剤添加なし B 紫外線吸収剤(UVA:1wt%) C 紫外線吸収剤(UVA:1wt%) 励起エネルギー消光剤(HALS:0.5wt%) 2)試料板の作成 ①アルミ板上に約50μm塗布 ②色調 ベージュ系 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 実験/暴露条件 1)メタルハライド促進耐候性試験 温度63度、湿度50%、4時間 照射 照射強度:750 W/m2(300-400nm) 温度30度、湿度98%、4時間 結露 散水:結露の前後30秒 乾燥 温度63度、湿度10%、0.25時間(無照射) 2)キセノン促進耐候性試験 温度63度、湿度50%、24時間 照射 照射強度:120 W/m2(300-400nm) 散水:18分/2時間 (ISOに準じた。) 3)屋外暴露 JIS5400に準じ、南面30度。 設置場所 ①富士 ②志村(東京) 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 促進試験と屋外暴露との比較 光沢 MH 富士 志村 XON 水系アクリルシリコン塗料 光沢保持率(%) 120 80 1)表層硬度変化は同じような曲線 であった。 2)光沢、色差は初期から、付着物 の影響を受ける。 40 ただし試験時間はMH/1, XON/5、屋外 /100で示した。 0 色差 600 試験時間(h) 1200 水系アクリルシリコン塗料 水系アクリルシリコン塗料 MH 富士 志村 XON 9 色差(ΔE) 5μm硬度 6 3 5μm硬度(N/mm2) 0 MH 富士 志村 XON 160 120 80 40 0 0 0 600 試験時間(h) 1200 0 500 試験時間(h) 水系アクリルシリコン塗料 1000 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 光沢 屋外暴露時の表面付着物の影響 MH 富士 志村 XON 水系アクリルシリコン塗料 80 0 0 色差 500 試験時間(h) 1000 水系アクリルシリコン塗料 MH 富士 志村 XON 6 3 0 500 試験時間(h) ただし試験時間はMH/1, XON/5、屋外 /100で示した。 5μm硬度 9 色差(ΔE) 1)表層硬度は影響を受けない。 2)光沢は両者が近くなるが、色差 は特に初期の変化が大きく、一致 しない。 40 0 表面を流水洗浄した後、測定した。 1000 5μm硬度(N/mm2) 光沢保持率(%) 120 水系アクリルシリコン塗料 MH 富士 志村 XON 160 120 80 40 0 0 500 試験時間(h) 水系アクリルシリコン塗料 1000 表面状態の比較 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 表面を流水洗浄しても付着物が屋外暴露では残存しており、このような表 面付着物が光沢、色差において促進試験と屋外暴露が一致しない原因では ないかと推定された。 初期 屋外 富士1年 MH 500時間 表面流水洗浄 100μm 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 表層硬度の変化 表層からの硬度変化は 促進試験と屋外暴露とでおなじ傾向を示す。 数μmまでは測定値にバラツキが大きく、10μm以上になると変化 が小さいことと下地板の影響を受けたので、5μmの値を採用した。 硬度変化:屋外暴露 0時間 MH250時間 MH500時間 MH750時間 MH1000時間 300 標準硬度(nN/mm2) 標準硬度(nN/mm2) 硬度変化:メタルハライド促進 200 100 0 0時間 富士屋外1年 富士屋外2年 富士屋外3年 富士屋外5年 300 200 100 0 0 5 10 15 20 0 5 深さ(μm) サンプル:水系アクリルシリコン塗料 10 深さ(μm) 15 20 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 塗膜の耐候劣化 X線電子分光測定、IR測定から表層部分でアクリル成分の分解が起こ り、また硬度変化により、並行して架橋が起こっていると推定された。 X線電子分光測定 S2 1250hr IR測定 l 1.8 C=O O=CーOCH3 Si−O 0h 250h 500h 1000h 2000h 3000h 1.6 1.4 1.2 1 CH 0.8 0.6 0.4 3400 2400 周波数/cm-1 292 290 C1s 288 286 1400 0.2 0 400-0.2 吸光度 (CH2ーCー) 0 h S2 3 0hr 1000h S2 3 1250hr 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 塗膜劣化とその測定手法 表面の付着物の影響を受ける。 X線電子分光 光沢・色差 化学発光 表面の付着物→ 塗 膜 劣 化 表層硬度(5μm) ∼15μm 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 安定剤無 耐候性への安定剤の効果 水系アクリルシリコン塗料(添加なし) MH 富士 志村 XON 5μm硬度(N/mm2) 160 120 水系アクリルシリコン塗料に安定 化剤を添加した場合 y = 0.2161x + 32.923 y = 0.2559x + 23.665 y = 0.393x + 23.287 安定剤を添加すると表面硬度の勾 配が小さくなった。 y = 0.2412x + 25.186 80 40 ただし試験時間はMH/1, XON/5、屋外 /100で示した。 0 0 500 1000 試験時間(h) UVA+HALS UVA 水系アクリルシリコン塗料(UVA) 水系アクリルシリコン塗料(UVA+HALS) MH 富士 志村 XON 160 120 80 40 MH y = 0.1277x + 32.627 富士 y = 0.1449x + 19.7 志村 XON 0 0 500 試験時間(h) y = 0.2423x + 22.545 y = 0.1239x + 37.758 1000 5μm硬度(N/mm2) 5μm硬度(N/mm2) 160 120 y = 0.0774x + 37.938 y = 0.1061x + 22.036 y = 0.145x + 18.101 y = 0.081x + 33.38 80 40 0 0 600 試験時間(h) 1200 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 表層硬度による促進試験と屋外暴露との比較 メタルハライド促進試験において、屋外暴露の 約80倍早く耐候性を評価できた。 一定の硬度勾配での時間比率 MHを1として、時間比 MH XON 富士 志村 安定化剤なし 1 3.6 77 88 UVA添加 1 3.4 84 86 UVA+HALS添加 1 3.7 81 81 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 耐候性の定量化 アクリルシリコン塗料への安定化剤による 耐候性の違いを定量的に評価できた。 (1/表層硬度勾配) MH XON 富士 志村 安定化剤なし 1.0 1.0 1.0 1.0 UVA添加 1.7 1.9 1.8 1.6 UVA+HALS添加 2.7 2.9 2.6 2.7 安定剤なしを1とした場合の値を示した。 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 まとめ 1)塗料の表層硬度により、屋外暴露とメタル ハライド促進試験と良好な相関性があること を確認した。 その結果、メタルハライド促進試験の促進倍率 は、屋外暴露の約80倍であると推定された。 2)安定化剤の効果を定量的に検証することが 出来た。 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 耐候性の異なる塗料での結果(参考) アクリルシリコン塗料(耐用年数=15年)/アクリル塗料(10年) =1.5倍 2)耐候性の異なる塗料間での 比較が出来た。 MH 水系アクリル塗料 y = 0.1101x + 32.168 160 5μm硬度(N/mm2) 1)水系アクリル塗料でも表層 硬度変化は促進試験と屋外暴 露と相関が見られた。光沢・ 色差は屋外と一致しない 富士 y = 0.1023x + 28.452 志村 120 XON 80 y = 0.0916x + 11.371 y = 0.0791x + 8.7815 40 0 0 アクリル塗料を1とした場合に比較 500 1000 紫外線照射量(MJ/m2) MH アクリルシリコン塗料 アクリル塗料 富士 1500 志村 XON 1.5 1.4 1.4 1.6 1 1 1 1 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 紫外線強度比(参考) 表層硬度勾配からから算出した促進倍率はそれぞれの紫外線照射強度比 とほぼ一致した。本試料では紫外線が劣化に支配的であると推定された 。 一定の硬度勾配での時間比率 水系アクリルシリコン塗料 MHを1として、時間比 160 MH 富士 志村 XON 5μm硬度(N/mm2) y = 0.1271x + 29.76 y = 0.1181x + 32.923 120 y = 0.1038x + 23.665 y = 0.1017x + 23.287 80 40 0 0 1000 紫外線照射量(MJ/m2) 2000 MH XON 富士 志村 安定化剤なし 1 3.6 77 88 UVA添加 1 3.4 84 86 UVA+HALS添加 1 3.7 81 81 紫外線量比 1 3.6 74 86 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 化学発光強度測定(参考) 屋外暴露で著しく高い発光強度であり、表面の付着物の影響を受けてい ると思われた。 水系アクリルシリコン塗料 化学発光強度(c/s) 10000 MH 富士 志村 XON 100 0 500 試験時間(h) 1000 第14回マテリアルライフ学会 研究発表会 塗膜劣化(仮説)とその検出手法(参考) ↓ 表面からの樹脂の酸化劣化(分解) 酸化劣化の内部への伝搬 架橋反応による樹脂の硬化 化学発光 X線電子分光 表層硬度 ↓ 塗膜の変質 亀裂の生成と成長 微細構造観察 ↓ 硬化成分の表面剥離 表面の大きな凹凸発生 光沢・色差
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